15 / 29
15
しおりを挟む
冒険者ギルドへ戻り依頼の報告をすると、俺はすぐ併設されている酒場の方へと足を向けた。
「お、シオン来たな」
「来たなじゃないよ。なんかご飯頂戴」
「自分で作ればいいのに」
「…すぐ食べられるんだろう?」
酒場のカウンターの中にいる男…ノッツはニヤニヤと笑いながらも俺に食事を出してくれる。ここで昼食を済ませた後は買出しを手伝う予定になっている。
クラック、ロザリ、トールが留守の間冒険者ギルドのお世話になるための条件として酒場での手伝いがあるのだ。夕食のための買出しと夕食作り、それが俺が手伝わなければいけないもの。だからギルドの仕事が出来るのは午前中だけ、今日はさっきの掃除の仕事でおしまいなのだ。
「シオンがいるじゃん」
「本当だ…ってことは今晩はシオンの飯が出るのか?」
俺が食事をしていると見知った冒険者が声をかけてきた。
「そうだぞ~ お前ら腹空かせて来いよ!」
「よっしゃー!! こりゃやる気も出てくるってもんだ」
ノッツ…ご飯は俺だけじゃなくてお前も一緒に作るんだぞ。というか他のやつらもだけど5歳の作るものに期待しすぎなんじゃないのか? 確かにこの世界はの食事はいまいちだが、それはあまりいい素材がないというのもある。だけど、そんなものだってアイデア次第でどうにかうまいものにすることだってできるだろうに。
「なあ今日は何を作るつもりなんだ?」
「市場に行ってみないとなんとも」
「そうかもだけどよ…よくそんなに色々思いつくよな?」
そりゃー自炊経験の知識があるから。早く色んなものが周りで作れるようになってくれれば俺が作らないでよくなるんだけどね。出来ることならもう少し子供らしく生きていきたいものだと思わないでもない。何も考えず気の向くままにわがままを言う…まあ当分無理そうだ。
「そろそろいくよ」
「ほい、じゃあこれが今回の予算な」
「…これ何人くらいが食べることを想定してる?」
「そう…何?」
「何人分の食事代で考えているのかって」
「そうだな…50人分も取れればいいんじゃないか?」
50人か…いや、多分それじゃ足りない。今までもそう言われて足りなくなることが多かった。となると…倍か? 100人は食べられるくらいに調節しなければならないってことになる。残るものよくはないのだが、毎回自分たちの分が無いって状態になったことを考えると少し多いくらいで構わないだろう。それを踏まえたうえで今日のメニューを考え材料を調達しなければならない。
市場に向かい見て回るとどうやら今日は芋がやすいみたいだ。肉はちょっと高めだな。やっぱり寒い時期は肉の入手が難しいのだろう。じっとしていて動き回らない獣が多いからね。となると肉はひき肉にして使うほうがいいかな。冒険者たちはがっつりとした食事を好む傾向があるけど、人数も多いし文句は言ってられない。
「こんなもんだろう」
多少値切りつつ予算を使い切り、買ったものは順次収納へしまって買い物を終えた。冒険者ギルドへ戻ると午後からの仕事へと向かったのかギルド内は閑散としていた。まあ静かでいいんだけどね。
「戻ったよ」
「相変わらず買い物はえーよな~ それに荷物を運ぶのが楽なのもいい。もうずっとここで働けばいいのによ」
「一応学園へ通うつもりだから」
「あーだから資金貯めてるんだっけ?」
ノッツとの会話を適当に対応しながら買ってきたものを調理台へと取り出す。どんどんと出される食材の内容にノッツが顔をしかめる。
「芋が多くて肉が少ないな」
「肉高かったから」
「にしたってよ…何作るのか全く分からんわ」
そういえばまだ作ったことがなかったかもな…今回作るのはまあコロッケだ。後は野菜だけのスープと、茹で野菜にひき肉の餡かけ。ひき肉にすることで数を作れるようにしてある。普通にカットした肉とかで調理するともしかすると50人分も足りないくらいだからね。まあその分コロッケも餡もたくさん作れるので腹には貯まるはず。
