46 / 99
第三部 魔族
第四十六章 エピローグ3 オニアック教
しおりを挟む
俺達は古城に帰ってきた。ここもそろそろ崩壊した古城とは呼べなくなった来たな。相変わらず鍛冶オーガが勤勉に働いている。取り合えず俺達は狙撃オーガの要望で集めた魔剣を下していく。シノもそれに付き合うようだ。あれだけの激戦だ。得るものがあるなら歓迎したい所だな。できるならオーガサイズの魔剣。良くて矢じりか。銃も欲しい所だがオーガサイズの銃など間違いなく暴発するだろうな。俺が妄想を膨らませているとリンセスがやってきた。
「おかえりなさい。ダンナ」
「ただいまだ。リンセス。またゴブリンの子供が増えたな」
「ええ。ああそうだ。ゴブリンが名前変えたの知ってる?」
俺が被りを振る。
「新しい名前はリンキン。ゴブリンキングのリンキンですって」
「確かにそれはアイツのネーミングセンスだな。まさかリンセスまでゴブリンクイーンのリンクイか?」
「私はリンセスのまま。私にはいつまでもお姫様でいて欲しいってリンキンが」
「あいつがそう簡単に口を割るか」
「もう。なんでわかるの。そう。中々教えてくれなくて喧嘩までしたんだから。新しいクイーンが別にいるんじゃないかって」
「まあ、ゴブ、リンキンか。アイツは確かにモテそうだからな。その気持ちはわかる」
「そうでしょ。私が泣くまで教えてくれなかったんだから」
それは辛かったなと頭を撫でるとしばらくはのろけが続いた。この二人は問題なさそうだな。それにしてもリンキンか。色々な所に転生者がいる状態では名を変えるのが正解だな。あの頃と違って危険を呼び込むだろう。成功している転生者というだけで妬むものが出てくるかもしれない。魔物はともかく人間には多そうだからな。
丁度いいタイミングでアリエスの帰還が届いてきた。この場なら何が起きても大丈夫だろう。リンセスにそれを伝えると微妙な表情が返ってきたがそれでも受け入れてくれるようだ。俺は壁側にインナースペースの入り口を向ける。流石にこの入り口は怖がらせてしまうだろう。
「ただいま戻りました。わが父」
あの時は助かったと声をかけようとして俺は絶句した。アリエスの膨らんだお腹をみてリンセスの平手打ちが飛んでくる。まあ、そうなるな。
「それを聞いてもいいのか?」
「はい。わが父。紹介したい方が居ます。今はここに」
そう言って腹を撫でる。
「わが最愛の夫はここに居ます。わが父の中で出会い。共に居るために私の中で生まれかわることを選びました」
つまりどういうことだってばよ。
助けを求めてリンセスを見るが頷くだけで分かったというような顔だ。
俺が分かってないんだってばよ。
「つまりどういうことだってばよ」
流石の俺も言葉が出ない。いや本音が出てしまった。
「はい。お話します。わが夫は王牙様が言う所の悪魔です。私が王牙様の中に入る時に侵入してきたのです」
やはり悪魔は俺に取り付いていたのか。あの毛皮に執着していたのは悪魔の魅了か何かか。
「その時は敵対していましたが、その、王牙様と奥方様が、その、愛を語られ始めて、愛で世界が埋まりました」
あの時か。
「はい。王牙様が昇天した、死んだと、と聞いて慌てた私達は力を合わせてその状況を知ろうとしたのです。そして私達は愛し合いました」
俺の中で何をしているんだコイツラは。
「でもだからこそ私は帰ってくることが出来ました。夫が私を、消えかける私を常に補完し支えてくれました。彼の中にあるアリエスが私をここに留めてくれたのです」
そこは感謝だな。アリエスを守っていたのなら全て許そう。
「そして夫の怨敵である皇帝との戦いで彼は皇帝に操られる所でした。中から王牙様を攻撃せよと」
俺の知らない所で何が起こってるんだってばよ。
「そこでわが父。貴方が夫の体を取り戻してくださいました」
あれか。皇女の灰色の羽か。
「体を取り戻した夫はその力を王牙様に渡し、自身は自分を改変するために私の中へ。それで皇帝の魔の手から逃れたのです」
理屈はわかった。
「そうか。そいつには礼を言わねばな」
「はい。わが夫も喜びます。ですがしばらく時間をください。彼が今一度生まれかわるまで」
「承知した。リンセス。聞いての通りだが誤解は解けたか?」
「うん。ごめんねダンナ。あの話の流れでつい」
「ではアリエスを頼めるか?」
「任せて」
快い返事だ。頼もしいな。
「はい。わが父。リンセス。お世話になります。私を受け入れていただけますか?」
「勿論。何でも聞いて、アリエスで良いんだよね」
「はい。わが父に貰った名です。これを違えることはありません」
そして月日がたち無事生れた悪魔はすくすくと成長し立派な青年になって表れた。いや、単純に成長スピードが速すぎただけだ。手間がかからないとリンセスがぼやくぐらいには速すぎた。
「わが父。オーガ様。私を受け入れてもらえますか?」
黒髪黒目で肌も黒い。アラビアンな美丈夫だ。相当なイケメンだな。アリエスが落ちるわけだ。そもそも悪魔だったか。
「受け入れよう。悪魔よ名はあるか?」
「いえ。名は捨てました」
「ではタウラスと名乗れ。二番目を意味する名だ。その名を捨てる時が俺への信仰を捨てた時とみなす」
「ハッ。アリエスともどもオーガ様にお仕えします」
「アリエスから聞いてはいると思うが俺の信仰は双方向だ。お前の信仰を受けとった俺はお前への信仰も持ち合わせている。意味が変わるか?」
「わが父。貴方が私に人間の可能性を見ているのですか?」
「違う。俺のお前への信仰はただ一つ。アリエスの伴侶としてアリエスを守ってきたことだ。俺の信仰するアリエスを守ってくれた。ただそれだけで足りる。これからも頼む」
「お任せください。わが父」
「ありがとうございます。わが父」
これはアリエスだ。二人で寄り添う姿は様になっている。
いやしかしアリエスを嫁にするとは流石だな悪魔は。正直並みの男では務まらない大役だろう。それだけでも感謝したい所だ。しかし何故俺に信仰を求めるのだろうな。皇帝から救った恩義と討ち果たしたという事なのだろうが仮にも悪魔を名乗る男がなぜというのはある。
「タウラス。一つ聞きたい悪魔とはなんだ?」
「それは私がこの星の外から来たからです」
は?
「ほら見ろ王牙。宇宙人はいるじゃないか」
おおう。予想外過ぎてぐうの音も出ない。どうりで技術体系が違うわけだ。
「シノ様は宇宙の事をご存じで?」
「言葉だけだがな。それとタウラス。私に様付けはやめろ。私は王牙の伴侶だが神ではない。祭り上げられるのは不愉快だ」
「わかった。シノと呼ばせてもらう。シノは宇宙人に会ったことがあるのか?」
「目の前にいるだろ。お前の信仰する神だ」
「わが父。貴方も星の外から来たのですか?」
目がキラキラしてるな。
「異世界人だ。それと俺も様付けは遠慮したい。あれはアリエスだけで十分だ」
「わかった。わが父。王牙。僕も普通に話させてもらう。それにしても異世界人とはどういう冗談なんだ?」
おおう。タウラスお前もか。
「王牙。これが普通なんだ。お前の異世界という戯言などより星渡を名乗れ。宇宙人に信仰されてるんだぞ」
ぐうの音も出ない。
「ゴブリン、じゃないリンキン助けてくれ」
俺が助けを求めると何やら考え事をしながらこちらにやってくる。
「なあ、旦那。タウラスの次はジェミニだよな。そこは俺達リンキンとリンセスで埋めるのはどうだ?」
「リンキンお前もか。それは構わんがインナースペースに入れろとは言うな。これは冗談で済む話じゃない。アリエスでさえ消えかけたのだからな」
「そこまでは言わねぇよ。旦那教だからゾディアックだろ。鬼悪教で。オニアック教でどうだ。良い名だろ」
「広めようとするな。そもそもアリエス自体がイレギュラーなんだ。増やす予定などなかった。タウラス。なぜお前は俺を信仰する?」
「それは言わなくてもわかるだろう、わが父。アリエスを守ってくれたからさ。貴方と同じだ」
