【本編完結】異世界に召喚されわがまま言ったらガチャのスキルをもらった

れのひと

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137. 積み荷

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 ひと眠りして時間になったのかまたベルを連打で鳴らされ、うるさい音を聞きながら起きた。昨日と同じく睨まれつつテントを片付け所定の位置へと移動する。今日も昨日と同じく索敵の練習をしながら見張りをしよう。木や岩が多いからこの魔法があると物陰に生き物がいるかどうかがわかって中々便利だ。

「…ん?」

 また必要以上にうろうろとしている反応がある。昨夜と同じくフードの人だろうか? 念のためガルシアさんに声をかけてから様子を見ようか。

 索敵で移動の様子を見ながらガルシアさんのテントに向かって声をかけた。

「どうした」
「昨夜のフードが今日も荷馬車に向かったのでどうします?」
「…何をするつもりなんだ? この目で見たほうがよさそうだな」

 どうやらガルシアさんも来てくれるようだ。今のところフードはまだ馬車の所から移動はしていない。2人でそっと問題の馬車に近づくと昨日傷をつけていた馬車じゃないことに気がついた。ということは2台あるうちのもう一方の荷馬車なんだこっち。中をみたほうと見てない方の目印だったのかもしれないなあの傷は。

 少し離れた場所から見ていると馬車の中からフードが出てきた。よく見ると背中に誰かを背負っている。誰だ? 長いエメラルドグリーンの髪の毛が月の光でやけに目立つ。そんな人はこのメンバーの中では見かけなかったが…
 ちらりとガルシアさんの方を見ると頷いて剣に手を添えた。

「おい何している」

 どうやら警戒しつつ訊ねることに決めたらしい。荷馬車から出てきただけで盗みを働いたわけじゃない。ただなぜか人を背負っているだけだ。理由がわからない、だから直接聞いたんだろう。そんなガルシアさんの声に振り向いたフードは手を前に出し何かを飛ばしてきた。

「結界!」
「ぐっ…」

 とっさだったので自分にしかかけることが出来なかったが何かをはじいたことだけはわかった。見覚えのある動きと聞き覚えのある声に跳ね上がる心臓の音を押さえながらまずはガルシアさんの状態を確認する。

「ガルシアさん?」

 どうやらガルシアさんはその飛んできたものをまともに受けてしまったようだ。とりあえず目に見える怪我はないみたいだけど…あっ フードが走って逃げだした。追いかけないと!

「まっ …リョー…一人じゃ…っ くそっ …麻痺、かっ」

 走って逃げていくフードを追いかけて俺は走った。相手は人を背負っている分足が遅くなっているはずで、俺はネコルーと同じくらい足が速くなった。先に走り出した分の差はあっという間に埋まり俺は杖を取り出した。

「ダークネス」

 フードの足元から飛び出した影がそのままフードと、背負われている人物を縛り上げ行動を妨げる。勢い余った2人はそのまま倒れこみもがいている。

「…詳しいこと教えてくれるよね?」

 フードはチラリと俺の方を見て観念したのか大人しくなった。

「…とりあえず逃げられたことにするから、箱庭。この中に入ってて」

 目の前に現れた扉を開け、スキルで縛り上げたままの2人を中へと放り込むとすぐに扉を閉じた。俺はそのままこの後どうするかを立ち止まって考える。逃げられたことにはするけれど、フードの背負っていた人のことについてが問題なんだよね。だってあの子がそもそもここにいるはずがないんだ。となるとあの荷馬車の中にいたことになるわけで…

「リョータ!!」
「ガルシアさん、大丈夫なんですか?」
「ああ、ただの状態異常だ。すぐ直した。それで賊は?」
「思ったより早くて逃げられました」
「そうか…仕方ないな」
「フードの彼女はどうなるんですか?」
「そうだな…依頼人次第だが、捕まったらどうなるか。まあそれも気になるところだが、問題はあの背負われてたほうだろうな。俺も知らなかったが積み荷だったんだろうぜ。だから大きな声で報告をしたらたぶんやばい。こっそりと依頼人に従う態度で対応しないとこっちの命も危ないかもな」
「積み荷って…」

 つまりそれは人買いとかそういう…つまり奴隷にされるところだったってことか?

「こそこそ運びやがって、たぶんあれは無理やりってやつだ。胸糞わりぃ…むしろ逃げてくれてざまあ見ろって思う」

 にやりと笑うガルシアさん。よかったダルシア男爵に従いたくない人みたいで。

「ま、とりあえず報告といきますかね。そうだな…リョータは一緒に追いかけたが、逃げたから追いかけただけだ。あとは俺がうまくやっとくから黙っとけ」
「ガルシアさんはそれで大丈夫なのか?」
「問題ない適当にごますっとく」

 野営地に戻りダルシア男爵のテントへと報告へ向かった。中途半端な時間に起こされたダルシア男爵は機嫌が悪く、さらに報告を聞いて怒りをあらわにしていた。そしてギロリと俺は睨まれたが、それ以上の追求はなかった。
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