追放されたゴミスキル持ち自由になって人生を楽しむ

れのひと

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1.10歳になった日

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 10歳、それはこの世界で最初の節目。誰しもが初めてスキルを手に入れる年齢だ。もちろん俺もそれは同じで、今日10歳となりスキルを授かった。

「ではスキルを使って見なさい」
「わかりました」

 朝食を終えた後に父親にそう言われ俺はスキルを見せることに。室内にいるのは父、母、兄、妹。それと執事とメイドが5人。妹をのぞいて10歳になった時に親へとスキルを披露するという誰もが通った道。兄は2年前に終わり、【剣術】というスキルを手に入れて急激にうまくなった剣の扱いを披露した。

「僕が手に入れたスキルは【ガチャ】と【アイテムボックス】ですが…両方見せるのでしょうか?」
「2つかそれは素晴らしいな。だが【アイテムボックス】は見せなくともよい。どのような物かわかるし、そもそも使用人や商人が重宝するものだからな。それよりも…その【ガチャ】というのは初めて聞くどのようなスキルなんだ?」
「えーと…対価を消費して無作為で何かを手に入れるものと言えばわかりますか?」
「ふむ、その対価というのは何でもいいのか?」
「あ、はい。なんでも大丈夫です」
「ではこれを対価に使用して見なさい」

 手渡されたのは銅貨1枚。俺は受け取り少しだけ顔がにやけた。実は朝起きた時に俺はスキルだけじゃなくもうひとつ手に入れたものがある。それはこことは違う世界で生きていた記憶だ。

「では…」

 俺は銅貨を握りしめスキルを使用した。にやけていた理由…それはガチャの仕様確認が出来るからだ。大人であった記憶は様々な知識を持っており、起きてすぐにスキルの説明をくまなく見たところ対価と同等な物がランダムで出ると書かれていたのだ。そうつまり同等とは何を基準にしているのかがはっきりとしていない。それが今スキルを使うことである程度証明されるというのだからにやけもするだろう。

「【アイテムボックス】」

 みんながじっと俺を見つめる中俺は【アイテムボックス】を開き中に入っているものを取り出した。このスキル便利なのか面倒なのかわからないが、【ガチャ】を使用して手に入れたものは自動で【アイテムボックス】へと入れられる。まあそのためのセットスキルだったのかもしれないが。

「それが…今スキルで手に入れたものなのか?」
「はい、そのようです。他には何も【アイテムボックス】の中にはないので」

 俺の手にあるのはたわしだ。あのとげとげのごしごしと使うあれ。銅貨1枚で出たたわし…たわしの材質にもよるけどこれは金額的価値ではなさそうかな? どちらかと言えば胴で出来たコインの同等ということなのだろう。

「そうか、これは調べておこう。結果を部屋で待ちなさい」
「わかりました」

 俺はそれがたわしだとわかっているが、父達にはわからない。だから家で雇っている鑑定士に頼むんだろうな。そんなことを考えながら自分の部屋へと戻る。鑑定士を呼び出して鑑定してもらい、その後俺に結果を言いに来るんだろうからその間の時間何をしていようか。部屋で待てというのもうなずける。何かをするにしても部屋を出て動き回ると俺への結果の連絡が遅くなる。もちろん知っているから遅くなってもいいんだけど、わざわざ反抗する意味が無いので大人しく部屋で待つのが正解だろう。

「そうだ【アイテムボックス】の検証をしておこうか」

 スキルというのは同じ名前でも能力が完全に同じとは限らない。例えば兄が手に入れた【剣術】、これで言うと同じスキルを持った人同士が剣で打ち合った場合、他の要素がかかわっているのかスキル自体の見えない能力の違いがあるのか、勝負がつかないと言うことはない。それと同じように【アイテムボックス】も人によって違うという話だ。しまえる大きさ、重さ、個数、時間の経過具合といった感じに。

 部屋にある一番大きなものというと…目にとまったのはベッド。クローゼットも大きいが、これは備え付けなのでしまえるのは扉だけになる。もちろんバラバラで良ければしまえるが大きさを調べるのには向いていない。ベッドに手を当てしまってみると問題なく【アイテムボックス】の中に入った。まだ大きいものが入るような気がするが今調べるためのものがない。また今度何かで試してみよう。

 次は重さだが…今しまったベッドよりも重いものはなんだろう? 小さめな本棚には本がぎっしりと詰まっている。ベッド以外ならこれが一番重いだろうか。同じように触れるとしまうことが出来た。ここまでは順調だ。問題は個数。今しまったものが2つと認識されているのか中にある本や毛布が数に含まれているかどうかがわからない。

──コンコン

「はい」
「鑑定の結果を伝えに参りました」

 どうやら時間切れ。思ったよりも早く結果が出たのか扉をノックされた。俺は扉を開け廊下を確認すると、声の人物である執事のイルスが立っていた。

「……これは?」
「はい、鑑定の結果を伝える前にまずこれらを【アイテムボックス】へとしまってください」

 いくつものワゴンが廊下に並びその上には干し肉やドライフルーツ、黒パンに水の入ったピッチャーなどがいくつも並んでいた。

「どこかへ出かけるのかな?」
「はい今から出ることになります」

 …なんか嫌な感じだ。結果を後回しに旅支度ってどういうことなんだ。逆らってもいいことはないので大人しく【アイテムボックス】へと詰める。ザっと見た感じ10日分ってところか? 人数が増えたら日数も減るが…

「しまったよ」
「はい、では行きましょうか」
「……」

 背後で開いていた扉を閉じられ護衛が後ろにつく。強制連行だ。

「ねえ鑑定の結果は?」
「もう少しお待ちください」
「……」

 どうやら教えてくれる気はないようだ。俺は執事の後ろをついて歩いて行った。

 向かったのは飛行艇が置かれているドック。すでに準備が整っているのか、父がタラップの上で待っていた。

「来たか。さあ乗りなさい」

 そう言うと父は飛行艇の中へと入っていく。どうやら父も一緒に行くらしい。前を歩いていた執事も進むのでその後について俺も飛行艇へと乗り込む。滅多に乗る機会のない飛行艇に乗るのはこれが2度目。初めて乗ったのは王都にある別荘で行った社交界へと参加するときだった。

 飛行艇に乗ると俺はメイドに案内され部屋へと通された。目的地につくまではここで過ごすことになるようだ。

「…ねえ、どこに行くのか知っているよね?」

 部屋へと案内してくれたメイド…たしかまだ決まってはいなかったが、基本俺の世話をしてくれていた子で名前はプチコだったか? が先ほどから紅茶を準備してくれているようだけど、その手は震えており茶器がカチャカチャとうるさい。

「は、はいっ ですがお教えすることは出来ません! …夜までには到着予定ですのでっ」

 どう見ても怯えている。青い顔をし、震えてうまくお茶が入れられないようだ。飛行艇で半日ほどでついて、プチコが怯えるような場所…

「ど、どうぞっ」

 震える手でどうにか紅茶を入れたプチコはゆっくりと部屋の外へと出ていった。
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