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【転移55日目】 所持金1兆0887億1203万ウェン 「あっ、1兆あるー。」
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「え? 私のスキル?
ああ、見せた事ありませんでしたか?
雷魔法全般の応用技です。」
『おお!
何か格好いい!!』
あまりの主人公スキルに感動した俺がカインにしつこく質問した所、彼の能力は以下の通り。
==========================
【名前】
カイン・R・グランツ
【職業】
元金融業経営
元冒険者(ランクA)
【ステータス】 (隠蔽魔法使用済)
《LV》 ??
《HP》 (????/????)
《MP》 (?????/?????)
《腕力》 ???
《速度》 ???
《器用》 ???
《魔力》 ????
《知性》 ???
《精神》 ???
《幸運》 ???
《経験》 ???億????万
次のレベルまで残り????万ポイント
【スキル】
雷光 (スキルランクB+)
※全雷魔法の習得が可能
※雷魔法と剣術・体術を複合して発動可能
※広域雷魔法を無詠唱で発動可能
?? (秘技である為、存在を知る者は世界に数名のみ。)
※戦闘速度をn倍に加速 1秒に11nポイントのMPを消費する。
==========================
『うおおおお!!!
カインさん滅茶苦茶格好いいじゃないですか!
全てのティーンエイジャーの憧れですよ!』
「ははは、ありがとう。
決して使い勝手が悪い訳ではないのだけどね。」
そう。
市井の冒険者が持つスキルであれば、確かに悪くない。
だが、カインは王都の一等地に邸宅を構える金融会社の跡取り息子である。
そこらの労働者階級が持てば資産となるようなこのスキルは、経営者階級にとって負債以外の何物でもなかった。
戦闘スキルというのはグランツ家のような経営者階級が、有用な労働者に日銭を与えて使わせるものであって、まかり間違っても自分で使う物ではない。
少なくとも彼の父親はそう捉えた。
もしもカインの能力が知られれば、必ず軍部に徴発される。
それも最激戦区に特殊部隊員として投入される事は火を見るよりも明らかであった。
金融会社の創業社長である、世知に長けていない訳がない。
父は息子にスキルの存在をひた隠しにする事を命じた。
ティーンエイジャーの頃のカインは親に反発し、王国を出奔。
冒険者として数々の戦闘に参戦し、そこで彼だけが使いこなせる蒼い雷光を駆使した。
結果、父の正しさだけが証明された。
殺した相手の仲間や家族が仇がカインであることを理解し、壮絶な報復戦を仕掛けて来たからである。
蒼く鮮やかな雷跡はこの世でただ一人が生み出せる奇跡だったからである。
カインが元の生活を取り戻すのは、遺族の息子と死闘の末に和解しその部下ごと護衛役として雇用するようになってからである。
「へえ、人に歴史ありだねぇ。
グランツ君にそんな過去があったなんて。
確かに、戦闘系のスキルって恨みを買い易いよね。
特にレアであればあるほど、身元が簡単に割れちゃうからね。」
「ちなみにキーン君は何か秘技を持ってるの?」
「私は不動産屋だから。
次にこの街に亡命して来る人間を知ってるくらいかな?
それに連動して、他国の人事予測が得意かな?
得意というより、関係者が普通に教えてくれてるだけなんですけど。」
『地味に強烈なスキルですね。』
「悪用はしてませんよー?
守秘義務は守ってますからね。
当局から情報提供要請が無い限り。」
『情報提供とか、やっぱり求められるんですか?』
「そりゃあ、私みたいに全世界をまたに掛けて商売している人間は…
情報局や政治局から見れば、ねえ?」
『確かに、一番ソースに近い情報源ですものね。
あ、俺の能力は複利です。』
「「言っちゃ駄目!!!」」
『…す、すみません。』
「あのねえコリンズさん。
何の為に私達が貴方に尋ねて来なかったと思ってるの?
貴方ほどのレアスキルの持ち主は最後の最後まで手札を伏せてなきゃ駄目だよ!」
『は、はい。』
「あのね?
真面目に聞いて。
私やグランツ君が誰かに捕まって拷問される可能性もある。
その場合、君から聞いた情報は高い確率で相手に渡ってしまう。
これって知られたら困るんだよね?
いや、知られるべきではないと判断しているんだよね?」
『…相当匙加減を調整しなければ
世界が滅びちゃうかな、と。
なるべく、そうならない様にしたいとは思ってるのですが。』
「私は…
これはエゴだけど。
例えこんな世界が滅びたとしても、友達だけには生き残って欲しい。
コリンズさん、私の為にももっと慎重になって下さい!」
『も、申し訳ないです。
俺が軽率でした。』
「いや、私も感情的になり過ぎました。
もう貴方が覚悟を決めている事は知っている筈なのにね。」
『覚悟も何も…
カネの使い方に、もっと社会性を持たせようと思い始めただけです。』
「だよね。
ここ数日の貴方は吹っ切れている。
世界、滅ぼすの?」
『いやあ、なるべく皆さんに悪影響が無いように持って行きたいのですが…』
「世界滅びたら、悪影響出るんじゃないですか?
滅亡に立ち会った事が無いので断言は出来ませんが。」
『俺。
前の世界に居る時に、《世界が滅んで欲しい》って毎日思ってました。』
「どうして!?」
『あ、いや。
恥ずかしい話なんですが。
俺は親もおらず、生活は貧しく、容姿もこんなのですから女性に全く相手にされず。
こんな性格ですから友人も居なかったんです。
もしも世界が滅びてくれたら…
自分一人が惨めな状態からは抜け出せるかな、と。』
「うーん。
褒められた発想ではないと思います。
ただ、経済的に恵まれた環境に生まれた私には無条件で批判する資格はないのかもですね。」
『カネ持ちになれば、少しは周囲が認めてくれるかと、ずっと思ってたんです。
今考えれば不思議でも何でもないですね。
俺がこんな能力を身に着けてしまったのは。』
「引け目は感じる必要はないですよ。
結局はカネなんて使い道です。
貴方は意義ある使い方をしておられましたよ。
キーン君、覚えてる?
炸裂弾の話。」
「忘れる筈がないです。」
「コリンズさん。
例え貴方が忘れていても、私は鮮明に覚えています。
《炸裂弾を売って欲しい》と私が頼んだ時…
自分が何と言ったか覚えてますか?」
『あ、いや…
大分前の話ですし。』
「聞き終わる前に《お役に立てて下さい》って押し付けて来たんだよ?
キーン君の時はどうだった?
覚えてます?」
「忘れられる訳がないです。
《皆さん、記念に炸裂弾を投げてみませんか?
結構、気分がいいですよ!》
そう言ったんですよ。
コリンズさんは。」
『ああ、グリーブさんとジャイアントタートルを討伐した時の…
何か、生意気なことばっかり言っちゃってますね。』
「あの時貴方は炸裂弾を有意義に使ってくれた。
皆の為に使ってくれた。
今はそれがカネになっただけなんです。
だから、例え貴方が世界を滅ぼすとしても
きっと天下万民の為に滅ぼしてくれる筈です。
私はコリンズさんを信じてますから!」
…いや。
年長者のあなた達にそう言って頂けるのは光栄なんですけど。
世界が滅亡したら、普通みんなは困るんじゃないか?
俺みたいな貧乏人なら兎も角さぁ。
…貧乏人なら?
==========================
日課のリハビリ運動を終えたので、3人で馬車に乗って総合債券市場に向かう。
当初ハニートラップを警戒して、行くべきではないとも考えていたのだが。
結局、当局からマークされている以上、あらゆる角度から探りはあるので、どこに居ても同じであるとの結論に至った。
ホールで案内を乞うと、VIPフロアに通される。
俺が驚いていると「購入実績の関係で…」と補足される。
確かにそうか。
前回は、ノリで無造作に買ったもんな。
VIPフロアは、前に通されたフロアの更に上階。
一般取引者(世界的には当然富豪の集まり)を見下ろしながら債権を売買する事が出来る。
陳腐な比喩だが、世界の支配者にでもなった錯覚に陥る。
俺達3人が席に着くと早速ウェイトレスが大量に近寄って来る。
カインの予想通り、ローティーンの小柄な少女ばかりだ。
背後に1人だけ30代くらいのキャリアウーマン風の女が居る。
断じてこんな表現をするべきでは無いのだが、ヒルダ系統である。
つまり指揮官兼監視。
少女軍団は天真爛漫風の笑顔で俺達に挨拶しながらも、背後のヒルダ系にかなり怯えている。
まあな、俺がこの子だとしても、怖い上司に監視されながらの諜報任務なんて絶対に嫌だ。
キーンが表情を変えずに俺にアイコンタクトを送ってくる。
《追い払っていいですか?》
俺は同意だけして、2人に対処を任せる。
「ごめんねー。
ちょっとプライベートな話題もあるんだ。
手掴み出来るオードブルだけ持ってきてくれるかな?」
なるほど、流石に遊び慣れてるだけあって人払いもスマートだ。
俺もいつかこんな洗練された態度が取れるのだろうか?
ヒルダ系が少し困惑しながら強引に俺へ話題を振ってこようとしたので、体調不良を理由に謝絶する。
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【所持金】
9417億1723万ウェン
↓
9417億1223万ウェン
※ウェイトレスにチップ名目で500万ウェンを贈呈
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『素晴らしい接客に満足しております。
流石は、世界に冠たる自由都市の総合債券市場ですね。
是非とも、今後共利用させて下さい。
本日は体調が芳しくない上に、私的な話題が多いので同席は控えて頂きたいのですが
これからも宜しくお願いしますね、』
ここまで言われたら下がらざるを得ないだろう。
一応相手の顔も立てたしな。
ヒルダ系は一礼してハニトラ軍団と共にフロアから去る。
どう?
スマートな断り文句だろう?
そりゃあそうだよな、仕込んだのはヒルダ(真)なのだから。
==========================
今日はカネをどこまで減らせるのかの実験も兼ねているので機械的に買ってみる。
と言っても、みんなが取り合う様な債権に買い注文を入れるのは控えておく。
変な恨みを買いたくないからね。
先日、首長国と帝国との間で散発的な戦闘が発生したらしく、帝国の国債は大量に売れ残っている。
自由都市はあくまで首長国とのみ同盟を結んでおり、最近友好的とは言え帝国は戦略的競争相手に過ぎない。
万が一、首相国と帝国が戦争状態に突入してしまったら。
帝国関係の債券は全て取引中止になってしまうのだ。
「あくまで偶発的な戦闘です!
既に首長国当局とは原因究明委員会を設置済みです!!
