魔王様は退屈過ぎて勇者へと転職する

れのひと

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第4話 冒険者ギルドにいくぞっ

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私の話を最後まで黙って聞いていた彼女はしばらく一人で何やら考え込んでいるみたいだった。それほど難しい言葉を使わずに説明したはずなので、幼い彼女でも理解は出来るはずなのですが…

「う~~ん…つまり冒険者ギルドってのは仕事をくれるところ…ってことでいいのかのう?」
「そうですね簡単に言うとそうなります」
「それのどこが勇者らしいのじゃ?」
「困っている人の仕事を手伝うので、とても喜ばれるあたりですかね?」
「ふむぅ…勇者というのは人に喜ばれることをするのが仕事なんじゃな」

ああ、なるほど。彼女は勇者がどういったものなのかがそもそも理解できていなかったみたいです。まあもともと魔王として勇者が挑んでくるのを待っている毎日でしたから…勇者は魔王に挑むもの、としかわかっていなかったのかもしれません。でもこれはあくまでも魔王が悪いことをすると勇者がやってくるだけであって、実際害のなかった元魔王である彼女の元へは勇者は来ることがなかったということなんですが…きっとその辺もよくわかっていないんでしょう。

「じゃあとりあえずその冒険者ギルドとやらにいってみるかのう」
「そうしましょう。そろそろ少しでもお金を稼がないとお腹が空いてくるのではないですか?」
「え…あっ」

タイミングよく彼女のお腹がぐううううっと鳴りました。お腹を押さえながら彼女は頬を軽く染め視線をさまよわせます。

「うう…っ 違うのじゃ、わらわではなく鳴ったのはアルクウェイの腹なのじゃっ」
「そうかもしれないですね。では取り急ぎ冒険者ギルドへ行きましょうか」
「う、うむっ そなたの腹の虫が訴えておるしのう」

空間庫から地図を取り出し私は現在の場所から一番近い町を探す。どうやらこの精霊の森は最南西にあるようで、この森を北へと抜けると転職の泉で職業をもらった冒険者たちが最初に訪れる町…ファスティアがあるらしい。そのため私達は地図に従い、森を北へと抜けるために歩き出すのだった。

体感として30分ほど経過したころ、彼女の歩く速度が下がり始めた。

「うう…妙に疲れるのじゃ…こう、魔法でばびゅんといけないものか」
「精霊の森での魔法使用は無理だと思いますよ? ほら私も道具を使っていたでしょう??」
「あーそういえば魔法は使っていなかったのう…」
「それにしっかりと歩けば体力も増えますよ」
「うぬう…それはわかるのじゃが……ぬあっ?」

足がもつれ何もないところで彼女が膝をついて転んだ。LV1というのはここまで貧弱なものだったのだろうか。

「むむむ…膝が痛いのじゃっ」

うっすらと涙を浮かべならが彼女は自分の擦りむいた膝を眺めている。

「魔王様」
「勇者じゃ…」
「その勇者ともあろうお人がその程度で泣いていていいのですか?」
「うぐぅ…っ 泣いてなどいないのじゃ。レベルが下がったせいで少しだけ痛かっただけなのじゃ!」

乱暴に目元を袖でこすると彼女は立ち上がり再び歩き出した。足を前に出すたび、ちょっとだけ走る痛みを我慢しているのが表情からうかがえる。すでに強くなり始めたころの彼女しか見たことがなかった私は、そんな姿を見て少しだけほっとしてしまった。年相応というかなんというか…

「あっ あれが町じゃないのか? ほら、門みたいなのが見えてきておるぞっ」
「ほんとですね。たぶんファスティアで合っていると思います」

町の入り口である門が見えてくると彼女はさっきまで感じていた痛みを忘れたのか、とてもうれしそうにはしゃぎ始めた。

「アルクウェイよ急ぐのじゃ~っ」
「急がなくても町は逃げないですよ」
「わかっておるわっ それでも早く冒険者ギルドとやらへいくのじゃーっ へぶぅ…」

急ぐあまり彼女は再び転んでしまった。今度はさっきと反対側の膝を擦りむいたようで、寝そべったまま中々起き上がろうとしない。

「ううう…アルクウェイ…」
「仕方ありませんね」
「うぬぬ…早くレベルをあげるのじゃ~…」
「はいはい」

目に涙をためている彼女を私は横向きに抱き上げた。いわゆるお姫様抱っこというものなのだそうだが、両膝を擦りむき、目に涙をためている彼女を抱えてもわいてくる感情はいわゆる庇護欲とうものだろうか…
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