異世界とか魔法とか魔物とかいわれてもこまる

れのひと

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1.ななみ旅に出る

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 私はふわふわな毛布を抱えながら眠る。この肌触りが気持ちよくまだ眠っていたい。そんな私のすぐ傍で何かが動くので少しだけ目が覚めてしまった。

「う~…ん後5分……」

 薄っすらと目を開けた目の前に犬のような生き物がいた。というか私が毛布だと思って抱えていたのがそれだ。

「なんで犬が…まあいいか。」

 ぽかぽかと暖かい空気とふかふかの毛布(犬)を抱えながら再びうとうとと眠り始める。気のせいかそよそよと風が吹いていて、何かが私の頬を撫でた。

「何…くすぐったいんだけど…」

 仕方なく私は起き上がると欠伸をしながら背中を伸ばした。

「………」

 目の前の光景に私は声が出なかった。足元に触れているのは草、どうやらこれが私の頬を撫でていたらしい。さらに見える範囲から考えるとどう見てもここは外で…草原のような場所だ。

 部屋で寝ていたはずなのになんで…?

 自分の服装を確認すると、ちゃんと寝るときに来ていたパジャマのままだ。上下に別れ前にボタンがついたすごく一般的なパジャマというやつで、なぜか犬を抱えている。どうやらこの犬はヌイグルミではなく生きているようだ。私の顔を見て軽く尻尾を振っている。



 このまま座り込んでいてもどうしようもないのでとりあえず立ち上がることにする。見える範囲が広がったけどやっぱり草原にしか見えない。360度見回してみるけどその先に建物とか人の姿は目に入らないので、思ったまま進んでみることにしようと思う。

 温かい日差しとこの犬の感触が夢じゃないことを感じさせているのでじっとしていてもどうしようもないことはわかる。ただ、それはそれとして今の状況に戸惑いと不安を感じている。

「…とその前に持ち物確認かな。」

 自分がいたあたりを見回すが何も持ってないようだ。服装はパジャマだけ…そしてなぜか抱えている犬。かわいいけど…何?もしかしたらここにいた犬を私が寝ぼけて抱きかかえてしまったんだろうか?そんなことを考えながらまずは一歩を踏み出した…はずだった。

「え……?」

 突然目の前の景色が変わった。さっきまでは風が吹いている草原だったはず。でも今は木々に囲まれた森のような場所に立っている。

「たった1歩歩いただけで違う場所とか…なんなの。」

 深まる不安と少しだけ恐怖を覚えつつとりあえず周りを見渡す。思わず抱きしめていた犬を持つ腕に力が入る。

「キュウゥ~ン…」
「あっごめん!」

 情けない声を上げた犬に気がつき腕を緩めた。きっと苦しかったのだろう悪いことしてしまったな…

 そんなことを考えていると木の陰から何かが飛び出してきた。小柄な体で緑色をしているが姿形は人に似ている。手には木の棒が握られていた。もしかするとこの森の住人かもしれない。

「あの…ここは一体どこですか?」
「ギュオーーーギャッギャッギャッ!」

 なんともいえない叫び声を上げられてしまった。どうやら言葉は通じないようだ。気のせいか周りが騒がしくなってくる。……あ、緑の人が増えた。いつの間にか囲まれているみたい。もしかして敵と思われた?

 じゃあこの人たちは私を捕まえようとしているのか、暴力を振るおうとしているのか…そのどっちかかもしれないってことよね。逃げなきゃ…でもどこへ?

 再び周りに目を向けるがどう見ても囲まれている。怖くて…1歩後ずさった…はず。

「あれ…?」

 また景色が変わった…でもたくさんの人がいるのは変わらない。さっきと違って森の中ではなくどうやらどこかの町の中のようだ。いろんな見た目、服装をした人が歩いているが普通の人間に見える。さっきの緑の人達はなんだったんだろう…

 たまに立ち止まり私のほうを見ている人もいる。もしかしてパジャマのせいかもしれない。少し恥ずかしくなって俯いてしまう。ひとまずこの服装を何とかしないとだめかもしれない。私はこの場から駆け出した…つもりだった。

「…あっまた。」

 数歩走ったら景色が変わった。目の前には1つ建物がある。人込みから抜け出したことに安心して私は座り込んだ。腕の中にいる犬が顔をなめてくる。…ちょっと和む。

「本当にさっきからなんなの…」

 ここがどこなのかわからなくて困っているのに、さらにどんどん違う景色に変わってしまう。座り込んでため息を吐いてしまうのも仕方のないことだろう。

「…誰かいるの?」

 すると目の前の扉が開いて中から出てきた女の人が声を掛けてきた。かなりの美人さんで銀髪の長い髪が光に反射して眩しい。スタイルもよくて出るところが出ていてつい自分と比較してしまった。ちょっと悲しい…でも銀髪ってこんな見た目なのに年寄りなのかしら?