「ありがたい。俺以外に信じること事が出来る存在がアリエスに欲しかった。俺のお前への信仰が上がったぞ」
「あの時の好感度という奴か。確かに僕も聞いたことがない。異世界では感情が力になるのか?」
「それは俺の世界の遊戯の話だ。それを流用しただけだ。実際に起こる現象ではない」
「そうか。でもそれが僕とアリエスを結び付けた。その点では力になる」
「じゃあ式はいつ上げるんだ? まだやってないんだろ? パーッとやろうぜ。オニアック教の初の仕事だ」
「リンキンそのネタをまだ引っ張るのか。心が通じ合えば式などふよ・・・オオオーッ」
俺の体が燃え上がる。物理的に炎の渦が渦巻いてくる。生成魔法は流石に読めない。
「わが父。式はあなたの愛娘リンセスが執り行います。任せていただけますか?」
何か言おうとしたが口が動かん。まさかの魔物は熱に弱いのか? 魔素の消費は少ないが細部の動きが阻害されている。こんな時に新しい発見か。
「王牙様。今治します。リンセス。嬉しいけどやり過ぎですよ」
「ごめんなさい。ダンナ。こんなに効くとは思わなくて」
アリエスの回復で細部が動き出す。
「俺も意外だった。後で生成魔法を試してもらえるか? 高温で動けなくなるなら低温も試しておきたい。あの火の渦はまだ威力を上げられるのか?」
「勿論。火力も冗談程度だもの。式もそれでいいのよね」
「ああ。アリエスが嬉しいというのなら俺は何も言わん。それでいいのだろう?」
「本当にダンナはそういうの嫌いだよね」
「違う。俺が祝い事や贈り物をすると碌な事がおきんのだ」
「わが父。それはどういうことか聞いてもいいのでしょうか」
「それは私が話そう。こいつは贈り物が不幸を呼ぶといって私に呪いの指輪をはめるような奴だ。呪いなら不幸にならないというが貧乏くじは散々引かされたものだ」
「王牙様。これはあまりにも酷過ぎます。本物の呪いではありませんか」
「そう、これが普通の感想だぞ。王牙。アリエス。お前たちもおいおい知ることになるがその時まで信仰が続くかな。王牙、お前を受け入れられるのは私だけだぞ。憶えておけ」
また悶着の始まりか。なんとも騒々しくなってきたものだ。
だが、まあ、このおままごとも俺の居場所の一つになりつつあるな。
「おかえりなさい。ダンナ」
「ただいまだ。リンセス。またゴブリンの子供が増えたな」
「ええ。ああそうだ。ゴブリンが名前変えたの知ってる?」
俺が被りを振る。
「新しい名前はリンキン。ゴブリンキングのリンキンですって」
「確かにそれはアイツのネーミングセンスだな。まさかリンセスまでゴブリンクイーンのリンクイか?」
「私はリンセスのまま。私にはいつまでもお姫様でいて欲しいってリンキンが」
「あいつがそう簡単に口を割るか」
「もう。なんでわかるの。そう。中々教えてくれなくて喧嘩までしたんだから。新しいクイーンが別にいるんじゃないかって」
「まあ、ゴブ、リンキンか。アイツは確かにモテそうだからな。その気持ちはわかる」
「そうでしょ。私が泣くまで教えてくれなかったんだから」
それは辛かったなと頭を撫でるとしばらくはのろけが続いた。この二人は問題なさそうだな。それにしてもリンキンか。色々な所に転生者がいる状態では名を変えるのが正解だな。あの頃と違って危険を呼び込むだろう。成功している転生者というだけで妬むものが出てくるかもしれない。魔物はともかく人間には多そうだからな。
丁度いいタイミングでアリエスの帰還が届いてきた。この場なら何が起きても大丈夫だろう。リンセスにそれを伝えると微妙な表情が返ってきたがそれでも受け入れてくれるようだ。俺は壁側にインナースペースの入り口を向ける。流石にこの入り口は怖がらせてしまうだろう。
「ただいま戻りました。わが父」
あの時は助かったと声をかけようとして俺は絶句した。アリエスの膨らんだお腹をみてリンセスの平手打ちが飛んでくる。まあ、そうなるな。
