王牙転生~鬼に転生したゲーマーは流されるままに剣を振るう~

中級中破

文字の大きさ
23 / 99
第一部 チュートリアル

第二十三章 デミ駆除作戦③ チート戦チュートリアル

しおりを挟む
 俺の周りに神の加護が発生する。相棒の加護は剣先に。出しゃばりの加護は俺の周りを漂って鎧を形作っていく。
「なんだ。何が起こっている。王牙。まさか貴様、神の手先か!」
 ああ、そうとも取れるのか。
「違う。聖剣とその盾だ。今それを解放した」
「・・・お前。一体何をする気だ。何故それを操れる」
「話せば長いが繋がりがある。あの時聖剣が抜けたのもそのせいだ」
 シノが黙り込んでしまったな。
「これは神の手先じゃない。コアのようなものだ。神の加護はお前のコアも出せるだろう」
「出せるが操れない。魔物に加護は扱えない」
「加護を使ってるのは聖剣と盾だ。俺はそれとリンクしているだけだ」
「やはり神の手先ではないか」
「そうは言うがな。あの時の状況が意図的に見えたか?」
「私をこんな姿にしてそれを取りに突入した。それ以上に何がある」
 ? まさかの、
「・・・俺が神の手先か!?」
「・・・お前。私がお前を疑っているのに気づいていなかったのか」
「それよりもアレの対処だ。アレを潰してからでも遅くはないだろう」
 流石の俺もバツが悪くなって誤魔化す。
「はぁ。馬鹿だ馬鹿だとは思っていたが、そんなお前を疑っていた私も愚かだ。本当にお前は私がついていないと駄目だな。・・・それで。それは信用できるのか?」
「アレが相手の時は信用できる。それ以外では信用できん」
「お前は本当に何を知っているんだ。私の既知外だ。ここまで怪しいのに渦中のお前がアホ過ぎて流されてるだけのアホにしか見えない」
 酷い言い様だ。
「なら降りるか? そのアホを眺める特等席だが」
「降りるか! もう私を置いていくことは許さん。死ぬなら私も連れていけ」
「ああ。助かる」
 本当に。
「存分に貸しだからな。これが終わったらすべて返してもらう。絶対に拒否はするなよ」
「わかった」
 加護の鎧の生成は終わったようだ。白を基調にした金の装飾の鎧。兜は俺の角をも覆うようにできている。そしてその隙間には鎖帷子。これは対斬撃というよりも気密性の保持か。そして盾を覆うようなたなびくマント。手には金色に輝く聖剣。
 ああ。完全に変形合体ロボットの感じだ。間違いなく俺が操れる奴じゃない。
 それを見ていたのだろう。魔物惑星も再浮上している。チートを使えば容易なのだろう。内の改変で浮いていたものが外の改変で飛べるようになる。たったこれだけでも俺達は不利になっていただろう。そしてこの改変はもう禁じても飛行を禁じることもできない。確定した改変だからだ。ここで逃がしたらこの世界の終わりだな。

 この先の戦いは無茶苦茶だった。
 無詠唱でありとあらゆる妨害の利かない魔法の槍が大量に出て誘導してくる。その一本一本がシノの魔法を凌駕しているだろう。
 いや。これ俺が初手でチート禁止してなかったら開幕初見殺しで全滅だろコレ。
 俺は当たり前のように空中を飛んで聖剣でそれを叩き落し砕いていく。矛盾しているがそれがチート合戦なのだろう。空の軌道にしてもマントが質量をもってこちらの動きを操作してくる。相手の槍を弾くのは勿論、取り込んで破壊しその挙動で回避コースを取ってくる。俺は流されるようにコイツラの動きに合わせていく。焦りや恐怖が俺を鈍らせないように俺自身の改変も怠らない。アレを正面にしたらどのような魔物であれ恐怖に竦んでいただろう。むしろこの状況で何かに集中しているシノは見上げたものだ。
 魔法の応酬が終わって魔物惑星が形状を変化させる。
 これは、巨大なクジラか。
 いや、なぜクジラ? ここは人型じゃないのか。他にもシャチでもサメでも何でもあるだろう。いや、むしろ人型で飛べているコイツラが異常なのか。
 未だにチート戦のセオリーが掴めない。とりあえず矛盾は引き出せるがそれで打ち勝っているのは相棒のお陰だろう。俺には原理がまるで分らない。他にも精神戦なども展開されているようだが出しゃばりが対処しているようだ。それも攻勢に出てる。現クジラの元魔物惑星が見てわかるような攻撃をし続けているのはこいつのお陰だろう。業腹だがこいつの性格の悪さが良い方向に向いている。
 むしろチートを使っているのはこっちか。正確には使いこなしているのは。魔物ベースの魔物惑星よりも、人間か器物をベースにした神の加護を使える方が有利だな。
 そしてコイツラの予想どおりクジラがチートを禁じてきた。だが全てが遅い。禁じた所でこの力が消えるわけじゃない。こいつも宙に浮かんだままだ。俺の方は十分にチュートリアルを堪能した。コイツラを介せば今までの戦い方ができる。注意すべきは神の加護の残量だ。流石にチートが消えると魔物である俺に拒否反応が出ている。残るは奴の触手か。俺は残った推力をクジラにぶつけていく。奴の体に着地し飛び上がって次の一撃を加える。そうこうしていくうちに加護製の鎧とマントが消え始めているな。空を飛ぶのは限界か。クジラも大量に血は流しているが耐えている。どこからか生成しているのか? コアがなければ不可能だろうが、それを作り出している可能性が高いか。
 俺の考えが通じたのかシノがコアをマーキングする。眉間だ。中央の心臓かと思ったが、血液が今一番必要なのは頭部か。それと同時に背負っている盾の内部に魔素が充満する。放出しただけではなく精製された魔素だ。これなら魔素流体がなくても飛行が可能か。
 俺は人脈(?)にだけは恵まれたな。奴の眉間。コアを相棒で貫く。相棒はそもそもチートではなく素で聖剣だったな。その力を存分に使わせてもらう。やはり魔素には効果覿面だな。クジラの体が霧散していく。これは時間の問題か。俺は俺自身でもチートを禁ずる。後はこいつが消えるまで空のランデブーとしゃれ込むか。

「この神肉食いめ!!!」
 喋った。まあそうか。それはおかしくないが。鬼の俺を人肉食いとは、クジラがぬかすか。この場合鯨肉食いだろう。
「この、神肉食い、め・・・!」
 地に堕ち這ってまで俺を睨みつけてくる。
 なんだ? この場での恨みにしてはあまりにも深い。前世での俺を知っているのか。それとも誰かと勘違いしているのか。
 そのままクジラは何も言えず消えていった。後には砕かれたコアと血液が残っているのみ。
 俺が人肉食いだと? 人を食うのは魔素ジェネレーター工作部隊か趣味のゴブリンくらいだろう。俺はクジラの血液を一滴掬うとそのまま口に・・・。
「駄目だ。そんなものを口にするな。お前が口にしていいのは私だけだ」
「それでは魔物食いだな」
 俺は血を払うとシノに向き直る。
「助かった」
「ああ。だが対価はもらうぞ。お前の時間をもらってもいいな?」
 俺は了承すると魔物への指示を確認する。デミの掃討は終わり、最寄りの魔素ジェネレーターへの帰還だ。しばらくはこんな大事はないだろう。
「それでそれは安全なのか」
 相棒と出しゃばりの事だろう。今は普通の剣に戻っている。
「それを見ていて思ったのだがそれは神ではないのか」
「これはただの世界の外から来ただけの連中だ。俺も多分そうだ。だからこそ協力関係にある」
「それも嘘ではないのか。元人間ではなく宇宙人だったのか。どうりで魔物の体でも平気なわけだ」
「その発想はなかった」
「それも喋るのか?」
「いや魔物のリンクと同じだ。言葉を交わす必要がない」
「本当に安全だろうな。いざとなれば私よりもその同郷を選ぶんじゃなかろうな」
 俺は盛大に噴き出してしまった。その答えはもう決まっている。
「お前を選ぶ。シノ。いざとなればその時はコイツラを捨てる」
 全く俺はここまで身を粉にして奉仕する武具にたいして薄情だ。ここまで来てもその魔物にご執心らしい。
 俺達はそのためにここに居る。俺が俺の旅路を続ける限り、俺達はここに居る。
 それでも俺は盾が何か言いたいことがあるように感じた。過度の貢献をした盾には褒章が与えられてしかるべきだろう。
 ・・・わかった。俺の口を使え。
 俺はシノから離れると空を仰ぎ天に咆哮する。
「ここは楽園だ! こここそが俺達が望んだ楽園だ! 誰にも奪わせはしない!」
 ここが楽園だとは思えないが。確かに俺の居場所ではあるがな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!? これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。 日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

処理中です...