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チートでモンスタースタンピードを見物する
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俺がそのゴブリンを群れ全体のリーダーと察知出来たのは、有力ゴブリンであるゲーゲー部族とかなり親密な関係を築いてきたからである。
(ちなみに俺は《ゲーゲー部族の一員》を名乗る事を公式に許可されている)
俺はゴブリン語を話し、ゴブリン典礼を知り、ゴブリン史を学んできた。
だからこそ、そのゴブリンの群れが避難民に偽装した戦士グループである事を看破出来た。
戦士? 戦う? 誰と?
疑問を持つ方がどうかしている。
ゴブリンの敵など、この世に1種しかいない。
眼前の群れは対人間種戦闘に長らく従事していたグループだ。
その証拠に丸腰である。
他のゴブリン避難民は人間側の追撃を恐れる余り、武具の類を強く握り締めて歩いていた。
このグループは全員が徒手。
怪しまれない事に注力する余裕と動機がある。
これを怪しむな、という方がおかしい。
レザノフとの打ち合わせを終えた昼過ぎ。
善隣都市の正門正面で俺はその群れを発見し、そのまま人力車を飛ばしてその群れを呼び止めた。
《こんにちは! そこのグループのリーダーとの面会を希望します。》
カタコトであれば、この程度のゴブリン語は話せる。
突如、仇敵である人間種からゴブリン語で話し掛けられた彼らは、一瞬パニックになったが、すぐに冷静さを取り戻し、平静を務めて俺に応対した。
或いは俺がゴブリン風の装束を纏っていたが故の対応だったのかも知れない。
「リーダーは私です。
何か我々の行動に問題がありますでしょうか?」
まるで群れ全体を護るが如く、その細身のゴブリンは俺に対して傲然と胸を張った。
口調は丁寧だが、瞳に宿る憎悪は隠せない。
ただ、9割の憎悪の中に1割だけ俺への好奇心が混じっている。
この男も俺同様、好奇心に抗えないタイプだった。
『はじめまして。
私はこの善隣都市を管轄しております。
イセカイ・チートと申します。』
その瞬間。
場に居た全員が目を見開いた。
「「「イセカイ! チート!」」」
気持は理解出来る。
今の反応で君達の情報深度にも見当が付いた。
ずっと俺の噂話で持ち切りだったんだろ?
でも姿形の情報までは回って来ていない。
恐らく俺の言動をかろうじて知っているだけで、それ以上の事は知らないはずだ。
『少しだけお話を伺わせて欲しいのです。』
「それは強制?」
『いいえ、既に御存じかと思いますが
あなた方はその義務はありません。』
「なるほど。
では、同胞達をこのままリザード領に渡らせても構わないのだね?
チート・イセカイ伯爵閣下。」
『ええ、何の問題もありません。』
細身のゴブリンは群れを急かし、そのままリザード領まで退避させた。
「ご厚意感謝しましょう。
それで?
私を逮捕するのですか?」
この男は、心配そうに振り返る同胞達を目線で「早く行け」と指示する。
なるほど、男気と統率力の両方に優れている訳か。
尊敬に値する。
『いいえ。
私はあなた方に対して如何なる形での警察権・司法権を持ち合わせておりません。』
「…ふーん。
で?
伯爵閣下は私に何を望んでおられるのか?」
『情報交換をお願いしたい。』
「はははw
私如き田舎者の情報が、今をときめく伯爵閣下のお役に立てますかな?」
違和感を感じたから、何気なく呼び止めただけだった。
もしも彼らがゴブリン内の有力な軍閥・部族であれば、顔だけ繋いでおこうと思ったのである。
ただ、俺がスキルを発動した瞬間。
眼前のこの男が面白い人物であることが判明した。
【我々のモンスタースタンピード作戦が見抜かれた?
ゴブリン全体が疑われている?
それとも首謀者の私だけ?】
おいおいおいww
《モンスタースタンピード作戦》ってww
ラノベの終盤で悪の組織が仕掛けてくるアレじゃねえかww
【くっ!!
人間種はどこまで察知している?
いや、私にピンポイントで話し掛けて来た当たり
もう殆ど把握されていると考えるべきだ。
少なくとも先週の作戦から私の策動が察知されているのだろう。
では今回の作戦も見抜かれている?
この街でのスタンピードを抑止する為に、私を拘束しようとしている?
いや、こちらの仕掛けはかなりの深さで行った。
人間種の技術で探知可能だとは思わないが。
今朝のうちに対岸に渡って安全を確保してから、作戦の推移を観察したかったが…】
ははっw
先週の作戦って何だよw
加えて。
この男、この街でスタンピードを起こすつもりなのか?
おー、見た見たw
ラノベで死ぬほど見た展開だw
『これからリザードとの交易ポイントに行こうと思ってたんですよ。
屋台が出てたら朝飯を食おうと思っていてね。
どうです、ご一緒に?』
「…。」
その細いゴブリンは、かなり迷った。
人間種が両親の仇だったからである。
彼は人間種と慣れ合ってしまう事で復讐心が鈍る事を何より恐れていた。
だが。
好奇心には勝てなかったようだ。
交易ポイントに行くと両替屋は空いていなかったが、人間種側がトード料理を並べていた。
リザード用に製油されたものや、人間種用に串焼きにしたものがある。
最近は、互いが互いの食事様式を楽しむ風潮が出来ているらしい。
屋台の主は以前城内で焼き鳥屋を営んでいた男で何度か話した事があったので、俺の顔を見るなり笑顔で手を振ってくれた。
ゴブリンが席に着いたのを見て内心驚いたようだったが、平静を装って二人分の食事を出してくれる。
俺が『支払いはウェンとギル、どっちが良いですか?』と尋ねると、申し訳なさそうに「ギルで頂ければ…」との答えが返って来た。
そりゃあ、そうだろう。
俺だって選べるのならギルが欲しい。
ゴブリンは俺に借りを作りたくないのか、無言で翡翠を一掴みテーブルに置いた。
気高い男だ。
しかも、鋭い相場観をしている。
あの量の翡翠なら数食分の食事は出来る。
きっと数字に強い男なのだ。
このゴブリン。
デッダと名乗った。
後から知った事だが、グランバルド領内のゴブリンの中では相当なビッグネームである。
『イセカイ伯爵は異文化に通暁されていると伺ってましたが…
流石にゴブリン式の服まで着用されているとは思いませんでした。
しかもその肌着はリザード式ですか?』
「御慧眼恐れ入ります。
ご指摘の通り、リザードの肌着です。」
俺は店主に
『帰って来たばかりで、まだここら辺の事情を把握出来てないのですが。
モンスタースタンピードが起きたんですか?』
と尋ねる。
案の定、先週東方の農業地区でスタンピードが発生し、1200名を越える死者が出たらしい。
店主の表情や手振りからスタンピードの話題である事を悟ったデッダは、滝の様な汗を流して硬直している。
俺がその立場なら必ずや恐慌しているだろう。
『次のスタンピードはどの辺で起こる予定なのですか?』
単刀直入に尋ねる。
ゴブリン語の《スタンピード》というフレーズを聞いた瞬間、デッダは唇を噛むが、すぐにポーカーフェイスに戻り、「さて… 何を仰っているのか?」と誤魔化した。
かなりの胆力である。
『あなた方が今朝に渡河しようとしたという事は、午後以降にこちら側で発生するであろうスタンピードを確認する為ですね。
見た所、貴方はかなり責任感の強い方だ。
それに廉潔な性格をしておられる。
誰かを囮にするという選択は取って来ない。
そんな人物の立案した作戦だ。
御自身の目視で御同胞の離脱と作戦推移を見届けるつもりだったのでしょう?
