たとえばこんな異世界ライフ

れのひと

文字の大きさ
48 / 60
第5章 祭り祭りそして祭り

48話 祭り2日目2

しおりを挟む
 直人のアクセサリーの販売は順調で、1日目のものめずらしさで並ぶ人はだいぶ減りそれでもまだぼちぼちお客さんが来ていた。

「今日はまだ残ってるけど切り上げてもいいかな~」

 そんな直人の発言にオルガが目を丸くした。

「え、稼ぎ時じゃない…なんで?」
「いや、別にそんな稼ぎたいわけでもないし…」
「もったいないことするのね~」

 もともと直人はもとの世界に変えることが目的であり、ここでずっと生活するわけではない。お金は最低限あれば別に困らないのだ。一緒に祭りに参加し、店を手伝う条件で魔道具について教えてもらいたかっただけである。祭りには2日参加した、店も手伝った…
 そろそろ引き上げて本来の目的である帰るときにお世話になった人にあげるためのものを考え始めたい。実験なども繰り返さないと希望する効果がちゃんと出るものが出来るかもらからないのだ。ある程度時間に余裕を持っておきたい。

「なあ、アストレア。召喚魔法はどんな感じなんだ?」
「ん、まだレベル4のままね…どうもこの先時間かかりそうだわ。」

 どうやらまだしばらく時間はかかるそうだ。なら準備も間に合うかもしれない。

「それよりナオト。もう店閉めるなら今日は私と祭りまわりなさいよ。」
「…え?」
「昨日はネネとクラスタと回ったんでしょ?」
「あーうん。だからもう祭りは…」
「じゃあ今日は私と回りましょう。」
「……」
「回りましょう?」
「…はい。」

 背後に付き合ってくれないと召喚魔法進めないぞという文字が見えた気がした。






 アストレアと直人はにぎやかな祭り会場の中を練り歩く。見て歩くだけで特別何か買ったりはアストレアはしない。理由を聞くと

「すべての店のものを食べてあげれる自身がないから。」

だそうだ。祭りという中でアストレアが何かを買うというのは一部の店だけだと不公平になるそうだ。だからといって買うだけならもちろん出来るのだが、食べもしないのに買うのも失礼だということなんだとか。
 それならばと祭りの雰囲気を楽しみながらいろんな店を見て歩くだけでも楽しみたいということで、2人はひたすらうろうろとしていたのだ。

「そこの兄ちゃん待ちな…」

 2人の前を男達が塞いで通れないようにした。

「…ん?今日は違う女連れてるな。まあいいか。」
「誰だ…?」

 見覚えのない男が2人を嘗め回すように眺めている。

「ちっ忘れやがったのか。昨日のスライムルーレットだよ!」
「……ああ。」

 流石にほんの数分あっただけの男の顔などは覚えようもない。昨日スライムルーレットという店で負かした男だったらしい。

「お代はいらねぇ…今日も勝負しやがれ!」
「……」

 何度勝負しても無駄だというのがこの男には分かっていないらしい。もともと珍しいサイダーをスライムから出していた直人である。それでもめげずに挑むのは無謀というか負けず嫌いというか…

「またスライムなのか?」
「いや、今日は別のを用意した。」
「別の?」
「ああ、ボックスベイだ…」

 そんなのもつれてこれるのか…スライムはそこらにいるから不思議に思わなかったけど…

 半分無理やり連れて行かれ店の前につく。スライム達は檻に入れられ変わりに箱が2つ置いてある。あの中にボックスベイがいるのだろうか。

「今回も俺からえらばせてもらうぜ…っ」

 他の男に指示をだし片方の箱を開けさせる。中から出てきたのは貝っぽく見えないこともない何か、だった。男が攻撃すると中からペンダントが出てきた。

「っしゃーっこれなら勝てる!」

 意気揚々と手に入れたペンダントをこちらに見せてくる。気のせいかどこかで見たことがあるペンダントだ。

「さあ、兄ちゃんの番だぜ。」
「……」

 箱のほうを見ると先に男が倒したほうの残骸がある…残るはずのない残骸。

「なあ、これそもそもボックスベイじゃないだろ…」
「なっなんだと!隣町のダンジョンの魔物だぞそんなの知らないくせにいい加減なこというな!!」
「いや…見たことあるし。そもそも倒したのになぜ消えない…?」
「ぐっ…そういう魔物もいるんだよ!」
「あとそのペンダント…僕の店で買ったやつだろ?」
「な…?」

 男はあわてて他の男たちの顔を見る。「え、まじなのか?」「お前これどこで買ったよ。」とか話しているのが聞こえてきた。

「ナオトも変なのに絡まれるわね…こいつらちょっと懲らしめとく?」
「普通に詐欺行為やってるし反省はいるんじゃないかな?」
「おけーっ」

 そういうとアストレアが右腕を上に上げ光の柱が1本立った。その光を目にしたアストレアの護衛たちがわらわらと集まりだした。

「え…な…っ」
「こんな人込み護衛もつけず流石にこれないからね~」

 どうやらアストレアの護衛たちが祭りの中に紛れ込んでそこらを見張っていたらしい。

「護衛って…何者…」
「…え。あっ見たことあるかも…」

 男達はアストレアが誰か気がつかないようだ。

「姫様どうされました?」
「姫様…??」
「こいつら祭りで詐欺行為を働いたの。」

 アストレアがあらましを簡単に説明した。

「いくらお金を取らなかったとはいえよくありませんな~」
「いや、あの…」
「俺達どうなるんで…」

 護衛の1人がパチンと指を鳴らすと男達は両側をつかまれ、ひきづられる用にどこかへと連れて行かれた。残った護衛たちは祭り露店の撤去を行っている。

「ではわれわれは片付け次第再び任務に戻ります。」
「ん、よろしく。」

 その後姫様だとアストレアがばれたために、ろくに祭りは回れなくなったので早めに解散となった。直人にとっては少し時間が出来て、実はありがたかったとか口が裂けても言えない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

World of Fantasia(ワールド・オブ・ファンタジア)

緋色牡丹
ファンタジー
生きる意味を見出せない三十二歳の男・山田緋色。 夏の夜、光の渦に呑まれ、彼が目を覚ましたのは――幻想の森だった。 壊れた愛車、知らない空、そして湖に浮かぶ青髪の少女。 異世界での出会いが、“止まった人生”を再び動かしていく。 異世界叙情ファンタジー、開幕── ※この小説は、小説家になろう、カクヨムにも同時掲載しています。 挿絵はAIイラストを使ったイメージ画像です。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...