プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

ガトー

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春休み

地元の方々

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 朦々もうもうと舞い上がる土煙つちけむり
 変身が解けちまったなー。

「あいたたた……油断したぜ」

 俺は香川県の、とある山の中に墜落した。
 あ、いや。〝攻撃を受けた〟とかじゃなくてな?
 まあ、なんだ。バードストライクの〝鳥無し〟バージョン的なヤツだな。

『ダイサク、普通に失敗したんだね』

「あー、まあなブルー。そうとも言うぜ」

 実は、ブルーのナビゲートにあわせて、香川県にある〝ルート〟の入り口へ向けて飛行中に、超・画期的な〝時間操作〟に関するアイデアを思いついてな? ……思考をそっちに割り振り過ぎたんだ。

「俺としたことが、やっちまったぜー」

 ブルーいわく、目的の地点までは、まだ2キロ以上の山道を登らなければならないようだ。
 ごく普通の小学生である俺には、絶妙に面倒な距離だ。よし、もう一度変身するか。
 ……ん? 話し声が近付いてくるなー?

「こっちの方だったか?」

「ああ。確かに、何かが落下したぞ。間違いない」

 黒いスーツにサングラスの二人組みだ。
 あー、なんか嫌な予感がするなー。

「基地の建設が始まったんだ。けもの一匹、見逃せないぞ」

「ああ。〝ワン様〟は、ああ見えて、なかなかに神経質な方だからな」

 ……ワン様? 基地の建設……?

「ブルー。俺の予想だと、結構めんどうな事に、なってそうだぜ?」

『そうみたいだね、ダイサク。彼らは恐らく……』

 ああ。〝ダーク・ソサイエティ〟だ。
 ……基地の建設って、もしかして〝ルート〟の入口に近い所じゃないか? 確か、人が大勢いるって言ってたよなー?

「……臭うぞ?」

 黒服の男が、急に立ち止まって辺りを見回し始めた。

「人間か?」

 もう一人も、警戒を始める。

「ああ。ガキのニオイだ」

 ……おいおい、感づかれたのか? この距離でニオイを感知するって、どんな鼻だ。

「居たぞ! あそこだ!」

 やれやれ、面倒くさいな。見つかっちまったぜ。
 ……さて、それじゃ変身して、と。

「キミ、こっちだ!」

 不意に、背後から声が聞こえたかと思うと、変身のために、ベルトのバックルに伸ばそうとした俺の腕を、誰かがつかむ。

「こんな山奥まで、一人で遊びに来ちゃダメだぞ。この山には、怖い人がいっぱい居るんだ……走れるかい?」

 声の主は、俺の腕を掴んだまま、走り始めた。坂道をすごいスピードで駆け下りる。
 待て待て待て! 目的地からどんどん離れちゃうだろー?

「俺の名前は、後藤千弘ごとうちひろ。キミ、名前は?」

 後藤さんは、爽やかに微笑む。このタイミングで自己紹介かよ!
 ……んー、なるほど! パニックになっているであろう子どもを安心させるには、有効 か。なかなかやるなー!

「俺は九条大作くじょうだいさく。大ちゃんって呼んで欲しいぜー!」

「大ちゃんか! よし、大ちゃん。もうひと踏ん張りだ!」

 俺と後藤さんは〝怖い人〟から必死で逃げる。
 変身できれば、一発なんだけどな? ……さすがに一般人の前で、それはマズいだろ。ひぃふぅ。

「がんばれ! 男の子だろう?」

 おー。精一杯、がんばって走ってるんだけどなー? ひぃふぅ。
 さすがに、変身していないと、俺はただの小学生なんだよなー。ひぃふぅ。
 ……黒服の二人は、ピシッとスーツでキメてるくせに、スゴい速さで走ってくる。徐々に差を縮められていくなー。

「くそぉ! 逃げ切れないか……仕方がない。いいかい、大ちゃん! 今日の事は誰にも言っちゃいけないよ? お兄さんとの約束だ! 守れるかな?」

 ……それはこっちのセリフだぜ? 出来れば誰にも言わないでほしいなー。ひぃふぅ。
 なんか真顔で俺の目を見てるんだけど、どう返事したらいいんだ? 同意イエスで大丈夫か?