…ということは。
アナタ達は避難民の最終グループ。
もうグランバルド領内に殆どゴブリンは居ない、と見て間違いない?』
「…極めて少数ですが、説得に応じず残った部族も居ます。
こんな危険な土地でも故郷ですからな。」
『私は。
彼らの安全を保障する方向に持って行きたいのです。』
「それはありがたいご提案ですな。」
『その為にもモンスタースタンピードの情報をご教示頂きたい。』
「流石は名外交官と名高いイセカイ伯爵だ。
天性の駆け引き上手ですなあ。」
『デッダ様は聡明な方だとお見受けしました。
お知恵をお借りしたいのです。』
「…。」
『…。』
しばらく、無言で見つめ合う。
「情報料を頂きたい。
それも我々の種族全体に対しての代価を。
人間種さんはスタンピードに全く対応出来てないでしょう?
という事は、我々が持つノウハウは有用である筈だ。」
『なるほど。
確かに我々はスタンピードへの対応がほぼ出来ておりません。
あなた方は災害対策には自信があるのですか?』
「誰かさん達の襲撃以外なら、大抵は対処し得るのですがねw」
『では、《スタンピードへの対処》と《誰かさんへの対処》の情報を交換するというのは?』
「はははw
その情報は私の両親が殺される前に知りたかったですw」
凄惨な表情で笑う男だ。
恐ろしいが、反面信用できる。
『今、私はこの街の南に船を係留しております。』
「おやおや、人間種の皆さんは遂に航海能力まで身に着けてしまいましたか?」
『私も講習は受けてみたのですが、才能が無かったようで。
今はゴブリンのクルーに船を任せております。』
「ほう。
船員にゴブリンも採用している、と。」
『いえ。
私以外は全員ゴブリンです。
こちらは彼らと一緒に暮らしているだけ。』
「…。
《自分は親ゴブリン派だ》とでも言いたいのですか?」
『一応ゲーゲー部族の一員を名乗る事は許されております。
幾分名誉職的な待遇ですが。
《ポルッド》という待遇はどうしても人間種の言語に翻訳出来ませんでした。
とりあえず《準一門》と仮翻訳しているのですがね。
族長であるゲーゲーにゴブリンの安全を保障し得る政策を幾つか提言しております。
一旦、彼らと話してみませんか?』
「…。」
わかっている。
そういう話ではないのだ。
デッダの望みはあくまで人間種への報復であって、その憎悪をお友達ごっこで収めるつもりはない。
ただ、彼はリアリストでもある。
そこまで人間種と親密なゴブリン部族がこの付近に居るのであれば、今後のパイプ役/苦情窓口として押さえておきたい筈だ。
そもそも今後の部族運営を考えるなら、俺とのパイプも繋いでおきたい筈である。
「では、一般論としてスタンピードの仕組みをレクチャーさせて頂くのは如何でしょう?
イセカイ伯爵は相当な学者と伺っております。
実地に活かせるのでは?」
『尽力します。
私は返礼に何を致しましょう?』
「レクチャーして頂きたい事が山程ありましてな。
何せ、リザードの方の実物を見るのは初めてですし。
人間種の方とこうやって話すのも最初で最後でしょう。」
『私で分かる範囲なら、喜んでお話させて頂きます。』
そういう遣り取りがあって、しばらくお互いに根掘り葉掘りの質問攻めタイム。
リザードの屋台も開いたので、リザード式の漢方薬液で乾杯しながら、質疑応答を手短に交わしていく。
なまじデッダが人間嫌いなので、話が脱線せずに助かる。
何より【心を読む限り】、この男は取引においては極めて誠実だった。
誤情報・誤知識でこちらにダメージを与えようとは一度も試みず、こちらの質問には真正面から向き合ってくれた。
「今の地震、解りますか?」
不意にデッダが話を逸らした。
『地震?
今、起こっているのですか?』
「周囲の反応を見る限り、人間種やリザード種には、このレベルの揺れまでを感知する能力が無いようですね。
今、微弱な地震と同じ規模の揺れが起ってます。」
俺は地震大国日本の出身だが…
わからないな。
「そして、この揺れ。
厳密には地震ではなく、地下生物の大規模移動だ。
地下坑道に密集した地下生物が新鮮な空気を求めて、必死で蠢いている。
どんどん地表に近い場所に上がって来ている。」
『それが貴方達が起こしているモンスタースタンピードの正体?』
「はははw
我々が起こしているだと?
…原因はアンタらだろうが!」
突然、デッダが机を叩いて吼える。
周囲の人間やリザードが驚いてこちらを振り向くが、デッダが深く座り直したので、気付かないフリをして距離を取った。
「…我々は地下に牧場や栽培場を設置して静かに暮らしている。
一度居住地が軌道に乗れば、200年は安定して生きて行けるんだ。
野蛮な人間種の襲撃が無ければな。
襲撃された我々は泣く泣く拠点を放棄して流浪の旅に出る。
何故人間種が我々から奪った拠点のメンテナンスを怠るのかは極めて謎だ。
地下牧場の家畜たちを間引きも移送もしないのは更に疑問が残る。
挙句に放置によって爆発的に増殖した家畜が地上に満ち溢れ、人間種自身の里を襲撃する。
その自業自得な現象を不幸な災害か何かと思い込んで、原因を調べようともしない愚かな思考には吐き気すら催す。」
ああ、スタンピードってそういう原理で発生してたのね。
ゴブリンの地下居住地に放置された家畜の増殖が原因、と。
『…そんな大切な事をどうして我々に教えるのですか?
貴方が黙っていれば、我々は永遠に対処出来なかったかも知れないんですよ?』
「人間種は永遠に辿り着けなかっただろうな。
だが、イセカイ伯爵。
貴方なら時間を掛けずに原因に辿り着いた筈だ。
スタンピード対策も確立されてしまうだろう。
だから先手を打って、売り物としてノウハウを開示する。
仕方なく開示しているんだ。
そこは勘違いしないで頂こう。」
『最善のスタンピード対策は、ゴブリンの拠点を攻撃しない事じゃないかな?
貴方達に対価を払って坑道や地下道の調査・整備を委託するのも悪くないな。』
「流石はやり手と評判のイセカイ伯爵だ。
建設的な意見に感謝するよ。
早速、リザードやオークやコボルトに売り込んでみるとしよう。」
『私は残ったゴブリンに地道に頼んでみますよ。
それは構わないのでしょ?
