153 / 356
ブンナーへ
137. 積み荷
しおりを挟む
ひと眠りして時間になったのかまたベルを連打で鳴らされ、うるさい音を聞きながら起きた。昨日と同じく睨まれつつテントを片付け所定の位置へと移動する。今日も昨日と同じく索敵の練習をしながら見張りをしよう。木や岩が多いからこの魔法があると物陰に生き物がいるかどうかがわかって中々便利だ。
「…ん?」
また必要以上にうろうろとしている反応がある。昨夜と同じくフードの人だろうか? 念のためガルシアさんに声をかけてから様子を見ようか。
索敵で移動の様子を見ながらガルシアさんのテントに向かって声をかけた。
「どうした」
「昨夜のフードが今日も荷馬車に向かったのでどうします?」
「…何をするつもりなんだ? この目で見たほうがよさそうだな」
どうやらガルシアさんも来てくれるようだ。今のところフードはまだ馬車の所から移動はしていない。2人でそっと問題の馬車に近づくと昨日傷をつけていた馬車じゃないことに気がついた。ということは2台あるうちのもう一方の荷馬車なんだこっち。中をみたほうと見てない方の目印だったのかもしれないなあの傷は。
少し離れた場所から見ていると馬車の中からフードが出てきた。よく見ると背中に誰かを背負っている。誰だ? 長いエメラルドグリーンの髪の毛が月の光でやけに目立つ。そんな人はこのメンバーの中では見かけなかったが…
ちらりとガルシアさんの方を見ると頷いて剣に手を添えた。
「おい何している」
どうやら警戒しつつ訊ねることに決めたらしい。荷馬車から出てきただけで盗みを働いたわけじゃない。ただなぜか人を背負っているだけだ。理由がわからない、だから直接聞いたんだろう。そんなガルシアさんの声に振り向いたフードは手を前に出し何かを飛ばしてきた。
「結界!」
「ぐっ…」
とっさだったので自分にしかかけることが出来なかったが何かをはじいたことだけはわかった。見覚えのある動きと聞き覚えのある声に跳ね上がる心臓の音を押さえながらまずはガルシアさんの状態を確認する。
「ガルシアさん?」
どうやらガルシアさんはその飛んできたものをまともに受けてしまったようだ。とりあえず目に見える怪我はないみたいだけど…あっ フードが走って逃げだした。追いかけないと!
「まっ …リョー…一人じゃ…っ くそっ …麻痺、かっ」
走って逃げていくフードを追いかけて俺は走った。相手は人を背負っている分足が遅くなっているはずで、俺はネコルーと同じくらい足が速くなった。先に走り出した分の差はあっという間に埋まり俺は杖を取り出した。
「ダークネス」
フードの足元から飛び出した影がそのままフードと、背負われている人物を縛り上げ行動を妨げる。勢い余った2人はそのまま倒れこみもがいている。
「…詳しいこと教えてくれるよね?」
フードはチラリと俺の方を見て観念したのか大人しくなった。
「…とりあえず逃げられたことにするから、箱庭。この中に入ってて」
目の前に現れた扉を開け、スキルで縛り上げたままの2人を中へと放り込むとすぐに扉を閉じた。俺はそのままこの後どうするかを立ち止まって考える。逃げられたことにはするけれど、フードの背負っていた人のことについてが問題なんだよね。だってあの子がそもそもここにいるはずがないんだ。となるとあの荷馬車の中にいたことになるわけで…
「リョータ!!」
「ガルシアさん、大丈夫なんですか?」
「ああ、ただの状態異常だ。すぐ直した。それで賊は?」
「思ったより早くて逃げられました」
「そうか…仕方ないな」
「フードの彼女はどうなるんですか?」
「そうだな…依頼人次第だが、捕まったらどうなるか。まあそれも気になるところだが、問題はあの背負われてたほうだろうな。俺も知らなかったが積み荷だったんだろうぜ。だから大きな声で報告をしたらたぶんやばい。こっそりと依頼人に従う態度で対応しないとこっちの命も危ないかもな」
「積み荷って…」
つまりそれは人買いとかそういう…つまり奴隷にされるところだったってことか?
