【本編完結】異世界に召喚されわがまま言ったらガチャのスキルをもらった

れのひと

文字の大きさ
355 / 356
後日談、他

箱庭の山登り

しおりを挟む
ジエル視点③を109話の後に追加しました。

───────────────────

 このあいだ空き時間にちょっとだけ登った山を今日こそ頂上まで登ってみようと思う。家から見るとそれほど高くない山なんだけど、下から見るのと上から見るのは結構違うと思うんだよね。

「あ…」

 なんてっこった…このあいだと同じくらいの高さまで登るとまた熊に遭遇した。しかもこの熊多分このあいだの熊と同じ熊だと思う。俺を見て距離を取るかのように近づくと下がっていくから。前みたいにさっさと通り過ぎてしまおうか? だけどこの間いきなり倒れたんだよな~ そうだ今回はむしろこの熊と仲良くなってみるか。そしたら気にせずに山頂まで向かえるようになるだろう。まあ何度も来ることがあるかはわからないが。

「おーいお前これ食べるか~?」

 俺はインベントリから…食べ物を出そうと思ったんだけど、そもそも熊って何食べるんだ? 鮭? 肉? 果物か? はっきり言ってよくわからないから色々出して見ようか。えーと…魚だろう? 一応肉もだすよな? 果物は…なんでもいいか。あーそういえば熊って言えばハチミツとかどうなのよ。まあハチミツはもっていないんだけどもさ。甘いものが好きなのかな? チョコレートとか試してみるか。

 食べ物をいくつか並べ、ちょっと離れて見ると熊がゆっくりと近づいて来てちらちらと俺の方を気にしてみていた。ねえこれ食べていいの? と言っているように見えないこともない。ひとつづつ匂いを確認し歩いて回っているのは警戒しているのかただ単に食べ物の種類を見極めようとしているのかはわからないね。

 最初に口を付けたのは果物だった。なるほど…確かに言われてみれば山に住んでいるなら果物や木の実を食べるのが自然なのか。魚と肉に関しては匂いだけ確認して口もつけなかった。食べないことはないけど果物の方が慣れ親しんでいるってやつかもな。

「お?」

 最後にちょっとしたいたずらで置いたチョコレートの匂いを確認すると、そのチョコレートの周りをぐるぐると周って歩き始めた。果物を食べるから甘いものが食べられないということはないだろう。だけど口をつけずただ周りを歩くだけ…気になるけど食べる勇気がないと言った感じか? さっきからこっちをまたちらちらと見ているし。

 そしてついに熊がチョコレートをぺろりと舐めた! 舐めたところで溶けていないとあんまり味はわからないと思うんだけどね? 

「ん?」

 何度かなめていた熊が突然また倒れた! 一体何なんだっ よくわからんが今回はここまでだな。近づいて確認してみると一応生きてはいるみたいだし…まあこの隙に頂上を目指そうか。

 山道を歩いて上へと進んでいくと枝の上とか木の裏側とかに小動物を発見。ちらりとしか見えなかったから何かは分からなかったけど、普通はそう人前にはでてこないよね。熊はまあ体が大きいから偶然遭遇しただけなんだろうね。あーそうか、熊だって山の中で見慣れない人にあったから怖かったのか? だとすると悪いことをしたな~ そんなことを考えながら進むとどうやらそろそろ頂上が見えてきたみたいだ。その先はまた緩やかに道が下っているし。

「えーと…おーい?」

 山の頂上につくとそこにはお腹を向けて転がっている生き物が一匹。なんていうかよく知っている生き物が転がっていたわけなんだが。

「…キュ?」
「何してんだ?」
「キュ~!」

 はっきりとわかったわけじゃないけどどうやら寝ていたらしい。鳴き声を上げた後また瞼を閉じてしまった。

「アス~? なんでお前はここにいるんだ?」

 もしかしたらアスは普段からこの山の中で過ごしているのかもな。俺が呼ばない限り箱庭の中で自由にしているわけだし。あーとなると…熊が怯えていたのはアスなのかも。一応俺の獣魔だしお互いの匂いがついているかもしれん。

「この子は山で何をしてるんだかね~」

 お腹をつついても気にもせず気持ちよさそうに眠っているアスから視線をそらし、山頂から家のある方を見てみる。ここからは俺が設置した建物が全部見えていた。ちょっと視線を動かすと南東側の森も見えるね。もちろん北西にある森も見える。ここにたつとこの箱庭がすべて見渡せるんだね。

 つついてもおきないからアスは放置して俺は山を下っていった。途中熊に餌をあげた場所と通過したわけなんだけど、魚も肉もそしてチョコレートもなくなっていた。誰が食べたんだろう? さっきまで倒れていた熊もそこにはもういなかった。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。 日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。 アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。 「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。 貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。 集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。 そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。 これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。 今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう? ※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは 似て非なる物として見て下さい

処理中です...