『硝子越しの春』

ぱんだちゃん

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第四章:ふたりだけの時間

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「面会……?」

「非公式な確認です。規則には抵触しません」

無理やりこじつけた理由で、私は彼に会う許可を取った。
彼は驚いたように私を見た。でもすぐに、ゆっくりと口角を上げた。

「また、来てくれたんだな」

「……あなたの事件記録、見ました。おかしいところが、いくつもあった。」

彼は黙って私を見つめていた。
私の目を、心を、まっすぐに見ていた。

「あなた、本当にやってないんですね」

「信じるのか?」

「……信じたいんです」

私は、言ってしまった。
感情を交えるべきじゃない。でも、もう止められなかった。

彼はそっと息を吸い込んで、ふっと笑った。

「ここに来てから、ずっと『信じてほしい』って誰かに叫びたかった。でも、誰にも届かなかった。……君に出会うまでは」

一瞬、部屋の中の空気が変わった気がした。
ガラス越しなのに、彼の体温が伝わってきそうだった。

「名前、まだ聞いてなかったな。君の」

「……橘(たちばな)です。橘 沙耶(さや)」

「いい名前だ。優しい響きだ」

そう言った彼の声に、胸が少しだけ痛くなった。
私はもう――刑務官としての一線を越えかけている。
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