結果として、彼らの安全度は増すだろうから
貴方にとって、そこまでマイナスではない筈ですが?』
「人間種の皆さんの生活が快適になってしまうのは、私の心情的に大きなマイナスだな。
だがこれはあくまで私情に過ぎない。
多くのゴブリンは胸を撫でおろすだろう。」
不満そうな顔だ。
この男は俺と一緒で敵の死に顔以外に興味が無い。
そして不幸な事に、自分が共同内の少数派である事も熟知している。
俺達って不幸だよな。
なあ、相棒。
「御存知の通り、スタンピードで最も危険度が高いのがオックス系の暴走だ。
地下から解き放たれたオックス系、まあ元々は掛け替えのない我々の資産だが。
これが暴走する第一波で周辺の地上集落が壊滅する。」
『らしいですね。
スタンピードの後は牛肉の価格が暴落するから
肉屋が戦々恐々していますよ。』
「あなた達の文明にも肉屋があるんだな。
ゴブリンの死体も売られているのか?」
『俺の本業は精肉関連ですが、ゴブリンの話は聞いた事がありません。
珍味を扱う問屋ともそういう話題にはなりませんでした。
多分、ゴブリンを食べている者は居ないんじゃないですか?』
「それは安心したよ。
もっとも、食べる訳でも無い生き物を平気で虐殺できる連中が存在する事は、悪夢以外の何でもないけどな。
さて本題に戻ろう。
牧場によってはオックス系ではなく、猪系をメインで育成しているケースも多い。
我々は増えすぎず減り過ぎないように個体数を丁寧に調整しているが…
いざ拠点を追い出されてしまうと、猪系は無限に増殖する。
これは誇張ではない。
無限に増殖する。
そして増えた猪はストレスにより狂暴化した状態で地上に飛び出す。
多分、人間種さんにとってはオックス系以上に猪系の方が厄介なんじゃないか?
たまに狩猟に手間取っている場面を目撃するぞ?」
確かに…
モンスタースタンピードの話は何回か聞いたが、猪・オックスは頻繁に耳にした。
被害者の死因はこのどちらかによる轢殺である事が多いと聞く。
「第一波がオックス・猪。
第二波が何であるかは把握している?」
『いや、そもそも第一波とか第二波とか
そこら辺は誰も意識してないんじゃないですか?
単に《魔物がいっぱい現れて困った》としか…
あー、でもスタンピードで発生した虎や豹の群れに襲われて落命した、という話は何度か聞きましたね。
人間種はオックス系よりも、そちらを怖がってます。
私も個人的には虎の方が怖いです。』
「流石だな。
正解。
第二波は虎系。
ちなみに虎系は家畜の管理に使用している。
内臓が薬剤に、皮革が服飾に使えるから、どこの拠点にも虎系は必須だな。
結構真面目に間引きしているから、普通は増える筈が無いんだけどな。
一年も放置されれば、洒落にならない数まで増殖する。
それらが狂暴化してオックスや猪を攻撃するから…
生存のために逃げ道を必死で探して、結果として地上に出現するんだ。
当然、一度地上への道が確立されると、虎系もオックス・猪を追って当然地上を目指す。」
地獄絵図だな…
「ベアー系は把握している?」
『スタンピードが起こると出るらしいですね。
逃げ遅れた人間や救援隊が喰われた話もよく聞きます。』
「そう。
ベアだけは時間差がある。
コイツラは地下でずっと寝てるんだけど
スタンピードが発生して、地上からの風に混じった血の気配を感じると目覚めて
生き残った負傷生物を襲って食べる。
虎系とベア系は余程の事が無い限り争わない。」
『なるほど…
大量の狂暴生物が順番に地上を襲うと…
こんなもん、近所に住んでたら死ぬしかないですね。』
「ちなみに狂暴ではない生物も外に出るよ。
スパイダーとかね。」
『以前、ガーリックスパイダーが地下から大量発生した事件がありましたよ。』
「それ、本質的には。
我々がガーリックスパイダーの牧場を人間種に奪われた事件なんだけどな。
軌道に乗せるまで結構苦労が多いから、奪われると辛いな。」
『まだ私の部屋にその頃出回ったスパイダーがありますよ。』
「ゴブリンが手塩に掛けたものだ。
せめて感謝して食べて欲しいもんだな。
まあいい。
話を戻そう。
最後にコウモリが外に出る。
大抵はしばらく周辺を飛行して地下に帰って行くが、全体の2割程度は旅を続けて別の地下に辿り着く。
これでスタンピードは打ち止めだ。」
『コウモリは病気の元だから、念入りに消毒するべきだと思います。』
「何だ。
そっちの知識も持ってるのか。
残念。」
『コウモリ対策なんかありますか?』
「…スタンピード発生ポイントの真横で篝火を焚けよ。
出来るだけ高く強く。
コウモリが殆ど地上に出なくなる。
火の中にはハッカを入れるといい。
コウモリ・ネズミ・小虫、それらが本気で忌避するから。」
『いやあ、勉強になります。』
「授業料には期待している。」
『授業料は弾むから、今から起こるスタンピードの対策を教えて下さいよ。』
「…対策のしにくいポイントに細工をした。
防ぐのは困難ではないかな?」
『どの辺で発生しますか?』
「さあ。
人間種の街道を封鎖するようにスタンピードを起こせれば御の字なんだけどね。
道を伝って野生化した獣や、コウモリが運ぶ病原菌が暴れてくれるから。
我々の眼前の、この街道。
ここに沿って野獣が満ち溢れれば、貴方も困るんだろう?」
…微弱な振動を感知した。
近いな。
商都と善隣都市の直線上を狙った?
荷馬車や倉庫が並ぶ、中継ポイントの辺りが本命か?
付近には農家も多い。
「おお、流石だね。
人間種はもっと振動に鈍感かと思ってたw」
…地震大国の生まれだからな。
『食事中申し訳ありませんが
対策の指示を出して来て構わないですか?』
「どうぞどうぞw
それが貴方のお仕事だからねw
今から間に合うとは思えないけどなあw」
俺は冒険者ギルドまで人力車を飛ばすと、スタンピードを通告し各所への連絡を指示する。
ありがたいことに、その場に居た全員が再会の喜びよりも事態への対処を優先してくれる。
対策部長は勿論ドレーク。
彼らから各ギルドに早馬を出して貰う。
俺は職工ギルド(旧セントラルホテル)のボイラー室に潜ると、目に付いたホセやらラモスやらを伝令としてあちこちに出した。
地下水路には誰も伴わず1人で降りる。
流石にこの絵面は誰にも見られたくないからな。
秘かにスライムに掘らせていた坑道。
指示通り、金銀を中心とした貴金属を分別してくれている。
俺は金粒だけをポケットに入れると、商都まで極秘に通していた巣穴を通じて全てのスライムを動員した。
ゴブリンよ。
実は俺はキミ達の得意とする深度やあまり重視しない深度を熟知している。
だから、どの深さにキミ達の地下牧場が存在し、地上への暴発を狙った場合に、どういう縦穴の組み方をするかも見当がついている。
ハッキリ言うね?
キミ達にとって快適な深さって、地上から数えて50メートルの付近でしょ?
そこら辺の地下道の温度・湿度が丁度快適なんだよね?
で、それより潜ると寒いから、家畜を利用して温度調整を行っている。
体温の高い恒温動物のオックス系を飼うのは、食糧確保以上にそっちが主目的。
だってキミ達、食糧だけならキノコ栽培で賄えるもの。
案の定、この善隣都市と商都を結ぶ直線上の地下50メートル程の高さに、大規模な地下道と大量の生命反応を感知する。
そして、デッダの本命が中継ポイントの東側の窪地であることも突き止める。
…悪いな。
貴方と同じような作戦を俺も考えてたし、練習の機会も探ってた。
リザードと戦争になったとしたら、これ位しか手段がないからな。
あの頃の俺も、ここまでは考えていた。
これは十分想定内だ。
流石に仕掛けられる側に回った事には驚いているが。
まさか、この極秘坑道がこんな形で生きるとは思わなかった。
俺は全てのスライムに指示を出すと、久々の我が家に顔を出し、師匠達に遅参を深く詫びた。
そのまま仮眠したかったが、義理もあるのでデッダの元に戻る。
「おや、まさか戻って来られるとは思いもしなかった。」
『あなたが待ってくれてると信じていたからです。』
「こんな所で遊んでいる暇は無い筈だが?」
『対処は全て完了しました。
丁度、私の船も着いたことですし
あなたに紹介させて下さい。』
「…。」
『スタンピードが成功した場合、ここに見慣れないゴブリンが座っているのは危険ですよ?
犯人扱いされるかも知れない。』
「私が人間種なら、まず疑うでしょうな。」
『船に乗ってしまえば安心です。
不穏な気配を感じたら、そのまま河に飛び込んでリザード領に入るだけで
それだけで人間種は追って来れませんから。』
「御厚意に甘えよう。」
そんな遣り取りがあって、ゲルグとデッダを引き合わせる。
しばらく歓談させた後、船を上流に回し、甲板に上がって二人で中継ポイントを眺める。
『あなたにとっては一等地でしょう?』
「だが、まだ絶景ではない。」
『この平和な景色で満足して頂ければ幸いなのですがね。』
「…単調な景色が苦手でね。」
デッダは執拗に中継ポイントの周辺を観察している。
徐々に挙動に焦りが出ている様子を見るに、本来はスタンピードの兆候が見られる時間帯なのだろう。
「…何をした?」
『さっき申し上げたじゃないですか。
対策をさせてくれ、と。』
「この短時間でスタンピード対策が出来る筈がない!」
それから更に2時間近く経過して、ようやく魔物の影が付近にチラつき始める。
だが、どれもノソノソとしか動かず、たまに地中から出ても、どれも単発である。
『お、アソコ見えますか?
猪… それも長牙猪だ。
地中から湧いているように見えますが、ポイントはあの辺りでしょうか?』
「何をした?」
『各所に対策をお願いしただけですよ。
おお、オックス系も沸いて来た!
ご説明の通りの展開ですねえ。
いやあ、恐ろしい事態になったなあw』
地中から湧いた僅かな魔物は、地上に出てもずっとフラフラしており
何歩か歩いてすぐに倒れ込んでしまっていた。
倒れた魔物の身体は数少ない地上との出入り口を無造作に塞いでいた。
「キサマは何をしたぁッ!!!」
デッダが咆哮する。
おお、怖い怖い。
多分、コイツ人間種を幾名か殺してるなww
『あなたから受けた善意の通報を行政活動に反映させて頂いただけです。
後で送らせて下さい。』
「送る?」
『感謝状に決まってるじゃないですかw
デッダ氏の勇気ある通報によって、多くの人命が救われたw
いやあ、美談として語り継がれるでしょうなあww』
「…糞が!」
その後も魔物は湧き続けたのだが、スタンピードという程の勢いは全く感じられなかった。
周辺を警戒している冒険者ギルドのメンバーの手によって、魔物はテンポ良く射殺されていった。
途中、トードの一群が地中から現れた時だけ、冒険者達が抜刀して殺到し幾名かの負傷者が出た。
トードはリザードが気前よく買ってくれるので、もはや人間種の業者には持ち込まれなくなって久しい。
真面目な冒険者達が「隊列を乱すな!」と叱責するが、大半の冒険者は制止を無視してトード狩りに移行してしまう。
まだ作戦行動中にも関わらず嬉々として、リザードの作業船に売込に行ってしまった。
「リザードさん! トードを持って来ました!」
「俺は生け捕りにしてきました!」
「査定お願いします! あ、毒袋だけ外しておきましょうか?」
そんな売り文句がこちらまで聞こえて来る。
デッダは冒険者達の醜態を横目で見下しながら鼻で溜息をついた。
『絶景でしょ?』
「30点かな。」
結構楽しんでるじゃねーかw
結局、デッダが数か月苦労して準備した第二次スタンピード作戦は、殺害数6名という悲惨な結果で終わった。
うち4名は勝手に隊列を乱してトード狩りを始めた冒険者であり、その死は強い批判をもって受け入れられていた。
全く同情に値しない連中だが、意外にもデッダが小声で弔意を述べていた。
『更に2人の死亡が確認されたそうです。』
すっかり薄暗くなった甲板の上で俺はデッダに報告する。
これで彼の戦果は8名に上った。
だが、鎮静化した現場を見れば、これ以上の被害拡大は無さそうである。
そりゃあ、そうだろう。
あの穴の中の生物は殆ど酸欠で死んでいるのだから。
寧ろ、あの状態で地上に出て来た魔物達の生命力には脱帽するしかない。
標準座標≪√47WS≫に対しての絶滅作戦を敢行するに当たって、彼らの想像力の範疇の戦いでは絶対に勝てない事は承知している。
仮に俺が最新式の宇宙戦艦を入手出来た所で、あっさり瞬殺されるだろう。
だから、こちらからの攻撃は相手の…
いや文明生物にとっての死角から行わなければならない。
俺のスライムを使った攻撃、(特定のポイントから酸素を奪ったり大規模浸水や漏電現象を起こせる)に関しては対応が難しいと見ている。
文字通りの奇襲だからだ。
少なくともこの月世界なら、大抵の箇所で大規模虐殺を成功させる自信はある。
後は、標準座標≪√47WS≫がどのような空間を主たる居住空間にしているか、だ。
スペースコロニーや月世界の様な密閉空間なら、絶滅までもって行けるだろう。
勿論、俺には宇宙空間を移動する手段が無いので、万が一無数のコロニーに分散して暮らしているような連中ならジェノサイドは失敗する。
だが、彼らは本星の特定を相当恐れていた。
それも地球人のような未開生物を相手にだ。
と言う事は、標準座標≪√47WS≫に存在するであろう彼らの母星に対しての攻撃は有効であるということだ。
もしも、彼らが《狂戦士》を回収する為のゲートが母星への直結式だとしたら?
俺にとっては非常にありがたい。
この殺意は十分届く。
ありがとう、ゴブリンの勇者よ。
非常に参考になった。
やはり武力に劣る側の打てる手としては、これがベターなのである。
感謝状だけでは足りないから、報奨金も俺の貯金から出しておこう。
勿論ギルで支払う。
いや、金塊の方がデッダは喜ぶだろうか?
そのデッダが無念そうに眉間に皺を寄せ、椅子に深く腰掛けたまま…
両拳を叩きつけて悲痛の咆哮を挙げた。
この男の戦争は終わった。
後はリザード領内で行う政治的策動がメインとなるだろう。
それも感謝状1枚でかなり掣肘されてしまう性質のものだが。
俺はデッダの苦悶の呻きを聞きながら、ろくに採れていなかった食事を済ませた。
いやあ、河風に吹かれながら食べるゴブリン団子は絶品ですなあ。
(ちなみに俺は《ゲーゲー部族の一員》を名乗る事を公式に許可されている)
俺はゴブリン語を話し、ゴブリン典礼を知り、ゴブリン史を学んできた。
だからこそ、そのゴブリンの群れが避難民に偽装した戦士グループである事を看破出来た。
戦士? 戦う? 誰と?
