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第一部 チュートリアル
第二十三章 デミ駆除作戦③ チート戦チュートリアル
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俺の周りに神の加護が発生する。相棒の加護は剣先に。出しゃばりの加護は俺の周りを漂って鎧を形作っていく。
「なんだ。何が起こっている。王牙。まさか貴様、神の手先か!」
ああ、そうとも取れるのか。
「違う。聖剣とその盾だ。今それを解放した」
「・・・お前。一体何をする気だ。何故それを操れる」
「話せば長いが繋がりがある。あの時聖剣が抜けたのもそのせいだ」
シノが黙り込んでしまったな。
「これは神の手先じゃない。コアのようなものだ。神の加護はお前のコアも出せるだろう」
「出せるが操れない。魔物に加護は扱えない」
「加護を使ってるのは聖剣と盾だ。俺はそれとリンクしているだけだ」
「やはり神の手先ではないか」
「そうは言うがな。あの時の状況が意図的に見えたか?」
「私をこんな姿にしてそれを取りに突入した。それ以上に何がある」
? まさかの、
「・・・俺が神の手先か!?」
「・・・お前。私がお前を疑っているのに気づいていなかったのか」
「それよりもアレの対処だ。アレを潰してからでも遅くはないだろう」
流石の俺もバツが悪くなって誤魔化す。
「はぁ。馬鹿だ馬鹿だとは思っていたが、そんなお前を疑っていた私も愚かだ。本当にお前は私がついていないと駄目だな。・・・それで。それは信用できるのか?」
「アレが相手の時は信用できる。それ以外では信用できん」
「お前は本当に何を知っているんだ。私の既知外だ。ここまで怪しいのに渦中のお前がアホ過ぎて流されてるだけのアホにしか見えない」
酷い言い様だ。
「なら降りるか? そのアホを眺める特等席だが」
「降りるか! もう私を置いていくことは許さん。死ぬなら私も連れていけ」
「ああ。助かる」
本当に。
「存分に貸しだからな。これが終わったらすべて返してもらう。絶対に拒否はするなよ」
「わかった」
加護の鎧の生成は終わったようだ。白を基調にした金の装飾の鎧。兜は俺の角をも覆うようにできている。そしてその隙間には鎖帷子。これは対斬撃というよりも気密性の保持か。そして盾を覆うようなたなびくマント。手には金色に輝く聖剣。
ああ。完全に変形合体ロボットの感じだ。間違いなく俺が操れる奴じゃない。
それを見ていたのだろう。魔物惑星も再浮上している。チートを使えば容易なのだろう。内の改変で浮いていたものが外の改変で飛べるようになる。たったこれだけでも俺達は不利になっていただろう。そしてこの改変はもう禁じても飛行を禁じることもできない。確定した改変だからだ。ここで逃がしたらこの世界の終わりだな。
この先の戦いは無茶苦茶だった。
無詠唱でありとあらゆる妨害の利かない魔法の槍が大量に出て誘導してくる。その一本一本がシノの魔法を凌駕しているだろう。
いや。これ俺が初手でチート禁止してなかったら開幕初見殺しで全滅だろコレ。
俺は当たり前のように空中を飛んで聖剣でそれを叩き落し砕いていく。矛盾しているがそれがチート合戦なのだろう。空の軌道にしてもマントが質量をもってこちらの動きを操作してくる。相手の槍を弾くのは勿論、取り込んで破壊しその挙動で回避コースを取ってくる。俺は流されるようにコイツラの動きに合わせていく。焦りや恐怖が俺を鈍らせないように俺自身の改変も怠らない。アレを正面にしたらどのような魔物であれ恐怖に竦んでいただろう。むしろこの状況で何かに集中しているシノは見上げたものだ。
魔法の応酬が終わって魔物惑星が形状を変化させる。
これは、巨大なクジラか。
いや、なぜクジラ? ここは人型じゃないのか。他にもシャチでもサメでも何でもあるだろう。いや、むしろ人型で飛べているコイツラが異常なのか。