「それを聞いてもいいのか?」
「はい。わが父。紹介したい方が居ます。今はここに」
そう言って腹を撫でる。
「わが最愛の夫はここに居ます。わが父の中で出会い。共に居るために私の中で生まれかわることを選びました」
つまりどういうことだってばよ。
助けを求めてリンセスを見るが頷くだけで分かったというような顔だ。
俺が分かってないんだってばよ。
「つまりどういうことだってばよ」
流石の俺も言葉が出ない。いや本音が出てしまった。
「はい。お話します。わが夫は王牙様が言う所の悪魔です。私が王牙様の中に入る時に侵入してきたのです」
やはり悪魔は俺に取り付いていたのか。あの毛皮に執着していたのは悪魔の魅了か何かか。
「その時は敵対していましたが、その、王牙様と奥方様が、その、愛を語られ始めて、愛で世界が埋まりました」
あの時か。
「はい。王牙様が昇天した、死んだと、と聞いて慌てた私達は力を合わせてその状況を知ろうとしたのです。そして私達は愛し合いました」
俺の中で何をしているんだコイツラは。
「でもだからこそ私は帰ってくることが出来ました。夫が私を、消えかける私を常に補完し支えてくれました。彼の中にあるアリエスが私をここに留めてくれたのです」
そこは感謝だな。アリエスを守っていたのなら全て許そう。
「そして夫の怨敵である皇帝との戦いで彼は皇帝に操られる所でした。中から王牙様を攻撃せよと」
俺の知らない所で何が起こってるんだってばよ。
「そこでわが父。貴方が夫の体を取り戻してくださいました」
あれか。皇女の灰色の羽か。
「体を取り戻した夫はその力を王牙様に渡し、自身は自分を改変するために私の中へ。それで皇帝の魔の手から逃れたのです」
理屈はわかった。
「そうか。そいつには礼を言わねばな」
「はい。わが夫も喜びます。ですがしばらく時間をください。彼が今一度生まれかわるまで」
「承知した。リンセス。聞いての通りだが誤解は解けたか?」
「うん。ごめんねダンナ。あの話の流れでつい」
「ではアリエスを頼めるか?」
「任せて」
快い返事だ。頼もしいな。
「はい。わが父。リンセス。お世話になります。私を受け入れていただけますか?」
「勿論。何でも聞いて、アリエスで良いんだよね」
「はい。わが父に貰った名です。これを違えることはありません」
そして月日がたち無事生れた悪魔はすくすくと成長し立派な青年になって表れた。いや、単純に成長スピードが速すぎただけだ。手間がかからないとリンセスがぼやくぐらいには速すぎた。
「わが父。オーガ様。私を受け入れてもらえますか?」
黒髪黒目で肌も黒い。アラビアンな美丈夫だ。相当なイケメンだな。アリエスが落ちるわけだ。そもそも悪魔だったか。
「受け入れよう。悪魔よ名はあるか?」
「いえ。名は捨てました」
「ではタウラスと名乗れ。二番目を意味する名だ。その名を捨てる時が俺への信仰を捨てた時とみなす」
「ハッ。アリエスともどもオーガ様にお仕えします」
「アリエスから聞いてはいると思うが俺の信仰は双方向だ。お前の信仰を受けとった俺はお前への信仰も持ち合わせている。意味が変わるか?」
「わが父。貴方が私に人間の可能性を見ているのですか?」
「違う。俺のお前への信仰はただ一つ。アリエスの伴侶としてアリエスを守ってきたことだ。俺の信仰するアリエスを守ってくれた。ただそれだけで足りる。これからも頼む」
「お任せください。わが父」
「ありがとうございます。わが父」
これはアリエスだ。二人で寄り添う姿は様になっている。
いやしかしアリエスを嫁にするとは流石だな悪魔は。正直並みの男では務まらない大役だろう。それだけでも感謝したい所だ。しかし何故俺に信仰を求めるのだろうな。皇帝から救った恩義と討ち果たしたという事なのだろうが仮にも悪魔を名乗る男がなぜというのはある。
「タウラス。一つ聞きたい悪魔とはなんだ?」
「それは私がこの星の外から来たからです」
は?
「ほら見ろ王牙。宇宙人はいるじゃないか」
おおう。予想外過ぎてぐうの音も出ない。どうりで技術体系が違うわけだ。
「シノ様は宇宙の事をご存じで?」
「言葉だけだがな。それとタウラス。私に様付けはやめろ。私は王牙の伴侶だが神ではない。祭り上げられるのは不愉快だ」
「わかった。シノと呼ばせてもらう。シノは宇宙人に会ったことがあるのか?」
「目の前にいるだろ。お前の信仰する神だ」
「わが父。貴方も星の外から来たのですか?」
目がキラキラしてるな。
「異世界人だ。それと俺も様付けは遠慮したい。あれはアリエスだけで十分だ」
「わかった。わが父。王牙。僕も普通に話させてもらう。それにしても異世界人とはどういう冗談なんだ?」
おおう。タウラスお前もか。
「王牙。これが普通なんだ。お前の異世界という戯言などより星渡を名乗れ。宇宙人に信仰されてるんだぞ」
ぐうの音も出ない。
「ゴブリン、じゃないリンキン助けてくれ」
俺が助けを求めると何やら考え事をしながらこちらにやってくる。
「なあ、旦那。タウラスの次はジェミニだよな。そこは俺達リンキンとリンセスで埋めるのはどうだ?」
「リンキンお前もか。それは構わんがインナースペースに入れろとは言うな。これは冗談で済む話じゃない。アリエスでさえ消えかけたのだからな」
「そこまでは言わねぇよ。旦那教だからゾディアックだろ。鬼悪教で。オニアック教でどうだ。良い名だろ」
「広めようとするな。そもそもアリエス自体がイレギュラーなんだ。増やす予定などなかった。タウラス。なぜお前は俺を信仰する?」
「それは言わなくてもわかるだろう、わが父。アリエスを守ってくれたからさ。貴方と同じだ」
「ありがたい。俺以外に信じること事が出来る存在がアリエスに欲しかった。俺のお前への信仰が上がったぞ」
「あの時の好感度という奴か。確かに僕も聞いたことがない。異世界では感情が力になるのか?」
「それは俺の世界の遊戯の話だ。それを流用しただけだ。実際に起こる現象ではない」
「そうか。でもそれが僕とアリエスを結び付けた。その点では力になる」
「じゃあ式はいつ上げるんだ? まだやってないんだろ? パーッとやろうぜ。オニアック教の初の仕事だ」
「リンキンそのネタをまだ引っ張るのか。心が通じ合えば式などふよ・・・オオオーッ」
俺の体が燃え上がる。物理的に炎の渦が渦巻いてくる。生成魔法は流石に読めない。
「わが父。式はあなたの愛娘リンセスが執り行います。任せていただけますか?」
何か言おうとしたが口が動かん。まさかの魔物は熱に弱いのか? 魔素の消費は少ないが細部の動きが阻害されている。こんな時に新しい発見か。
「王牙様。今治します。リンセス。嬉しいけどやり過ぎですよ」
「ごめんなさい。ダンナ。こんなに効くとは思わなくて」
アリエスの回復で細部が動き出す。
「俺も意外だった。後で生成魔法を試してもらえるか? 高温で動けなくなるなら低温も試しておきたい。あの火の渦はまだ威力を上げられるのか?」
「勿論。火力も冗談程度だもの。式もそれでいいのよね」
「ああ。アリエスが嬉しいというのなら俺は何も言わん。それでいいのだろう?」
「本当にダンナはそういうの嫌いだよね」
「違う。俺が祝い事や贈り物をすると碌な事がおきんのだ」
「わが父。それはどういうことか聞いてもいいのでしょうか」
「それは私が話そう。こいつは贈り物が不幸を呼ぶといって私に呪いの指輪をはめるような奴だ。呪いなら不幸にならないというが貧乏くじは散々引かされたものだ」
「王牙様。これはあまりにも酷過ぎます。本物の呪いではありませんか」
「そう、これが普通の感想だぞ。王牙。アリエス。お前たちもおいおい知ることになるがその時まで信仰が続くかな。王牙、お前を受け入れられるのは私だけだぞ。憶えておけ」
また悶着の始まりか。なんとも騒々しくなってきたものだ。
だが、まあ、このおままごとも俺の居場所の一つになりつつあるな。
10
あなたにおすすめの小説
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした
高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!?
これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。
日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。
異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。
億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。
彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。
四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?
道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!
気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?
※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる