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第一部 チュートリアル
第十七章 古城① トラップ
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古城。そこはトラップの塊だった。多分だが魔素人形が通れる通路を見るにそれ系統の場所なのだろう。それに絡んだ罠がふんだんに用意されている。いわゆる仕掛けだ。踏み込むと作動する系の派手な奴だ。一体全体こいつを作ったやつは頭がおかしいのかと思う時がある。ここは城で居住区だ。そのほとんどが罠というのはどういう生活をしていたのか。城というよりも迷宮やダンジョンだな。まるで俺達は人間の冒険者のようにパーティを組みながら探索しているというわけだ。
古城の敵が出てこないなら無視してもいいのではないか、とも思うがそういう事でもないのだろう。俺達はオーガとゴブリンで構成されたパーティで古城を徘徊している。これは普通逆だろう。俺たち魔物が待ち構える場面だ。
トラップに関してはあのゴブリンが適任だった。眷属を使って罠を見破り、時には囮にして罠を作動させ使用不可にする。まるで命を命と思わないその行動に逆に感心しながらも俺達は進んでいく。ゴブリンにはゴブリンのやり方があるのだろう。それを話し合ったこともある。
「鬼は違うやり方で?」
「ああ。オーガは頭数が命だ。数こそが全てで生命線だ。数が減ることはそのまま負けを意味する。互いがカバーするのはそのせいだ。それが一番生存の可能性が高いからな」
「はー。小鬼でそんなやり方をしていたら全滅しちまう。俺達が束になっても旦那には敵わない。ならどうするかってぇと数を犠牲にして逃げ出すのが正解だ。それでうまく回るように立ち回るのさ。数よりも使い方だな」
なるほど。同じ魔物でもこれほど運用に差が出るのだな。そしてどちらも生存の可能性に追及している。手段がまるで違うのにだ。
それを言うとまた不思議な顔が返ってきた。
「旦那は、本当に上下を考えないんだな。小鬼と鬼が同列と思っていやがる」
「違うのか。どちらも魔物に堕ちた人でなしだろう」
「はー。それだからな旦那は。どいつも自分が底辺だなんて認めなくないものさ。旦那も小鬼に堕ちればわかるさ。一時と持たないだろうけどな」
「そこまでか。いやそうだろうな。オーガでさえ窮地に陥る俺がゴブリンでは半時と持たないな」
「だろうよ。鬼で良かったな旦那。いや望んでなったんだっけか」
「俺は鬼になる。それだけは憶えている。お前は違うのか?」
「俺は、憶えてない。俺の境遇に不満はない。それでも自分で望んだ姿だとは思いたくねぇよ」
「そうか」
ここは楽園だというやつがいるなかでここが地獄だというやつもいる。この差は何だ。望んだ姿になったものだけがここを楽園と呼ぶのだろうか。俺はここを楽園だと思ったことは一度もない。この相棒と出しゃばりはどうだが知らないが。
やっと俺達の出番が来たが苦戦を強いられている。デミ髑髏。その名の通り核付きの髑髏だ。流石に髑髏は相手が悪い。肉弾戦はお手の物だが魔法戦はからきしだ。先手を取られると打つ手がない。奇襲を主に、見つかったら相打ち覚悟の突撃を敢行するしかない。デミだけにシノに教わったカウンターマジックが効くのだが向こうが奇襲してきた時は祈るほかない。トラップとデミの混合で更に難易度が上がっている。罠は作動させれば終わりだがデミはそうはいかない。
癪だがこの出しゃばり盾が大活躍している。魔法に対して盾というのはこれ以上なく心強い。魔法は切っても減衰が関の山だ。素直に武器を盾にした方が効果的だろう。盾なら尚更効果的だ。その上原理は不明だが施された装甲もそのままだ。機体のリンクが生きて機能している。魔法に対する抵抗力は本物だ。そしてこの盾自体が一種の魔素タンクになっていて俺に魔素を供給している。まさにいたせりつくせりでこれからの必需品という謳い文句に嘘偽りない状態になっているのが腹立たしい。
この状況はコイツラが作り出しているのか?とも思ったが流石にそれはないな。
俺は何とかなっているが他の消耗が激しい。この盾は相棒と違って共有は出来ないようだ。そもそも施された代物が魔物である俺の手にあるのが異常なのだろうが。幸い多数に囲まれることはなく罠としての少数の遭遇戦に終始しているのが救いか。このデミ髑髏も地味にやっかいで髑髏の弱点である耐久力を硬い核で補っている。これは流石に偶然だろうが相性が良すぎる。
こんな時にシノが居ればな。前にも思ったが俺が生き延びてこれたのはシノが魔法使いを抑えていたことが大きい。このデミ髑髏もシノが抑えていれば何の苦労もなく殲滅できていただろう。奇襲も全て先手を取れた。実際シノ以外の髑髏が居ても役には立たないだろうな。髑髏は高威力魔法をぶっ放す事しか頭にない。奴らを連れてきても古城を魔法で圧し潰すのが役目で探索などは無理だろうな。それで今回は居ない。髑髏はあくまで火力だ。頭数に居ないのが当然だろう。
一体どこへ行ってしまったのだろうか。火力を追求するのみの髑髏と合流したとは考えにくい。肉体寄りになって魔法の力が衰えれば居場所がないと聞いた事がある。オーガ達とも同行していない。俺の体の管理でもしていてくれたのだろうか。そうだとすれば最悪核に乗っ取られていた俺にやられた可能性もある。いやそこまで迂闊ではないか。