「はぁ…だから今からまずは試作するんでしょう?」
「買い物が早いから時間もあるしなっ」
荷物を出し終えるとまずは試作用に数個芋の皮をむいてもらい茹でてもらう。その間に俺は硬いパンを袋に詰め袋の上から麺棒で叩く。食べるのには硬いパンだがパン粉にするのに丁度よい。本当ならすりおろし器で細かくしたいところだけどそんなもんはないし、都合のいいスキルもなければそもそも魔法をも覚えていない。ちょっと荒いものになるけどそれはそれはまたありなんじゃないかな。
「芋処理終わったから茹でるな」
「じゃあ茹でてる間に肉をこの分だけ細かく刻んで」
「あ~? 細かくしてスープにでも入れるのか」
ぶつぶつ言いながらも作業はちゃんとやっているノッツを横目で見ながら他に必要な材料を並べていく。卵は溶いて小麦粉は皿にだすだけ。後は調味料を並べ準備完了だ。
「でこれは今茹でてる芋の鍋に入れるのか?」
「違うよ。そろそろ茹で上がるし始めようか」
まずは餡から。ひき肉を炒めて水と調味料で煮る。醤油が無いので塩味だが、茹でた野菜にかけるだけでおいしい。今回は茹でた芋で味見をしてもらう。残りの茹でた芋を潰し、炒めたひき肉と塩を混ぜ成形し衣をつけ油で揚げてもらうと驚かれた。やっぱり揚げ物はないらしいね。野菜の餡かけは大鍋で一気に野菜を茹で一部をスープ用に、残りは餡かけ用と分けるので結構手間が省ける。まあ作業が結構あるので休憩から戻って来た他の従業員が一生懸命野菜の処理をしてくれた。
「で…結局あれだけ用意したのにほとんど残っていないね」
夕食は大盛況だった。餡かけとコロッケは酒のつまみにもなるので結局残ったのはスープだけ。残り物で夕食をする俺たちはため息をついた。まあ手持ちの肉を出して油もあるのでメンチカツを教えて作って食べたけど何か?
「お、シオン来たな」
「来たなじゃないよ。なんかご飯頂戴」
「自分で作ればいいのに」
「…すぐ食べられるんだろう?」
酒場のカウンターの中にいる男…ノッツはニヤニヤと笑いながらも俺に食事を出してくれる。ここで昼食を済ませた後は買出しを手伝う予定になっている。
クラック、ロザリ、トールが留守の間冒険者ギルドのお世話になるための条件として酒場での手伝いがあるのだ。夕食のための買出しと夕食作り、それが俺が手伝わなければいけないもの。だからギルドの仕事が出来るのは午前中だけ、今日はさっきの掃除の仕事でおしまいなのだ。
「シオンがいるじゃん」
「本当だ…ってことは今晩はシオンの飯が出るのか?」
俺が食事をしていると見知った冒険者が声をかけてきた。
「そうだぞ~ お前ら腹空かせて来いよ!」
「よっしゃー!! こりゃやる気も出てくるってもんだ」
ノッツ…ご飯は俺だけじゃなくてお前も一緒に作るんだぞ。というか他のやつらもだけど5歳の作るものに期待しすぎなんじゃないのか? 確かにこの世界はの食事はいまいちだが、それはあまりいい素材がないというのもある。だけど、そんなものだってアイデア次第でどうにかうまいものにすることだってできるだろうに。
「なあ今日は何を作るつもりなんだ?」
「市場に行ってみないとなんとも」
「そうかもだけどよ…よくそんなに色々思いつくよな?」
そりゃー自炊経験の知識があるから。早く色んなものが周りで作れるようになってくれれば俺が作らないでよくなるんだけどね。出来ることならもう少し子供らしく生きていきたいものだと思わないでもない。何も考えず気の向くままにわがままを言う…まあ当分無理そうだ。
「そろそろいくよ」
「ほい、じゃあこれが今回の予算な」
「…これ何人くらいが食べることを想定してる?」
「そう…何?」
「何人分の食事代で考えているのかって」
