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十六手目
対局予約
しおりを挟む「団体。」
目を見合わせる三人。
たもるが少し慌てて話しだす。
「あ、あの、ちょっと、私、とても弱くて、団体なんて、現実味が無さすぎます!」
「いやいや、俺だって弱いって!」多治木が笑って返す。
「団体、作ってみない?まだ互いに何も分からない状況だけど!そこを敢えてさ!」吉田も笑いながら、たもると多治木に促す。
「団体戦に向けて練習とかするのか、なんか熱いなそれ!高校の部活、思い出すわ!」多治木が段々乗り気になってくる。
「ち、ちなみにですけど、吉田さんと多治木さんは、居飛車党、振り飛車党どっちですか?」たもるが問いかける。
将棋にも党がある。
将棋における党とは、
とてつもなく清いものである。
一般的に言われるのは、
居飛車党と振り飛車党である。
「俺は居飛車党かな、弱々だけど。」そう言って、多治木がビールを飲み干す。
「大将ビールおかわり、3つお願いします!」吉田が叫ぶ。
「はいよぅ!」
「俺は秘密だ!たもる君に手の内は明かさない!そうだ、明日の昼休み、1階の総務課の奥の休憩室で俺と将棋指さない?」
吉田の頬が少し赤くなってきた。
「いいんですか!是非よろしくお願いしたいです!あ、ところで、吉田さんと多治木さんって、おいくつなんですか?」
「22!」二人が同時に伝える。
「誕生日が来て、23になる年!」
「え!そうなんですか!!
実は私も誕生日来ると23なんです!」
「まじか!同級かよ!どこでダブったんだよ!!」
今日一番の盛り上がり。
「中学に上がる時です!」
「それはないわ!それだけは、ない!」
「すみません!去年です!就職活動に、失敗しました!」たもるが、正直に伝える。
「そうなのか!大変だったね!おめでとう!就職祝いしよう!よし、も一度!乾杯!!」
吉田と多治木がたもるを
大きく祝福した。
「ありがとうございます!でも、社会人としては、先輩なので、
敬語使わせて下さい!」
「いやいや、タメ語でいいでしょ!ここはさすがに!」多治木が入る。
「では遠慮なく、吉田、多治木、よろしくな!」
「さすがにすぐにはイラつくわ!!」
「すみません!!!吉田先輩!
多治木先輩!」
「呼び捨てのバツとして、たもるは新戦法をうみだすこと!団体戦で劇的に勝てるような、新戦法をな!」吉田、圧力行使。
「そんな!無理ですって!」正座を続けるたもるが深々と謝罪する。
「足崩していいって!いやでも、定跡知らないたもるは、たもるだけの戦法、きっとつくれるって!」
「夏目流うなぎ飛車とかネーミングセンス良くね?」
「うなぎ飛車ってなんだよ!」
三人の笑い声が、漆石に響き続けるのであった。
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