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【転移88日目】 所持金1909兆6512億1951万ウェン 「あの男なら俺の代わりに泣いてくれるだろう。」
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結局、連邦側の遺骸を埋葬したポールは対岸の手伝いに向かう。
誰も制止しない。
「別に… ワシに彼への指揮権はないしな。」
止めようと思えば止めれただろう。
だが、ミュラーは腰に手を当ててポールの作業をただ眺めている。
日が昇った頃、ドナルドも対岸に泳ぎ着いた。
群衆に向かって何事かを指示している様子が見えた、ということは水瓶でも探させているのだろうか?
連邦に支給していたエナドリに余裕があったので、在庫を医療支援として対岸に流す。
上手く小舟が届かなかったので、ミュラーの旗本が数名河に飛び込んで押して渡らせた。
「午後にはエナドリが到着します。
馬車2台体制で輸送中とのことなので、纏まった量を連邦に提供可能です。」
グリーブが淡々と報告を続ける。
この謹直な男にしては珍しく、ずっと横目でポールを追い続けながら喋っている。
そりゃあそうだ、真逆の存在が気にならない訳がない。
ミュラーも兵士達も無言でポールの背中を眺め続けている。
皆、必死で表情を押し殺している。
誰かの為に涙を流せる男の背中にはそれだけの価値がある。
彼我全員がこの想いだけを共有していた。
==========================
昼。
マキンバ子爵からのメッセンジャーが到着する。
報告内容はシンプル。
《王国軍部の者たちが急激な勢いで食糧の横流しを開始している。》
との事である。
わざわざ定期連絡の間に、この報を挟んだということは、緊急性のある規模なのだろう。
以前から王国では兵士給与の遅配が慢性化しており、最近は特に酷いらしい。
脱柵が止まらない、逃亡兵を捕縛する為に編成された探索チームもそのまま逃亡する。
物資の横領も同様である。
備蓄庫の警備を将校が直接行う命令が最近下ったが、その将校が物資を盗んで合衆国や自由都市、そして仇敵である筈の公国や帝国に投げ売りを行っている。
恥ずべき事態だが、皮肉にも横領品売買を切っ掛けに各国軍部同士のホットラインが完成してしまったそうだ。
権力者たちが何十年も試行錯誤して成し得なかった偉業を、犯罪者達の経済合理性が成し遂げてしまった。
「エーコ・ミヤハラ。
ノリヒロ・マエダ。
以上二名が殉職したとの情報が入って来ております。
詳細は分からないのですが、王都内で噂になっているようです。」
俺は、『そうか。』とだけ言ってメッセンジャーを労った。
脱力感。
ミヤハラ… 宮原か。
あ、何度か話したことあるわ。
選択科目で化学を選んで…
そうだそうだ。
実験の班が一緒なんだ。
いや、結構話してるわ。
好きな漫画の話題とかになったことあるわ。
転移した日も挨拶位はしたのだろうか。
駄目だ、そこは思い出せない。
前田君はよく覚えてる。
帰る方向一緒だったしな。
あれ?
アイツ、お気に入りの喫茶店を教えてくれるんじゃなかったか?
あ、そうだ。
マスターの娘さんが地元の女子大で…
告る告らないって、いつも愚痴ってたんだ。
あれ?
俺、何でアイツらのこと忘れてたんだろう。
ああ、そうか。
俺、友達が死んじゃったんだ。
いや違うな…
頑張れば助けられるかも知れないのに、何もしてないんだ。
こういうの見殺しっていうのか?
…泣いていいんだろうか。
いや、それは道義的に許されないんじゃないかな?
俺の軍が無辜の民間人を大量に殺戮した直後だ。
犠牲者は誰かにとっての家族であり友人だったのだろう。
それを差し置いて俺が自分の友人の訃報に触れた途端に涙を流すのは…
国際問題に発展するのではなかろうか。
念の為、ミュラーやギュンターにも確認を取る。
「いや、リン君の友達が死んでしまったのは俺も残念だし…
君には哀しむ権利はあると思う。
でも、叔父貴… どう?」
「まあ見ての通りの情勢だ。
夕方にはテオドール殿下が再訪される。
スマンが悼むなら目立たない場所で悼んでくれ。」
『いえ、騒動が落ち着いてから一括して哀しむ事にします。』
そうだ。
俺だって血の通った人間だ。
政治情勢が落ち着き、そうだな首長国と連邦の間に正式な領土協定が締結され次第、亡くなった級友達を正式に悼もう。
あ、そうだ。
あの神殿って俺も使っていいのかな?
