王牙転生~鬼に転生したゲーマーは流されるままに剣を振るう~

中級中破

文字の大きさ
24 / 99
第一部 チュートリアル

第二十四章 エピローグ(イチャラブ注意)

しおりを挟む
「私を愛せ」
 シノに使う時間として取り合えず原型を残しているあの古城に俺達は来ている。
 しかし言葉通りの意味だとしても俺たち魔物にはそういう機能は付いていない。
「今回の事で分かったが、私がお前を愛するとこの体は喜んで、より柔軟により協力的になり更なる力を引き出すことができる」
 なるほど。
「そこで頭打ちになるのがお前の感情だ。こちらから好意を重ねてもそれに対する返答がないと不安を感じ、不安定になる」
 なるほど。
「そこでお前にも私を愛してもらう。わかるな。相互理解だ。私はこの力を引き出せるなら何をしても構わんぞ」
 なるほど。理屈はわかった。
「つまり好感度を上げればそれがそのまま力になるということだな?」
「なんだそれは」
「俺達の世界にあるゲームの一種だ。意中の相手の好意を数値化したもので、それが上がるとそのままパラメータがアップする。お前が言っているのはお前の俺への好感度が高止まりしているから、俺の好感度を上乗せしようということだな」
「つまりはそういう事だが、私の好感度が高止まりしているかはわからんぞ。まだ上がる可能性もある。それも試したい」
 なるほど。髑髏の火力向上は本能的なものだろう。コアの性能を引き出した一撃はさぞや爽快だったのだろうな。
 しかしそうか。あの無意味なファッションショーはそういう意図があったのか。その時はシノ自身も気付かなかったがこの戦いでそれが裏付けられたのだろう。
「しかし俺の好感度か。それも高止まりしているが、そうは感じられないか」
「お、お前の好感度はわかりづらいんだ。私に伝わらなければ意味がない。伝わってないんだ」
「シノ。お前を愛しているぞ」
 シノは両手で顔を覆って天を仰いでいる。
「抱きしめろ」
 どうも言葉では伝わらないらしい。俺の体は人間とは違うからボディランゲージはそもそも無理なのだが、リクエストとあっては答えるしかないだろう。
「どうだ」
 何かを期待しているようだがなんだ? 服の感触ではない。肌もいつも通りだ。顔、いや髪か。赤い髪を俺の手で梳いてもまるで引っ掛かりがない。癖のあるウェーブが滑らかな触り心地だ。
「どうやら気付いたようだな。お前の為に奇麗にしたんだ。触り心地ならお前でも感じられるだろう」
「確かに。これは俺の好感度も上がるな。もっと撫でてもいいか?」
 シノは黙って頷く。その滑な感触を楽しみながらその香りも楽しむ。今の俺に嗅覚はあるが人間のような感じではない。ただ香るだけだ。それでも心地よいと感じていた記憶が呼び起こされる。いつもまにか俺は手で梳くだけではなく香りを嗅ぐために顔を近づけ深く抱きしめていたらしい。シノが身じろぎをする。
「ああ。すまん」
「いい。それよりお前がしたいことはもうないのか?」
 他にか、シノの体をまさぐっていく。そういえば。
「下着はつけないのか?」
「アレは人間が着けるものだ。私は、着けたくない」
「だが、不便ではないが心許ない感じはないのか?」
 シノが俺の目を見つめる。
「それは私につけて欲しいということだな?」
「そういうわけでは・・・、いや、そうなのかもな。一度見せてもらってもいか?」
「それは駄目だ。私は下着を着けたくない。ただ王牙。お前が無理やり着けたいというなら私は抵抗するが好感度は下がらないぞ」
 シノの手には何か巻き付けるような布が握られている。
「それもいいがこういうのだ」
 俺は魔物のリンクで形状を伝える。
「こ、これはなんだ。履く方が恥ずかしいじゃないか」
 シノの狼狽が伝わってくるがそれほどキワドイ物ではなく普通のショーツとブラだ。
「こんな丁の字で、しかも上はいらないだろう」
 そう言いながらも下着の形を形作る。服は既に消しているようだ。
 俺はそれを受け取るとシノを浮かせて足先に下着をかける。抵抗しようと足を開こうとするのを膝を打ち合わせて閉じさせる。そしてそのまま上へ。完成だ。
「こ、これはなんだ。こんなの私じゃなくても履きたくないぞ」
「上は?」
「お前、この鬼め。鬼畜の所業とはまさにこのことだ」
 蹲ってブラを渡してくるシノの両手を上に払うとその先に掛ける。抵抗はなかったが開いていた肘を揃えて下へ。そして音が出そうなほどサラサラな赤い髪をシュッと抜く。本来のつけ方とは違うが俺はブラのつけ方など知らん。
「・・・穢された。この鬼め。これで満足か」
 シノはしゃがみ込んで上と下を手で隠している。服を消したときは特に反応もなかったのにだ。
「これはいい。最高だ」
「お前。本当に鬼か。これでどうするつもりだ」
「これでいいんだ。俺達の不文律にこういうのがある。愛でるのは良し、触るのは禁忌。愛でるだけだその先はない」
「お前。本当の鬼畜を今見たぞ。お前らはそれで満足かもしれないが私の心が穢された。体の穢れよりも許されない行為だ」
「そこまでか」
「そうだ。私が言いだしたのだから好感度は下がらないが。鬼畜の所業だということを忘れるな」
「心に留めておこう。もう少しだけ愛でていてもいいか」
「この鬼め。これなら撫でまわされている方がマシだ」
「では脱ぐ所も頼む」
「お前。本当にお前。この変態。お前は鬼を超えた変態だ。私でなければ愛想を付かしていたぞ」
  そう言いながら背を向けるシノ。流石に前を向けとは言いずらいな。好感度に響きそうだ。だが、
「後ろ姿も良いな。全裸に何も感じなかったが脱いだ後はまた趣がある」
「そうかそれは良かったな。これで満足だな。この変態鬼畜」
 すっと現れたローブに袖を通すシノ。残念だがこれは見過ぎてもよくないか。乾きが必要だ。ここは耐えよう。
「お前のせいで体がオカシイ。撫でまわせ」
 さっきと同じ体勢で頭から撫でまわす。
「もっと中もだ。服の中から手を入れて撫でろ」
「まて、それはいいのか」
「ああ。さっきのに比べればだいぶマシだ。というよりそれを消したいんだ。お前の視線で汚れた体を撫でて奇麗にしろ」
 シノの肌を撫でまわす。なるべく脱げないように気は使ったが、
「肌を撫でるなら脱がしてもいいか?」
「それは駄目だ。全裸で撫でまわすなどお前は本当に変態だな」
 何が違うんだ。全裸は問題なくて下着は駄目。肌を撫でまわすのになぜ服を着なおすんだ。理解不能だな。
「そんなに見れないのが不服か?」
「お前の感覚が理解不能だ。そこまで下着が嫌か」
「そうだ。私は下着が嫌いだ。あれは人間が人間であるために必要な代物だ。私はもう人間ではない。人間に戻りたくもない」
「そうか」
「そうだ。だがお前が無理やり履かせるのは別だ。したいときにすればいい。許す。ただ私に履けというのは許さない」
「心得た。次に履かせる下着のデザインを考えておこう」
「お前。許すといったがそう何度もうまくいくと思うな。抵抗はするからな」
 次か。この戦いは何時まで、何処までが戦いなのか。人間との戦いか。異世界からの世界の防衛か。はたまた愛の結末か。
 まだ俺は流されている。流され続けている。俺が食い散らかすべき人間は未だいない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!? これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。 日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

処理中です...