疑問を持つ方がどうかしている。
ゴブリンの敵など、この世に1種しかいない。
眼前の群れは対人間種戦闘に長らく従事していたグループだ。
その証拠に丸腰である。
他のゴブリン避難民は人間側の追撃を恐れる余り、武具の類を強く握り締めて歩いていた。
このグループは全員が徒手。
怪しまれない事に注力する余裕と動機がある。
これを怪しむな、という方がおかしい。
レザノフとの打ち合わせを終えた昼過ぎ。
善隣都市の正門正面で俺はその群れを発見し、そのまま人力車を飛ばしてその群れを呼び止めた。
《こんにちは! そこのグループのリーダーとの面会を希望します。》
カタコトであれば、この程度のゴブリン語は話せる。
突如、仇敵である人間種からゴブリン語で話し掛けられた彼らは、一瞬パニックになったが、すぐに冷静さを取り戻し、平静を務めて俺に応対した。
或いは俺がゴブリン風の装束を纏っていたが故の対応だったのかも知れない。
「リーダーは私です。
何か我々の行動に問題がありますでしょうか?」
まるで群れ全体を護るが如く、その細身のゴブリンは俺に対して傲然と胸を張った。
口調は丁寧だが、瞳に宿る憎悪は隠せない。
ただ、9割の憎悪の中に1割だけ俺への好奇心が混じっている。
この男も俺同様、好奇心に抗えないタイプだった。
『はじめまして。
私はこの善隣都市を管轄しております。
イセカイ・チートと申します。』
その瞬間。
場に居た全員が目を見開いた。
「「「イセカイ! チート!」」」
気持は理解出来る。
今の反応で君達の情報深度にも見当が付いた。
ずっと俺の噂話で持ち切りだったんだろ?
でも姿形の情報までは回って来ていない。
恐らく俺の言動をかろうじて知っているだけで、それ以上の事は知らないはずだ。
『少しだけお話を伺わせて欲しいのです。』
「それは強制?」
『いいえ、既に御存じかと思いますが
あなた方はその義務はありません。』
「なるほど。
では、同胞達をこのままリザード領に渡らせても構わないのだね?
チート・イセカイ伯爵閣下。」
『ええ、何の問題もありません。』
細身のゴブリンは群れを急かし、そのままリザード領まで退避させた。
「ご厚意感謝しましょう。
それで?
私を逮捕するのですか?」
この男は、心配そうに振り返る同胞達を目線で「早く行け」と指示する。
なるほど、男気と統率力の両方に優れている訳か。
尊敬に値する。
『いいえ。
私はあなた方に対して如何なる形での警察権・司法権を持ち合わせておりません。』
「…ふーん。
で?
伯爵閣下は私に何を望んでおられるのか?」
『情報交換をお願いしたい。』
「はははw
私如き田舎者の情報が、今をときめく伯爵閣下のお役に立てますかな?」
違和感を感じたから、何気なく呼び止めただけだった。
もしも彼らがゴブリン内の有力な軍閥・部族であれば、顔だけ繋いでおこうと思ったのである。
ただ、俺がスキルを発動した瞬間。
眼前のこの男が面白い人物であることが判明した。
【我々のモンスタースタンピード作戦が見抜かれた?
ゴブリン全体が疑われている?
それとも首謀者の私だけ?】
おいおいおいww
《モンスタースタンピード作戦》ってww
ラノベの終盤で悪の組織が仕掛けてくるアレじゃねえかww
【くっ!!
人間種はどこまで察知している?
いや、私にピンポイントで話し掛けて来た当たり
もう殆ど把握されていると考えるべきだ。
少なくとも先週の作戦から私の策動が察知されているのだろう。
では今回の作戦も見抜かれている?
この街でのスタンピードを抑止する為に、私を拘束しようとしている?
いや、こちらの仕掛けはかなりの深さで行った。
人間種の技術で探知可能だとは思わないが。
今朝のうちに対岸に渡って安全を確保してから、作戦の推移を観察したかったが…】
ははっw
先週の作戦って何だよw
加えて。
この男、この街でスタンピードを起こすつもりなのか?
おー、見た見たw
ラノベで死ぬほど見た展開だw
『これからリザードとの交易ポイントに行こうと思ってたんですよ。
屋台が出てたら朝飯を食おうと思っていてね。
どうです、ご一緒に?』
「…。」
その細いゴブリンは、かなり迷った。
人間種が両親の仇だったからである。
彼は人間種と慣れ合ってしまう事で復讐心が鈍る事を何より恐れていた。
だが。
好奇心には勝てなかったようだ。
交易ポイントに行くと両替屋は空いていなかったが、人間種側がトード料理を並べていた。
リザード用に製油されたものや、人間種用に串焼きにしたものがある。
最近は、互いが互いの食事様式を楽しむ風潮が出来ているらしい。
屋台の主は以前城内で焼き鳥屋を営んでいた男で何度か話した事があったので、俺の顔を見るなり笑顔で手を振ってくれた。
ゴブリンが席に着いたのを見て内心驚いたようだったが、平静を装って二人分の食事を出してくれる。
俺が『支払いはウェンとギル、どっちが良いですか?』と尋ねると、申し訳なさそうに「ギルで頂ければ…」との答えが返って来た。
そりゃあ、そうだろう。
俺だって選べるのならギルが欲しい。
ゴブリンは俺に借りを作りたくないのか、無言で翡翠を一掴みテーブルに置いた。
気高い男だ。
しかも、鋭い相場観をしている。
あの量の翡翠なら数食分の食事は出来る。
きっと数字に強い男なのだ。
このゴブリン。
デッダと名乗った。
後から知った事だが、グランバルド領内のゴブリンの中では相当なビッグネームである。
『イセカイ伯爵は異文化に通暁されていると伺ってましたが…
流石にゴブリン式の服まで着用されているとは思いませんでした。
しかもその肌着はリザード式ですか?』
「御慧眼恐れ入ります。
ご指摘の通り、リザードの肌着です。」
俺は店主に
『帰って来たばかりで、まだここら辺の事情を把握出来てないのですが。
モンスタースタンピードが起きたんですか?』
と尋ねる。
案の定、先週東方の農業地区でスタンピードが発生し、1200名を越える死者が出たらしい。
店主の表情や手振りからスタンピードの話題である事を悟ったデッダは、滝の様な汗を流して硬直している。
俺がその立場なら必ずや恐慌しているだろう。
『次のスタンピードはどの辺で起こる予定なのですか?』
単刀直入に尋ねる。
ゴブリン語の《スタンピード》というフレーズを聞いた瞬間、デッダは唇を噛むが、すぐにポーカーフェイスに戻り、「さて… 何を仰っているのか?」と誤魔化した。
かなりの胆力である。
『あなた方が今朝に渡河しようとしたという事は、午後以降にこちら側で発生するであろうスタンピードを確認する為ですね。
見た所、貴方はかなり責任感の強い方だ。
それに廉潔な性格をしておられる。
誰かを囮にするという選択は取って来ない。
そんな人物の立案した作戦だ。
御自身の目視で御同胞の離脱と作戦推移を見届けるつもりだったのでしょう?
