【本編完結】異世界に召喚されわがまま言ったらガチャのスキルをもらった

れのひと

文字の大きさ
75 / 356
旅支度

響子視点④

しおりを挟む
 岩の間にぽっかりと空いている穴をくぐり私達はその奥へと足を運んだ。ここは王都の北の方にあるダンジョンで、今日私達は実戦演習という名の魔物を相手にした実践を経験するためにとここへ連れてこられたの。だから私と武ちゃんそれと雪ちゃんだけじゃなくて、鎧とかを着た人が3人ほどついてきている。

「ほら見えてきましたよ。あれが最初に経験するとこになる魔物ですね」

 私達は示された方を見て魔物を確認した。どう見てもただのネズミにしか見えない…だけどこれが魔物だという。

「まずは倒してみましょうか。勇者様からどうぞ」
「お、おう」

 武ちゃんが腰にさしてある剣を鞘から抜き魔物に向って体を向け武器を構えた。念のためにとすぐ後ろに鎧を来た人が張り付いている。

「い・・・行きます」

 武ちゃんが深呼吸をしたあと剣を握りなおしネズミに向かって走り出す。近づいてきた武ちゃんに気がついたネズミは武ちゃんに向かって同じように近づいていく。私は普通のネズミなら逃げるのに逃げないから魔物なんだろうか? とぼんやりと考える。武ちゃんが剣を振るより先にネズミが武ちゃんに噛みつく。

「いてっ このーっ」

 その噛みついてきたネズミを自分の体と壁に挟むように武ちゃんは壁にぶつかる。ネズミは小さな声をあげて武ちゃんから離れ足元に落ちた。えーと…剣使わないんだ?

「ちゃんととどめを刺すんだ」
「え?」
「気絶しているだけかもしれない」
「な、なるほどっ」

 ちょっといやそうな顔をしながら武ちゃんはネズミに剣を突き刺した。

「よし、聖女様。魔物に噛みつかれた場所を回復してやってください。魔物に付けられた傷は小さなものでも回復しておかないと後でどうなるかわからないからね」

 なるほど…つまりバイ菌が入るとあぶないよと。

「ヒール」

 小さな傷なので回復量は少なくていいだろうと私は下級回復魔法を使用する。傷はあっという間に塞がった。やっぱり魔法ってすごい。

「よし、次は大賢者様。魔物がやってきたら倒して見てくれ」
「わかりました」

 少し歩くとさっきと違う魔物が現れる。

「お…あれはスライムか」
「そのようね」

 武ちゃんと雪ちゃんが次に視界に入った魔物の名前を口にした。私達はここへ来る前に魔物の種類について少し教えてもらって来ているので、この辺の浅いところにいる魔物は全部知っているのよね。他についてはそれぞれその魔物の強化版みたいな感じでざっくりとしか教わっていない。すべてを覚えるのは大変だから系統だけ覚えろと言われた。

「えーと…洞窟の中では火魔法は使ってはいけないんだったわね。なら…アースバレット」

 雪ちゃんが魔法を使用すると周辺の小石がいくつか浮き上がりスライムに向かって飛んでいった。するとスライムはまるで風船が弾けるかのように飛び散り、ころりと何かが転がり落ちる。

「あれが核です。今の魔法で傷がついたのでスライムは体の維持が出来なくなりました。その核の傷を治すとスライムが復活するので気を付けてください。さて、お次は聖女様ですね」
「…え?」
「え、ではありませんよ。たとえ回復職だとしても下層の魔物くらい杖で殴れば倒せますから」

 …え? 私も魔法で倒しちゃダメなの?? そんな言葉が顔にでも出ていたみたい。すぐにこんな返事が返ってくる。

「緊急時以外魔法での攻撃はやらないように。回復のために魔力は残しておいてください」
「うえええ~?」
「頑張れ響子」
「応援しているわ響子」

 2人とも他人事だと思って…ぐぬー仕方がない。2人の攻撃から漏れた魔物とか倒さないといけないんだろうし、ここは頑張るっ 

「スライム…」

 これを私が杖で殴って倒すの? 通路を塞ぐように体を伸ばしたスライムが目の前にいる。たまに移動している核を杖で…?

「こ、このーっ」

 まるで私を馬鹿にするかのように核は上の方を移動する。私は必死に飛び跳ねながら杖を振り回すのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...