ではどこへ。
俺の体がデミオーガと共にあり、この古城ではデミ髑髏が蔓延している。これは流石に考え過ぎではないだろう。だとしたら待ち構えているだろうな。間違いなく。そしてそれはすぐに知れた。
古城の敵が出てこないなら無視してもいいのではないか、とも思うがそういう事でもないのだろう。俺達はオーガとゴブリンで構成されたパーティで古城を徘徊している。これは普通逆だろう。俺たち魔物が待ち構える場面だ。
トラップに関してはあのゴブリンが適任だった。眷属を使って罠を見破り、時には囮にして罠を作動させ使用不可にする。まるで命を命と思わないその行動に逆に感心しながらも俺達は進んでいく。ゴブリンにはゴブリンのやり方があるのだろう。それを話し合ったこともある。
「鬼は違うやり方で?」
「ああ。オーガは頭数が命だ。数こそが全てで生命線だ。数が減ることはそのまま負けを意味する。互いがカバーするのはそのせいだ。それが一番生存の可能性が高いからな」
「はー。小鬼でそんなやり方をしていたら全滅しちまう。俺達が束になっても旦那には敵わない。ならどうするかってぇと数を犠牲にして逃げ出すのが正解だ。それでうまく回るように立ち回るのさ。数よりも使い方だな」
なるほど。同じ魔物でもこれほど運用に差が出るのだな。そしてどちらも生存の可能性に追及している。手段がまるで違うのにだ。
それを言うとまた不思議な顔が返ってきた。
「旦那は、本当に上下を考えないんだな。小鬼と鬼が同列と思っていやがる」
「違うのか。どちらも魔物に堕ちた人でなしだろう」
「はー。それだからな旦那は。どいつも自分が底辺だなんて認めなくないものさ。旦那も小鬼に堕ちればわかるさ。一時と持たないだろうけどな」
「そこまでか。いやそうだろうな。オーガでさえ窮地に陥る俺がゴブリンでは半時と持たないな」
「だろうよ。鬼で良かったな旦那。いや望んでなったんだっけか」
「俺は鬼になる。それだけは憶えている。お前は違うのか?」
「俺は、憶えてない。俺の境遇に不満はない。それでも自分で望んだ姿だとは思いたくねぇよ」
「そうか」
ここは楽園だというやつがいるなかでここが地獄だというやつもいる。この差は何だ。望んだ姿になったものだけがここを楽園と呼ぶのだろうか。俺はここを楽園だと思ったことは一度もない。この相棒と出しゃばりはどうだが知らないが。
やっと俺達の出番が来たが苦戦を強いられている。デミ髑髏。その名の通り核付きの髑髏だ。流石に髑髏は相手が悪い。肉弾戦はお手の物だが魔法戦はからきしだ。先手を取られると打つ手がない。奇襲を主に、見つかったら相打ち覚悟の突撃を敢行するしかない。デミだけにシノに教わったカウンターマジックが効くのだが向こうが奇襲してきた時は祈るほかない。トラップとデミの混合で更に難易度が上がっている。罠は作動させれば終わりだがデミはそうはいかない。
癪だがこの出しゃばり盾が大活躍している。魔法に対して盾というのはこれ以上なく心強い。魔法は切っても減衰が関の山だ。素直に武器を盾にした方が効果的だろう。盾なら尚更効果的だ。その上原理は不明だが施された装甲もそのままだ。機体のリンクが生きて機能している。魔法に対する抵抗力は本物だ。そしてこの盾自体が一種の魔素タンクになっていて俺に魔素を供給している。まさにいたせりつくせりでこれからの必需品という謳い文句に嘘偽りない状態になっているのが腹立たしい。
この状況はコイツラが作り出しているのか?とも思ったが流石にそれはないな。
俺は何とかなっているが他の消耗が激しい。この盾は相棒と違って共有は出来ないようだ。そもそも施された代物が魔物である俺の手にあるのが異常なのだろうが。幸い多数に囲まれることはなく罠としての少数の遭遇戦に終始しているのが救いか。このデミ髑髏も地味にやっかいで髑髏の弱点である耐久力を硬い核で補っている。これは流石に偶然だろうが相性が良すぎる。
こんな時にシノが居ればな。前にも思ったが俺が生き延びてこれたのはシノが魔法使いを抑えていたことが大きい。このデミ髑髏もシノが抑えていれば何の苦労もなく殲滅できていただろう。奇襲も全て先手を取れた。実際シノ以外の髑髏が居ても役には立たないだろうな。髑髏は高威力魔法をぶっ放す事しか頭にない。奴らを連れてきても古城を魔法で圧し潰すのが役目で探索などは無理だろうな。それで今回は居ない。髑髏はあくまで火力だ。頭数に居ないのが当然だろう。
一体どこへ行ってしまったのだろうか。火力を追求するのみの髑髏と合流したとは考えにくい。肉体寄りになって魔法の力が衰えれば居場所がないと聞いた事がある。オーガ達とも同行していない。俺の体の管理でもしていてくれたのだろうか。そうだとすれば最悪核に乗っ取られていた俺にやられた可能性もある。いやそこまで迂闊ではないか。
ではどこへ。
俺の体がデミオーガと共にあり、この古城ではデミ髑髏が蔓延している。これは流石に考え過ぎではないだろう。だとしたら待ち構えているだろうな。間違いなく。そしてそれはすぐに知れた。
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