「おー! 誰にも言わないぜー!」

 後藤さんは、爽やかに微笑むと、無言でうなずき、黒服の二人に向き直る。

「おうおう、お前ら! 幼気いたいけな子どもを追いかけ回しやがって! 許さねぇ!」

 いきなりケンカを売り始めたぜー!
 おいおい、いくら何でもそりゃマズいぞ。普通の人間が敵う相手じゃないからなー?

「ふはははっ! お前ら、生きて帰れると思うなよ?」

「グヘヘヘ! 覚悟しろ人間! 八つ裂きにしてやる!」

 黒服の二人は、上着を脱ぎ捨てた。筋肉がメリメリと音を立てて、肥大化する。
 やっぱ怪人だったか。さすがに変身しなきゃだな。後藤さんの記憶は、藤島さんに消してもらうぜー。
 俺はベルトのバックルに手を伸ばして……

「やっぱりな! だが、覚悟するのはお前らの方だ!」

 やっぱりって何だ?! 超デカイ犬と、ゲジゲジだぜー?
 アレを見て、なんでそんなに強気なんだ後藤さん……!

「いっくぜー! 〝オゴッキャゲル・チェンジ!〟」

 後藤さんが右手を頭上に突き上げると、彼の周囲を、青い光の帯が何重にも包み込んでいく。

「〝マンデガン・ブルー〟参上!」

 変身した?! おいおい、ちょっと待て! マジかよ?
 全身を包む青いスーツに、所々、巻き付くような数本の白いラインが入っており、頭部、胸部、腰回り、腕周り、ひざに、白くて小さめのプロテクターがついている。
 ……ヒーローって、本当に居るんだなー!

「クッ! キサマ、何者ダ!」

 ゲジゲジが叫んだ。口調がちょっと怪人っぽくなってるぜ。
 ……腹の辺りから発音していて、無駄に気持ち悪い。

「正義の味方だ! 香川県の平和は、俺たちが守る!」

 守備範囲せまいな!
 ……俺〝たち〟ってことは、他にもまだ居るのか。

「ええい、戦闘員! やってしまえ!」

 わらわらと現れる黒服の大群。どこから湧いて出たんだ?

「ハリマス・ソード!」

 どこからともなく取り出した、大きめの剣を手に、流れるような動きで、戦闘員たちを倒してゆく。

「こいつ、強いぞ! ……おい、子どもを人質にとれ!」

 俺の方にターゲットを変えた、数人の黒服たちが迫る。
 ……仕方ない。変身するかなー。

「おまたせー!」

 突然現れた女性が、俺に手を伸ばそうとしていた黒服を蹴り倒した。

「遅いじゃないか! 何してたんだ?」

 マンデガン・ブルーが女性に向かって叫ぶ。

「しょうがないじゃない。レディのお出かけは、準備に時間が掛かるのよ?」

 女性は次々と黒服を殴りとばしたあと、空手家のようなポーズを取り、俺に話しかける。

「私は慈許音じもとね隆代たかよ。よろしくね!」

 隆代さんがウインクした。
 もしかして、この人も……なのか?

「おのれ、役立たずどもめ! こうなったら、直々に噛み殺してやる!」

 隆代さんに、犬怪人が襲い掛かる。

「乱暴なワンちゃんには、お仕置きが必要ね……! 〝オゴッキャゲル・チェンジ!〟」

 隆代さんが左手を頭上に突き上げると、彼女の周囲を、赤い光の帯が何重にも包み込んでいく。

「〝マンデガン・レッド〟推参!」

 変身した! やっぱりかー!

「ジョンナラン・ウィップ!」

 どこからともなく取り出した、イバラ付きのムチを手に、踊るような動きで、犬怪人を叩きのめす。

「ぬうううう! 一旦引くぞ!」

「覚えてろよ!」

 足元に煙玉を投げて、退散する怪人と戦闘員たち。

「ちぃ! 逃がすかよ!」

「ブルー! 深追いは危険よ!」

 ベタかよー! 全部ベタ展開かよ、お前らー!!
 ……自分がやってる時は気にしてなかったけど、こうやって見せつけられると、なんだかなー。
 さて、この展開だと、マズいぜ。

「えっと。それじゃ俺はこの辺で……」

「おいおい、大ちゃん! この辺りは危険だぞ。俺たちと一緒に来るんだ」

 あー、やっぱりかー! このままだと〝ルート〟の入り口が確認できないぜー?

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