我が国の協調路線に一切の変更はありません!!」
帝国官僚は必死に訴えるが、マーケットは冷ややかである。
役人が必死に守るのは自分の立場のみであって投資家の資産には興味が無いと、市場が熟知しているからである。
==========================
【所持金】
9417億1223万ウェン
↓
8867億1223万ウェン
↓
8637億1223万ウェン
※第4次帝国インフラ債を550億ウェンで購入
※帝国総合プランテーション債を230億ウェンで購入
==========================
不人気債券のみを購入する予定だったのだが、帝国関連の債券が市場に拒否されてしまった為、他の債券に人気が集中している。
消去法的に帝国債券しか買えなかった。
金額もそんなに使えなかったが…
まあ、こればかりは巡り合わせだからな。
こちらを見上げて帝国官僚が大袈裟に何度も礼をするが…
どうせアイツは庁舎に帰れば「俺の手腕で債券を売りさばいてやった!」と嬉しそうに吹聴するのだろう。
あまりにしつこいので、仕方なく手を振ってやる。
『数千億ウェンを買ってみようと思ってたんですけど…』
「市場に異変発生ですなw」
『じゃあ。
1日辺りの適正購入総額をキーンさんが決めて下さいよ。』
「うーん。
100億かなあ。
いや、貴方は不満そうな顔をするけど
1日100億って洒落にならない金額だからね?」
『ええ、まあ。』
参ったな…
100億なんて、今の俺には誤差だぞ?
あれ?
昨日ヒルダに幾ら渡したっけ?
100万くらい?
よく、覚えてないや。
《2250億ウェンの配当が支払われました。》
ん?
もうこんな時間か?
最近、ゆっくりメシを喰う習慣がついてしまったからな。
いや、コース料理とか食べ慣れると、自然にそうなるんだよ。
話ながらだとデザートまで2時間くらい掛かるしな。
==========================
【所持金】
8637億1223万ウェン
↓
1兆0887億1223万ウェン
※2250億ウェンの配当を受け取り。
==========================
あっ、1兆あるー
『ここらが俺の器かも知れません。』
「どうしました?」
『キャパを越えた事を実感しました。
ここから次のステージに移らせて下さい。』
「…どうぞ?」
『パーティーメンバーであるお2人に1000億ずつ預けます。
何か… いいように使って下さい。』
「いいように…
と言われましてもねぇ。
それこそコリンズさんの使い方が一番的確だと思ってましたから。」
『いや、所詮私は貧しい生まれなので…
大金を扱うだけの器がありません。』
そう。
1兆という数字を見て悟った。
俺はせいぜい成金止まりの男だ。
それ以上のスケールが無い。
眼下で演説している帝国官僚の方がマクロな数字を扱いなれている分
的確な使い道を思いつくだろう。
…悔しいが、貧民には貧民の限界がある。
「あのねえ、コリンズさん。
数千億とか兆とかって、それこそ国家予算ですよ?
イメージ出来なくて当然なんです。
そこは引け目に感じる場面ではない。」
『いや…
私は無学なので、見当もつかないんです。』
「いやいやいや!
肩を落とす場面ではないから!
そんな金額、帝国の皇帝とか、首長国の首長陛下が考える金額ですからね?
コリンズさんに落ち度はないから!
ナーバスになっちゃ駄目ですよ。」
そんな風に俺達がワチャワチャ騒いでいると、またウェイトレスが寄ってくる。
《チップが足りなかったのかな?》
と思って財布に手を伸ばそうとするが、どうやら違うらしい。
隣のブースにドルト・エヴァーソン会長が居られて、俺達を呼んでいるそうなのだ。
1兆云々でキャーキャー騒いでいる声が届いてしまったのだろうか?
政財界の重鎮の呼び出しを断る度胸もないので、俺達3人は神妙な表情を作って隣に向かう。
==========================
「いやあ、お呼び立てしてしまい申し訳ありません。」
俺達は《いえいえいえ、滅相も御座いません》を連発しながらペコペコしておく。
同卓には重鎮っぽいルックスの老人が複数名座っており、こちらを見物している。
壮年の男は1人だけ、後は全員白髪の老人だ。
テーブルの奥にはエヴァーソン会長の奥様を中心に老婦人が固まっている。
恐らく上級国民が夫婦連れで会合をしていたのだろう。
「こちら、私の友人のリン・コリンズさん。
皆様、どうかお引き立てして下さい。」
『ご紹介に与りましたコリンズで御座います。
若輩者故、不手際も多いかと思いますが
何卒宜しくお願い致します。』
何がなんだかよくわからんが、相手が偉い人の集団っぽいのでペコペコしておく。
仕方ないよね、無難が一番だもんね。
余計な口は叩かないつもりだったが、質問責めに合う。
そりゃあそうか。
この顔の傷に車椅子。
ビジュアル面の時点で興味惹いちゃうよね。
『いえいえ、歴戦の勇者などと滅相も御座いません。
見ての通りの軟弱者です。』
謙遜がそのまま受け取って貰えない。
そりゃあね。
今の俺ね。
凄い顔してるもん。
額、頬、首元に巨大な傷痕がある。
鏡を見る時、いつもビビるもん。
いつぞやにダグラスから指摘された事だが、俺は傷痕だけなら歴戦の勇者だ。
老人たちは「ハハハ」と無難に流してくれていたのだが、1人だけテーブルに居た壮年の男が好奇心の強そうな表情で近づいてくる。
見ると結構酒が入ってるのか、目元が少し赤い。
ガタイはかなり良い、将校のボンボンか何かであろうか?
「ふふふーー、誤魔化しても解っちゃうよー。
君、かなり修羅場を潜ってるでしょー。
オジサン、こう見えて人を見る目には自信あるからね。
あー、この身体つきは…
君は剣術スキルを中心に戦うインファイター。
それも市街戦や屋内戦を専門としている筈だ!」
オマエ、全然人を見る目ないじゃねーか。
あー、居るよなこういうボンボン。
全然大したことない癖に周囲がお世辞ばっかり言うから、自分が賢いと錯覚しちゃうんだ。
そう。
まるで、小学校の時の野崎昇平君のようにね。
野崎くーん、君が忘れても俺は君が働いた無礼の数々を死んでも忘れないからね?
今思えばおかしいよなあ?
議員の息子ってだけで本人まで議員みたいな扱い受けてたもんなー。
いやあ、親ガチャ当てた奴って気楽な人生歩めるんだろうなあ。
…俺、君のこと絶対に許さないから。
「ははははw
当てちゃったかい?
こう見えてオジサンはねー。
ひょっとして鑑定スキル持っちゃってるかも知れないww
あっはっはっはwww」
エヴァーソン会長が背後から窘めているが壮年の男は軽口をやめない。
あー、野崎がオッサンになったらこんな感じになるんだろうな。
馴れ馴れしい笑い方とかそっくりだわ。
俺達は適当に挨拶してVIP区画を出た。
「コリンズさん。
ああいう絡まれ方も仕事のうちだからね。」
『ああ、いえいえ。
さっきは上手く躱してくれて助かりました。
ああいう馴れ馴れしいタイプが苦手なんです。
何かして貰って当然って態度に腹が立つと言うか…
いや、自分でも修養が足りない事は重々理解しているのですが。』
「さっきのは彼が悪いよ。
恐らくどこかの貴族なんだろうけど。
初対面のコリンズさんにあんな失礼な口を利くなんて。
ここは彼の所領ではなく、自由都市なんだから
そういうケジメはちゃんとして貰わなくちゃ。」
俺達の馬車がロータリーを回って来る。
御者ともすっかり仲良くなっているので、待たせた詫びを述べながらお菓子をプレゼントした。
「いやいや!
旦那方! こんな高価なものは頂けませんよ!!」
『いつもの感謝の印です。
いつも我儘を聞き入れて下さって感謝しているのです。
どうか御家族の皆さんで召し上がって下さい。
後、これは我々3人からの気持ちです。
皆で旨いものでも食べに行って下さい。』
==========================
【所持金】
1兆0887億1223万ウェン
↓
1兆0887億1213万ウェン
↓
1兆0887億1203万ウェン
※チップ
※チップ
==========================
そんな遣り取りをしていると、背後から騒ぎ声が聞こえる。
おいおい、ロビーで大声を出すなんて非常識だろう。
と思って振り返ると、さっきの野崎(大)である。
何やら血相を変えてロータリーに踏み込んで来ようとしている。
「お待ちください!」
おいおいおい。
もう後続車来てるんだぞ。
また怒られるじゃないか。
「あ、あの!
呼び止める御無礼をお許し下さい。」
俺達は後続の馬車に何度も頭を下げて自車を進めさせた。
警備員やドアマンが野崎(大)を羽交い絞めにする。
「先程は大変申し訳御座いませんでした!、
ま、まさか!
我が国の国債を全額購入して下さった方だとは露知らず!!!」
後続の御者が《危ないから流れを止めないでくれ》とこちらを睨みつけて来る。
俺達は必死で後続車に頭を下げて御者に詫び続けた。
「私は! 私は!!!
チェルネンコと申します!!!
帝国人一同、この御恩は忘れません!!
どうか、どうか改めてご挨拶をさせて下さい!!
私は!! 皇帝アレクセイと申します!!!」
何を言ってるのかまでは聞こえなかったのだが、野崎(大)はドアマンを引き摺りながら叫び続けていた。
ああ、思い出した。
野崎(小)の奴もサッカーで負ける度に、ああやって見苦しく再試合を要求してきたわ。
どこにでもいるよな、ああいう奴。
その後、後続車の持ち主に呼び止められて滅茶苦茶怒られた。
運の悪い事に相手は大手建設会社の会長であり、キーンからすれば絶対に睨まれてはならない相手だったのだ。
俺達は涙目で平身低頭し続けて、何とか許して貰えた。
…野崎(大小)よぉ キサマら絶対に、許さんからな!!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【名前】
リン・コリンズ
【職業】
エナジードリンク製造業
駐自由都市同盟 連邦大使 (辞任申請中)
連邦政府財政顧問
【称号】
ファウンダーズ・クラウン・エグゼクティブ・プラチナム・ダイアモンド・アンバサダー信徒
【ステータス】
《LV》 26
《HP》 (2/4)
《MP》 (4/4)
《腕力》 1
《速度》 2
《器用》 2
《魔力》 2
《知性》 3
《精神》 6
《幸運》 1
《経験》 3億1616万9309ポイント
次のレベルまで残り9677万9715ポイント
【スキル】
「複利」
※日利26%
下9桁切上
【所持金】
所持金1兆0887億1203万ウェン
※バベル銀行の10億ウェン預入証書保有
※国際産業道路98号線交通債100億ウェン分を保有
※第11次魔族領戦時国債200億ウェン分を保有
※第4次帝国インフラ債550億ウェン分を保有
※帝国総合プランテーション債230億ウェン分を保有
【試供品在庫】
エリクサー 1260ℓ
ああ、見せた事ありませんでしたか?