いや駄目だな。
流石にそれは公私混同だろう。
《ンディッド・スペシャルアンバサダー信徒》当が支払われました。》
カネ…
思ってたより役に立たないな。
いや、俺の使い方が悪い所為なんだろうけどさ。
「すまない、リン君。
下流の御遺体も埋葬したいんだ。」
==========================
【所持金】 (リン・コリンズからは視認不能状態)
1409兆6512億1951万ウェン
↓
1959兆6512億1951万ウェン
↓
1909兆6512億1951万ウェン
※550兆ウェンの配当を受け取り。
※ポール・ポールソンに50兆ウェンを譲渡。
【試供品在庫】
エナドリ 487464ℓ
↓
エナドリ 677575ℓ
↓
エナドリ 577575ℓ
※190111ℓの試供品在庫を補充
※10000ℓを支援品として連邦政府に提供
==========================
俺にはあの男の背中を見送ることしか出来ない。
目が少し腫れていたな。
心の優しいあの男の事だ、涙を堪えるのに必死なのかも知れない。
代わりに泣いてくれる人が居るという事はありがたいことだ。
彼の作業が落ち着いたら、友人の死を伝えてみよう。
きっと、あの男なら俺の代わりに泣いてくれるだろう。
今、背中を静かに震わせている様に。
==========================
首長国からの連絡事項は以下の通り。
01、独立宣言を行った29村落を含めた計51村落に対して自治権を与える。
02、首長国からの離脱を希望する者はそちらへの移住が許される
03、年貢率は四公六民まで引き下げる。
04、連邦政府と租税協定を含めた諸条約を締結したいので、その為の準備委員会を合同で起ち上げさせて欲しい。
ミュラーは「諾」と答えてから、ハウザー家への急使を飛ばした。
また、彼らの語った対帝国情勢は以下の通り。
帝国四諸侯は占領地を放棄するタイミングを計り始めている。
これは首長国の占領を既成事実化するよりも、チェルネンコ家の殲滅と帝位簒奪に注力した方がコストパフォーマンスが良いと判断したから。
(似たような報告が俺にも入って来ているので、概ね正確な情報と思われる。)
最初は俺を睨みつけながらその旨を伝えて来たテオドール殿下だが、話が終わる頃にはポールの背をずっと眺めていた。
誰も制止しない。
「別に… ワシに彼への指揮権はないしな。」
止めようと思えば止めれただろう。
だが、ミュラーは腰に手を当ててポールの作業をただ眺めている。
日が昇った頃、ドナルドも対岸に泳ぎ着いた。
群衆に向かって何事かを指示している様子が見えた、ということは水瓶でも探させているのだろうか?
連邦に支給していたエナドリに余裕があったので、在庫を医療支援として対岸に流す。
上手く小舟が届かなかったので、ミュラーの旗本が数名河に飛び込んで押して渡らせた。
「午後にはエナドリが到着します。
馬車2台体制で輸送中とのことなので、纏まった量を連邦に提供可能です。」
グリーブが淡々と報告を続ける。
この謹直な男にしては珍しく、ずっと横目でポールを追い続けながら喋っている。
そりゃあそうだ、真逆の存在が気にならない訳がない。
ミュラーも兵士達も無言でポールの背中を眺め続けている。
皆、必死で表情を押し殺している。
誰かの為に涙を流せる男の背中にはそれだけの価値がある。
彼我全員がこの想いだけを共有していた。
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昼。
マキンバ子爵からのメッセンジャーが到着する。
報告内容はシンプル。
《王国軍部の者たちが急激な勢いで食糧の横流しを開始している。》
との事である。
わざわざ定期連絡の間に、この報を挟んだということは、緊急性のある規模なのだろう。
以前から王国では兵士給与の遅配が慢性化しており、最近は特に酷いらしい。
脱柵が止まらない、逃亡兵を捕縛する為に編成された探索チームもそのまま逃亡する。
物資の横領も同様である。
備蓄庫の警備を将校が直接行う命令が最近下ったが、その将校が物資を盗んで合衆国や自由都市、そして仇敵である筈の公国や帝国に投げ売りを行っている。
恥ずべき事態だが、皮肉にも横領品売買を切っ掛けに各国軍部同士のホットラインが完成してしまったそうだ。
権力者たちが何十年も試行錯誤して成し得なかった偉業を、犯罪者達の経済合理性が成し遂げてしまった。
「エーコ・ミヤハラ。
ノリヒロ・マエダ。
以上二名が殉職したとの情報が入って来ております。
詳細は分からないのですが、王都内で噂になっているようです。」
俺は、『そうか。』とだけ言ってメッセンジャーを労った。
脱力感。
ミヤハラ… 宮原か。
あ、何度か話したことあるわ。
選択科目で化学を選んで…
そうだそうだ。
実験の班が一緒なんだ。
いや、結構話してるわ。
好きな漫画の話題とかになったことあるわ。
転移した日も挨拶位はしたのだろうか。
駄目だ、そこは思い出せない。
前田君はよく覚えてる。
帰る方向一緒だったしな。
あれ?
