8 / 14
第八章「嫉妬という名の愛」
しおりを挟むその夜、夕飯のあと、珍しく悠真さんが黙っていた。
「どうしたの?」
「……真帆さ、あのバイト、気に入ってる?」
「うん。まだまだ失敗ばっかりだけど、やりがいはあるし……」
「……Danってやつ、君に気があると思う」
私は驚いて、言葉を失った。
「そんな……ただの親切だよ」
「男の親切なんて、大抵は下心がある」
その言い方に、私は少しムッとした。
「……そんなふうに思うなんて、悠真さんこそ信用してないんじゃ……」
「違う。俺が怖いのは……真帆が苦労してるのを見て、守ってやれてない自分なんだよ」
彼の目が、私を真っすぐに見つめていた。
「真帆が誰かに寄りかかりたくなるくらい辛いなら……俺は、嫉妬じゃなくて、自分に怒ってる」
その言葉に、胸が締め付けられる。
私はそっと彼に近づき、抱きしめた。
「私はあなたがいいの。あなたじゃなきゃ、意味がない」
彼の腕が、強く私を抱き返す。
私の手が、自然に彼の頬へと伸びる。あたたかくて、少しだけ強ばった肌。指先で撫でると、彼のまぶたがゆっくり伏せられた。
「……あなたの腕の中が、私のいちばん安心できる場所なの」
そう呟いたときには、彼の手が私の背中を抱き寄せていた。ぴたりと肌が触れる距離。そこから、熱がじわじわと広がっていく。
キスは、いつもより深く、そしてゆっくりだった。
唇を重ねるたび、想いがにじむ。何度も触れてきたはずなのに、今夜はどこか新鮮で、切ない。
悠真の手が私の腰を包み、Tシャツの裾をたくし上げた。冷たい指先が肌に触れ、思わず小さく息をのむ。
「やっぱり、俺のものだ……」
彼の声が、低く、かすれて耳元に落ちる。
そのまま、ベッドへ押し倒された。
彼のキスは首筋へ、鎖骨へと移動しながら、じらすように熱を注いでくる。私は身をよじりながら、彼の背中に腕を回した。
「もっと……触れてほしい」
そう言ったとたん、彼の動きがわずかに荒くなった。
手のひらが胸を包み込む。親指で転がすように撫でられるたび、全身が痺れるような感覚に包まれた。
下着が外され、指が、舌が、私の奥へと進んでいく。
「声、我慢しなくていいよ」
そう囁かれ、堰を切ったように、甘い吐息が漏れた。
彼の指がリズムを刻み、私の身体を高ぶりへ導いていく。
そして――
「入れるよ」
ゆっくりと、でも確かな熱が、私の中に押し込まれる。
「……あ……」
身体がいっぱいになる感覚。痛みよりも、安心が勝っていた。私のすべてが、彼に包まれている。
彼の腰が動き始める。
ゆっくりと、そして徐々に強く。律動のたびに、彼の熱が深く届き、私の奥を掻き立てる。
「真帆……俺、真帆の全部が欲しい」
「うん……全部、あげる……」
抱きしめ合いながら、何度も何度も、交わった。
最後は、ふたり同時に高みへと達した。
彼が深く押し込んだまま、私の名をかすれ声で呼んだとき、私は確信した。
――この人となら、どんな苦しみも越えていける。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる