田舎町でこんな出会いがあるなんて

ぱんだちゃん

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第1話:電車は1時間に1本だけ

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電車が来るのは、次が午後2時17分。
駅のベンチで缶コーヒーを飲みながら、私はその時刻表を何度も見つめていた。

「……うそでしょ。ほんとに1時間に1本なんだ……」

元・客室乗務員、30歳。東京育ち、都会暮らし歴30年。
そんな私が、突然“電車の音が聞こえない町”に引っ越してきた理由なんて、ざっくり言えば「人生リセット」ってやつだ。

不規則な勤務、日付が飛ぶようなフライトスケジュール、長く続いた恋の終わり——
何もかもに疲れた私は、地図も見ずに「なんか静かそう」と感じたこの町に決めた。

正直、今でも現実味がない。
けれど、なぜだろう。こんなに空が広い場所に来たのは、たぶん人生で初めてで、ちょっとだけ——少しだけ、気持ちが軽くなった。

「すみません、それ、隣いいですか?」

低めで落ち着いた声が耳に届いて、顔を上げた瞬間、私は思わず息をのんだ。

スーツが似合いすぎる長身の男性。
黒髪に軽くかかったゆるいパーマ。シャープな輪郭に、やや垂れた涼しげな目元。
すっと通った鼻筋に、口角の上がった柔らかな笑み。
何より、風に乗ってふわりと届いた香水の香りが、心の奥までふっと入り込んでくる。

……何この人。田舎の駅に現れるレベルじゃない。完全に“違う世界の人”。

「あ、はい、どうぞ」

彼は礼儀正しく軽く会釈して、私の隣に座る。
スーツの生地がさらりと揺れて、腕に覗く筋肉のラインが目に入った。

細身だけど、鍛えられてる。
そう思った瞬間、心臓がトクンと跳ねたのが、自分でもわかった。

「電車、全然来ませんよね。僕も、最初はびっくりしました」

「……引っ越してきたばかりで。東京にいたんですけど、ちょっと、疲れて」

「奇遇ですね。僕も少し前に東京からこっちへ」

「……そうなんですか?」

「ええ、まあ。仕事の都合で。……田舎も、悪くないなって思ってるところです」

そう言って彼がこちらに向けた微笑みに、心のどこかがゆっくり溶けていくのを感じた。
この町に来て、初めて会話した人。なのに、どうしてだろう。
初対面なのに、ほんの少しだけ懐かしい気がした。
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