アイツ、お気に入りの喫茶店を教えてくれるんじゃなかったか?
あ、そうだ。
マスターの娘さんが地元の女子大で…
告る告らないって、いつも愚痴ってたんだ。
あれ?
俺、何でアイツらのこと忘れてたんだろう。
ああ、そうか。
俺、友達が死んじゃったんだ。
いや違うな…
頑張れば助けられるかも知れないのに、何もしてないんだ。
こういうの見殺しっていうのか?
…泣いていいんだろうか。
いや、それは道義的に許されないんじゃないかな?
俺の軍が無辜の民間人を大量に殺戮した直後だ。
犠牲者は誰かにとっての家族であり友人だったのだろう。
それを差し置いて俺が自分の友人の訃報に触れた途端に涙を流すのは…
国際問題に発展するのではなかろうか。
念の為、ミュラーやギュンターにも確認を取る。
「いや、リン君の友達が死んでしまったのは俺も残念だし…
君には哀しむ権利はあると思う。
でも、叔父貴… どう?」
「まあ見ての通りの情勢だ。
夕方にはテオドール殿下が再訪される。
スマンが悼むなら目立たない場所で悼んでくれ。」
『いえ、騒動が落ち着いてから一括して哀しむ事にします。』
そうだ。
俺だって血の通った人間だ。
政治情勢が落ち着き、そうだな首長国と連邦の間に正式な領土協定が締結され次第、亡くなった級友達を正式に悼もう。
あ、そうだ。
あの神殿って俺も使っていいのかな?
いや駄目だな。
流石にそれは公私混同だろう。
《ンディッド・スペシャルアンバサダー信徒》当が支払われました。》
カネ…
思ってたより役に立たないな。
いや、俺の使い方が悪い所為なんだろうけどさ。
「すまない、リン君。
下流の御遺体も埋葬したいんだ。」
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【所持金】 (リン・コリンズからは視認不能状態)
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↓
1959兆6512億1951万ウェン
↓
1909兆6512億1951万ウェン
※550兆ウェンの配当を受け取り。
※ポール・ポールソンに50兆ウェンを譲渡。
【試供品在庫】
エナドリ 487464ℓ
↓
エナドリ 677575ℓ
↓
エナドリ 577575ℓ
※190111ℓの試供品在庫を補充
※10000ℓを支援品として連邦政府に提供
==========================
俺にはあの男の背中を見送ることしか出来ない。
目が少し腫れていたな。
心の優しいあの男の事だ、涙を堪えるのに必死なのかも知れない。
代わりに泣いてくれる人が居るという事はありがたいことだ。
彼の作業が落ち着いたら、友人の死を伝えてみよう。
きっと、あの男なら俺の代わりに泣いてくれるだろう。
今、背中を静かに震わせている様に。
==========================
首長国からの連絡事項は以下の通り。
01、独立宣言を行った29村落を含めた計51村落に対して自治権を与える。
02、首長国からの離脱を希望する者はそちらへの移住が許される
03、年貢率は四公六民まで引き下げる。
04、連邦政府と租税協定を含めた諸条約を締結したいので、その為の準備委員会を合同で起ち上げさせて欲しい。
ミュラーは「諾」と答えてから、ハウザー家への急使を飛ばした。
また、彼らの語った対帝国情勢は以下の通り。
帝国四諸侯は占領地を放棄するタイミングを計り始めている。
これは首長国の占領を既成事実化するよりも、チェルネンコ家の殲滅と帝位簒奪に注力した方がコストパフォーマンスが良いと判断したから。
(似たような報告が俺にも入って来ているので、概ね正確な情報と思われる。)
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著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
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【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
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