…ということは。
アナタ達は避難民の最終グループ。
もうグランバルド領内に殆どゴブリンは居ない、と見て間違いない?』
「…極めて少数ですが、説得に応じず残った部族も居ます。
こんな危険な土地でも故郷ですからな。」
『私は。
彼らの安全を保障する方向に持って行きたいのです。』
「それはありがたいご提案ですな。」
『その為にもモンスタースタンピードの情報をご教示頂きたい。』
「流石は名外交官と名高いイセカイ伯爵だ。
天性の駆け引き上手ですなあ。」
『デッダ様は聡明な方だとお見受けしました。
お知恵をお借りしたいのです。』
「…。」
『…。』
しばらく、無言で見つめ合う。
「情報料を頂きたい。
それも我々の種族全体に対しての代価を。
人間種さんはスタンピードに全く対応出来てないでしょう?
という事は、我々が持つノウハウは有用である筈だ。」
『なるほど。
確かに我々はスタンピードへの対応がほぼ出来ておりません。
あなた方は災害対策には自信があるのですか?』
「誰かさん達の襲撃以外なら、大抵は対処し得るのですがねw」
『では、《スタンピードへの対処》と《誰かさんへの対処》の情報を交換するというのは?』
「はははw
その情報は私の両親が殺される前に知りたかったですw」
凄惨な表情で笑う男だ。
恐ろしいが、反面信用できる。
『今、私はこの街の南に船を係留しております。』
「おやおや、人間種の皆さんは遂に航海能力まで身に着けてしまいましたか?」
『私も講習は受けてみたのですが、才能が無かったようで。
今はゴブリンのクルーに船を任せております。』
「ほう。
船員にゴブリンも採用している、と。」
『いえ。
私以外は全員ゴブリンです。
こちらは彼らと一緒に暮らしているだけ。』
「…。
《自分は親ゴブリン派だ》とでも言いたいのですか?」
『一応ゲーゲー部族の一員を名乗る事は許されております。
幾分名誉職的な待遇ですが。
《ポルッド》という待遇はどうしても人間種の言語に翻訳出来ませんでした。
とりあえず《準一門》と仮翻訳しているのですがね。
族長であるゲーゲーにゴブリンの安全を保障し得る政策を幾つか提言しております。
一旦、彼らと話してみませんか?』
「…。」
わかっている。
そういう話ではないのだ。
デッダの望みはあくまで人間種への報復であって、その憎悪をお友達ごっこで収めるつもりはない。
ただ、彼はリアリストでもある。
そこまで人間種と親密なゴブリン部族がこの付近に居るのであれば、今後のパイプ役/苦情窓口として押さえておきたい筈だ。
そもそも今後の部族運営を考えるなら、俺とのパイプも繋いでおきたい筈である。
「では、一般論としてスタンピードの仕組みをレクチャーさせて頂くのは如何でしょう?
イセカイ伯爵は相当な学者と伺っております。
実地に活かせるのでは?」
『尽力します。
私は返礼に何を致しましょう?』
「レクチャーして頂きたい事が山程ありましてな。
何せ、リザードの方の実物を見るのは初めてですし。
人間種の方とこうやって話すのも最初で最後でしょう。」
『私で分かる範囲なら、喜んでお話させて頂きます。』
そういう遣り取りがあって、しばらくお互いに根掘り葉掘りの質問攻めタイム。
リザードの屋台も開いたので、リザード式の漢方薬液で乾杯しながら、質疑応答を手短に交わしていく。
なまじデッダが人間嫌いなので、話が脱線せずに助かる。
何より【心を読む限り】、この男は取引においては極めて誠実だった。
誤情報・誤知識でこちらにダメージを与えようとは一度も試みず、こちらの質問には真正面から向き合ってくれた。
「今の地震、解りますか?」
不意にデッダが話を逸らした。
『地震?
今、起こっているのですか?』
「周囲の反応を見る限り、人間種やリザード種には、このレベルの揺れまでを感知する能力が無いようですね。
今、微弱な地震と同じ規模の揺れが起ってます。」
俺は地震大国日本の出身だが…
わからないな。
「そして、この揺れ。
厳密には地震ではなく、地下生物の大規模移動だ。
地下坑道に密集した地下生物が新鮮な空気を求めて、必死で蠢いている。
どんどん地表に近い場所に上がって来ている。」
『それが貴方達が起こしているモンスタースタンピードの正体?』
「はははw
我々が起こしているだと?
…原因はアンタらだろうが!」
突然、デッダが机を叩いて吼える。
周囲の人間やリザードが驚いてこちらを振り向くが、デッダが深く座り直したので、気付かないフリをして距離を取った。
「…我々は地下に牧場や栽培場を設置して静かに暮らしている。
一度居住地が軌道に乗れば、200年は安定して生きて行けるんだ。
野蛮な人間種の襲撃が無ければな。
襲撃された我々は泣く泣く拠点を放棄して流浪の旅に出る。
何故人間種が我々から奪った拠点のメンテナンスを怠るのかは極めて謎だ。
地下牧場の家畜たちを間引きも移送もしないのは更に疑問が残る。
挙句に放置によって爆発的に増殖した家畜が地上に満ち溢れ、人間種自身の里を襲撃する。
その自業自得な現象を不幸な災害か何かと思い込んで、原因を調べようともしない愚かな思考には吐き気すら催す。」
ああ、スタンピードってそういう原理で発生してたのね。
ゴブリンの地下居住地に放置された家畜の増殖が原因、と。
『…そんな大切な事をどうして我々に教えるのですか?
貴方が黙っていれば、我々は永遠に対処出来なかったかも知れないんですよ?』
「人間種は永遠に辿り着けなかっただろうな。
だが、イセカイ伯爵。
貴方なら時間を掛けずに原因に辿り着いた筈だ。
スタンピード対策も確立されてしまうだろう。
だから先手を打って、売り物としてノウハウを開示する。
仕方なく開示しているんだ。
そこは勘違いしないで頂こう。」
『最善のスタンピード対策は、ゴブリンの拠点を攻撃しない事じゃないかな?
貴方達に対価を払って坑道や地下道の調査・整備を委託するのも悪くないな。』
「流石はやり手と評判のイセカイ伯爵だ。
建設的な意見に感謝するよ。
早速、リザードやオークやコボルトに売り込んでみるとしよう。」
『私は残ったゴブリンに地道に頼んでみますよ。
それは構わないのでしょ?
