アーヤと魔法の鞄

れのひと

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王都へのお使い

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「これからアーヤさんはどうするのかな?」

まずはこれからどうするかアークはアーヤにたずねた。これから日が落ちてくるのでアークとニャマはこのまま野営をするつもりで行動を始めている。もちろんアーヤを追い出すつもりはアークにはないしもちろんニャマにもない。だが、一応としてこれからのことを確認しておきたかったというところだろう。

「これから…そうですね。王都に行くのが目的なのでどうにかしていきたいところなんですが…」
「王都かにゃ? ニャマ達もこれから向かうところにゃ」

焚火の上から鍋をつるしていたニャマがその手を止めアーヤのほうを振り返った。その行動は危なげで今にも鍋が火の中へと滑り込みそうだ。

「ニャマ、危ないよっ」
「おーっとすまんにゃ」

落ちかけた鍋を慌ててアークが直す。ニャマは鍋をしっかりと固定すると別の作業へと動き始めた。その様子をじっとアーヤが眺めていると再びアークが口を開く。

「確かに僕たちはこれから王都へと向かいますけど…アーヤさんは何が出来ますか? 護衛でもないのに何もやらない人を連れていくことは出来ません」
「アークは冷たいにゃ」
「ニャマッ」
「怒ったアークはかわいくにゃいにゃ…」

ニャマはアークに怒鳴られると火のそばを離れどこかへと行ってしまった。それを横目で見つつアーヤは少し考えてみることにする。どう考えても一人で王都へ行くのは無理だということ。アークとニャマに協力を求めるにはどうしたらいいのか…

「まあ一晩考えてみるといいよ」
「…わかりました」

アークとニャマの夕食は簡単なものだった。先ほど戻ってきたニャマが持ち帰ってきた木の実と携帯用の干し肉、それと先ほど沸かしていたお湯でお茶を入れているだけだった。一方アーヤは店で買ってきたパンに屋台で買った串焼きを串から外してはさんだものだ。アーヤもこの時に気が付いたのだがこの鞄はどうやら時間停止機能も付いていたらしく、取り出した串焼きは温かいままだった。

「うらやましいにゃ…」
「ニャマ行儀悪いよ」
「でもおいしそうにゃ…」

食べようとしていたアーヤはニャマにじっと見られ食べずらくなった。座る場所を変えてみてもその目がじっとアーヤ…ではなくその手に持っているものへと注がれている。口では行儀が悪いと言っているアークでさえアーヤが移動するたびにその三角の耳がぴくぴくと音を拾って反応しているくらいだ。

「……あの、まだあるので食べますか?」

アーヤは鞄から串焼きを2本取り出して2人の前に差し出した。鞄の中に入っている串焼きはこれで最後なのだが、パンだけは多めに用意してあるので王都に着くまでだったら大丈夫だと思ったのだ。

「ほ、本当に食べていいのかにゃっ?」
「ニャマ…あの、アーヤさん。ただはいけません。交換にしましょうか」
「は、はいっ」

先ほど鞄から取り出したばかりの串焼きをアーヤはアークへ渡す。代わりにアークはニャマが集めてきた木の実をいくつかと干し肉をアーヤへと渡した。これで交換が完了した。

「はい、ニャマ」
「うわぁ~い、温かい肉だにゃーっ」

串焼きを受け取ったニャマは早速かぶりついた。まるで久々に温かい肉を食べたといわんばかりの勢いであっという間に食べ終わる。さらに物欲しそうな視線をアークへと向けているがアークは完全に無視をしていた。その様子を眺めていたアーヤは自分の分を食べつつこれからのことについて考えていた。

食事を終えるとアークが鍋に残っていたお湯にさらに水を足してぬるま湯を作っていた。それをどうするのだろうかと気になったアーヤはじっと眺める。

「アーヤさんも使いますか?」
「……? えーと、何に使うんですか」
「この残り湯で体を拭くんですよ」
「い、いただいていいんですか!?」
「もちろんですよ」

外で体を拭くことは出来ないだろうと思っていたアーヤは嬉しくてつい飛びついてしまった。飛びついてからアーヤは気が付いたのか少し困った顔をアークへと向ける。

「えーと…このお湯の代わりにはどんなものをだせばいいの?」
「いや…ただの残り湯なので別にいりませんけど?」

きょとんとした顔のアークがなんでこんなものに交換対象がいるんだろうかと首を傾けた。そのアークのことはアーヤにはすでに目に入っておらず、彼女は自分の鞄の中を漁っていた。今からここで寝ることを考えたうえで少しでも役に立ちそうなものがないかを探しているのだ。

「あのっ」
「はい」
「これからここで野営ですよね」
「そうだね。次の宿場町へは夜中になってしまうからこのままここで寝るつもりだよ」

その言葉を聞いたアーヤはそれならばと一つの小瓶を鞄から取り出した。

「これならお礼になるかもしれないです」
「それは…?」

アーヤが手にしている小瓶はパッと見ただけでは何に使うものなのかアークにはわからなかったみたいだ。それもそのはずで瓶にはラベルも付いていないし、アークにはなじみのないものだったのだ。

「魔法薬です。効果は結界というか認識阻害というか…まあ外敵から一定時間気が付かれなくなります。そのための魔法を使うための補助薬です」
「魔法の補助薬か…残念だけど僕は魔法使えないんだよね」
「私が使えるのでこれで夜が安全に過ごせます…えーとちょっと計算してみますね」

おもむろにその辺に落ちていた木の枝を拾い上げたアーヤは地面の空いた場所に数字を書き始めた。先ほど計算をするといっていたので書かれているのはその数式か何かだということはアークにもわかったが、何を計算しているのかがまったくわからず顔をしかめる。その計算をしていたアーヤの手が止まると、焚火を中心にある程度のスペースを囲むように枝で地面に線を書き込んでいく。

「えーと…このくらいの範囲かな」
「何がですか?」
「この囲った範囲に魔法薬2本使用して5…6時間くらいかな。少し時間は自信がないんですけど、大体そのくらい外敵に気づかれないはずです」
「す、すごいのにゃぁ~~ 見張りしなくていいんだにゃっ」
「そう…みたいだね」
「では早速準備しますね」

アーヤは魔法薬の蓋を開けると先ほど書いた地面の線に沿って魔法薬を垂らし始めた。ぐるりと一周魔法薬を撒き終わるとアーヤは呪文を口にしながら地面の魔法薬に触れた。魔法薬を撒かれた箇所がそれによってうっすらと白く光る。その光は一瞬のことですぐに見えなくなった。


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