透明色の魔物使い~色がないので冒険者になれませんでした!?~

壬黎ハルキ

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第五章 迷子のドラゴン

155 ヒントは魔力スポット?

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 翌日――マキトたちは子ドラゴンを連れて、魔物たちの隠れ里へやって来た。
 とりあえず神殿から一番近い、長老ラビットのいるほうである。こないだぶりの再会を果たした魔物たちは、マキトたちの来訪を大いに喜ぶ。
 そして、新たに小さな客を連れてきたことも、歓迎されるのだった。

「くきゅーっ♪」

 子ドラゴンが森の魔物たちと楽しそうにはしゃぎ回る。ラティたちも混ざり、皆で鬼ごっこが始まったようだ。
 そんな賑やかな姿を、マキトとノーラ、そして長老ラビットが見守っている。

「実に順応性の高いドラゴンじゃな」

 長老ラビットが物珍しそうな表情を浮かべていた。

「ワシの聞きかじりでは、子供のドラゴンがヒトに懐くことはまずないと……それをまぁお主は、なんとも規格外なことをしてくれるもんじゃわい」
「……それって褒めてるのか?」
「そのつもりじゃよ」

 顔をしかめるマキトに、長老ラビットはニンマリと笑った。そして再び表情を小さな笑みに戻し、周囲を見渡す。

「さて、ワシは里の見回りに向かうが、お前さんたちはどうするかね?」
「することないし、俺たちも付き添うよ」
「ん。ノーラも一緒にいく」

 二人の返事を聞いた長老ラビットは、どこか嬉しそうにニッコリと微笑む。

「そうかそうか。では早速向かおうぞ」

 長老ラビットに連れられる形で、マキトとノーラは里の中を歩き回る。あちこちで魔物たちが楽しそうに遊び、または強くなるための特訓をしていた。
 皆が思い思いに過ごしているその姿は、平穏な世界なのだと思わされる。
 やがてマキトたちは、以前訪れた広場にやって来た。

「このアスレチックは、まだ壊れたままなんだな」
「流石にの。まだ日が浅すぎるわい」

 目の前には崩れ落ちた丸太の山。整理もされておらず、あれからまだ手付かずの状態であることがよく分かる。

「じゃが、あの大柄な少年が直したブランコは、随分と調子がいいぞ」
「大柄な少年……あぁ、ジェイラスのことか」

 一瞬、誰のことか分からず、マキトは思い出すのに数秒を要した。

「確かアイツら、冒険者の学校に行くとか言ってたっけ」
「ん。マキトも興味ある?」
「いや、別に」

 ノーラに尋ねられたマキトは、しれっと答えた。強がりとかではなく、本当に心の底から興味がない。仮に冒険者としての適性があったとしても、果たして入学してみたいという気持ちが生まれたかどうか。
 一人前の冒険者を夢見て、同年代の子供たちと一緒の学校に通う――自分がそんな姿でいることを、どうしてもマキトは想像できなかった。
 やはり今の自分が一番だと思った。
 緑豊かな自然の中で、魔物たちとともに毎日をのんびり楽しく過ごす姿こそが、本来の自分であり、それが全てなのだと。

「そうじゃ。折角じゃから、魔力スポットにでも行ってみるかの?」

 長老ラビットからそう誘われたマキトたちは、そのお言葉に甘えることにした。
 アスレチックがあった場所を後にして森の広場へ向かい、そこから魔力スポットへ通じる道を歩く。
 相変わらず木々がびっしりと合わさり、まるで天然のトンネルのようだった。
 そんな不思議な道を歩いていき、やがて魔力スポットに辿り着く。
 すると、そこには――

「あれ、ラティたちがいる」

 マキトが思わず足を止め、その光景に目を見開く。
 鬼ごっこで遊んでいたハズのラティたちが、子ドラゴンとともに魔力スポットの泉の前に佇んでいたのだった。
 するとラティも、マキトたちがやって来たことに気づき、振り向いた。

「マスター!」

 ラティが声を上げながら飛んでくる。その声でロップルたちも、マキトたちが現れたことに気づいて、嬉しそうに駆け寄って来たのだった。
 しかし、子ドラゴンは未だ、ジッと泉のスポットを見上げるばかりであった。

「ドラゴンちゃんが魔力に反応して、こっちに来ちゃったのです」
「そうだったのか……」

 マキトが子ドラゴンのほうへと視線を向ける。横から見えるその表情は、何かに浸っているような感じがしてならない。
 すると子ドラゴンが、マキトの存在に気づいて笑顔を見せる。

「くきゅーっ」

 そして翼を羽ばたかせて一直線にマキトの胸元目掛けて飛んできた。
 それをなんとかマキトは両手でキャッチする。まるで大きなボールを受けとめるような感触であった。
 心なしか、今までで一番勢いがあったように思えた。加えて表情もいつになくはつらつとしており、肌の鱗にもキラキラと艶が生じているように見えている。
 今朝も元気ではあったが、ここまでではなかった。
 マキトの中で思い当たる節があるとすれば、一つぐらいしかない。

(魔力スポットがこのチビスケを元気にさせたってことか?)