雷魔法全般の応用技です。」
『おお!
何か格好いい!!』
あまりの主人公スキルに感動した俺がカインにしつこく質問した所、彼の能力は以下の通り。
==========================
【名前】
カイン・R・グランツ
【職業】
元金融業経営
元冒険者(ランクA)
【ステータス】 (隠蔽魔法使用済)
《LV》 ??
《HP》 (????/????)
《MP》 (?????/?????)
《腕力》 ???
《速度》 ???
《器用》 ???
《魔力》 ????
《知性》 ???
《精神》 ???
《幸運》 ???
《経験》 ???億????万
次のレベルまで残り????万ポイント
【スキル】
雷光 (スキルランクB+)
※全雷魔法の習得が可能
※雷魔法と剣術・体術を複合して発動可能
※広域雷魔法を無詠唱で発動可能
?? (秘技である為、存在を知る者は世界に数名のみ。)
※戦闘速度をn倍に加速 1秒に11nポイントのMPを消費する。
==========================
『うおおおお!!!
カインさん滅茶苦茶格好いいじゃないですか!
全てのティーンエイジャーの憧れですよ!』
「ははは、ありがとう。
決して使い勝手が悪い訳ではないのだけどね。」
そう。
市井の冒険者が持つスキルであれば、確かに悪くない。
だが、カインは王都の一等地に邸宅を構える金融会社の跡取り息子である。
そこらの労働者階級が持てば資産となるようなこのスキルは、経営者階級にとって負債以外の何物でもなかった。
戦闘スキルというのはグランツ家のような経営者階級が、有用な労働者に日銭を与えて使わせるものであって、まかり間違っても自分で使う物ではない。
少なくとも彼の父親はそう捉えた。
もしもカインの能力が知られれば、必ず軍部に徴発される。
それも最激戦区に特殊部隊員として投入される事は火を見るよりも明らかであった。
金融会社の創業社長である、世知に長けていない訳がない。
父は息子にスキルの存在をひた隠しにする事を命じた。
ティーンエイジャーの頃のカインは親に反発し、王国を出奔。
冒険者として数々の戦闘に参戦し、そこで彼だけが使いこなせる蒼い雷光を駆使した。
結果、父の正しさだけが証明された。
殺した相手の仲間や家族が仇がカインであることを理解し、壮絶な報復戦を仕掛けて来たからである。
蒼く鮮やかな雷跡はこの世でただ一人が生み出せる奇跡だったからである。
カインが元の生活を取り戻すのは、遺族の息子と死闘の末に和解しその部下ごと護衛役として雇用するようになってからである。
「へえ、人に歴史ありだねぇ。
グランツ君にそんな過去があったなんて。
確かに、戦闘系のスキルって恨みを買い易いよね。
特にレアであればあるほど、身元が簡単に割れちゃうからね。」
「ちなみにキーン君は何か秘技を持ってるの?」
「私は不動産屋だから。
次にこの街に亡命して来る人間を知ってるくらいかな?
それに連動して、他国の人事予測が得意かな?
得意というより、関係者が普通に教えてくれてるだけなんですけど。」
『地味に強烈なスキルですね。』
「悪用はしてませんよー?
守秘義務は守ってますからね。
当局から情報提供要請が無い限り。」
『情報提供とか、やっぱり求められるんですか?』
「そりゃあ、私みたいに全世界をまたに掛けて商売している人間は…
情報局や政治局から見れば、ねえ?」
『確かに、一番ソースに近い情報源ですものね。
あ、俺の能力は複利です。』
「「言っちゃ駄目!!!」」
『…す、すみません。』
「あのねえコリンズさん。
何の為に私達が貴方に尋ねて来なかったと思ってるの?
貴方ほどのレアスキルの持ち主は最後の最後まで手札を伏せてなきゃ駄目だよ!」
『は、はい。』
「あのね?
真面目に聞いて。
私やグランツ君が誰かに捕まって拷問される可能性もある。
その場合、君から聞いた情報は高い確率で相手に渡ってしまう。
これって知られたら困るんだよね?
いや、知られるべきではないと判断しているんだよね?」
『…相当匙加減を調整しなければ
世界が滅びちゃうかな、と。
なるべく、そうならない様にしたいとは思ってるのですが。』
「私は…
これはエゴだけど。
例えこんな世界が滅びたとしても、友達だけには生き残って欲しい。
コリンズさん、私の為にももっと慎重になって下さい!」
『も、申し訳ないです。
俺が軽率でした。』
「いや、私も感情的になり過ぎました。
もう貴方が覚悟を決めている事は知っている筈なのにね。」
『覚悟も何も…
カネの使い方に、もっと社会性を持たせようと思い始めただけです。』
「だよね。
ここ数日の貴方は吹っ切れている。
世界、滅ぼすの?」
『いやあ、なるべく皆さんに悪影響が無いように持って行きたいのですが…』
「世界滅びたら、悪影響出るんじゃないですか?
