プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

ガトー

文字の大きさ
62 / 264
5年生 冬休み明け

公園の美少女

しおりを挟む
「ユーリ、ちょっと落ち着け! 話せば分かる!」

「やー! たっちゃんはだまってて!」

「達也さん、心配しないで、私は大丈夫だから」

 給食の後、ユーリは彩歌あやかを強引に屋上へ連れて行った。
 念のため、彩歌にはユーリの異常な身体能力と、幾つかの特記事項の事は伝えた。
 彩歌は、いざとなれば魔法も使えるし、高耐久と超回復がある。大丈夫だとは思うんだけど。

「ここから先は、誰も行っちゃダメです」

「大声出すわよ! 近づかないで!」

 屋上へ向かう階段には、町田鏡華まちだきょうか橋月日奈美はしづきひなみ歩哨ほしょうとして立っている。この2人に逆らえば、ユーリも敵に回すことになるので、5年生はおろか、6年生ですら誰も屋上には上がれない。ユーリが怒ると怖いのは、学校中の誰もが知っているのだ。

「おいおい、ユーリのヤツ、なんで急に転校生に絡んでるんだ?」

 大ちゃん、ごめん。それは言えない。

「たっちゃん、藤島さん、大丈夫かな」

 栗っちも心配そうにしている。あ、そうだ!

「栗っち、ちょっと〝千里眼〟で2人を見てくれない?」

 何かあれば、無理にでも止めに行かなくては。

「うん、わかった! ちょっと待ってね」

 人集ひとだかりから少し離れて、栗っちが千里眼の構えをとる。

「え? ええ?! ああっ?! そんな!!」

 栗っちがガクガクと震えだした。口を開けたまま、顔色が真っ青になっていく。

「どうした! 何が見えたの、栗っち?!」

 ポロポロと涙を流し始める栗っち。

「まさか……あ……ああ……あう……あう……」

 首を横に振りながら、泣き続ける。語尾が言葉になっていない。

「何が見えてるんだ?! 2人はどうなってる!!」

 栗っちは口をパクパクとするだけで、喋れなくなっていた。何が起きているかはわからないけど、これはマズい!

「ちょっと行ってくる!!」

 助けに行こうとすると、栗っちが僕の服を掴んで止めた。

「だめ、たっちゃん、行っちゃだめ……だめ……」

 僕の目を真っ直ぐ見ながら、涙を流し、首を横に振り続ける栗っち。一体何を見たんだ?!

「2人は無事なのか?!」

 声も出せずに、僕を行かせまいと服を掴んだまま、ただ泣き続ける栗っち。

「何が起こってるんだ?! ちゃんと説明してくれよ!」

 その直後、屋上の扉が開き、彩歌とユーリが降りてきた。

「やー! アヤちゃん、なかなかやるね!」

「友里さんこそ!」

 ガッチリと握手をする2人と、湧き上がる拍手喝采。何だコレ。

「なんか、仲良くなったみたいだな! 良かったぜー!」

 うん。本当に。でも、やっと泣き止んで震えが止まった栗っちを見てると、素直に喜べないんですけど。

「たっちゃん、怖いね。女の子って怖いね」

「何を見たんだよ、栗っち?」

「ああう……怖いよ! 怖いよ!」

 ガクガク震え出し、泣き出す栗っち。

「ああっ! ごめん! もう聞かないから!」

 何か、よっぽど恐ろしい物を見てしまったのだろう。彩歌に直接聞いてみるか。

『彩歌さん、大丈夫?』

『うん、大丈夫! ありがとう』

『上で、何があったの?』

『許して達也さん……それは友里さんのためにも、誰にも言えないし、聞かない方がいいと思う』

 うっわ、気になる! 本当に何があったんだ?!
 ……でもまあ、そこまで言うなら、もう何も聞くまい。

『わかったよ。とにかく無事で何よりだ』

『ごめんなさい。ありがとう!』

 こうして、彩歌とユーリのファーストコンタクトは無事終了した。

「なんで皆、廊下に居るんだ? 授業始めるぞ! 早く教室に戻れー!」

 うわっ! 谷口先生が現れた。
 そういえばこの間、職員室へ呼ばれた時も、突然背後に現れたな。教卓の前だけじゃなく、学校内ならどこでもワープできるのだろうか。





 >>>





『……というわけで、ユーリには敵が居るみたいなんだ』

『友里さんも、普通のヒトじゃないのね……』

 午後の授業中。例によって、ずーっと彩歌と話し込んでいる。もちろん誰にも気付かれないし、超楽しい。

『分かっているとは思うが、私は聞いているぞ、タツヤ。あまりいつもの様な破廉恥はれんちな発言はお勧めしない』

『僕がいつ破廉恥な発言をしたよブルー?!』

 隣の席でクスクスと笑う彩歌。

『そういえば、彩歌さんは何処に住むの?』

『この学校の少し北に、公園があるでしょ?』

『うん、あるある。昔からよく遊びに行ったよ』

『あの公園で野営かな』

 噴き出す僕と、一斉にこちらを見るクラスメート達。咄嗟とっさに咳き込んだフリをして誤魔化し、事なきを得た。

『や……野営って?!』

『こっちでは魔物に襲われる事も無いし、結界無しでテントが張れるから楽よね』

『じゃなくて、どこかで部屋を借りたりとか、しないの?』

 さっき、質問攻めにあってた時に、「公園に」って聞こえた気がしたけど、聞き間違いじゃなかったんだ。

『え……っと、もしかしてテント、駄目?』

『駄目っていうか、ちょっと普通じゃないっていうか……』

『本当に?! 魔界では、テントで生活してる人が多いから、やっちゃう所だった!』

『さすがにこっちの世界では、小学生が公園でテント生活してたら大問題になるよ』

『どうしよう……住む所を探さなきゃ!』

『でも、学校の手続きはどうなってるの? 住所不定では無理なんじゃ……』

『あ、それは大丈夫。城塞都市からの伝手つてで、やってもらったから』

 どうやら、魔界と日本の政府は繋がりがあるらしい。それなら、魔界の人がこっちに来る時には、住宅事情とかは、しっかり説明しろよって話だが……

『あ、じゃあさ彩歌さん、ウチに来ない?』

 噴き出す彩歌と一斉に彩歌を見るクラスメート達。咄嗟に以下略。

『た……たつ、たたた、たつ、たたたった!?』

 モールス信号みたいになっている彩歌。

『達也さん! た、確かにわ、わ、私たち、元はに、に、26だけど、い、今はまだ、その子供だし、まだそれに、こ、こ、心のじゅじゅじゅ準備とか、で、でも、た、た、達也さんが良いのなら、わ、私いつでもその、い、い一緒に……』

『ごめん彩歌さん、言い方が悪かった! ウチの物置の下に、ブルーが作った広い地下室があるんだ。栗っちと大ちゃんの部屋もあるし、広い練習場もある。もし良かったら、そこで暮らさない?』

『あ……ああ! そ、そっか、ごめんなさい。私てっきり……』

 ホッとした風でもあり、残念そうでもある彩歌の声。

『いや、うん、まあ僕も二人っきりの方が嬉しいんだけどね』

 噴き出す彩歌と以下略。

しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

処理中です...