結果として、彼らの安全度は増すだろうから
貴方にとって、そこまでマイナスではない筈ですが?』
「人間種の皆さんの生活が快適になってしまうのは、私の心情的に大きなマイナスだな。
だがこれはあくまで私情に過ぎない。
多くのゴブリンは胸を撫でおろすだろう。」
不満そうな顔だ。
この男は俺と一緒で敵の死に顔以外に興味が無い。
そして不幸な事に、自分が共同内の少数派である事も熟知している。
俺達って不幸だよな。
なあ、相棒。
「御存知の通り、スタンピードで最も危険度が高いのがオックス系の暴走だ。
地下から解き放たれたオックス系、まあ元々は掛け替えのない我々の資産だが。
これが暴走する第一波で周辺の地上集落が壊滅する。」
『らしいですね。
スタンピードの後は牛肉の価格が暴落するから
肉屋が戦々恐々していますよ。』
「あなた達の文明にも肉屋があるんだな。
ゴブリンの死体も売られているのか?」
『俺の本業は精肉関連ですが、ゴブリンの話は聞いた事がありません。
珍味を扱う問屋ともそういう話題にはなりませんでした。
多分、ゴブリンを食べている者は居ないんじゃないですか?』
「それは安心したよ。
もっとも、食べる訳でも無い生き物を平気で虐殺できる連中が存在する事は、悪夢以外の何でもないけどな。
さて本題に戻ろう。
牧場によってはオックス系ではなく、猪系をメインで育成しているケースも多い。
我々は増えすぎず減り過ぎないように個体数を丁寧に調整しているが…
いざ拠点を追い出されてしまうと、猪系は無限に増殖する。
これは誇張ではない。
無限に増殖する。
そして増えた猪はストレスにより狂暴化した状態で地上に飛び出す。
多分、人間種さんにとってはオックス系以上に猪系の方が厄介なんじゃないか?
たまに狩猟に手間取っている場面を目撃するぞ?」
確かに…
モンスタースタンピードの話は何回か聞いたが、猪・オックスは頻繁に耳にした。
被害者の死因はこのどちらかによる轢殺である事が多いと聞く。
「第一波がオックス・猪。
第二波が何であるかは把握している?」
『いや、そもそも第一波とか第二波とか
そこら辺は誰も意識してないんじゃないですか?
単に《魔物がいっぱい現れて困った》としか…
あー、でもスタンピードで発生した虎や豹の群れに襲われて落命した、という話は何度か聞きましたね。
人間種はオックス系よりも、そちらを怖がってます。
私も個人的には虎の方が怖いです。』
「流石だな。
正解。
第二波は虎系。
ちなみに虎系は家畜の管理に使用している。
内臓が薬剤に、皮革が服飾に使えるから、どこの拠点にも虎系は必須だな。
結構真面目に間引きしているから、普通は増える筈が無いんだけどな。
一年も放置されれば、洒落にならない数まで増殖する。
それらが狂暴化してオックスや猪を攻撃するから…
生存のために逃げ道を必死で探して、結果として地上に出現するんだ。
当然、一度地上への道が確立されると、虎系もオックス・猪を追って当然地上を目指す。」
地獄絵図だな…
「ベアー系は把握している?」
『スタンピードが起こると出るらしいですね。
逃げ遅れた人間や救援隊が喰われた話もよく聞きます。』
「そう。
ベアだけは時間差がある。
コイツラは地下でずっと寝てるんだけど
スタンピードが発生して、地上からの風に混じった血の気配を感じると目覚めて
生き残った負傷生物を襲って食べる。
虎系とベア系は余程の事が無い限り争わない。」
『なるほど…
大量の狂暴生物が順番に地上を襲うと…
こんなもん、近所に住んでたら死ぬしかないですね。』
「ちなみに狂暴ではない生物も外に出るよ。
スパイダーとかね。」
『以前、ガーリックスパイダーが地下から大量発生した事件がありましたよ。』
「それ、本質的には。
我々がガーリックスパイダーの牧場を人間種に奪われた事件なんだけどな。
軌道に乗せるまで結構苦労が多いから、奪われると辛いな。」
『まだ私の部屋にその頃出回ったスパイダーがありますよ。』
「ゴブリンが手塩に掛けたものだ。
せめて感謝して食べて欲しいもんだな。
まあいい。
話を戻そう。
最後にコウモリが外に出る。
大抵はしばらく周辺を飛行して地下に帰って行くが、全体の2割程度は旅を続けて別の地下に辿り着く。
これでスタンピードは打ち止めだ。」
『コウモリは病気の元だから、念入りに消毒するべきだと思います。』
「何だ。
そっちの知識も持ってるのか。
残念。」
『コウモリ対策なんかありますか?』
「…スタンピード発生ポイントの真横で篝火を焚けよ。
出来るだけ高く強く。
コウモリが殆ど地上に出なくなる。
火の中にはハッカを入れるといい。
コウモリ・ネズミ・小虫、それらが本気で忌避するから。」
『いやあ、勉強になります。』
「授業料には期待している。」
『授業料は弾むから、今から起こるスタンピードの対策を教えて下さいよ。』
「…対策のしにくいポイントに細工をした。
防ぐのは困難ではないかな?」
『どの辺で発生しますか?』
「さあ。
人間種の街道を封鎖するようにスタンピードを起こせれば御の字なんだけどね。
道を伝って野生化した獣や、コウモリが運ぶ病原菌が暴れてくれるから。
我々の眼前の、この街道。
ここに沿って野獣が満ち溢れれば、貴方も困るんだろう?」
…微弱な振動を感知した。
近いな。
商都と善隣都市の直線上を狙った?
荷馬車や倉庫が並ぶ、中継ポイントの辺りが本命か?
付近には農家も多い。
「おお、流石だね。
人間種はもっと振動に鈍感かと思ってたw」
…地震大国の生まれだからな。
『食事中申し訳ありませんが
対策の指示を出して来て構わないですか?』
「どうぞどうぞw
それが貴方のお仕事だからねw
今から間に合うとは思えないけどなあw」
俺は冒険者ギルドまで人力車を飛ばすと、スタンピードを通告し各所への連絡を指示する。
ありがたいことに、その場に居た全員が再会の喜びよりも事態への対処を優先してくれる。
対策部長は勿論ドレーク。
彼らから各ギルドに早馬を出して貰う。
俺は職工ギルド(旧セントラルホテル)のボイラー室に潜ると、目に付いたホセやらラモスやらを伝令としてあちこちに出した。
地下水路には誰も伴わず1人で降りる。
流石にこの絵面は誰にも見られたくないからな。
秘かにスライムに掘らせていた坑道。
指示通り、金銀を中心とした貴金属を分別してくれている。
俺は金粒だけをポケットに入れると、商都まで極秘に通していた巣穴を通じて全てのスライムを動員した。
ゴブリンよ。
実は俺はキミ達の得意とする深度やあまり重視しない深度を熟知している。
だから、どの深さにキミ達の地下牧場が存在し、地上への暴発を狙った場合に、どういう縦穴の組み方をするかも見当がついている。
ハッキリ言うね?
キミ達にとって快適な深さって、地上から数えて50メートルの付近でしょ?
そこら辺の地下道の温度・湿度が丁度快適なんだよね?