滅亡に立ち会った事が無いので断言は出来ませんが。」
『俺。
前の世界に居る時に、《世界が滅んで欲しい》って毎日思ってました。』
「どうして!?」
『あ、いや。
恥ずかしい話なんですが。
俺は親もおらず、生活は貧しく、容姿もこんなのですから女性に全く相手にされず。
こんな性格ですから友人も居なかったんです。
もしも世界が滅びてくれたら…
自分一人が惨めな状態からは抜け出せるかな、と。』
「うーん。
褒められた発想ではないと思います。
ただ、経済的に恵まれた環境に生まれた私には無条件で批判する資格はないのかもですね。」
『カネ持ちになれば、少しは周囲が認めてくれるかと、ずっと思ってたんです。
今考えれば不思議でも何でもないですね。
俺がこんな能力を身に着けてしまったのは。』
「引け目は感じる必要はないですよ。
結局はカネなんて使い道です。
貴方は意義ある使い方をしておられましたよ。
キーン君、覚えてる?
炸裂弾の話。」
「忘れる筈がないです。」
「コリンズさん。
例え貴方が忘れていても、私は鮮明に覚えています。
《炸裂弾を売って欲しい》と私が頼んだ時…
自分が何と言ったか覚えてますか?」
『あ、いや…
大分前の話ですし。』
「聞き終わる前に《お役に立てて下さい》って押し付けて来たんだよ?
キーン君の時はどうだった?
覚えてます?」
「忘れられる訳がないです。
《皆さん、記念に炸裂弾を投げてみませんか?
結構、気分がいいですよ!》
そう言ったんですよ。
コリンズさんは。」
『ああ、グリーブさんとジャイアントタートルを討伐した時の…
何か、生意気なことばっかり言っちゃってますね。』
「あの時貴方は炸裂弾を有意義に使ってくれた。
皆の為に使ってくれた。
今はそれがカネになっただけなんです。
だから、例え貴方が世界を滅ぼすとしても
きっと天下万民の為に滅ぼしてくれる筈です。
私はコリンズさんを信じてますから!」
…いや。
年長者のあなた達にそう言って頂けるのは光栄なんですけど。
世界が滅亡したら、普通みんなは困るんじゃないか?
俺みたいな貧乏人なら兎も角さぁ。
…貧乏人なら?
==========================
日課のリハビリ運動を終えたので、3人で馬車に乗って総合債券市場に向かう。
当初ハニートラップを警戒して、行くべきではないとも考えていたのだが。
結局、当局からマークされている以上、あらゆる角度から探りはあるので、どこに居ても同じであるとの結論に至った。
ホールで案内を乞うと、VIPフロアに通される。
俺が驚いていると「購入実績の関係で…」と補足される。
確かにそうか。
前回は、ノリで無造作に買ったもんな。
VIPフロアは、前に通されたフロアの更に上階。
一般取引者(世界的には当然富豪の集まり)を見下ろしながら債権を売買する事が出来る。
陳腐な比喩だが、世界の支配者にでもなった錯覚に陥る。
俺達3人が席に着くと早速ウェイトレスが大量に近寄って来る。
カインの予想通り、ローティーンの小柄な少女ばかりだ。
背後に1人だけ30代くらいのキャリアウーマン風の女が居る。
断じてこんな表現をするべきでは無いのだが、ヒルダ系統である。
つまり指揮官兼監視。
少女軍団は天真爛漫風の笑顔で俺達に挨拶しながらも、背後のヒルダ系にかなり怯えている。
まあな、俺がこの子だとしても、怖い上司に監視されながらの諜報任務なんて絶対に嫌だ。
キーンが表情を変えずに俺にアイコンタクトを送ってくる。
《追い払っていいですか?》
俺は同意だけして、2人に対処を任せる。
「ごめんねー。
ちょっとプライベートな話題もあるんだ。
手掴み出来るオードブルだけ持ってきてくれるかな?」
なるほど、流石に遊び慣れてるだけあって人払いもスマートだ。
俺もいつかこんな洗練された態度が取れるのだろうか?
ヒルダ系が少し困惑しながら強引に俺へ話題を振ってこようとしたので、体調不良を理由に謝絶する。
==========================
【所持金】
9417億1723万ウェン
↓
9417億1223万ウェン
※ウェイトレスにチップ名目で500万ウェンを贈呈
==========================
『素晴らしい接客に満足しております。
流石は、世界に冠たる自由都市の総合債券市場ですね。
是非とも、今後共利用させて下さい。
本日は体調が芳しくない上に、私的な話題が多いので同席は控えて頂きたいのですが
これからも宜しくお願いしますね、』
ここまで言われたら下がらざるを得ないだろう。
一応相手の顔も立てたしな。
ヒルダ系は一礼してハニトラ軍団と共にフロアから去る。
どう?
スマートな断り文句だろう?
そりゃあそうだよな、仕込んだのはヒルダ(真)なのだから。
==========================
今日はカネをどこまで減らせるのかの実験も兼ねているので機械的に買ってみる。
と言っても、みんなが取り合う様な債権に買い注文を入れるのは控えておく。
変な恨みを買いたくないからね。
先日、首長国と帝国との間で散発的な戦闘が発生したらしく、帝国の国債は大量に売れ残っている。
自由都市はあくまで首長国とのみ同盟を結んでおり、最近友好的とは言え帝国は戦略的競争相手に過ぎない。
万が一、首相国と帝国が戦争状態に突入してしまったら。
帝国関係の債券は全て取引中止になってしまうのだ。
「あくまで偶発的な戦闘です!
既に首長国当局とは原因究明委員会を設置済みです!!
我が国の協調路線に一切の変更はありません!!」
帝国官僚は必死に訴えるが、マーケットは冷ややかである。
役人が必死に守るのは自分の立場のみであって投資家の資産には興味が無いと、市場が熟知しているからである。
==========================
【所持金】
9417億1223万ウェン
↓
8867億1223万ウェン
↓
8637億1223万ウェン
※第4次帝国インフラ債を550億ウェンで購入
※帝国総合プランテーション債を230億ウェンで購入
==========================
不人気債券のみを購入する予定だったのだが、帝国関連の債券が市場に拒否されてしまった為、他の債券に人気が集中している。
消去法的に帝国債券しか買えなかった。
金額もそんなに使えなかったが…
まあ、こればかりは巡り合わせだからな。
こちらを見上げて帝国官僚が大袈裟に何度も礼をするが…
どうせアイツは庁舎に帰れば「俺の手腕で債券を売りさばいてやった!」と嬉しそうに吹聴するのだろう。
あまりにしつこいので、仕方なく手を振ってやる。
『数千億ウェンを買ってみようと思ってたんですけど…』
「市場に異変発生ですなw」
『じゃあ。
1日辺りの適正購入総額をキーンさんが決めて下さいよ。』
「うーん。
100億かなあ。
いや、貴方は不満そうな顔をするけど
1日100億って洒落にならない金額だからね?」
『ええ、まあ。』
参ったな…
100億なんて、今の俺には誤差だぞ?
あれ?
昨日ヒルダに幾ら渡したっけ?
100万くらい?
よく、覚えてないや。
《2250億ウェンの配当が支払われました。》
ん?
もうこんな時間か?
最近、ゆっくりメシを喰う習慣がついてしまったからな。
いや、コース料理とか食べ慣れると、自然にそうなるんだよ。
話ながらだとデザートまで2時間くらい掛かるしな。
==========================
【所持金】
8637億1223万ウェン
↓
1兆0887億1223万ウェン
※2250億ウェンの配当を受け取り。
==========================
あっ、1兆あるー
『ここらが俺の器かも知れません。』
「どうしました?」
『キャパを越えた事を実感しました。
ここから次のステージに移らせて下さい。』
「…どうぞ?」
『パーティーメンバーであるお2人に1000億ずつ預けます。
何か… いいように使って下さい。』
「いいように…
と言われましてもねぇ。
それこそコリンズさんの使い方が一番的確だと思ってましたから。」
『いや、所詮私は貧しい生まれなので…
大金を扱うだけの器がありません。』
そう。
1兆という数字を見て悟った。
俺はせいぜい成金止まりの男だ。
それ以上のスケールが無い。
眼下で演説している帝国官僚の方がマクロな数字を扱いなれている分
的確な使い道を思いつくだろう。
…悔しいが、貧民には貧民の限界がある。
「あのねえ、コリンズさん。
数千億とか兆とかって、それこそ国家予算ですよ?
イメージ出来なくて当然なんです。
そこは引け目に感じる場面ではない。」
『いや…
私は無学なので、見当もつかないんです。』
「いやいやいや!
肩を落とす場面ではないから!
そんな金額、帝国の皇帝とか、首長国の首長陛下が考える金額ですからね?
コリンズさんに落ち度はないから!
ナーバスになっちゃ駄目ですよ。」
そんな風に俺達がワチャワチャ騒いでいると、またウェイトレスが寄ってくる。
《チップが足りなかったのかな?》
と思って財布に手を伸ばそうとするが、どうやら違うらしい。
隣のブースにドルト・エヴァーソン会長が居られて、俺達を呼んでいるそうなのだ。
1兆云々でキャーキャー騒いでいる声が届いてしまったのだろうか?
政財界の重鎮の呼び出しを断る度胸もないので、俺達3人は神妙な表情を作って隣に向かう。
==========================
「いやあ、お呼び立てしてしまい申し訳ありません。」
俺達は《いえいえいえ、滅相も御座いません》を連発しながらペコペコしておく。
同卓には重鎮っぽいルックスの老人が複数名座っており、こちらを見物している。
壮年の男は1人だけ、後は全員白髪の老人だ。
テーブルの奥にはエヴァーソン会長の奥様を中心に老婦人が固まっている。
恐らく上級国民が夫婦連れで会合をしていたのだろう。
「こちら、私の友人のリン・コリンズさん。
皆様、どうかお引き立てして下さい。」
『ご紹介に与りましたコリンズで御座います。
若輩者故、不手際も多いかと思いますが
何卒宜しくお願い致します。』
何がなんだかよくわからんが、相手が偉い人の集団っぽいのでペコペコしておく。
仕方ないよね、無難が一番だもんね。
余計な口は叩かないつもりだったが、質問責めに合う。
そりゃあそうか。
この顔の傷に車椅子。
ビジュアル面の時点で興味惹いちゃうよね。
『いえいえ、歴戦の勇者などと滅相も御座いません。
見ての通りの軟弱者です。』
謙遜がそのまま受け取って貰えない。
そりゃあね。
今の俺ね。
凄い顔してるもん。
額、頬、首元に巨大な傷痕がある。
鏡を見る時、いつもビビるもん。
いつぞやにダグラスから指摘された事だが、俺は傷痕だけなら歴戦の勇者だ。
老人たちは「ハハハ」と無難に流してくれていたのだが、1人だけテーブルに居た壮年の男が好奇心の強そうな表情で近づいてくる。
見ると結構酒が入ってるのか、目元が少し赤い。
ガタイはかなり良い、将校のボンボンか何かであろうか?