「誰がババァだーーーーっ」

 あれ…?私声にだしてたかな…まあこのあと目の前が真っ暗になってしまった感じからすると、どうやら私は意識を失ったらしい。





「気がついた?」

 えーと…何してたんだっけ…目の前に女の人がいる。さっき会った女の人だ。キョロキョロと視線を動かし状況を確認してみる。どこかの部屋のようだ。流れ的に言えばこの女の人の家なんだろうけどどうだろう?

「あの、ここはどこですか?」
「私の家だけど。」

 どうやら間違ってなかったようだ。

「リナ。」
「……?」
「私の名前はリナ。名前を確認しないと会話しにくいでしょうが。」

 たしかにその通りだ。あんたとかお前とかおねーさんとか誰のことかわかりにくいもんね。

奈々美ななみ…です。」

 女の人も名前しか言わなかったから私も名前だけを言ってみる。

「ナナミ、聞いていいかな?」
「……?」

 何を聞かれるんだろう私なにかしたっけ…??

「そんな軽装でどうやってここまで来たのかな?」
「軽装…あっ」

 そうだ、私パジャマだった。もしかして不振がられてる?正直に話したほうがいいのかな…どうしよう。

「あのね、ここがどこか知ってる?」
「…知りません。」

 というか教えてください。

「ここは雪山のてっぺんにある私の家なの。」
「え…外に雪はなかったですよ?」

 たしか家の前に出たときはそんなものは見ていない。雪山と言われても困る。私は何を言われているのかわからず首を傾げるだけだ。

「私の家の周りだけ結界を張っているから雪がないのよ。」
「結界…ってなんですか?」

 聞いたことのない言葉が出た。正確には一般的に使わないというか使われない言葉だ。アニメやゲーム、小説などでは聞いたことがあったかもしれない。

「簡単にいうと家の周りだけ雪が入らないように空気の壁みたいなもので覆ってるのよ。」
「なるほど……?」

 透明なガラスか何かで壁のようにしていることでいいのかな?お金かかりそうな設備ね。

 このままだと話が進みそうもないので、私の今の状況を話してみることにした。気がついたら知らない場所にいたこと、ちょっと移動するだけで次々と景色が変わってしまったこと。そして初めて言葉が通じて嬉しかったことも伝えておいた。

「言葉が通じなかった人がいたの?」
「はい、子供くらいの身長で肌が緑色した人たちでした。」

 なぜかリナが頭を抱えている。私変なことでも言ったかしら…?

「ナナミ…それ人じゃないわ…多分ゴブリンね。」
「ゴブリン…ってなんですか?」

 なんかどっかで聞いたことがあるきがするんだけどなんだったかしら…気のせいか再びリナが頭を抱えているわ。

「魔物!モンスター!化物!わかった?」
「はあ…」

 やだなーそんなものがいるわけないじゃない。私を驚かそうとでもしてるのかしら。

「で…次々移動か…そもそもナナミの住んでるところはどこなのよ。」
「私は日本人だからもちろん日本よ?」
「聞いたこともないな…ニホン?」

 え…日本を知らないなんてよっぽどの辺境なのねここ…というかそもそも日本じゃないってことね…だとするとここはどこなのかしら?どうやって私は来たっていうの……?

「えーとじゃあここはどこなんですか?」
「イシュレットガント公国の豪雪山の大体頂上あたりね。」

 聞いたことがない地名…豪雪山?しかも公国ってなんだっけ…まあこれはいいか。

「なんでこんなとこに家が…というか雪山で生活とかすごいですね!」

 買い物とか出来ないしご飯とかどうしてるんだろう…というかさっきからこの部屋暖かい。エアコンとかもちゃんとあるってことなのね。それっぽいのが見当たらないけど。

「だから結界があるから大丈夫だし、魔法ですぐ買い物もいけるから何も問題ないわよ?」
「魔法…?やだな~そんなの小さい子が夢からまだ覚めてないみたいなこといってっ」

 やばいこの人痛い人なのかしら…魔法が使えると思い込んでいるのよね?つい哀れむような視線で見てしまったわ!

「そんな変な顔でみないでよ…ナナミの移動だって魔法じゃないっ」
「……?」

 いやいやそんなばかな…きっと目の錯覚だったんだわ…うんきっとそう!とりあえずそれは置いておくとして、家に帰るにはどうしたらいいのかしら…これが一番の問題よね。

「家に帰るにはどうしたらいいですか?」
「ニホン…だっけ。そうね、情報収集とそこまでのお金かしら??」

 そうかお金か。そりゃそうよね帰るためにはお金もかかるわ。でもここ雪山なんじゃないの?どうやってお金稼げば…

「町に出て情報収集とお金稼ぎ両方出来るから行ってみるといいわ。」
「…あの。その町なんですけど、私こんな服装で入れますかね?」

 こんな格好じゃ流石においだされちゃうんじゃないかな。どうみてもパジャマだし…!

「そうね…流石に軽装すぎかも。私の昔使ってた防具貸すからお金稼げるようになったら返しに来てよ。」

 そういうとリナは奥へ行ってから手にいくつか抱えて戻ってきた。どうやら先ほど言っていた防具?をもってきたみたい。早速教えられるままつけることになったんだけど、何でパジャマの上から着せるのかな…酷い見た目になった。

 ちょっと私には耐えられない見た目になってしまったので防具は返却した。

「あの…普通の服がいいです。」
「そお?じゃあ私のお古から選んでね。服ならいくつかあげるわよ?」
「貰っても持ち歩けないですよ?」
「そうか…手ぶらだったね。流石に収納何も持ってないのか。」

 収納?鞄とか袋じゃなくて収納?なんか変な言葉の使い方するのね。まあそれはいいとしてそれから着せ替え人形のごとくあれやこれや着せられ合計3着の服を貰った。その服をしまっておくための袋もついでにくれた。見た目と違ってなんかたくさん入るすごい。説明によるとこの袋はマジックバックといっていろんなサイズがある中で一番小さいサイズのものらしい。自分で買えるようになったら返してくれとのこと。

「後はこれね。」
「これは何ですか?」

 銀色に光るコインを10枚手のひらに乗せられた。日本にある100円玉よりもっと明るい銀色だ。

「銀貨よ。まあこのあたりで使えるお金ね。」

 どうやらお金も貸してくれるらしい。お金も説明をしてくれて、なんとなくわかった。


鉄貨10枚→銅貨1枚
銅貨10枚→銀貨1枚
銀貨10枚→金貨1枚
金貨100枚→白金貨1枚
白金貨10枚→黒金貨1枚


 ということだ。日本円にしたらいくらになるのか知らないけど銀貨10枚って金貨1枚ってことよね?後で返しに来なくてわ。

「わふぅ~…ふぁ…」

 あ、そういえばこの犬ずっと抱えたままだったから連れて来ちゃったのね。のんきにベッドの上で欠伸してるしこれも飼い主に返さないといけない。

「えーとリナ?この子なんだけど…」
「ああ、そういえばナナミについてきてたけどあなたの従魔よね名前は?」
「名前ですか…?」

 そもそも私の…従魔?とかじゃないんだけど名前つけちゃっていいのかな…まあ呼びにくいし仮でつけておけばいいか。そうね…ちょっと銀色に近い毛並みをしているから…

「銀太…とか?」

 え…うわっ何これ…名前をつけたら目の前がすごい眩しいんですけど!目を開けてられないっ

 私は右腕で目を隠すようにして光が収まるのを待つ。そ~っと目を開けると段々収まってきたのかどうにか見ることが出来た。どうやら光っていたのは銀太の体…何で光ってるのー??

「あーびっくりした。まだ従魔契約してなかったのね。」
「…?今名前付けただけですよ?」
「それよ。名前をつけることが契約になるの。それにしても強い光だったわ…この子強くなるわよ。」

 なにそれ…よくわからないままなんか契約しちゃったとか…犬と契約してどうすれと。そもそも何を契約したのやら…

『犬と一緒にするとか失礼な!』
「…へ?」
『僕はこう見えて狼族なんだぞっ』
「このこ狼なんですか?」
「あら、そうなのね知らなかったわ。」
「イヤだって今…あれ?」
「「……」」

 教えてくれたのリナじゃないの?

 銀太の方を見るとこちらをじっと見つめて尻尾を振っている。…犬にしか見えない。

『だから狼なの!も~僕のあるじは頭が悪いのかな…』
「誰が頭が悪いよ!」
「え、何ナナミどうしたの?」

 何でか銀太の声は私だけにしか聞こえていないみたい。

『そーだよ~あるじにしか声聞こえないんだよ。』
「リナ…私銀太の言葉がわかるわ…」
「あら、従魔ともうそんなに仲がいいのね。」

 …まじですか。

 仕組みがよくわからないけど仲良くなると色々出来ようようになるらしい。いいのか悪いのかよくわからない。

「さっナナミ準備はよさそうかしら?」
「あーうんそうだった。」
「案内するからついてきて。」

 今から私は日本に帰る情報とそのための資金をためるために町に向かう。その案内をリナがしてくれるみたいだ。でも何故か2階へ上がっていく…外へ出ないの?

「はい、ついたよ。」
「…?」

 案内されたのは2階に上がっていくつかある扉のひとつ。その前に今立っている。

「この扉の向こうがイシュレットガント公国の一番大きな町『イシュレットガント』よ。」

 なんで扉の向こうに町があるのかとか聞かないほうがいいのかな…まあ聞いてもわからないんだけどね!

「はあ…まあお世話になりました…?」
「また遊びにいらっしゃい…というかきっと来るわね。」
「…?」

 リナが扉を開けると少し先に大きな門が見えている。きっとあの門の先が町なのだろう。私は銀太と一緒に扉をくぐるとリナのほうに振り向いた。にこやかに手を振るリナが扉とともにすーーっと消えていった。これが魔法というやつなのかもしれないけど…やっぱりよくわからないや。手品みたい。

「さてっと…まずは町に入って情報収集ね。」
『あるじ楽しそうっすね。』
「……」

 そうだ1人じゃなかった…少し浮かれていたのを見られた…恥ずかしい。

 まあとりあえず1歩前へ歩く。今度は違うところに移動することはなかった…

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