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2.夜空と星と月と落下
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ざっくりと教えられた地図を頭に思い浮かべる。家があった場所から北の方にあるのは王都だ。だけどそこまでは飛行艇を使えばもっと早く着くから違う。さらにその北は…村などはあるかもしれないけど目立ったものはない。東に至っては途中に大きな山脈があるのでそれを迂回するかどうかで変わってくるけど、その山脈の向こうには海がある。丁度そのあたりが夜になるころだと思う。南と西には続くようにレイナス大森林があって、それを越えた先には隣国があるけれど…そこまで行くには流石に朝を越えてしまう。一番有力候補なのは東の海なんじゃないかな。だけどそれだと何のために10日分もの食料を渡されたのかがわからない。
──コンコン
「旦那様がお呼びです」
「今行きます」
行き先がどこなのか考えていたら結構時間が経っていたのかもしれない。執事のイルスが俺を呼びに来た。扉を開けると執事のイルスとその後ろに青い顔をしたメイドのプチコが立っていた。
案内されたのは甲板。すっかりと日が落ちており、月と星の明かりだけなので薄暗い。そこにちらほらと人影が見える。
「来たか」
ゆっくりと振り返った父の顔は暗くてよく見えなかった。だけどその雰囲気に俺の喉が鳴る。
「…父上ここは?」
「まずは鑑定の結果を教えようか」
今になって…?
「ヤシの繊維と針金で作られた道具、とのことだが…ヤシが何なのかわからないし、針金というものも聞いた事がない」
へえ…たわしってヤシの繊維で出来てたんだ。そういうものと思っていたから知らなかった…とそうじゃない。
「ふぅ…回りくどいことはやめにしようか」
ドキリと心臓の音が響く。いやな予感がひしひしと伝わってきた。
「私達は侯爵家なんだ。つまり役に立たないスキル持ちだと困るんだ」
追放…その言葉が頭に浮かぶ。もちろんよくはないが大人の知識がある分まだ何とかなるのでそれはいい。だけどそれを言い渡す場所に問題がある。なぜ家ではなく飛行艇で? しかも暗くなってあたりが見渡せなくなってから? 考えをあげればまだまだあるが、この先の展開を予想すると自然と膝が震えてきた。
「だが私もそこまで鬼ではない。3年だ。それまでにスキルの有用性を示せ。これはその序章に過ぎないのだ。まずは生き延びろ。そして自力で家まで帰ってこい」
「…一ついいですか?」
「いいだろう」
「今から降りるのですよね? これだけ暗くなってから飛行艇で降りることが出来るのでしょうか」
「それなら問題ない」
パチンッ
父が指で合図をすると俺は両腕を護衛に抑えられた。
「お待ちください! せめて日が昇ってから…っ」
「降りるのはアルム、お前だけなのだから」
叫ぶプチコの声と静かな父の声が重なる。いやな予感というのはよく当たるものなのだと実感した。
薄暗い夜空にいくつもの星が見える。月は眩しくて少しだけ目を細めてしまうが、それでも辺りの様子は見えない。ただ一つわかるのは今の自分の状態だけ。体は宙に投げ出されだんだんと見えなくなる飛行艇。落ちていく先はこの暗さなら誰もわからないということだろう。
「大人の記憶で見た異世界物の定番っていうやつかね」
ここまで酷い展開は見たこともないが。ただ追い出されるか、最初から殺そうとしてくるか。こんなどうなるかもわからない展開とか酷いものだと思うね。さて、何か思いつかないとこのまま人生終了だ。身につけているものでは何もできない。【アイテムボックス】の中身も食べ物くらいしか…ああ、ベッドと本棚が入れたままだな。だからと言って今役には立たないが。残るは【ガチャ】になる。もう一度これの説明を見直すと一つだけ気になる言葉を見つけた。
「………」
「…ん?」
「───まっ アルムさま~~~~!!」
こんな星と月しか見えないところで声が聞こえた。上だと思われる方向を見上げると視界にだんだんと何かが見えてくる。それは…
「プチコ!?」
「アルムさまっ」
まさかメイドが降ってくるとは思わなかった俺は結構驚いた。プチコは落ちてきた勢いで俺に抱き着くとくるりと体の向きを変えた。
「私をクッションだと思って下さい!! 多少怪我をするかもしれませんが、きっと生き残れますっ」
「…モゴッ!?」
いやいやいやいや! お前が追加されたおかげで落ちる速度が上がったぞっ それに口と鼻を塞ぐんじゃない!! これじゃあ地面に届く前に窒息するわっ
少しでも離れようと押して見るが思ったより力があるのかびくともしない。やはり10歳の力というのは弱すぎるんだ。
「…っ」
俺は【アイテムボックス】から干し肉を取り出しそれを握りしめた。【ガチャ】の説明にあった内容を信じるのなら、これで俺は安全になるはずなんだ。ただ問題は…
「うぅ…っ くっ」
今だに俺にしがみついているメイドのプチコ。彼女が無事でいられるかはわからないと言うことだ。どうせならばプチコも助けてやりたいが今出来ることはこれしかないのでどうしようもないだろう。
バキバキバキ……!!
「ヒッ」
この音は…くそっ 地面が近い!!
──コンコン
「旦那様がお呼びです」
「今行きます」
行き先がどこなのか考えていたら結構時間が経っていたのかもしれない。執事のイルスが俺を呼びに来た。扉を開けると執事のイルスとその後ろに青い顔をしたメイドのプチコが立っていた。
案内されたのは甲板。すっかりと日が落ちており、月と星の明かりだけなので薄暗い。そこにちらほらと人影が見える。
「来たか」
ゆっくりと振り返った父の顔は暗くてよく見えなかった。だけどその雰囲気に俺の喉が鳴る。
「…父上ここは?」
「まずは鑑定の結果を教えようか」
今になって…?
「ヤシの繊維と針金で作られた道具、とのことだが…ヤシが何なのかわからないし、針金というものも聞いた事がない」
へえ…たわしってヤシの繊維で出来てたんだ。そういうものと思っていたから知らなかった…とそうじゃない。
「ふぅ…回りくどいことはやめにしようか」
ドキリと心臓の音が響く。いやな予感がひしひしと伝わってきた。
「私達は侯爵家なんだ。つまり役に立たないスキル持ちだと困るんだ」
追放…その言葉が頭に浮かぶ。もちろんよくはないが大人の知識がある分まだ何とかなるのでそれはいい。だけどそれを言い渡す場所に問題がある。なぜ家ではなく飛行艇で? しかも暗くなってあたりが見渡せなくなってから? 考えをあげればまだまだあるが、この先の展開を予想すると自然と膝が震えてきた。
「だが私もそこまで鬼ではない。3年だ。それまでにスキルの有用性を示せ。これはその序章に過ぎないのだ。まずは生き延びろ。そして自力で家まで帰ってこい」
「…一ついいですか?」
「いいだろう」
「今から降りるのですよね? これだけ暗くなってから飛行艇で降りることが出来るのでしょうか」
「それなら問題ない」
パチンッ
父が指で合図をすると俺は両腕を護衛に抑えられた。
「お待ちください! せめて日が昇ってから…っ」
「降りるのはアルム、お前だけなのだから」
叫ぶプチコの声と静かな父の声が重なる。いやな予感というのはよく当たるものなのだと実感した。
薄暗い夜空にいくつもの星が見える。月は眩しくて少しだけ目を細めてしまうが、それでも辺りの様子は見えない。ただ一つわかるのは今の自分の状態だけ。体は宙に投げ出されだんだんと見えなくなる飛行艇。落ちていく先はこの暗さなら誰もわからないということだろう。
「大人の記憶で見た異世界物の定番っていうやつかね」
ここまで酷い展開は見たこともないが。ただ追い出されるか、最初から殺そうとしてくるか。こんなどうなるかもわからない展開とか酷いものだと思うね。さて、何か思いつかないとこのまま人生終了だ。身につけているものでは何もできない。【アイテムボックス】の中身も食べ物くらいしか…ああ、ベッドと本棚が入れたままだな。だからと言って今役には立たないが。残るは【ガチャ】になる。もう一度これの説明を見直すと一つだけ気になる言葉を見つけた。
「………」
「…ん?」
「───まっ アルムさま~~~~!!」
こんな星と月しか見えないところで声が聞こえた。上だと思われる方向を見上げると視界にだんだんと何かが見えてくる。それは…
「プチコ!?」
「アルムさまっ」
まさかメイドが降ってくるとは思わなかった俺は結構驚いた。プチコは落ちてきた勢いで俺に抱き着くとくるりと体の向きを変えた。
「私をクッションだと思って下さい!! 多少怪我をするかもしれませんが、きっと生き残れますっ」
「…モゴッ!?」
いやいやいやいや! お前が追加されたおかげで落ちる速度が上がったぞっ それに口と鼻を塞ぐんじゃない!! これじゃあ地面に届く前に窒息するわっ
少しでも離れようと押して見るが思ったより力があるのかびくともしない。やはり10歳の力というのは弱すぎるんだ。
「…っ」
俺は【アイテムボックス】から干し肉を取り出しそれを握りしめた。【ガチャ】の説明にあった内容を信じるのなら、これで俺は安全になるはずなんだ。ただ問題は…
「うぅ…っ くっ」
今だに俺にしがみついているメイドのプチコ。彼女が無事でいられるかはわからないと言うことだ。どうせならばプチコも助けてやりたいが今出来ることはこれしかないのでどうしようもないだろう。
バキバキバキ……!!
「ヒッ」
この音は…くそっ 地面が近い!!
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