で、それより潜ると寒いから、家畜を利用して温度調整を行っている。
体温の高い恒温動物のオックス系を飼うのは、食糧確保以上にそっちが主目的。
だってキミ達、食糧だけならキノコ栽培で賄えるもの。
案の定、この善隣都市と商都を結ぶ直線上の地下50メートル程の高さに、大規模な地下道と大量の生命反応を感知する。
そして、デッダの本命が中継ポイントの東側の窪地であることも突き止める。
…悪いな。
貴方と同じような作戦を俺も考えてたし、練習の機会も探ってた。
リザードと戦争になったとしたら、これ位しか手段がないからな。
あの頃の俺も、ここまでは考えていた。
これは十分想定内だ。
流石に仕掛けられる側に回った事には驚いているが。
まさか、この極秘坑道がこんな形で生きるとは思わなかった。
俺は全てのスライムに指示を出すと、久々の我が家に顔を出し、師匠達に遅参を深く詫びた。
そのまま仮眠したかったが、義理もあるのでデッダの元に戻る。
「おや、まさか戻って来られるとは思いもしなかった。」
『あなたが待ってくれてると信じていたからです。』
「こんな所で遊んでいる暇は無い筈だが?」
『対処は全て完了しました。
丁度、私の船も着いたことですし
あなたに紹介させて下さい。』
「…。」
『スタンピードが成功した場合、ここに見慣れないゴブリンが座っているのは危険ですよ?
犯人扱いされるかも知れない。』
「私が人間種なら、まず疑うでしょうな。」
『船に乗ってしまえば安心です。
不穏な気配を感じたら、そのまま河に飛び込んでリザード領に入るだけで
それだけで人間種は追って来れませんから。』
「御厚意に甘えよう。」
そんな遣り取りがあって、ゲルグとデッダを引き合わせる。
しばらく歓談させた後、船を上流に回し、甲板に上がって二人で中継ポイントを眺める。
『あなたにとっては一等地でしょう?』
「だが、まだ絶景ではない。」
『この平和な景色で満足して頂ければ幸いなのですがね。』
「…単調な景色が苦手でね。」
デッダは執拗に中継ポイントの周辺を観察している。
徐々に挙動に焦りが出ている様子を見るに、本来はスタンピードの兆候が見られる時間帯なのだろう。
「…何をした?」
『さっき申し上げたじゃないですか。
対策をさせてくれ、と。』
「この短時間でスタンピード対策が出来る筈がない!」
それから更に2時間近く経過して、ようやく魔物の影が付近にチラつき始める。
だが、どれもノソノソとしか動かず、たまに地中から出ても、どれも単発である。
『お、アソコ見えますか?
猪… それも長牙猪だ。
地中から湧いているように見えますが、ポイントはあの辺りでしょうか?』
「何をした?」
『各所に対策をお願いしただけですよ。
おお、オックス系も沸いて来た!
ご説明の通りの展開ですねえ。
いやあ、恐ろしい事態になったなあw』
地中から湧いた僅かな魔物は、地上に出てもずっとフラフラしており
何歩か歩いてすぐに倒れ込んでしまっていた。
倒れた魔物の身体は数少ない地上との出入り口を無造作に塞いでいた。
「キサマは何をしたぁッ!!!」
デッダが咆哮する。
おお、怖い怖い。
多分、コイツ人間種を幾名か殺してるなww
『あなたから受けた善意の通報を行政活動に反映させて頂いただけです。
後で送らせて下さい。』
「送る?」
『感謝状に決まってるじゃないですかw
デッダ氏の勇気ある通報によって、多くの人命が救われたw
いやあ、美談として語り継がれるでしょうなあww』
「…糞が!」
その後も魔物は湧き続けたのだが、スタンピードという程の勢いは全く感じられなかった。
周辺を警戒している冒険者ギルドのメンバーの手によって、魔物はテンポ良く射殺されていった。
途中、トードの一群が地中から現れた時だけ、冒険者達が抜刀して殺到し幾名かの負傷者が出た。
トードはリザードが気前よく買ってくれるので、もはや人間種の業者には持ち込まれなくなって久しい。
真面目な冒険者達が「隊列を乱すな!」と叱責するが、大半の冒険者は制止を無視してトード狩りに移行してしまう。
まだ作戦行動中にも関わらず嬉々として、リザードの作業船に売込に行ってしまった。
「リザードさん! トードを持って来ました!」
「俺は生け捕りにしてきました!」
「査定お願いします! あ、毒袋だけ外しておきましょうか?」
そんな売り文句がこちらまで聞こえて来る。
デッダは冒険者達の醜態を横目で見下しながら鼻で溜息をついた。
『絶景でしょ?』
「30点かな。」
結構楽しんでるじゃねーかw
結局、デッダが数か月苦労して準備した第二次スタンピード作戦は、殺害数6名という悲惨な結果で終わった。
うち4名は勝手に隊列を乱してトード狩りを始めた冒険者であり、その死は強い批判をもって受け入れられていた。
全く同情に値しない連中だが、意外にもデッダが小声で弔意を述べていた。
『更に2人の死亡が確認されたそうです。』
すっかり薄暗くなった甲板の上で俺はデッダに報告する。
これで彼の戦果は8名に上った。
だが、鎮静化した現場を見れば、これ以上の被害拡大は無さそうである。
そりゃあ、そうだろう。
あの穴の中の生物は殆ど酸欠で死んでいるのだから。
寧ろ、あの状態で地上に出て来た魔物達の生命力には脱帽するしかない。
標準座標≪√47WS≫に対しての絶滅作戦を敢行するに当たって、彼らの想像力の範疇の戦いでは絶対に勝てない事は承知している。
仮に俺が最新式の宇宙戦艦を入手出来た所で、あっさり瞬殺されるだろう。
だから、こちらからの攻撃は相手の…
いや文明生物にとっての死角から行わなければならない。
俺のスライムを使った攻撃、(特定のポイントから酸素を奪ったり大規模浸水や漏電現象を起こせる)に関しては対応が難しいと見ている。
文字通りの奇襲だからだ。
少なくともこの月世界なら、大抵の箇所で大規模虐殺を成功させる自信はある。
後は、標準座標≪√47WS≫がどのような空間を主たる居住空間にしているか、だ。
スペースコロニーや月世界の様な密閉空間なら、絶滅までもって行けるだろう。
勿論、俺には宇宙空間を移動する手段が無いので、万が一無数のコロニーに分散して暮らしているような連中ならジェノサイドは失敗する。
だが、彼らは本星の特定を相当恐れていた。
それも地球人のような未開生物を相手にだ。
と言う事は、標準座標≪√47WS≫に存在するであろう彼らの母星に対しての攻撃は有効であるということだ。
もしも、彼らが《狂戦士》を回収する為のゲートが母星への直結式だとしたら?
俺にとっては非常にありがたい。
この殺意は十分届く。
ありがとう、ゴブリンの勇者よ。
非常に参考になった。
やはり武力に劣る側の打てる手としては、これがベターなのである。
感謝状だけでは足りないから、報奨金も俺の貯金から出しておこう。
勿論ギルで支払う。
いや、金塊の方がデッダは喜ぶだろうか?
そのデッダが無念そうに眉間に皺を寄せ、椅子に深く腰掛けたまま…
両拳を叩きつけて悲痛の咆哮を挙げた。
この男の戦争は終わった。
後はリザード領内で行う政治的策動がメインとなるだろう。
それも感謝状1枚でかなり掣肘されてしまう性質のものだが。
俺はデッダの苦悶の呻きを聞きながら、ろくに採れていなかった食事を済ませた。
いやあ、河風に吹かれながら食べるゴブリン団子は絶品ですなあ。
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そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。
旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。
☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。
☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。
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