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王都へのお使い
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右を見ても左を見ても変わらない景色にアーヤは迷子になっている事に気がついた。土の強い香りとどこを見ても同じような木々が立ち並ぶ景色は迷子になったという事実を実感するのに時間は必要なく…ただただ不安を煽られる。
「はぁ…」
近くにあった切り株に腰掛けるとアーヤは膝を抱えうずくまった。そしてこんな事になった原因を思い出すとため息しか出なかったのだった。
あれは10日ほど前─────
いつものように師匠の元で魔法の本をアーヤは眺めていた。そこに魔法薬の調合をしていたアーヤの師匠であるモルアガナはこんな事を言い出したのだ。
「あぁそうだ、来週研究会へ行くことになってねぇ~」
「来週ですか …あれ? じゃあ当初の予定の方はどうなるので」
「うん、それなんだけどアーヤ、あんたに頼むわ」
「それ、本気で言ってます?」
普段のちょっとしたおつかいと同じようにモルアガナはアーヤに気軽に声をかけた。その言葉を耳にしたアーヤは驚きで目を大きく開けモルアガナを見つめている。それもそのはずで弟子がこなす仕事としては難易度が高すぎるものだったからだ。
「もちろんだが…?」
「あのですね、師匠じゃあるまいし私がこんな大きなもの運べると本気で思ってるんですか? そもそも魔法の鞄すら持っていないんですからっ」
「…ん? 鞄があれば運んでくれる?」
「魔法の、ですよ!」
「なるほど…」
一人納得した様子を見せたモルアガナは再び魔法の調合に戻った。それを見たアーヤは内心頼まれ事をこなせなかったことに落ち込みつつもそれを表に出さず、魔法の本へと視線を落とす。後は調合の機材がぶつかり合う音と本をめくる音だけが響いていた。
それからはいつもの毎日か続いた。時にアーヤはモルアガナに質問し一緒に魔法を使ったり、頼まれた調合材料を買いに行くこともあった。もちろん調合の助手をすることもある。
結局本来の予定と研究会がどうなったのかわからないままその日はやってきたのだった…
朝から慌ただしくモルアガナは動き回っている。そのもの音に気がついたアーヤは慌てて起きて身支度を整えいつものように魔法の本を持ってモルアガナの部屋へと向かった。ところがさっきまで聞こえていた音はすでにしなくなっており、モルアガナの姿も見えない。不思議に思ったアーヤは順番にすべての部屋を開けながら師匠に呼びかける。だがどの部屋を覗いてもモルアガナの姿は見つからなかったのだ。
再びモルアガナの部屋へと戻ってきたアーヤは部屋の状態を確認することにした。昨夜アーヤが最後に出た時からの違いを探す。結論から言えば置手紙か何かがあることを期待している。
「あ…」
部屋にある机の一つに封筒が乗っていることをアーヤは見つけた。他には変化がないことを確認すると、アーヤはその封筒を手に取り表面に書かれている文字を読んだ。
『アーヤへ』
はっきりと自分当ての手紙だとわかるとアーヤはすぐさま封を開け中身を確認する。その内容を始めのうちはうなずくように眺めていたのだが、後半にすすむにつれアーヤは顔をしかめていく。
『アーヤ先に謝っておきます。やはりどちらの予定も取りやめることは出来ません。なので私は研究会のほうへ行ってきます。こっちには私が行く以外の選択はないのだからしかたがないのよね。多分7日ほどで帰るのであとのことはアーヤ頼んだわよ。 追記:魔法の鞄は用意しておきました』
読み終わった手紙を握りしめアーヤの肩がプルプルと震えた。
「師匠のあほおおおおおおおおおおおーーーーっ」
ひとしきり叫び終えたアーヤは軽く息を整えながら手紙の下に敷かれていた布を手に取って広げた。それはアーヤが肩に掛けると程よいサイズの肩掛け鞄だった。
「はぁ…これが魔法の鞄?」
アーヤは早速その鞄を肩から掛けサイズの確認をした後なんとなくくるくると回ってみた。鞄自体は重くもなく長さもちょうどいいことを確認すると、顔がにんまりと崩れていくのを感じて慌てて頬をたたいてそのにやけ具合を止めた。誰も見ていないのになぜか恥ずかしくなってきたのだ。
というのも魔法の鞄というものがとてもすばらしいもので、基本生き物意外なら何でも入り、容量も鞄によってさまざまあるといわれている。大きなものも小さなものもその鞄の容量までならなんでも入るということだ。それだけにとても高価で簡単に手に入るものではないというのが一般的だ。つまりこんなすごい物を貸してくれたということはそれだけアーヤのことをモルアガナが信用しているという証でもあるということになる。
「…と。喜んでる場合じゃなかった」
手紙と鞄を手に持ったアーヤは急いで自分の部屋へ戻ると棚から地図を取り出し机の上に広げた。
「ここから駅にいって…それから列車で…えーと……」
アーヤは地図を見ながら顔をしかめた。モルアガナに頼まれた荷物運びはここから北にある王都に持っていくのだが、地図で場所や行き方がわかっても日数が割り出せないのでそんな顔をしている。ちなみに手紙の内容から察するに7日後までには完了させないといけないということになる。モルアガナが帰るまでが期限ということなのだ。
「うーんわからないわね。すぐにでも動き出したほうがいいかもしれないわ」
期限を守るためにアーヤはすぐに出かける準備を始める。軽く喉とお腹を満たし自分の荷物とモルアガナに頼まれていた荷物を魔法の鞄に入れ急いで駅へと歩き出した。
「はぁ…」
近くにあった切り株に腰掛けるとアーヤは膝を抱えうずくまった。そしてこんな事になった原因を思い出すとため息しか出なかったのだった。
あれは10日ほど前─────
いつものように師匠の元で魔法の本をアーヤは眺めていた。そこに魔法薬の調合をしていたアーヤの師匠であるモルアガナはこんな事を言い出したのだ。
「あぁそうだ、来週研究会へ行くことになってねぇ~」
「来週ですか …あれ? じゃあ当初の予定の方はどうなるので」
「うん、それなんだけどアーヤ、あんたに頼むわ」
「それ、本気で言ってます?」
普段のちょっとしたおつかいと同じようにモルアガナはアーヤに気軽に声をかけた。その言葉を耳にしたアーヤは驚きで目を大きく開けモルアガナを見つめている。それもそのはずで弟子がこなす仕事としては難易度が高すぎるものだったからだ。
「もちろんだが…?」
「あのですね、師匠じゃあるまいし私がこんな大きなもの運べると本気で思ってるんですか? そもそも魔法の鞄すら持っていないんですからっ」
「…ん? 鞄があれば運んでくれる?」
「魔法の、ですよ!」
「なるほど…」
一人納得した様子を見せたモルアガナは再び魔法の調合に戻った。それを見たアーヤは内心頼まれ事をこなせなかったことに落ち込みつつもそれを表に出さず、魔法の本へと視線を落とす。後は調合の機材がぶつかり合う音と本をめくる音だけが響いていた。
それからはいつもの毎日か続いた。時にアーヤはモルアガナに質問し一緒に魔法を使ったり、頼まれた調合材料を買いに行くこともあった。もちろん調合の助手をすることもある。
結局本来の予定と研究会がどうなったのかわからないままその日はやってきたのだった…
朝から慌ただしくモルアガナは動き回っている。そのもの音に気がついたアーヤは慌てて起きて身支度を整えいつものように魔法の本を持ってモルアガナの部屋へと向かった。ところがさっきまで聞こえていた音はすでにしなくなっており、モルアガナの姿も見えない。不思議に思ったアーヤは順番にすべての部屋を開けながら師匠に呼びかける。だがどの部屋を覗いてもモルアガナの姿は見つからなかったのだ。
再びモルアガナの部屋へと戻ってきたアーヤは部屋の状態を確認することにした。昨夜アーヤが最後に出た時からの違いを探す。結論から言えば置手紙か何かがあることを期待している。
「あ…」
部屋にある机の一つに封筒が乗っていることをアーヤは見つけた。他には変化がないことを確認すると、アーヤはその封筒を手に取り表面に書かれている文字を読んだ。
『アーヤへ』
はっきりと自分当ての手紙だとわかるとアーヤはすぐさま封を開け中身を確認する。その内容を始めのうちはうなずくように眺めていたのだが、後半にすすむにつれアーヤは顔をしかめていく。
『アーヤ先に謝っておきます。やはりどちらの予定も取りやめることは出来ません。なので私は研究会のほうへ行ってきます。こっちには私が行く以外の選択はないのだからしかたがないのよね。多分7日ほどで帰るのであとのことはアーヤ頼んだわよ。 追記:魔法の鞄は用意しておきました』
読み終わった手紙を握りしめアーヤの肩がプルプルと震えた。
「師匠のあほおおおおおおおおおおおーーーーっ」
ひとしきり叫び終えたアーヤは軽く息を整えながら手紙の下に敷かれていた布を手に取って広げた。それはアーヤが肩に掛けると程よいサイズの肩掛け鞄だった。
「はぁ…これが魔法の鞄?」
アーヤは早速その鞄を肩から掛けサイズの確認をした後なんとなくくるくると回ってみた。鞄自体は重くもなく長さもちょうどいいことを確認すると、顔がにんまりと崩れていくのを感じて慌てて頬をたたいてそのにやけ具合を止めた。誰も見ていないのになぜか恥ずかしくなってきたのだ。
というのも魔法の鞄というものがとてもすばらしいもので、基本生き物意外なら何でも入り、容量も鞄によってさまざまあるといわれている。大きなものも小さなものもその鞄の容量までならなんでも入るということだ。それだけにとても高価で簡単に手に入るものではないというのが一般的だ。つまりこんなすごい物を貸してくれたということはそれだけアーヤのことをモルアガナが信用しているという証でもあるということになる。
「…と。喜んでる場合じゃなかった」
手紙と鞄を手に持ったアーヤは急いで自分の部屋へ戻ると棚から地図を取り出し机の上に広げた。
「ここから駅にいって…それから列車で…えーと……」
アーヤは地図を見ながら顔をしかめた。モルアガナに頼まれた荷物運びはここから北にある王都に持っていくのだが、地図で場所や行き方がわかっても日数が割り出せないのでそんな顔をしている。ちなみに手紙の内容から察するに7日後までには完了させないといけないということになる。モルアガナが帰るまでが期限ということなのだ。
「うーんわからないわね。すぐにでも動き出したほうがいいかもしれないわ」
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