プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

ガトー

文字の大きさ
179 / 264
5年生 3学期 3月

渦中への帰還

しおりを挟む
 伝説の魔道士からの、まさかのご指名に、広場にいる全員が僕を見ている……

海神王ネプトゥーヌス様。申し訳ございません……おっしゃっている意味がよく分からないのですが」

 飛竜に乗ってやって来た、城塞都市からの使者は、困り顔で僕と菅谷すがや稀太郎まれたろうさんを交互に見る。

「ふむ。分からんだろうな……」

 稀太郎まれたろうさんも、ちょっと困り顔だ。
 いや、僕だって困ってるんだけど。

『ブルー、この人数にバラしちゃ、さすがにマズいよな?』

『そうだね。いくら魔界とはいえ、守備隊員は〝アガルタ〟に行けるみたいだし、どこから情報が漏れるか分からない』

 だよな。さて、どうしたものか。
 ……あれ? 稀太郎さんが近付いてきた。

「もしや秘密だったか? すまんな」

 僕の耳元でつぶやく。
 ……あ、そっか。この人には、ブルーと僕の会話が聞こえてるんだっけ。

『はい。実はちょっと困ります』

「そうか。ではひと芝居、打つとしよう」

 そう言うと、稀太郎さんは、腰に下げたかばんから、ナイフを取り出した。

「見るが良い。この魔剣にはワシの魔力が込めてある。これを弟子である少年に託そう!」

 稀太郎まれたろうさんが短剣を頭上に掲げると、周囲から歓声が上がった。

「という事にしておいてくれ。何の変哲もないナイフだ……果物でも剥くといい」

 僕にナイフを手渡すと、ニコッと笑う稀太郎まれたろうさん。この人、なかなかやるなあ!
 ……よし、それじゃ僕も。

「お師匠様……お力を拝借はいしゃく致します! わが命に替えましても、必ずや、城塞都市を救ってご覧に入れます」

 大げさな身振り手振りでナイフを頭上に掲げたあと、バックパックに入れてペコリと頭を下げる。

「うむ。お前はいずれ、ワシをも超える魔道士になる器だ。任せたぞ」

 なるほど、という顔で、一連のやり取りを見ている城塞都市からの使者。よし、辻褄つじつまが合ったな。

「それでは、お弟子でし様。早速ですが飛竜にお乗り下さい。城塞都市まで5時間ほどかかります。急ぎませんと……」

 マジか! 空を飛んでも、そんなにかかるんだ。遠かったもんなあ……

「彩歌さん、織田さん、バ……遠藤さん、辻村さん、ちょっとこっちに……」

 そうそう。みんなで手をつないで輪になろう。

「達也さん、アレを試すのね」

 お、覚えてたのか彩歌、さすがだな。

「内海さん、何を? 急がないと城塞都市が……」

 いやいや織田さん。5時間もかけてたら間に合わないから。

「おおっ! アニキ、何が始まるんスか?」

「なになに? パイセン、これって何の遊び?」

 お前らは、何でちょっとワクワクしてる感じなんだよ!

「とにかく、絶対に手を離さないで」

 よし、僕の考え通りならこれで……

「あの……お弟子でし様? 何をされているのですか?」

 この場所にいる全員が、不思議そうに僕たちの作った円陣を見ている。これで上手く行かなかったら、ちょっと恥ずかしいぞ。

「この場から僕たちが消えたら成功です。先に城塞都市に着いていると思いますので安心して下さい……では参ります!」

 僕は、大きく息を吸い込んだ……と同時に、周囲の景色は一変した。

「あ、アニキ?! ここ、どこっすか?!」

「マジ? 大砦に居たのに……! パイセンすげぇ! パネェ!」

 眼の前にあるのは、見覚えのある巨大な門。よし! 成功だ!

「良かった。まだ門は破られてないわね」

 僕たちは帰ってきた。一瞬にして城塞都市に。

「内海さん! これは一体……?!」

 織田さんも、キョロキョロと周囲を見て、目をパチクリさせている。

「〝阿吽帰還あうんきかん〟の魔法です」

 ……思った通り〝阿吽帰還あうんきかん〟の魔法は、呪文を唱えた場所まで、次に息を吸った瞬間に帰って来るという魔法だった。超便利だけど……僕しか使えないな。

「驚いた……内海さん、探検の間、ずっと息を止めていたのですか?! でも、それじゃ呪文を唱えるどころか、会話も出来ないんじゃ……?」

 そう。そこが問題だったんだよね。だから僕はある方法を試してみたんだ。

「……胃袋の中に小さいゴーレムを作って、そいつに喋らせてた!? アニキ、それちょっともう、軽く引くレベルッすよ!」

「どおりでパイセン、声がヘンだと思ってたし! 途中で慣れて忘れちゃってたけど!」 

 そう、僕は〝使役:土〟で〝ミニ達也〟を胃の中に作って、代わりに喋らせていた。
 なんと胃の中のゴーレムが詠唱しても、魔法は発動するのだ。

「アシスト機能は使えないから、全部覚えなきゃならなかったけどね」

 スクロールの〝自動詠唱機能〟を使うと、勝手に自分自身の口で呪文を詠唱してしまう。そうなると、もちろん〝息を吸う〟事になってしまうので、呪文は一晩で暗記した。幸いな事に、僕の夜は誰よりも長いのだ。
 ……あ、ちなみに、体の外に作ったゴーレムが唱えた呪文は無効のようだった。あくまで、僕の口から呪文が発せられるというのが、魔法の発動条件なんだろう。

「おい、お前ら何をしている?」

 突然、背後から声が聞こえた。

「戦えるなら やぐらに上がるか、結界前で待機! 非戦闘員は避難だ。早くしろ!」

 立派なローブを身につけた男性に声を掛けられた。

「既に外門はボロボロだ。いつ魔物が入り込んでくるか分からんぞ」

 門の前にはバリケードが張られ、多くの魔道士が待機している。でもさ、確か門の前には結界があったよな。

「強力な結界があるから、大丈夫なんじゃないの?」

「いいえ、結界に魔力を送っている魔導球の出力には限界があるの。今回のように多くの魔物が一斉に結界に触れれば、絶対に保たないわ」

 なるほど。それはマズいな。

「この北門だけではなく、西と南の門も、かなり厳しい状態だ。戦えるならこの場を死守して欲しい」

 そう言って、男性は慌ただしく走っていった。
 ……あれ? そういえば、飛竜に乗った魔道士も言ってたけど、なんで東門は大丈夫なんだ?

「東門は帰還用の門だから、いつでも開けられるように、常に優秀な魔道士が多く集められているのよ」

 そういえば前にそんな事を言ってた気がするな。

「では、私は魔物の大侵攻の原因を止めてきます。皆さん、すみませんがもう少しの間、持ちこたえて下さい」

「おっと! ちょっと待った織田っち!」

「無事に城塞都市に帰ってきたら、全部話してくれる約束じゃん!」

 お前ら、よく覚えてたな。

「……どうしても聞かれたいですか? 聞けばあなた方を巻き込むことになります」

「俺たち、友達じゃねぇか!」

「役に立たないかもしれないけど、力になりたいし!」

「ふふ。本当に第一印象って当てにならないわね。あなた達」

 彩歌の言うとおりだ。バカップルなんて言ってゴメンな。

「内海さんと藤島さんは、どうされますか?」

 ある程度はわかってるけど、このまま真相を知らないのは気持ち悪いな。

「聞かせて下さい。力になれると思います」

「うん。どういう事か教えて欲しい」

「……分かりました」

 少し呼吸を整えてから、織田さんは静かに語り始める。
 その内容は、身の毛もよだつような……僕たちの想像を遥かに超えた物だった。

しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...