王牙転生~鬼に転生したゲーマーは流されるままに剣を振るう~

中級中破

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第四部 魔王種

第四十七章 楽園の夢

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 俺は夢を見ていた。そう魔物が夢だ。まずありえない状態に俺の警報が鳴りっぱなしだ。
 だが相棒と出しゃばりの存在が俺の足を進めている。
 どこかの廊下だろうか。両脇に相棒と出しゃばりと思わしき人影、光の人影が付き添っている。形こそ人間だがそれ以外は不明だ。何故それの正体がわかるのかと言えば夢だからと答えるほかないだろう。
 そして廊下の途中にある扉が開かれる。そこには円卓を囲む光の人影達が待ち構えていた。

「来たか。楽園の加護を受けながら世界を改変した愚か者よ」
 何の話をしている?
「お前は魔族の領域にて魔物を呼び出す改変を行ったな? 楽園の守護者を手に世界の改変に手を染めた。相違ないな」
 シノの魔方陣か。死の髑髏を呼び出した時か。
「なぜだ? お前は世界の改変を否定したはずだ」
 あのままシノが改変魔法を使えば相棒に消されていただろう。あの時のシノには自身の半身である死の髑髏があの場で必要だった。俺は俺の選択に迷いはない。改変が必要だったから行った。俺はシノのためなら世界の改変を否定はしない。次は何があろうとお前らのルールには従わない。相棒、出しゃばり、お前たちを敵に回してもだ。
「不敬な」
「魔物風情が」
「なぜこのような者を」
 ざわつく人影たち。それを遮るように相棒と出しゃばりが前に出て俺の盾になる。
「これが汝らの選択か」
 相棒と出しゃばりが頷く。
「魔物よ今一度問おう。世界と思い人どちらを取る。世界の改変は綻びだ。いずれ世界と共に思い人すら巻き込んでいく」
 では心を軽んじていいのか。いずれ来る崩壊を防ぐために耐えろと? シノは限界だった。俺があの時否定していればその魂に大きな傷をつけていただろう。全ての者が強靭な魂を持つわけではないのだ。それでも輝く魂がある。それを否定させはしない。それを傷つける行為は世界の崩壊よりも害悪だ。人間の尺度で魔物を測るな。

 全員が立ち上がる。そして唱和が始まった。

「「「殺せ! 殺せ! 殺せ!」」」
「友を傷つける敵を殺せ!」
「家族を引き裂く敵を殺せ!」
「世界を壊す敵を殺せ!」
「「「敵は殺せ! 全て殺せ! 神を殺せ!」」」

「「「守れ! 守れ! 守れ!」」」
「友を支える家族を守れ!」
「家族を守る国を守れ!」
「国を守る世界を守れ!」
「「「すべてを守れ! この世界を守れ! 神から守れ!」」」
「「「我等楽園の守護者! この楽園に害成すもの全てを討ち滅ぼし守るものなり!」」」

 楽園、以前にも聞いたことがある言葉だ。これがコイツラの共通理念か。

「魔物よ。私も連れていけ。私の名は・・・」
「名を明かすなこの痴れ者がぁ!」
「俺もだ! 俺も連れていけ! 神と相対するなら俺の力が必要だ!」
「決めつけるなこの筋肉だるまがァ! 神との対峙を押し付けるな!」
 お前たちは神ではないのか。同郷の世界の改変を使って成り上がった存在ではないのか。
「それを神とは呼ばない。自称は出来るがな。我々はこの楽園の為に神と戦った。そして失敗した。勝ち負けではないのだ神との相対は。それを知る我々はもう挑むこともできない。だからお前を見極めたかったのだ。同郷で神と戦う意思のあるお前に」
 俺にその意思を見出したのか? 俺の理由は後付けだ。シノの理念に賛同し、アリエスの境遇に怒りした。俺の優先は神よりも仲間だ。
「流石はわが同胞だ! なぜ私を見つけられない! 私の名は・・・」
「黙れぇ! お前も出しゃばりに改名しろ!」
「俺も戦いてぇ! お前と共にともに楽園を!」
「だから巻き込むんじゃねぇ!」
 それで改変の件はチャラになったのか?
「それはただの方便だ。だが釘の意味もある。一度使えば二度三度と落ちるのは早い。楽園の加護を得ればその力に溺れる人間は数知れずだ。だがお前は溺れるどころか力まで貸してくれた。皆一度お前に会いたかったのだ」
 相棒と出しゃばりの仲間の言葉なら素直に受け取ろう。だが傀儡にはなれん。
「逆だ。いつでも我々を呼べ。ともに楽園を。手を貸せるものがその声に応えるだろう」
 楽園シリーズ。それがこれ以上必要な状況など願い下げだがそうはならないのだろうな。
「ヤレヤレ系主人公かお前は。顔がニヤついてるのが伝わっているぞ」
 なるほど。この地に堕ちた同郷の種類が分かってきたな。
「それがわかったのならば遠慮はするな。この楽園で活躍したい者共の集まりだからな。お前も一緒にどうだ?」
 遠慮しておこう。俺はここを楽園だとは見ていない。ここは俺の魂を鎮める場所。俺の行きつく先を知りたいだけだ。そこがお前たちの行き先と同じかどうかはわからない。
「行きつく先が同じかどうか、か。確かに同じではない方がいいのかもしれん。だがその行き先が我々と共にあることを望むぞ」
 俺もそうであることを望む。ここがお前たちの楽園であることを願う。
「「「ともに楽園を」」」

 目を覚ました俺はオーガの背中を目にする。これは狙撃オーガか。俺の目覚めに気付くと手を挙げてその場から去る。俺も手を挙げ返す。あの狙撃オーガは楽園シリーズの所持者か。なら同郷のはずだが、言葉がない。単純に寡黙なだけか。狙撃に必要のないものは取り入れない。このスタンスは俺にも言えるがここまでストイックにはなれそうもないな。
 だがそうだな。楽園シリーズの力を持ったとして、それに溺れないというのは稀有な者なのかもしれないな。俺は単純に世界の改変が気に入らないだけだ。それを使う奴を八つ裂きにするのは爽快だ。ただそれだけだ。
 しかし同郷がアレだという事は俺が狩ってきた連中は同郷ではないのか? 単純に異世界という外から来ただけで同じ場所ではないのかもしれないな。
 
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