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1章 由雄と健太の夏休み

第83話 ゴブリンが狩れない

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 何度も何度もファーナさんに倒されていくゴブリンを眺めていると段々感覚が麻痺してくる。人型だということに抵抗があった俺と健太は矢で刺され消えていくゴブリンが当たり前のように見え始めていた。そのゴブリンが落とすのは魔石だけで、他に今のところアイテムらしきものは見かけない。ババントのほうがババントの羽を落とすだけ役にたちそうではある。

「暇だ…」

 まともに狩ることが出来ないでいる健太がなんか言っている。まあそういう俺もババントくらいしか狩っていないが。

「あーゴブリン倒しますか?」
「…ファーナさんが倒していいよ」
「そのほうが安全ですもんね。出来るだけ近づいて欲しくないしっ」

 大分見慣れてきたゴブリンも見慣れただけであって大丈夫なわけではない。矢を受けたゴブリンが消えていく様子を眺めていると健太の眉間にしわがよっている。多分俺もそんな感じなんだろう。これは狩れる様になるまでに時間がかかりそうだ。さっさとボス部屋見つけて次の階層へ移動できるといいんだけどな。

「あっそろそろ引きかせしませんか?矢が帰りの分考えたらギリギリかもなので」

 もちろんその言葉に反対するものはいない。ファーナさんが狩れなくなってしまったら覚悟の決まらないままゴブリンの相手をする羽目になってしまう。俺と健太は頷くと元来た道を戻り始めた。

 1階層の入り口に戻ると丁度戻ってきた双子と遭遇してしまった。リノは直接殴っていたせいか緑色の液体にまみれ異臭を放っているし、ミネは魔力がないのかぐったりとしていて普段の元気がない。
 それに見かねた俺は健太に合図を送りファーナさんにやったように二人で『ウォーター』をリノに向かって使用した。

「………」

 突然のことに目を見開いたリノはすっかり綺麗になるとじっとこちらを見つめた。

「『ウォーター』…ミネ覚えず売るから…」
「うえええ…リノが覚えればよかったでしょう?」
「私が?…考えておくわ」

 2人の会話を眺めていると背後からファーナさんに服の裾を引っ張られる。どうかしたのかと思いファーナさんのほうを見ると、「今日は解散でしょう?だからもう帰るね」とさっさと帰っていってしまった。

「あれ、よっすーファーナさんは?」
「ついさっき帰ったよ」

 どうやら健太は話が聞こえてなかったみたいでファーナさんの帰還に気がつかなかったみたいだ。

「…ねぇ」
「ん?」

 その直後リノに話しかけられた。リノは俺の背後のほうを眺めながら何か言いたそうな顔をしている。

「あの子…どっかで見たことがある…わ」

 同じ世界に住んでいるのならその可能性もあるだろうし何もおかしなことはない。そもそも同じダンジョンに来ているところを見ると行動範囲も近いのだろう。なおさらどこかであっていても不思議はないのだ。

「ファーナさんも2人のこと知ってたくらいだし、知っててもおかしくないだろう?」
「へぇ…」

 その後はリノが考え込んでしまったので俺と健太はさっさと帰ることにした。
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