未だにチート戦のセオリーが掴めない。とりあえず矛盾は引き出せるがそれで打ち勝っているのは相棒のお陰だろう。俺には原理がまるで分らない。他にも精神戦なども展開されているようだが出しゃばりが対処しているようだ。それも攻勢に出てる。現クジラの元魔物惑星が見てわかるような攻撃をし続けているのはこいつのお陰だろう。業腹だがこいつの性格の悪さが良い方向に向いている。
むしろチートを使っているのはこっちか。正確には使いこなしているのは。魔物ベースの魔物惑星よりも、人間か器物をベースにした神の加護を使える方が有利だな。
そしてコイツラの予想どおりクジラがチートを禁じてきた。だが全てが遅い。禁じた所でこの力が消えるわけじゃない。こいつも宙に浮かんだままだ。俺の方は十分にチュートリアルを堪能した。コイツラを介せば今までの戦い方ができる。注意すべきは神の加護の残量だ。流石にチートが消えると魔物である俺に拒否反応が出ている。残るは奴の触手か。俺は残った推力をクジラにぶつけていく。奴の体に着地し飛び上がって次の一撃を加える。そうこうしていくうちに加護製の鎧とマントが消え始めているな。空を飛ぶのは限界か。クジラも大量に血は流しているが耐えている。どこからか生成しているのか? コアがなければ不可能だろうが、それを作り出している可能性が高いか。
俺の考えが通じたのかシノがコアをマーキングする。眉間だ。中央の心臓かと思ったが、血液が今一番必要なのは頭部か。それと同時に背負っている盾の内部に魔素が充満する。放出しただけではなく精製された魔素だ。これなら魔素流体がなくても飛行が可能か。
俺は人脈(?)にだけは恵まれたな。奴の眉間。コアを相棒で貫く。相棒はそもそもチートではなく素で聖剣だったな。その力を存分に使わせてもらう。やはり魔素には効果覿面だな。クジラの体が霧散していく。これは時間の問題か。俺は俺自身でもチートを禁ずる。後はこいつが消えるまで空のランデブーとしゃれ込むか。
「この神肉食いめ!!!」
喋った。まあそうか。それはおかしくないが。鬼の俺を人肉食いとは、クジラがぬかすか。この場合鯨肉食いだろう。
「この、神肉食い、め・・・!」
地に堕ち這ってまで俺を睨みつけてくる。
なんだ? この場での恨みにしてはあまりにも深い。前世での俺を知っているのか。それとも誰かと勘違いしているのか。
そのままクジラは何も言えず消えていった。後には砕かれたコアと血液が残っているのみ。
俺が人肉食いだと? 人を食うのは魔素ジェネレーター工作部隊か趣味のゴブリンくらいだろう。俺はクジラの血液を一滴掬うとそのまま口に・・・。
「駄目だ。そんなものを口にするな。お前が口にしていいのは私だけだ」
「それでは魔物食いだな」
俺は血を払うとシノに向き直る。
「助かった」
「ああ。だが対価はもらうぞ。お前の時間をもらってもいいな?」
俺は了承すると魔物への指示を確認する。デミの掃討は終わり、最寄りの魔素ジェネレーターへの帰還だ。しばらくはこんな大事はないだろう。
「それでそれは安全なのか」
相棒と出しゃばりの事だろう。今は普通の剣に戻っている。
「それを見ていて思ったのだがそれは神ではないのか」
「これはただの世界の外から来ただけの連中だ。俺も多分そうだ。だからこそ協力関係にある」
「それも嘘ではないのか。元人間ではなく宇宙人だったのか。どうりで魔物の体でも平気なわけだ」
「その発想はなかった」
「それも喋るのか?」
「いや魔物のリンクと同じだ。言葉を交わす必要がない」
「本当に安全だろうな。いざとなれば私よりもその同郷を選ぶんじゃなかろうな」
俺は盛大に噴き出してしまった。その答えはもう決まっている。
「お前を選ぶ。シノ。いざとなればその時はコイツラを捨てる」
全く俺はここまで身を粉にして奉仕する武具にたいして薄情だ。ここまで来てもその魔物にご執心らしい。
俺達はそのためにここに居る。俺が俺の旅路を続ける限り、俺達はここに居る。
それでも俺は盾が何か言いたいことがあるように感じた。過度の貢献をした盾には褒章が与えられてしかるべきだろう。