「ふふふーー、誤魔化しても解っちゃうよー。
君、かなり修羅場を潜ってるでしょー。
オジサン、こう見えて人を見る目には自信あるからね。
あー、この身体つきは…
君は剣術スキルを中心に戦うインファイター。
それも市街戦や屋内戦を専門としている筈だ!」
オマエ、全然人を見る目ないじゃねーか。
あー、居るよなこういうボンボン。
全然大したことない癖に周囲がお世辞ばっかり言うから、自分が賢いと錯覚しちゃうんだ。
そう。
まるで、小学校の時の野崎昇平君のようにね。
野崎くーん、君が忘れても俺は君が働いた無礼の数々を死んでも忘れないからね?
今思えばおかしいよなあ?
議員の息子ってだけで本人まで議員みたいな扱い受けてたもんなー。
いやあ、親ガチャ当てた奴って気楽な人生歩めるんだろうなあ。
…俺、君のこと絶対に許さないから。
「ははははw
当てちゃったかい?
こう見えてオジサンはねー。
ひょっとして鑑定スキル持っちゃってるかも知れないww
あっはっはっはwww」
エヴァーソン会長が背後から窘めているが壮年の男は軽口をやめない。
あー、野崎がオッサンになったらこんな感じになるんだろうな。
馴れ馴れしい笑い方とかそっくりだわ。
俺達は適当に挨拶してVIP区画を出た。
「コリンズさん。
ああいう絡まれ方も仕事のうちだからね。」
『ああ、いえいえ。
さっきは上手く躱してくれて助かりました。
ああいう馴れ馴れしいタイプが苦手なんです。
何かして貰って当然って態度に腹が立つと言うか…
いや、自分でも修養が足りない事は重々理解しているのですが。』
「さっきのは彼が悪いよ。
恐らくどこかの貴族なんだろうけど。
初対面のコリンズさんにあんな失礼な口を利くなんて。
ここは彼の所領ではなく、自由都市なんだから
そういうケジメはちゃんとして貰わなくちゃ。」
俺達の馬車がロータリーを回って来る。
御者ともすっかり仲良くなっているので、待たせた詫びを述べながらお菓子をプレゼントした。
「いやいや!
旦那方! こんな高価なものは頂けませんよ!!」
『いつもの感謝の印です。
いつも我儘を聞き入れて下さって感謝しているのです。
どうか御家族の皆さんで召し上がって下さい。
後、これは我々3人からの気持ちです。
皆で旨いものでも食べに行って下さい。』
==========================
【所持金】
1兆0887億1223万ウェン
↓
1兆0887億1213万ウェン
↓
1兆0887億1203万ウェン
※チップ
※チップ
==========================
そんな遣り取りをしていると、背後から騒ぎ声が聞こえる。
おいおい、ロビーで大声を出すなんて非常識だろう。
と思って振り返ると、さっきの野崎(大)である。
何やら血相を変えてロータリーに踏み込んで来ようとしている。
「お待ちください!」
おいおいおい。
もう後続車来てるんだぞ。
また怒られるじゃないか。
「あ、あの!
呼び止める御無礼をお許し下さい。」
俺達は後続の馬車に何度も頭を下げて自車を進めさせた。
警備員やドアマンが野崎(大)を羽交い絞めにする。
「先程は大変申し訳御座いませんでした!、
ま、まさか!
我が国の国債を全額購入して下さった方だとは露知らず!!!」
後続の御者が《危ないから流れを止めないでくれ》とこちらを睨みつけて来る。
俺達は必死で後続車に頭を下げて御者に詫び続けた。
「私は! 私は!!!
チェルネンコと申します!!!
帝国人一同、この御恩は忘れません!!
どうか、どうか改めてご挨拶をさせて下さい!!
私は!! 皇帝アレクセイと申します!!!」
何を言ってるのかまでは聞こえなかったのだが、野崎(大)はドアマンを引き摺りながら叫び続けていた。
ああ、思い出した。
野崎(小)の奴もサッカーで負ける度に、ああやって見苦しく再試合を要求してきたわ。
どこにでもいるよな、ああいう奴。
その後、後続車の持ち主に呼び止められて滅茶苦茶怒られた。
運の悪い事に相手は大手建設会社の会長であり、キーンからすれば絶対に睨まれてはならない相手だったのだ。
俺達は涙目で平身低頭し続けて、何とか許して貰えた。
…野崎(大小)よぉ キサマら絶対に、許さんからな!!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【名前】
リン・コリンズ
【職業】
エナジードリンク製造業
駐自由都市同盟 連邦大使 (辞任申請中)
連邦政府財政顧問
【称号】
ファウンダーズ・クラウン・エグゼクティブ・プラチナム・ダイアモンド・アンバサダー信徒
【ステータス】
《LV》 26
《HP》 (2/4)
《MP》 (4/4)
《腕力》 1
《速度》 2
《器用》 2
《魔力》 2
《知性》 3
《精神》 6
《幸運》 1
《経験》 3億1616万9309ポイント
次のレベルまで残り9677万9715ポイント
【スキル】
「複利」
※日利26%
下9桁切上
【所持金】
所持金1兆0887億1203万ウェン
※バベル銀行の10億ウェン預入証書保有
※国際産業道路98号線交通債100億ウェン分を保有
※第11次魔族領戦時国債200億ウェン分を保有
※第4次帝国インフラ債550億ウェン分を保有
※帝国総合プランテーション債230億ウェン分を保有
【試供品在庫】
エリクサー 1260ℓ
211
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【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
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楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
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