 それ以外に説明のしようがないように思えてならない。何はともあれ、元気なのはいいことであるため、ひとまずここは細かいことは気にしないことに決めた。

「それから、ドラゴンちゃんが言ってたのですけど――」

 ラティが心ここにあらずという感じの表情で、マキトに言った。

「あれと同じようなのが、故郷の山の頂上にもあったみたいなのです」
「魔力スポットが?」
「恐らく」

 流石のマキトも驚かずにはいられなかった。まさかここに来て、魔力スポットが絡んでくるとは思わなかったのだ。
 しかし――

「なるほどな。むしろこれで合点がいったわい」

 長老ラビットは驚くどころか、胸のつかえがとれたと言わんばかりに納得している様子を見せてきた。

「おかしいとは思っておったんじゃ。幼いドラゴンがここまでこの森に馴染んでおるからには、きっと何かがあるような気がしてならんかった。魔力スポットから流れる魔力のおかげとなれば、話の辻褄も合うじゃろうて」

 子ドラゴンは、ずっと魔力スポットが近くにある環境で育ってきた。故に魔力スポットがあるこの大森林に来たおかげで、子ドラゴンはすぐさま元気を取り戻したのだとしたら。
 確証こそないが、可能性は大いに高いと思われた。
 そんな長老ラビットの推測は、マキトたちも心から納得していた。

「ドラゴンちゃん曰く、形は少し違うけど、暖かい感じとかは一緒らしいのです」
「ふむ。どうやら間違いなさそうじゃ。魔力スポットが、あの幼いドラゴンと少年を結び付けたということじゃろう」
「ん。まさに森の奇跡」

 ノーラも腕を組みながら、目を閉じてうんうんと頷いた。そして目を開き、見切ったと言わんばかりにスッと細める。

「そして大体の見当もついた」
「見当って?」
「あのチビの故郷で何が起こったのか……恐らく魔力スポットが悪さをしている」
「……そーゆーことって、あるもんなのか?」
「あるぞい」

 戸惑いながら問いかけるマキトの問いに答えたのは、長老ラビットだった。

「いくら魔力スポットと言えど、決して完璧ではないからの。何かしらの不具合が生じることもあり得るわい。もっとも自然と起こるケースはそうそうないがな」
「ん。誰かが何かやらかした可能性は捨てきれない」

 頷くノーラの表情はやや険しく見えた。つまり誰かがドラゴンたちに迷惑をかけていることを意味している。
 そのせいで子ドラゴンも大変な思いをした――もしそうだとしたら、許しがたいことだとマキトも思う。

「つまり、その魔力スポットの悪さをどうにかすれば……」
「チビもまた、故郷で暮らすことができる」
「――希望が見えてきたな」

 マキトとノーラは、フッと小さく笑いながら頷き合う。ラティや魔物たちも、嬉しそうに笑みを浮かべ合っていた。
 そしてマキトは、きょとんとしている子ドラゴンを両手で抱え上げる。

「待ってろよチビスケ。必ずお前を、元の住んでいた場所に帰してやるからな!」
「くきゅーっ♪」

 子ドラゴンは嬉しそうな鳴き声を発し、そしてマキトの腕から飛び出した。
 そのまま空中を旋回する。パタパタと爽快に翼を羽ばたかせ、喜びの鳴き声とともに飛び回った。
 魔力スポットのおかげで元気が漲っているというのもあるのだろう。
 いつもよりも明らかに軽やかな子ドラゴンの飛行技術に、マキトは改めて凄いもんだなぁと驚いてしまっていた。

「チビ、なんだか凄く嬉しそう」
「キュウキュウッ♪」
「元気いっぱいでなによりなのです」
「うむうむ。この魔力スポットが役に立って嬉しいぞい。またいつでも遠慮なく遊びに来るが良いぞ」
「あぁ、ありがとう」

 そんな感じで、周りが微笑ましそうに子ドラゴンの様子を見守っている中――

『……いいなぁ』

 フォレオだけが、なにやら羨ましそうな表情を浮かべていることに、マキトたちは気づいていなかったのだった。

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