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数日ぶりにみんなで食事をすると今回の仕事の内容を話してくれた。
「え、じゃあ今回は依頼を受けたわけじゃないんですか?」
「ああ、シオンもだいぶこの生活に慣れてきたし久しぶりにちょっとだけダンジョンにな」
「ダンジョン…」
そうこの世界にはダンジョンというものがある。いつどうやってできた物かわからないけど、気がついたら新しく出来ていたりもするとか何とか。この町からも半日もかからないところにダンジョンがあるらしく、3人はそこへ行っていたという話。
「シオン、ダンジョンはいいわよ~ どういう仕組みかわからないけど勝手に肉とかに変わるし、宝箱が見つかることもあるの」
「ああそうだよ。それでその宝箱から今回シオンにお土産があるんだ」
そういえば帰ってきた時トールさんがそんなことを言っていた。まさか宝箱の中身をくれるだなんて思ってもみなかったけど。これはちょっとワクワクが止まらなくて顔がにやけてしまうのも仕方がない。
「ほらこれだよ」
「…本?」
お土産だと言って見せてもらったのは1冊の本だった。どことなく少し古ぼけた感じの青みがかった色の表紙をした本。
「ああ、驚くなよ…? これは魔法書だ」
「…えっ」
「まあ何を覚えられるかわからない中級の攻撃魔法書だね」
魔法書って…魔法!! 今までずっと気になっていたけど手に入れることが出来なかったやつだっ やばいこれは嬉しい! あ、だけど…
「魔法ってトールさんも使うんじゃないの??」
そうトールさんは支援系が中心だけど主に魔法を使うタイプの人だ。だったらいらないということが無いわけで…
「え、攻撃魔法は少しだけ覚えているからいらないよ? あまりいくつも覚えても使う機会もないしね」
「本当に?」
「もちろんさ。しかもこれは欲しいものが覚えられるかわからない魔法書だからね。それとあくまでのその魔法の使い方がわかるようになるだけで、ちゃんと理解して練習していかないと使えないんだ」
つまりなんだ…魔法を覚えるきっかけになる本ってことかな? しかも中級攻撃魔法の。初級をすっ飛ばしてるけどいいんだろうかという疑問が湧いてくる。
「ほら遠慮しないで使ってみなよ」
「え…どうやって」
押し付けるかのように俺の手に本が持たされた。
「本を開いて魔力を注いでみて」
頷いて本に向き直る。そっと本の端に手を添えゆっくりとページをめくる。中にはちょっと変わった文字が並んでいるが読むことが出来ない。ちらりとトールさんの方を見れば頷き返してくれる。俺は本に魔力を注ぎ込んだ。
「わっ」
魔力を注ぎ込むと本が光り出しその光が文字へと変わる。それと同時に本が消え、クルクルと踊るかのように動く文字は俺の周りを移動しいつの間にか消えていた。
「どうかな?」
これは…なんだろう? よくわからないけど何かを掴んだ感覚がある。はっきりとこの魔法だって感じじゃなく、あくまでも魔法を覚えたという感覚。
「…何か覚えたみたい」
「じゃあその感覚を忘れないように何をすればいいのかはわかるかな?」
「えーと…冷たい感じがするからそれをもっと身近に感じたいですね」
「となると氷系の魔法か…これは厄介だね」
「魔法のことはわっかんねーな~ 冷たいと氷魔法なのか?」
「そうですよクラック。覚えるために冷たい体験が必要ですね」
「んー? それはどうしてなの?」
それは俺も知りたいかも。氷魔法を使えるようになるきっかけがいるってことだとは思うんだけど。
「魔法と言うのはイメージが重要なので、使う魔法のイメージを固めるために今回だと冷たい体験が必要なのですよ。それでシオンは氷の間隔を掴みたいから雪が降っているような地域へ行ったり、早朝ならここでも多少は水の表面とか凍っているかもしれないので、その氷に触れる必要があるんです」
「たしかにそれはちょっと面倒ね」
イメージか…氷…一番身近で見たことがあるのはコップに入った氷。寒い日は屋根の先にたまに出来るつらら…凍る湖…夏になるとかき氷がおいしいかも。
「あ…」
「シオン!?」
何だろうこれ魔力が渦を巻いている感じ。それに気がついたのかトールさんが声をあげた。
「そのままじゃ危険だ! イメージをもっと強くっ」
「えっ」
イメージ…イメージ…氷の、氷で出来る攻撃のイメージ…っ 渦巻いていた魔力が手のひらへと集まってくる。
「…ロックアイス!!」
バキバキバキっと目の前にあったテーブルが壊れその上には大きな氷の塊が出ていた。氷…つまりこれは俺が出した魔法だ。
「…でっか!!」
「これが高いとこから降ってきたらやばいわね」
「シオンはすごいね…よくイメージが出来たものだ」
いきなり目の前に現れた氷の塊にそれぞれ驚いている。もちろん俺もだ。ひとまず氷を出すことだけを考えたらこんな塊が出るなんて…というかテーブル!!
「ああーっ テーブルが!」
「買いなおしだねこれは」
「はい…ごめんなさい」
「これからもっと調節していくしかないよ」
そうか調節か。出来るのはこれだけじゃないかもしれないんだ。
「とりあえず片付けようか」
「それはいいけどよ~ どうすんだこの氷」
言われてみれば魔法で出した氷ってどうなるの? ちらりとトールさんの方を見ると視線をそらされた。つまり…壊したり溶かしたりしないとこのまま…? じっとみんなトールさんの言葉を待つが視線はそらされたままだ。
結局この後みんなで一生懸命氷を砕く作業をすることになった…とほほ。
「え、じゃあ今回は依頼を受けたわけじゃないんですか?」
「ああ、シオンもだいぶこの生活に慣れてきたし久しぶりにちょっとだけダンジョンにな」
「ダンジョン…」
そうこの世界にはダンジョンというものがある。いつどうやってできた物かわからないけど、気がついたら新しく出来ていたりもするとか何とか。この町からも半日もかからないところにダンジョンがあるらしく、3人はそこへ行っていたという話。
「シオン、ダンジョンはいいわよ~ どういう仕組みかわからないけど勝手に肉とかに変わるし、宝箱が見つかることもあるの」
「ああそうだよ。それでその宝箱から今回シオンにお土産があるんだ」
そういえば帰ってきた時トールさんがそんなことを言っていた。まさか宝箱の中身をくれるだなんて思ってもみなかったけど。これはちょっとワクワクが止まらなくて顔がにやけてしまうのも仕方がない。
「ほらこれだよ」
「…本?」
お土産だと言って見せてもらったのは1冊の本だった。どことなく少し古ぼけた感じの青みがかった色の表紙をした本。
「ああ、驚くなよ…? これは魔法書だ」
「…えっ」
「まあ何を覚えられるかわからない中級の攻撃魔法書だね」
魔法書って…魔法!! 今までずっと気になっていたけど手に入れることが出来なかったやつだっ やばいこれは嬉しい! あ、だけど…
「魔法ってトールさんも使うんじゃないの??」
そうトールさんは支援系が中心だけど主に魔法を使うタイプの人だ。だったらいらないということが無いわけで…
「え、攻撃魔法は少しだけ覚えているからいらないよ? あまりいくつも覚えても使う機会もないしね」
「本当に?」
「もちろんさ。しかもこれは欲しいものが覚えられるかわからない魔法書だからね。それとあくまでのその魔法の使い方がわかるようになるだけで、ちゃんと理解して練習していかないと使えないんだ」
つまりなんだ…魔法を覚えるきっかけになる本ってことかな? しかも中級攻撃魔法の。初級をすっ飛ばしてるけどいいんだろうかという疑問が湧いてくる。
「ほら遠慮しないで使ってみなよ」
「え…どうやって」
押し付けるかのように俺の手に本が持たされた。
「本を開いて魔力を注いでみて」
頷いて本に向き直る。そっと本の端に手を添えゆっくりとページをめくる。中にはちょっと変わった文字が並んでいるが読むことが出来ない。ちらりとトールさんの方を見れば頷き返してくれる。俺は本に魔力を注ぎ込んだ。
「わっ」
魔力を注ぎ込むと本が光り出しその光が文字へと変わる。それと同時に本が消え、クルクルと踊るかのように動く文字は俺の周りを移動しいつの間にか消えていた。
「どうかな?」
これは…なんだろう? よくわからないけど何かを掴んだ感覚がある。はっきりとこの魔法だって感じじゃなく、あくまでも魔法を覚えたという感覚。
「…何か覚えたみたい」
「じゃあその感覚を忘れないように何をすればいいのかはわかるかな?」
「えーと…冷たい感じがするからそれをもっと身近に感じたいですね」
「となると氷系の魔法か…これは厄介だね」
「魔法のことはわっかんねーな~ 冷たいと氷魔法なのか?」
「そうですよクラック。覚えるために冷たい体験が必要ですね」
「んー? それはどうしてなの?」
それは俺も知りたいかも。氷魔法を使えるようになるきっかけがいるってことだとは思うんだけど。
「魔法と言うのはイメージが重要なので、使う魔法のイメージを固めるために今回だと冷たい体験が必要なのですよ。それでシオンは氷の間隔を掴みたいから雪が降っているような地域へ行ったり、早朝ならここでも多少は水の表面とか凍っているかもしれないので、その氷に触れる必要があるんです」
「たしかにそれはちょっと面倒ね」
イメージか…氷…一番身近で見たことがあるのはコップに入った氷。寒い日は屋根の先にたまに出来るつらら…凍る湖…夏になるとかき氷がおいしいかも。
「あ…」
「シオン!?」
何だろうこれ魔力が渦を巻いている感じ。それに気がついたのかトールさんが声をあげた。
「そのままじゃ危険だ! イメージをもっと強くっ」
「えっ」
イメージ…イメージ…氷の、氷で出来る攻撃のイメージ…っ 渦巻いていた魔力が手のひらへと集まってくる。
「…ロックアイス!!」
バキバキバキっと目の前にあったテーブルが壊れその上には大きな氷の塊が出ていた。氷…つまりこれは俺が出した魔法だ。
「…でっか!!」
「これが高いとこから降ってきたらやばいわね」
「シオンはすごいね…よくイメージが出来たものだ」
いきなり目の前に現れた氷の塊にそれぞれ驚いている。もちろん俺もだ。ひとまず氷を出すことだけを考えたらこんな塊が出るなんて…というかテーブル!!
「ああーっ テーブルが!」
「買いなおしだねこれは」
「はい…ごめんなさい」
「これからもっと調節していくしかないよ」
そうか調節か。出来るのはこれだけじゃないかもしれないんだ。
「とりあえず片付けようか」
「それはいいけどよ~ どうすんだこの氷」
言われてみれば魔法で出した氷ってどうなるの? ちらりとトールさんの方を見ると視線をそらされた。つまり…壊したり溶かしたりしないとこのまま…? じっとみんなトールさんの言葉を待つが視線はそらされたままだ。
結局この後みんなで一生懸命氷を砕く作業をすることになった…とほほ。
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