迷える子羊少年と自称王様少年

ユー

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子羊少年と王様少年

61.もう一度、君と

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「それじゃあオレ達ももうすっかり元の関係に戻った事だし、そろそろいつもの様に王の政活動に出発するとしようじゃないか!
ココロ、クウガ、そして子羊くん、準備は良いか!?」
「うん…ぼくはいつでも出発して…大丈夫だよ…。」
「自分も準備OKっすよ!」 

 また暫くの時間が経ち、ボクがひたすら可愛いと弄られ続けるやり取りも漸く落ち着くと、フウマは出発の号令を掛け始めた。
それに対してボクは、彼に少し聞きたくなってしまった事が出来て、それを恐る恐る尋ねて見る事にした。

「あのボクは…ちょっといい…?」
「うん?どうした子羊くん!
何かあったか?」
「その、子羊くんって呼び方…。
き、君の中でボクってまだ迷える子羊なのかな?って…。」

 その独特のあだ名に最早愛着の様なものは湧いてしまっているとはいえ、それでもやっぱりココロやクウガは普通に名前で呼んでいるのに、
どうしてボクはそんな変なあだ名でしか呼んで貰えないんだろうって気持ちはずっとあった。
フウマがボクを子羊くんと呼ぶその意味や真意は、昨日話している中で教えて貰う事ができて、それに凄く納得はいったのだけど。
だからこそ思うんだ。

 彼にはまだボクが迷っているように見えるのかなって…。
昨日の今日ではあるし、ボクは今でも些細な事で悩んでしまうようなそんな奴だけど。
でも少なくとももう、フウマ達と一緒にいる事に関してだけはもう迷いはしないと、そうはっきり言える位の自信はあるつもりなんだけどなぁ…。
でもフウマの中ではまだボクは迷える子羊扱いなのかなって…そう思ったら何だか悔しくなって、思わず聞いてしまった。

 そんなボクの問いにフウマは最初目をぱちくりとさせながらとても驚いた顔をして、でも暫くするとその顔は笑顔に変わっていった。

「そうか、それもそうだな。
そうだよな!君はもうオレが導いてやらなければならない、迷える子羊の様な存在なんかじゃなかったな!
君は自分の足でしっかり立ち、進んで行く事が出来る、そんな強い人なんだものな!
これは失礼していたなぁ…。

…だから君へと改めて、言葉を送ってもいいだろうか?」

 そう言うとフウマはボクの直ぐ近くまで近づき、ボクを正面から真っ直ぐ見据える様にして、笑顔で高らかに宣言した。



「君の持つ素晴らしい力、そして更にそれ以上に君の持つその高潔で気高き精神!
偉大な王たるオレの側にふさわしい!

だからこれからもオレの大切な家来として、オレと共に歩き続けてくれないだろうか…っ…!!」

「っ!!」





……我ながら単純だなぁとは思うのだけど、フウマのその言葉に、ただフウマが初めてボクの名前を呼んでくれたというそれだけの事実に、
ボクの心は嬉しいという感情で埋め尽くされるかの様に一杯になって、胸がとても温かくなった。

 そして同時にボクはその言葉から、ある記憶がフラッシュバックされた。



――【その素晴らしい力は偉大な王たるオレの側にふさわしい!迷える子羊くん!今日から君はオレの家来だ!!】――

――【あ、あの…ボク家来?になんてなりませんから!もう帰ります…さよならーーーっ!】――


 そうだ…。
転校初日のあの日、この教室で、今貰った言葉の様に、ボクがフウマから家来へと誘われた。
それがボク達の全ての始まりだったんだ…。

 それから随分と遠い所まで来たんだなぁ…。
そこまで昔の出来事な分けではないはずなのに、そうやって、あれから色んな事があったよなぁ…と思わず懐かしんでしまう程だった。

 初めて会った時はそんなフウマの言葉にボクは嫌悪感しか抱いていなかったというのに、今は同じ様な言葉でもこんなに嬉しさで一杯になるなんて!
本当言葉の感じ方って不思議だなぁ…。
でもその不思議さに、なぜか益々嬉しさが増して来てしまって、だからボクもフウマから貰った色んな嬉しい気持ちを少しでも返せる様に、頑張って勇気を出して口を動かした。



「こちらの方こそ、君みたいな強くて優しくて温かい、そんな素敵な人の側にいる事が出来る事がとても誇らしくて尊い事だって、そう思う。

だからこっちこそボクも、これからもそんな大好きな王様と一緒に歩かせて貰ってもいいかな……フ、っ…!!」






 実は心の中では当たり前の様に呼んでいるフウマの名前を、本人に向かって口に出して直接呼べた事は今まで殆どなかった。
それをやっときちんとした形で呼ぶことができた。
初対面が最悪な出会い方だったのもあって、最初は名前を気安く呼びような関係でもなかったし、それにあっちも名前で呼ばないし。
そこからなし崩し的に関係が進んでいってしまっていたから、中々名前を呼ぶタイミングが掴めなかった。
でもフウマがボクの事をやっと名前で呼んでくれのだから、それにせめてものお返しをしたいと勇気を振り絞って口に出して見る事にした。
名前を呼ぶ合うという、他の人からしたら何て事のない普通の事が、こんなにも嬉しく感じるなんて思いも寄らなかったなぁ…。

 それから同時にやっぱり、初対面の時は否定の言葉を振り絞りながら逃げる事しか出来なかったフウマの言葉に、真っ直ぐ正面から好意へ好意をはっきり返す事が出来ている。
それが本当にたまらなく嬉しいんだ!!

 王様と家来という関係を喜んで笑顔で受け入れている、そんなの他の人から見たらおかしいと思われてしまう様な、普通じゃない関係かも知れない。
でもそれでいいと思う。
普通じゃないし、他の人と違うかも知れないけど、ボク達にとってはそれが特別で大切なんだから!
それでいいんだ!!

 ボクはそんなフウマ達との関係を一度諦めて逃げてしまったというのに、今はまたこうして共にいる事ができている。
そして今はフウマの言葉に胸を張って言葉を返す事が出来ている。
そんな奇跡の様な"今"がたまらなく嬉しくて、何より凄く誇らしい!!


 そしてそんなボクの返答に対して、フウマはその整った顔がだらしなく崩れてしまう位、満面の笑みを浮かべていた。


「もちろんだぞーーーーー!!
ソウジーーーーーーーーーーっ!!!」

 すると、そうやって叫びながら、ボクに飛び付く様にして抱き付いて来た。
それに少し恥ずかしくはなったけれど、でもボクもやっぱり嬉しくもなって抱き締めるフウマを更に抱き締め返していた。

 そんなボク達二人の様子を、ココロとクウガも微笑ましいものを見るような目線で優しく笑いながら見守ってくれている。
そんな和やかな雰囲気を形作るもの全てが、ボクの唯でさえ嬉しさで一杯な気持ちを 、さらに嬉しい気持ちで満たしていく。

 そうボクは、そんなボクが大好きだった温かくて優しい幸せな世界の人達と、再び一緒にいる事が出来てるんだ。
なんて、なんて、あったかいのだろうっ…!!


――あぁ…今ボク、本当に幸せだ!!――


 そう、この瞬間ボクは再び心の底からそう思えたんだ。
 
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