・・・わかった。俺の口を使え。
俺はシノから離れると空を仰ぎ天に咆哮する。
「ここは楽園だ! こここそが俺達が望んだ楽園だ! 誰にも奪わせはしない!」
ここが楽園だとは思えないが。確かに俺の居場所ではあるがな。
「なんだ。何が起こっている。王牙。まさか貴様、神の手先か!」
ああ、そうとも取れるのか。
「違う。聖剣とその盾だ。今それを解放した」
「・・・お前。一体何をする気だ。何故それを操れる」
「話せば長いが繋がりがある。あの時聖剣が抜けたのもそのせいだ」
シノが黙り込んでしまったな。
「これは神の手先じゃない。コアのようなものだ。神の加護はお前のコアも出せるだろう」
「出せるが操れない。魔物に加護は扱えない」
「加護を使ってるのは聖剣と盾だ。俺はそれとリンクしているだけだ」
「やはり神の手先ではないか」
「そうは言うがな。あの時の状況が意図的に見えたか?」
「私をこんな姿にしてそれを取りに突入した。それ以上に何がある」
? まさかの、
「・・・俺が神の手先か!?」
「・・・お前。私がお前を疑っているのに気づいていなかったのか」
「それよりもアレの対処だ。アレを潰してからでも遅くはないだろう」
流石の俺もバツが悪くなって誤魔化す。
「はぁ。馬鹿だ馬鹿だとは思っていたが、そんなお前を疑っていた私も愚かだ。本当にお前は私がついていないと駄目だな。・・・それで。それは信用できるのか?」
「アレが相手の時は信用できる。それ以外では信用できん」
「お前は本当に何を知っているんだ。私の既知外だ。ここまで怪しいのに渦中のお前がアホ過ぎて流されてるだけのアホにしか見えない」
酷い言い様だ。
「なら降りるか? そのアホを眺める特等席だが」
「降りるか! もう私を置いていくことは許さん。死ぬなら私も連れていけ」
「ああ。助かる」
本当に。
「存分に貸しだからな。これが終わったらすべて返してもらう。絶対に拒否はするなよ」
「わかった」
加護の鎧の生成は終わったようだ。白を基調にした金の装飾の鎧。兜は俺の角をも覆うようにできている。そしてその隙間には鎖帷子。これは対斬撃というよりも気密性の保持か。そして盾を覆うようなたなびくマント。手には金色に輝く聖剣。
ああ。完全に変形合体ロボットの感じだ。間違いなく俺が操れる奴じゃない。
それを見ていたのだろう。魔物惑星も再浮上している。チートを使えば容易なのだろう。内の改変で浮いていたものが外の改変で飛べるようになる。たったこれだけでも俺達は不利になっていただろう。そしてこの改変はもう禁じても飛行を禁じることもできない。確定した改変だからだ。ここで逃がしたらこの世界の終わりだな。
この先の戦いは無茶苦茶だった。
無詠唱でありとあらゆる妨害の利かない魔法の槍が大量に出て誘導してくる。その一本一本がシノの魔法を凌駕しているだろう。
いや。これ俺が初手でチート禁止してなかったら開幕初見殺しで全滅だろコレ。
俺は当たり前のように空中を飛んで聖剣でそれを叩き落し砕いていく。矛盾しているがそれがチート合戦なのだろう。空の軌道にしてもマントが質量をもってこちらの動きを操作してくる。相手の槍を弾くのは勿論、取り込んで破壊しその挙動で回避コースを取ってくる。俺は流されるようにコイツラの動きに合わせていく。焦りや恐怖が俺を鈍らせないように俺自身の改変も怠らない。アレを正面にしたらどのような魔物であれ恐怖に竦んでいただろう。むしろこの状況で何かに集中しているシノは見上げたものだ。
魔法の応酬が終わって魔物惑星が形状を変化させる。
これは、巨大なクジラか。
いや、なぜクジラ? ここは人型じゃないのか。他にもシャチでもサメでも何でもあるだろう。いや、むしろ人型で飛べているコイツラが異常なのか。
未だにチート戦のセオリーが掴めない。とりあえず矛盾は引き出せるがそれで打ち勝っているのは相棒のお陰だろう。俺には原理がまるで分らない。他にも精神戦なども展開されているようだが出しゃばりが対処しているようだ。それも攻勢に出てる。現クジラの元魔物惑星が見てわかるような攻撃をし続けているのはこいつのお陰だろう。業腹だがこいつの性格の悪さが良い方向に向いている。
むしろチートを使っているのはこっちか。正確には使いこなしているのは。魔物ベースの魔物惑星よりも、人間か器物をベースにした神の加護を使える方が有利だな。
そしてコイツラの予想どおりクジラがチートを禁じてきた。だが全てが遅い。禁じた所でこの力が消えるわけじゃない。こいつも宙に浮かんだままだ。俺の方は十分にチュートリアルを堪能した。コイツラを介せば今までの戦い方ができる。注意すべきは神の加護の残量だ。流石にチートが消えると魔物である俺に拒否反応が出ている。残るは奴の触手か。俺は残った推力をクジラにぶつけていく。奴の体に着地し飛び上がって次の一撃を加える。そうこうしていくうちに加護製の鎧とマントが消え始めているな。空を飛ぶのは限界か。クジラも大量に血は流しているが耐えている。どこからか生成しているのか? コアがなければ不可能だろうが、それを作り出している可能性が高いか。
俺の考えが通じたのかシノがコアをマーキングする。眉間だ。中央の心臓かと思ったが、血液が今一番必要なのは頭部か。それと同時に背負っている盾の内部に魔素が充満する。放出しただけではなく精製された魔素だ。これなら魔素流体がなくても飛行が可能か。
俺は人脈(?)にだけは恵まれたな。奴の眉間。コアを相棒で貫く。相棒はそもそもチートではなく素で聖剣だったな。その力を存分に使わせてもらう。やはり魔素には効果覿面だな。クジラの体が霧散していく。これは時間の問題か。俺は俺自身でもチートを禁ずる。後はこいつが消えるまで空のランデブーとしゃれ込むか。
「この神肉食いめ!!!」
喋った。まあそうか。それはおかしくないが。鬼の俺を人肉食いとは、クジラがぬかすか。この場合鯨肉食いだろう。
「この、神肉食い、め・・・!」
地に堕ち這ってまで俺を睨みつけてくる。
なんだ? この場での恨みにしてはあまりにも深い。前世での俺を知っているのか。それとも誰かと勘違いしているのか。
そのままクジラは何も言えず消えていった。後には砕かれたコアと血液が残っているのみ。
俺が人肉食いだと? 人を食うのは魔素ジェネレーター工作部隊か趣味のゴブリンくらいだろう。俺はクジラの血液を一滴掬うとそのまま口に・・・。
「駄目だ。そんなものを口にするな。お前が口にしていいのは私だけだ」
「それでは魔物食いだな」
俺は血を払うとシノに向き直る。
「助かった」
「ああ。だが対価はもらうぞ。お前の時間をもらってもいいな?」
俺は了承すると魔物への指示を確認する。デミの掃討は終わり、最寄りの魔素ジェネレーターへの帰還だ。しばらくはこんな大事はないだろう。
「それでそれは安全なのか」
相棒と出しゃばりの事だろう。今は普通の剣に戻っている。
「それを見ていて思ったのだがそれは神ではないのか」
「これはただの世界の外から来ただけの連中だ。俺も多分そうだ。だからこそ協力関係にある」
「それも嘘ではないのか。元人間ではなく宇宙人だったのか。どうりで魔物の体でも平気なわけだ」
「その発想はなかった」
「それも喋るのか?」
「いや魔物のリンクと同じだ。言葉を交わす必要がない」
「本当に安全だろうな。いざとなれば私よりもその同郷を選ぶんじゃなかろうな」
俺は盛大に噴き出してしまった。その答えはもう決まっている。
「お前を選ぶ。シノ。いざとなればその時はコイツラを捨てる」
全く俺はここまで身を粉にして奉仕する武具にたいして薄情だ。ここまで来てもその魔物にご執心らしい。
俺達はそのためにここに居る。俺が俺の旅路を続ける限り、俺達はここに居る。
それでも俺は盾が何か言いたいことがあるように感じた。過度の貢献をした盾には褒章が与えられてしかるべきだろう。
・・・わかった。俺の口を使え。
俺はシノから離れると空を仰ぎ天に咆哮する。
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