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御神木防衛戦

323. 巫女契約

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 結界を変形させ雪乃を確保した俺は御神木様への魔力譲渡を続ける。雪乃のことは響子に任せておく。そして結界の外側はかなり騒がしいことになっていた。魔方陣から現れた魔物達はなぜか強そうな魔物ほど結界に攻撃を仕掛けてくる。弱そうなのは何も考えていないのか近くにいる人に次々と飛び掛かっていた。

 それを横目で見ながら俺は初級魔力回復ポーションを再び飲んだ。一体御神木にはどれだけの魔力が必要なんだろうか。見たところ何も変化は起こっていない。つまりただの大木にしか見えないのだ。

「りょーちゃん雪ちゃんの治療は終わったよ」
「…まだ目は覚まさないか」
「うん、私も続けるね」

 響子が雪乃を回復してから祈りに参加した。代わりに雪乃が目を覚ましてから暴れないように手足を縛り結界に閉じ込めておく。狭い範囲で大きな魔法はこれで使えないだろうからね。

 結界の外を見ると魔物はまだ魔方陣からはい出ていた。急がないとな…俺はまた御神木に魔力譲渡で魔力を渡し始めた。

「リョータ、足りない」

 服の裾をジエルに引かれ足元を見るとジエルと響子用に出しておいた初級魔力ポーションが空になっていた。追加を出そうとするとジエルが首を振る。

「足りない…けど、もう飲めない」
「りょーちゃん私はまだ飲めるから少し出しておいて」

 響子がそういうのでまたポーションを足元に出しておく。雪乃の回復で抜けていたから響子はまだポーションが必要みたいだね。ジエルはちょっと苦しいのか口とお腹を手で押さえている。

 何本目かのポーションを飲み干し御神木に魔力を渡していると視界のはしにふわりと光の玉が通過した。その光はエルフの里で見たことがある光と似ている。俺が魔力を渡すたびにそれはどんどんと増えてきて、うっすらと御神木が光りだす。

「そこまでじゃ。ようがんばったの。さて、巫女や契約を果たそうぞ」
「は、はいっ」

 響子が御神木様に向かって祈る姿勢を取った。その響子の頭に御神木様の手が触れる。御神木様に実体はないのでふれるというのはちょっと違うかもな。御神木様の体が光り出し、その光が手から響子へと広がっていく。

「そうだ…そこの倒れておるものの記憶を見て理解してやるとよい…このまま消えては後味も悪かろう?」

 倒れているというと雪乃のことだよな。消えるというのがどういう意味なのかちょっとわからないが、御神木様は俺に雪乃の記憶を見ろと言った。勝手に見るのは悪い気もするが、多分雪乃は聞いても話をしてくれないだろう。

「すまん雪乃。御神木様がお前の記憶をみろとさ…たけには知られたくないって言ってたよな。それだけは守るから許してくれよ」

 意識がなくて反応はないが俺は雪乃にそういうと複製スキルを雪乃に向けて使用した。すると目の前にぼんやりと幼い女の子が現れた。御神木様の記憶で見たことがある幼いころの雪乃だ。彼女は突然座り込むとその場で泣きだした。

「まってお母さん…雪乃いい子にするからおいて行かないで」

 雪乃が手を伸ばすがその先には何も見えない。あくまでも本人の記憶なので薄れてしまったところはもうわからないのかもしれないな。

「どうしたんだ?」
「だ、誰…っ」
「ただの通りがかりだけど」

 座り込んで泣いている雪乃の目の前にたけが現れる。その姿は今よりも年を取っている…そう御神木様の記憶で見た最初のころのたけだった。
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