『硝子越しの春』

ぱんだちゃん

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最終章:扉の外

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その日、空は澄んでいた。
春の風が、刑務所の門の前をやわらかく通り抜けていく。

長い長い再審の末、
彼の無罪は正式に認められた。

冤罪と戦い、罪人として奪われた月日は、戻らない。
でも、これからの人生が誰かとともにあるのなら、それは赦されていく。

扉が、静かに開いた。

「……遅い」

沙耶はそう言って、彼を迎えた。
スーツ姿の彼は、もう囚人ではなかった。
だけど、どこか不器用に立っていた。

「ここまで、歩いてくるのが……怖かった」

「でも、ちゃんと歩いたじゃない」

「……あぁ。君がいたから」

彼の声は震えていた。
けれどその手は、迷いなく伸びてくる。

沙耶はそれを握り返した。
もう、ガラス越しじゃない。何も隔てるものはなかった。

「これから、どうする?」

「まずは……君と、ちゃんとご飯を食べたい」

「それだけ?」

「それが一番、俺にとっては大きい」

ふたりは歩き出す。
同じ歩幅で、同じ未来へと。

誰も知らない痛みを抱えながら、
それでも――愛を選び、信じた結末。

春の空の下で、
ふたりは、ようやく「自由」を手に入れた。



― The End ―
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