『硝子越しの春』

ぱんだちゃん

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第三章:職務の境界線

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夜勤の仮眠時間、私は事務所の片隅でこっそりパソコンを開いた。
職務を逸脱しているのはわかっている。だけど、あの目が、どうしても頭から離れなかった。

閲覧権限ギリギリの範囲で彼の記録を追っていく。
被害者は妻。
発見されたのは自宅。
争った形跡はなく、指紋も彼のものしかなかった。

――なのに。

「検出された凶器から、血痕は出ていない?」

私は画面を食い入るように見つめた。
警察の報告書には、まるで既定路線のように「犯人=夫」として処理された過程が淡々と記されている。
肝心な部分の裏付けが、どこにもない。

まるで、「最初から彼を犯人にするために用意された話」にしか見えなかった。

「なんで、誰も疑問に思わなかったの…?」

手が震えた。
私は、気づいてはいけないことに触れてしまったのかもしれなかった。

でももう、戻れない。
あの目を、もう一度見て確かめたい。

「あなたは、本当に無実なんだよね…?」
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