「そうだな…50人分も取れればいいんじゃないか?」
50人か…いや、多分それじゃ足りない。今までもそう言われて足りなくなることが多かった。となると…倍か? 100人は食べられるくらいに調節しなければならないってことになる。残るものよくはないのだが、毎回自分たちの分が無いって状態になったことを考えると少し多いくらいで構わないだろう。それを踏まえたうえで今日のメニューを考え材料を調達しなければならない。
市場に向かい見て回るとどうやら今日は芋がやすいみたいだ。肉はちょっと高めだな。やっぱり寒い時期は肉の入手が難しいのだろう。じっとしていて動き回らない獣が多いからね。となると肉はひき肉にして使うほうがいいかな。冒険者たちはがっつりとした食事を好む傾向があるけど、人数も多いし文句は言ってられない。
「こんなもんだろう」
多少値切りつつ予算を使い切り、買ったものは順次収納へしまって買い物を終えた。冒険者ギルドへ戻ると午後からの仕事へと向かったのかギルド内は閑散としていた。まあ静かでいいんだけどね。
「戻ったよ」
「相変わらず買い物はえーよな~ それに荷物を運ぶのが楽なのもいい。もうずっとここで働けばいいのによ」
「一応学園へ通うつもりだから」
「あーだから資金貯めてるんだっけ?」
ノッツとの会話を適当に対応しながら買ってきたものを調理台へと取り出す。どんどんと出される食材の内容にノッツが顔をしかめる。
「芋が多くて肉が少ないな」
「肉高かったから」
「にしたってよ…何作るのか全く分からんわ」
そういえばまだ作ったことがなかったかもな…今回作るのはまあコロッケだ。後は野菜だけのスープと、茹で野菜にひき肉の餡かけ。ひき肉にすることで数を作れるようにしてある。普通にカットした肉とかで調理するともしかすると50人分も足りないくらいだからね。まあその分コロッケも餡もたくさん作れるので腹には貯まるはず。
「はぁ…だから今からまずは試作するんでしょう?」
「買い物が早いから時間もあるしなっ」
荷物を出し終えるとまずは試作用に数個芋の皮をむいてもらい茹でてもらう。その間に俺は硬いパンを袋に詰め袋の上から麺棒で叩く。食べるのには硬いパンだがパン粉にするのに丁度よい。本当ならすりおろし器で細かくしたいところだけどそんなもんはないし、都合のいいスキルもなければそもそも魔法をも覚えていない。ちょっと荒いものになるけどそれはそれはまたありなんじゃないかな。
「芋処理終わったから茹でるな」
「じゃあ茹でてる間に肉をこの分だけ細かく刻んで」
「あ~? 細かくしてスープにでも入れるのか」
ぶつぶつ言いながらも作業はちゃんとやっているノッツを横目で見ながら他に必要な材料を並べていく。卵は溶いて小麦粉は皿にだすだけ。後は調味料を並べ準備完了だ。
「でこれは今茹でてる芋の鍋に入れるのか?」
「違うよ。そろそろ茹で上がるし始めようか」
まずは餡から。ひき肉を炒めて水と調味料で煮る。醤油が無いので塩味だが、茹でた野菜にかけるだけでおいしい。今回は茹でた芋で味見をしてもらう。残りの茹でた芋を潰し、炒めたひき肉と塩を混ぜ成形し衣をつけ油で揚げてもらうと驚かれた。やっぱり揚げ物はないらしいね。野菜の餡かけは大鍋で一気に野菜を茹で一部をスープ用に、残りは餡かけ用と分けるので結構手間が省ける。まあ作業が結構あるので休憩から戻って来た他の従業員が一生懸命野菜の処理をしてくれた。
「で…結局あれだけ用意したのにほとんど残っていないね」
夕食は大盛況だった。餡かけとコロッケは酒のつまみにもなるので結局残ったのはスープだけ。残り物で夕食をする俺たちはため息をついた。まあ手持ちの肉を出して油もあるのでメンチカツを教えて作って食べたけど何か?
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる