end of souls

和泉直人

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二章7

斬り払う

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  ギラギラと鈍く光る。
  俺を睨む騎士達の目。
  その手に握られる剣。

  「よくもイゴール様を!」

  「マグダウェルの犬がっ!」

  数々の罵声と殺意が、突風の様にぶつけられる。
  ああ、本気でこの地を変えようと努力をしていたんだな、イゴールあんたは。
  そしてそれは末端の騎士にまで伝わっている。
  彼らは革製の小手と長めのブーツ程度の防具のみで、鎧を着けていない。
  資源が乏しい事に加え、この気候だ。
  金属鎧は体温を、体力を奪うだけであろうし、もっと寒い時期なら触れた皮膚が凍って貼り付いて無用の怪我を生む可能性もある。
  眼前には三人、その後ろに二人。
  先ほどの笛の合図が騎士達には理解できるなら、時間をかければ応援は続々到着する。
  それを解っているのだろう、憎々しげな表情と裏腹に騎士達は自ら仕掛けてこない。
  だが時間稼ぎに付き合ってやる余裕も義理も無い。
  前列真ん中の騎士に向かって、右手を前に真半身で踏み込む。
  真半身、正面から見れば的は小さいが、横から見れば隙だらけ。
  真ん中の騎士は、バックラーで身を守る姿勢。
  同時に左右の騎士達が俺の隙を突き、斬りかかってくる。
  まあ、当然わざと見せた隙なのだが。
  勢い殺さず、騎士が構えるバックラーに右前蹴りを放つ。
  軸足の左足を浮かせて。

  「うっ!」

  衝撃に備えてどっしり構えた騎士はわずかによろめいたのみ。
  だが俺は一メートル程だが急速に後退した。
  左右から迫る斬撃の狙いから外れるには充分な距離。

  「うわっ!?」

  乱戦で一番厄介なのは同士討ちだ。
  左右の二人の騎士は標的を見失い、自分の攻撃が仲間に当たりはしないかと恐れ、動きを止める。
  俺の左足裏が石畳に触れる。
  ほぼ同時に右足裏が石畳を捉え、蹴る。

  ひゅん!

  左右一対のショートソードが、硬直した二人の騎士の喉を裂いた。
  噴き出す四条の鮮血がアーチを描く。
  それを潜って、バックラーを構えていた騎士に再び迫る。
  彼の後方に控えていた二人の騎士が動き出すのが見える。

  「強い打撃は必要無い。防御をノックしてこじ開けるイメージだ」

  長官の言葉が思い出される。
  目前に迫る俺に、押し付ける様にバックラーを掲げる騎士。
  彼の視界も塞がれるが、バックラーに衝撃を感じた瞬間に反撃するつもりだろう。
  俺は左足を軽く挙げ、

  ごん

左大腿四頭筋で、振り子の様に脱力した膝下を振って爪先で打つ。
  騎士のすねを。
  びくっと身体が震える。
  誰でも想定外の衝撃には動揺するもの。
  ほら、間合いも確かめずバックラーを振って、剣で突いてきた。
  バックラーの打撃を上体反らしスウェーで空振らせ、突く剣身ブレイドを、

  がん!

横から右手のショートソードのガードでぶっ叩く。
  勢いの乗らぬ剣は、切っ先が彼のほぼ真横に向くまで弾かれた。
  それは狙い通り、左後方の騎士への牽制となり、動きを止めさせた。
  剣に自ら突っ込む馬鹿は居ない。
  両手の武器、盾を振り回されて無防備になった騎士の左腰を、右足で蹴りつけてやる。

  「うおっ」

  バランスを崩し、右後方の騎士を巻き込んで倒れる。
  右脚を戻すその動きの延長で、動きを止めていた左の騎士へ踏み込む。
  中央の騎士が倒れて牽制が解けた彼は、俺を迎え撃つ為剣を振り下ろしてくる。
  だが慌てて放つ攻撃など格好の餌食だ。

  がっ!

  左手のショートソードのガードで受け、その力をブレイドの振りに換える秘技。
  ざっくり裂かれた喉から返り血を受けつつ、次の行動へ。
  もつれ倒れたままの騎士達。
  バックラーを持った騎士は……巻き込まれた騎士の剣に全体重が乗ったらしい。
  腹からブレイドが生えていた。
  巻き込まれた騎士は仲間を刺した事に動揺し、顔面蒼白だ。
  その顔面に、

  ごづっ!

躊躇の無い、踏みつけめいた蹴りで踵を叩きつける。
  石畳と蹴りで挟まれた形だ。
  恐らく命は無い。
  ビクビクと痙攣する彼の服で、ショートソードの血糊を拭く。
  俺の耳に、近づいてくる多数の足音が届いた。
  とりあえず汚れを落とした得物を一旦鞘に納め、俺は再び走りだす。
  裏切り者の『耳』を追う為に。
  街は夕刻にさしかかる。
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