「こそこそ運びやがって、たぶんあれは無理やりってやつだ。胸糞わりぃ…むしろ逃げてくれてざまあ見ろって思う」
にやりと笑うガルシアさん。よかったダルシア男爵に従いたくない人みたいで。
「ま、とりあえず報告といきますかね。そうだな…リョータは一緒に追いかけたが、逃げたから追いかけただけだ。あとは俺がうまくやっとくから黙っとけ」
「ガルシアさんはそれで大丈夫なのか?」
「問題ない適当にごますっとく」
野営地に戻りダルシア男爵のテントへと報告へ向かった。中途半端な時間に起こされたダルシア男爵は機嫌が悪く、さらに報告を聞いて怒りをあらわにしていた。そしてギロリと俺は睨まれたが、それ以上の追求はなかった。
「…ん?」
また必要以上にうろうろとしている反応がある。昨夜と同じくフードの人だろうか? 念のためガルシアさんに声をかけてから様子を見ようか。
索敵で移動の様子を見ながらガルシアさんのテントに向かって声をかけた。
「どうした」
「昨夜のフードが今日も荷馬車に向かったのでどうします?」
「…何をするつもりなんだ? この目で見たほうがよさそうだな」
どうやらガルシアさんも来てくれるようだ。今のところフードはまだ馬車の所から移動はしていない。2人でそっと問題の馬車に近づくと昨日傷をつけていた馬車じゃないことに気がついた。ということは2台あるうちのもう一方の荷馬車なんだこっち。中をみたほうと見てない方の目印だったのかもしれないなあの傷は。
少し離れた場所から見ていると馬車の中からフードが出てきた。よく見ると背中に誰かを背負っている。誰だ? 長いエメラルドグリーンの髪の毛が月の光でやけに目立つ。そんな人はこのメンバーの中では見かけなかったが…
ちらりとガルシアさんの方を見ると頷いて剣に手を添えた。
「おい何している」
どうやら警戒しつつ訊ねることに決めたらしい。荷馬車から出てきただけで盗みを働いたわけじゃない。ただなぜか人を背負っているだけだ。理由がわからない、だから直接聞いたんだろう。そんなガルシアさんの声に振り向いたフードは手を前に出し何かを飛ばしてきた。
「結界!」
「ぐっ…」
とっさだったので自分にしかかけることが出来なかったが何かをはじいたことだけはわかった。見覚えのある動きと聞き覚えのある声に跳ね上がる心臓の音を押さえながらまずはガルシアさんの状態を確認する。
「ガルシアさん?」
どうやらガルシアさんはその飛んできたものをまともに受けてしまったようだ。とりあえず目に見える怪我はないみたいだけど…あっ フードが走って逃げだした。追いかけないと!
「まっ …リョー…一人じゃ…っ くそっ …麻痺、かっ」
走って逃げていくフードを追いかけて俺は走った。相手は人を背負っている分足が遅くなっているはずで、俺はネコルーと同じくらい足が速くなった。先に走り出した分の差はあっという間に埋まり俺は杖を取り出した。
「ダークネス」
フードの足元から飛び出した影がそのままフードと、背負われている人物を縛り上げ行動を妨げる。勢い余った2人はそのまま倒れこみもがいている。
「…詳しいこと教えてくれるよね?」
フードはチラリと俺の方を見て観念したのか大人しくなった。
「…とりあえず逃げられたことにするから、箱庭。この中に入ってて」
目の前に現れた扉を開け、スキルで縛り上げたままの2人を中へと放り込むとすぐに扉を閉じた。俺はそのままこの後どうするかを立ち止まって考える。逃げられたことにはするけれど、フードの背負っていた人のことについてが問題なんだよね。だってあの子がそもそもここにいるはずがないんだ。となるとあの荷馬車の中にいたことになるわけで…
「リョータ!!」
「ガルシアさん、大丈夫なんですか?」
「ああ、ただの状態異常だ。すぐ直した。それで賊は?」
「思ったより早くて逃げられました」
「そうか…仕方ないな」
「フードの彼女はどうなるんですか?」
「そうだな…依頼人次第だが、捕まったらどうなるか。まあそれも気になるところだが、問題はあの背負われてたほうだろうな。俺も知らなかったが積み荷だったんだろうぜ。だから大きな声で報告をしたらたぶんやばい。こっそりと依頼人に従う態度で対応しないとこっちの命も危ないかもな」
「積み荷って…」
つまりそれは人買いとかそういう…つまり奴隷にされるところだったってことか?
「こそこそ運びやがって、たぶんあれは無理やりってやつだ。胸糞わりぃ…むしろ逃げてくれてざまあ見ろって思う」
にやりと笑うガルシアさん。よかったダルシア男爵に従いたくない人みたいで。
「ま、とりあえず報告といきますかね。そうだな…リョータは一緒に追いかけたが、逃げたから追いかけただけだ。あとは俺がうまくやっとくから黙っとけ」
「ガルシアさんはそれで大丈夫なのか?」
「問題ない適当にごますっとく」
野営地に戻りダルシア男爵のテントへと報告へ向かった。中途半端な時間に起こされたダルシア男爵は機嫌が悪く、さらに報告を聞いて怒りをあらわにしていた。そしてギロリと俺は睨まれたが、それ以上の追求はなかった。
4
あなたにおすすめの小説
明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。
億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。
彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。
四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?
道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!
気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?
※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』
KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。
日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。
アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。
「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。
貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。
集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。
そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。
これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。
今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう?
※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは
似て非なる物として見て下さい
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる