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第12話 隠れないといかんのじゃ
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「そっちはいたか?」
「ばっかいたら探してねぇーよ」
「そりゃそうだ、んじゃ俺こっちいくわ」
「おう」
バタバタと走り回る人たちが目の前を通過します。どうやら彼らは誰かを探しているようです。まあ探しているのはどう考えても彼女なのですが。
今私達はあの後冒険者ギルドから飛び出し、魔法で姿を隠しながら物陰に隠れています。いくら見えないとはいえぶつかったりしたら気が付かれてしましますからね。
『ぐぬぬ…なんで、隠れないといかんのじゃ…』
ぼそりと彼女が言います。隠れるのは仕方のないことなのです。まだレベルの低い彼女では普通にあの人数を相手にすることも出来なければ、走って逃げることも出来ません。
『我慢してください。勇者が魔王以外にやられるとか笑い話にもなりませんよ?』
本当におかしな話ですよね。彼らは勇者が幼いと知ると鍛えるためだとかいいだしとらえようとした。それを私が止めると従えないのなら職業を返還しろとまで言い出しました。職業の返還とはそのものが死ぬか、瀕死の状態で転職の泉に入るしかないのです。どちらにしてもそれを私が許すはずがありません。
なぜ…彼女では勇者が務まらないのか教えてほしいものです。魔王を倒せないからだというのならそれは勘違いもいいところです。そもそも魔王である私がすでに目の前にいるのです。こちらから勇者である彼女を倒す気はありませんので何も問題はないばかりか、魔王が…私が世界を滅ぼそうとしているなどととんでもない話ですね。世界征服には興味もありませんので。
周辺に人がいなくなったことを確認するとまた少し移動を始めます。はてさてこれからどうしましょうか…
人を避け立ち止まることを繰り返していますと自然と今利用させていただいている宿へと足が向いていました。
『入らないのか?』
彼女はそう言いますが今私達は追われている身。このまま宿へと戻るのはあまりよくないと思われます。
「おや…誰か客でも来たかと思ったんだがねぇ。気のせいだったかい?」
宿の女将さんが扉を開け外を窺っています。どうやら彼女の声が聞こえたみたいです。とても耳のいい人なのかもしれません。
「……もしかして掃除のにいさんかい? …まあいたとしても返事はいらないよ。もし話をする気があるのなら中へ入って扉を閉めな」
女将さんは入り口の扉を開けたまま中へと戻っていきました。そんな女将さんの話に乗るかどうか迷いながら宿の中を覗き込むと中には他に人はいないようでした。今宿の中にいるのは女将さんだけのようです。もちろん別の部屋にまだ人がいる可能性はありますが、入り口の近くで話す分ならすぐここから出ることもできることでしょう。
私は女将さんと話をすべく彼女を連れて中へと入ります。入り口の扉は半分だけ閉めることにしました。これでも私達が室内へと入ったことがわかることでしょう。流石に完全に占める気にはなれません。その様子をちらりと女将さんが眺めた後、女将さんはなぜか厨房へと足を運びました。
「悪いね…こっちも仕事があるもんでね、そのまま聞いとくれよ」
厨房に入った女将さんは食材を取り出し調理を始めました。視線は本人の手元にあるままこちらには言葉だけ投げかけてきます。
「詳しくは知らないがなにやら騒がしい原因はあんた達なんだろう? …宿は出ていくのかい?? まあそうなるんだろうかねぇ…掃除を別に頼まないかんね」
こちらが返事を返さずとも女将さんは一人で言葉を出し続けます。すると外が騒がしくなり入り口の扉が思いっきり開きました。
「女将さんっ あいつらこっち戻ってきたか!?」
「騒々しいね~ 見りゃわかるだろう? こっちは忙しいんだい。邪魔するでないよ!!」
「来ていないか…すまなかったな!」
騒がしく入ってきた男は再び外を走っていきます。私は彼女が声を上げないように押さえてその様子を眺めているのでした。
「ばっかいたら探してねぇーよ」
「そりゃそうだ、んじゃ俺こっちいくわ」
「おう」
バタバタと走り回る人たちが目の前を通過します。どうやら彼らは誰かを探しているようです。まあ探しているのはどう考えても彼女なのですが。
今私達はあの後冒険者ギルドから飛び出し、魔法で姿を隠しながら物陰に隠れています。いくら見えないとはいえぶつかったりしたら気が付かれてしましますからね。
『ぐぬぬ…なんで、隠れないといかんのじゃ…』
ぼそりと彼女が言います。隠れるのは仕方のないことなのです。まだレベルの低い彼女では普通にあの人数を相手にすることも出来なければ、走って逃げることも出来ません。
『我慢してください。勇者が魔王以外にやられるとか笑い話にもなりませんよ?』
本当におかしな話ですよね。彼らは勇者が幼いと知ると鍛えるためだとかいいだしとらえようとした。それを私が止めると従えないのなら職業を返還しろとまで言い出しました。職業の返還とはそのものが死ぬか、瀕死の状態で転職の泉に入るしかないのです。どちらにしてもそれを私が許すはずがありません。
なぜ…彼女では勇者が務まらないのか教えてほしいものです。魔王を倒せないからだというのならそれは勘違いもいいところです。そもそも魔王である私がすでに目の前にいるのです。こちらから勇者である彼女を倒す気はありませんので何も問題はないばかりか、魔王が…私が世界を滅ぼそうとしているなどととんでもない話ですね。世界征服には興味もありませんので。
周辺に人がいなくなったことを確認するとまた少し移動を始めます。はてさてこれからどうしましょうか…
人を避け立ち止まることを繰り返していますと自然と今利用させていただいている宿へと足が向いていました。
『入らないのか?』
彼女はそう言いますが今私達は追われている身。このまま宿へと戻るのはあまりよくないと思われます。
「おや…誰か客でも来たかと思ったんだがねぇ。気のせいだったかい?」
宿の女将さんが扉を開け外を窺っています。どうやら彼女の声が聞こえたみたいです。とても耳のいい人なのかもしれません。
「……もしかして掃除のにいさんかい? …まあいたとしても返事はいらないよ。もし話をする気があるのなら中へ入って扉を閉めな」
女将さんは入り口の扉を開けたまま中へと戻っていきました。そんな女将さんの話に乗るかどうか迷いながら宿の中を覗き込むと中には他に人はいないようでした。今宿の中にいるのは女将さんだけのようです。もちろん別の部屋にまだ人がいる可能性はありますが、入り口の近くで話す分ならすぐここから出ることもできることでしょう。
私は女将さんと話をすべく彼女を連れて中へと入ります。入り口の扉は半分だけ閉めることにしました。これでも私達が室内へと入ったことがわかることでしょう。流石に完全に占める気にはなれません。その様子をちらりと女将さんが眺めた後、女将さんはなぜか厨房へと足を運びました。
「悪いね…こっちも仕事があるもんでね、そのまま聞いとくれよ」
厨房に入った女将さんは食材を取り出し調理を始めました。視線は本人の手元にあるままこちらには言葉だけ投げかけてきます。
「詳しくは知らないがなにやら騒がしい原因はあんた達なんだろう? …宿は出ていくのかい?? まあそうなるんだろうかねぇ…掃除を別に頼まないかんね」
こちらが返事を返さずとも女将さんは一人で言葉を出し続けます。すると外が騒がしくなり入り口の扉が思いっきり開きました。
「女将さんっ あいつらこっち戻ってきたか!?」
「騒々しいね~ 見りゃわかるだろう? こっちは忙しいんだい。邪魔するでないよ!!」
「来ていないか…すまなかったな!」
騒がしく入ってきた男は再び外を走っていきます。私は彼女が声を上げないように押さえてその様子を眺めているのでした。
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