王牙転生~鬼に転生したゲーマーは流されるままに剣を振るう~

中級中破微小提督

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第一部 チュートリアル

第六章 聖王都攻略戦① 開戦

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 ようやく勝利を得た俺達を待っていたのは次の戦場。聖なる感じの王城だった。城下町を段々に重ねた作りで登頂に低い城のようなものがある。城と言うよりも神殿か。その段々が城壁の代わりだな。高い塔は見当たらない。見張り塔くらいはあるが全体的に平坦だな。ファンタジー世界で高い建物を建てた所で人間に有利な状況は出来ないのだろう。
 こちらも城攻めとあって今迄のような小競り合いではない総力戦の様相を呈している。見晴らしのいい盆地に鎮座する王城を正面からぶち抜く形だ。
 方角がわからないからゲーム的に上を北として北側は急斜面急勾配。川を受け入れる形になっている。そこから川は東に。水の入った堀は北東のみだな。西と南は堀などあっても水は無く、だだっ広いなんの遮蔽物もない平地だ。起伏はあるものの射線は切れるが魔法を防げるかは怪しい所だ。大地はあるから大地の支配は使い放題だろう。だがあの城壁にレンガの道はそれを受け付けない施されたヤツだろうな。あれを敷き詰められた城内も大地の支配を抵抗してくるだろう。となると武器の現地調達は難しいか。
 魔物側陣地に建てられた魔素ジェネレーターから見える範囲ではこの程度か。人間側はもう既に城壁前に布陣して攻城戦の準備が出来ている。千か二千か。数えるのが馬鹿らしくなるほどの加護持ちが待機している。銃火器や砲は見当たらない。あれは物理だからな。俺達魔物よりも加護持ちに誤爆した方が問題なのだろう。
「気は済んだか?」
 下から声が聞こえてくる。シノだ。相変わらずこちらと合流して行動しているが、その装いが少し変わっている。今までは白骨髑髏だったのだが、そこに魔素の肉を這わせて黒い骸骨になっている。この前の一撃がかなり効いたのだろう。その対抗策だろうな。だがその出で立ちがかなり異様でオーガの中にいても目立つほどにボス級のオーラを放っている。魔物は本人も含め気にもしていないが、人間視点で見ているとどうだろうな。明らかにユニークモンスター、名前付きだ。
 狙われても良いようにHPへの配分を多めにしたのだろうが、その行動自体が特異でそのため外見に現れる。それでヘイトが上がっては本末転倒だな。
 俺は返事を返しながら下へと降りる。周りを見ると完全に臨戦態勢だな。いつ戦闘が始まってもおかしくない。
 ここでの作戦はこうだ。シノの話を要約すると、
①髑髏の攻撃魔法で王城に貼られたバリアを剥がす。
②髑髏の攻撃魔法で王城を焼き尽くす。
③王城を制圧する。
 これだけだ。作戦の要は髑髏部隊。俺達の仕事は髑髏への妨害を阻止してバリアが剥がれたら進軍だな。人間側はそれこそ死に物狂いで髑髏を潰しに来るだろう。
 ゲームだとここで裏手から精鋭部隊ってのが鉄板だが、どうだろうな。これ程の大局でも魔物側はモブユニットばかりでボス相当のユニークが見当たらない。指揮が曖昧で作戦もシンプルな所を見るとそういうものもいない感じか。
 そうこうしているうちに髑髏部隊の詠唱が始まる。
 さて俺達は最前線。防衛戦などオーガのやる仕事じゃない。攻撃こそが最大の防御。殴られるのを待つつもりはない。敵を全員地に伏せれば全ての問題は解決だな。周りを見ても防御を固めようなんてヤツは居ない。どいつもこいつもどうやってあの敵陣をぶち抜くか。それだけを疎通させている。勿論その第一陣は俺達だ。

 髑髏部隊の詠唱に合わせて敵が対処をする前に動く。それが俺達の出した答えだった。
 敵が隊列を組むよりも早くそれを突き崩す。まずは大地を盛大に掘り返す。その土埃を煙幕に敵陣に肉薄していく。前衛は俺達が、魔法使いなどの対処はシノに。それだけを決めて突撃していく。だがそれは結構な手前で現れた。
 なんだ? 大地に何か埋まっている。
 俺が警告を発して大地の支配で干渉すると大爆発と共に下から木の杭が飛び出してきた。
 地雷? いやそれはわかる。しかしこの戦いは人間側が攻めこんで来る防衛戦ではなかったのか?
 流石に平原にある全ての地雷を干渉するわけにはいかない。俺達は収束して交代で大地を耕していく。余裕があればその両脇も干渉して起爆させていく。少しでも幅を持たせるためだ。
 程なく城壁前に陣取っている人間どもに食らいつく。ここまでは予想通りだ。むしろ上手くいきすぎている。その答えは直ぐに知れた。シノの例のマーカーを感じられる。この開けた場所で加護持ちだらけな環境で何をマーキングしているのかと思えば人間の魔法使いだな。シノがそれを押さえている。攻撃ではなくただの妨害だ。だがそれが有難い。攻撃は俺達が担当だ。余力がある限りそこらに石の棍棒を出現させる。それを地面に突き刺し土台にすると、それを使って飛び上がり石棍棒を投げつける。これは効果覿面だな。相手の攻撃役を潰せる上に回復の手も止められる。ついでに突き刺した棍棒に群がる前衛を後ろからグサリだ。ヘイトの取れない前衛などいる価値が無い。御大層な武器や防具も魔法使いを凌ぐほどの火力は出せないだろう。ダメージを負っても致命傷などは無くかなり優勢に進めている。これは間違いなくシノの力だな。魔法使いの機能しない戦場がこんなに楽だとは思わなかった。
 俺達が優勢に進めている間、遂に髑髏部隊の詠唱が完成する。なんか凄くデカい杭だ。それこそ王城と同サイズの代物が浮かんでいる。そして人間側は何かの防御壁のようなものを展開している。
 あれはぶつかってもこっちは大丈夫なのか?
 シノに目をやっても特に反応は無い。どうだ凄いだろう、というニュアンスの笑みが返って来るだけだ。それなら問題は無いのだろう。
 そして一瞬。瞬きをする間もなくそれらは衝突した。
 これはなんと形容するべきか。そのままを言えばデカい杭が城壁の上に出現した盾に突き刺さっている。刺さってはいるが逆に包み込まれそうだ。事実捻じ曲げられている。それよりも…。
 いや、真下地獄じゃん。あれ死ぬじゃん。
 時空が歪んで色々爆発している。確かにそこを攻めてる奴は居ないが、事前に告知しておけよ。
 やはり杭が捻じ切られそうだな。進んではいるが城壁内部に入ると消滅していく。一撃目は相殺が良い所か。仮にこれが防御無しで直撃すればこの都市丸ごと灰になっていたのだろうな。最悪敵のバリアが突破出来れば総力戦に持ち込めるだろう。
 そして一撃目は不発に終わった。バリアはまだ健在か。これだけ近づけば何かがあるのはわかる。それよりも…。
 マズいな。二発目を阻止せんと人間側が前進するかと思いきや、間違いなくこちらを狙ってきている。しかも壁を守るのではなく俺値の背後に回っての分断だ。確実に仕留める気だ。
 何故だ? これほど強固なバリアがあるのに何故こちらを狙ってくる?
 壁の前の部隊が全滅したとてバリアがあれば何も問題ないだろう。普通ならそこは見捨てて最大脅威の髑髏部隊に向かうはずだ。
 …ここが最大の脅威なのか? 壁に肉薄するオーガ部隊に何を怯える必要がある?
 いや、奴らはそもそも攻めてくるそぶりすら見せなかった。
 攻める必要がなかった?
 髑髏の魔法は脅威ではないのか。
 考えたいのはやまやまだが事態がそれを許さない。予想外で対処が出来ん。幸い壁前の人間の部隊はほぼ壊滅させた。堀に逃げ込むという手もあるが…底に何が仕込んであるか。この状況を見るに城壁に近付く全てを許さない感じか。
 クソが。一番安全に見えるのは城壁の中か。
 …いや、まさかな。まさかそんなことはないだろうな。
「シノ。アレに入ったらどうなる」
「消滅するな。アレは魔素を消し去る」
「方法は?」
「…魔素を消し去る。私には手が無いな」
 だがここで足踏みしていたら圧殺される。俺はおもむろに石棒を投げ込んだ。多少の抵抗はあるがそれは城内へと落下していく。そして回りに転がしていた石棒を次々に投げ込んでいく。
「王牙。わかってはいるだろうがあれは石の棒だ。魔素の塊じゃない」
 ああ、わかっている。それでもここ以外に無い。
「私も連れていけ」
「死出の旅路になるが」
「なら私の案内は適任だろう」
 腹をくくるか。そこが安全であれ死地であれ。行くも死。残るも死か。
「ならば帰りの道筋も頼む」
「そう来なくては」
 俺はシノを抱え上げると城壁に対面する。幸い高さは無い。この距離を渡るのならぶっつけ本番か。
 俺は大地の支配で巨大な棒を出して、それを倒す。それを架け橋にするためだ。
 …成功してしまったな。後は駆け抜けるだけだ。
「そして、俺達の人生の旅路は続く、か」
「これが人生なら終わってしまえ。私達の、人生は、既に、もう、終わった!」
 そうか。そうだったな。
「ならば、新しい旅路を! 困難に満ちた! 長く苦しい地獄の日々を!」
 俺は躊躇わずに足を踏み出した。



Tips
髑髏部隊
髑髏は基本的に協力して大魔法を行使する。
シノのように単独行動はとらない。
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