54 / 60
第6章 実験
54話 終末の足音
しおりを挟む
「マリーナス…広すぎないか?」
「建物、多くて、ごちゃごちゃ…」
地図を手に入れるために直人とネネは町の中を歩いている。門から港に向けて広い通りがあり、その両サイドに階段状に建物がたくさん並んでいるのだ。建物同士の間に通路はあるものの、まるで迷路のようである。
「地図だから…本屋とか雑貨屋…あとは冒険者ギルドとかにいけばよさそうか?」
「ギルド、有力。」
「ギルドか…」
ネネの意見にしたがい冒険者ギルドに向かうことにした。大体ギルドというものは門の傍か、ダンジョンの近くと決まっている。このまままっすぐ中央の通りを門へと戻ればあるはずだ。
「ないな…」
門まで戻ってきたがそれらしい建物はなかった。ということはダンジョンの傍にあるのだろう。
「とりあえず本屋にいくか。」
先ほど通った途中に本を扱っている店を見つけていた。そこで地図を探しつつなかったらギルドに顔を出せばいいだろう。
本屋の前に着くとネネが不思議そうな顔をしていた。
「ここ…地図、ある?」
「…ないのか?」
看板には本を開いたマークが書かれているのでてっきり本屋だと思ったのだが違ったのだろうか。
「まあ入ってみるか。」
扉をくぐり中に入ると棚には本が並んでいた。やはり本屋で間違っていないようだ。でもネネは別のほうを見ている。その視線をたどると、よくわからない器具などがならんでいた。
「魔道具。」
つまりここは本屋というより魔法ショップという感じの店のようだ。
「めずらし~あんたたち客なの?」
奥にあるカウンターに伏せていた女性がこちらに声をかけてきた。暇なのかとてもだるそうだ。
「すみません、地図ってどこに行けば手に入りますか?」
「ちずぅ~~?一体どこのが欲しいんだい…」
「えーと、この海を越えた先のです。」
「………」
女性は驚いた顔をしたかと思うと、頭の天辺からつま先までじろじろと見てきた。何か変なことを言っただろうか…
「…何しに行くんだい?」
「え?」
「この陸地以外の陸地に行きたいってことだろう?何しに…」
「えーと…観光のようなものですかね…」
観光なら問題ないと思い言ってみたのだがどうやらそれは勘違いだったようだ。その言葉を言ったとたん女性の様子がおかしくなった。顔は青くなり、体は小刻みに震え呼吸が荒くなった。
「大丈夫ですか?」
熱でもあるのだろうかと手を額に伸ばすと、すごい勢いで後ずさりをした。すぐ後ろに壁があるので下がることは出来ないのだが。
「あんた、何者……?この陸地の人間じゃないね?」
「んーというかこの世界のことがよくわからないってのが正解かな…」
「そうか…記憶喪失とかそういった類か…なら知らなくてもおかしくはないか……」
姿勢を正すと女性は棚から1冊の本を出してきた。
「……?」
「この本を読みな、この世界の過去について書かれているから。」
渡された本は子供でもわかるように書かれた絵本だった。
「終末の足音…」
タイトルからしてあまりよくない話のようだ。表紙には子供が2人抱き合うようにしており、その背後には大きなスライムがいる。ページをめくり中を読み進めることにした。
この世界にはダンジョンと呼ばれる畑が多数存在していました。
そのダンジョンの底は深く、先が見えません。
ある日そのダンジョンの中から初めてみる種族が現れました。
その男はこういいました。
「おや、畑がこんなところまで出来てしまいましたか。」
どうやらこの男が畑を作ったひとだったようです。
そんなこととは知らず私達は好きに収穫してしまっていました。
ある日村の村長さんがその男に謝りに行こうと畑に入っていきました。
するといつもと畑の様子が違ってたくさんの作物が出来ていました。
その作物はみるみるうちにあふれ出し、村長さんの村まで埋め尽くしました。
畑の男が出てきて逆に謝ってきました。
その日から男のほうがあふれない様に収穫を頼んできました。
ですがやはり人様の畑。村長さんは収穫するのをためらいました。
するとどうでしょう…どんどんと作物があふれてくるではないですか。
こうして村人達は作物に追われ外へと押し出され、どんどんと住む場所がなくなってきたのです。
村人達は住んでいた陸地を捨て、海を渡りました。
そこはまだダンジョンがありません。村人達はほっとしました。
ところがある日、ダンジョンが1つ現れました。
村長さんはあわててダンジョンで収穫をすることを村人に言いました。
この陸地も作物であふれてしまうと人は住む場所がなくなってしまうからです。
村人達は子供達にこのことをしっかり伝えていこうと決めました。
そしていつかはあの作物であふれた陸地を取り戻せることを祈って…
絵本を読み終えた直人は考え出した。この内容はどう見てもスライムの氾濫についてのことだった。今いる陸地には確認しただけでも5つのダンジョンがある。ということは他の陸地に10個はダンジョンが存在しているはずである。
ということはその10個のダンジョンが今すべて放置で、あふれたままということもある…のか?
この絵本の話が本当だとすればだが。
一度地下都市にいて魔王にでも確認してみるか…
「建物、多くて、ごちゃごちゃ…」
地図を手に入れるために直人とネネは町の中を歩いている。門から港に向けて広い通りがあり、その両サイドに階段状に建物がたくさん並んでいるのだ。建物同士の間に通路はあるものの、まるで迷路のようである。
「地図だから…本屋とか雑貨屋…あとは冒険者ギルドとかにいけばよさそうか?」
「ギルド、有力。」
「ギルドか…」
ネネの意見にしたがい冒険者ギルドに向かうことにした。大体ギルドというものは門の傍か、ダンジョンの近くと決まっている。このまままっすぐ中央の通りを門へと戻ればあるはずだ。
「ないな…」
門まで戻ってきたがそれらしい建物はなかった。ということはダンジョンの傍にあるのだろう。
「とりあえず本屋にいくか。」
先ほど通った途中に本を扱っている店を見つけていた。そこで地図を探しつつなかったらギルドに顔を出せばいいだろう。
本屋の前に着くとネネが不思議そうな顔をしていた。
「ここ…地図、ある?」
「…ないのか?」
看板には本を開いたマークが書かれているのでてっきり本屋だと思ったのだが違ったのだろうか。
「まあ入ってみるか。」
扉をくぐり中に入ると棚には本が並んでいた。やはり本屋で間違っていないようだ。でもネネは別のほうを見ている。その視線をたどると、よくわからない器具などがならんでいた。
「魔道具。」
つまりここは本屋というより魔法ショップという感じの店のようだ。
「めずらし~あんたたち客なの?」
奥にあるカウンターに伏せていた女性がこちらに声をかけてきた。暇なのかとてもだるそうだ。
「すみません、地図ってどこに行けば手に入りますか?」
「ちずぅ~~?一体どこのが欲しいんだい…」
「えーと、この海を越えた先のです。」
「………」
女性は驚いた顔をしたかと思うと、頭の天辺からつま先までじろじろと見てきた。何か変なことを言っただろうか…
「…何しに行くんだい?」
「え?」
「この陸地以外の陸地に行きたいってことだろう?何しに…」
「えーと…観光のようなものですかね…」
観光なら問題ないと思い言ってみたのだがどうやらそれは勘違いだったようだ。その言葉を言ったとたん女性の様子がおかしくなった。顔は青くなり、体は小刻みに震え呼吸が荒くなった。
「大丈夫ですか?」
熱でもあるのだろうかと手を額に伸ばすと、すごい勢いで後ずさりをした。すぐ後ろに壁があるので下がることは出来ないのだが。
「あんた、何者……?この陸地の人間じゃないね?」
「んーというかこの世界のことがよくわからないってのが正解かな…」
「そうか…記憶喪失とかそういった類か…なら知らなくてもおかしくはないか……」
姿勢を正すと女性は棚から1冊の本を出してきた。
「……?」
「この本を読みな、この世界の過去について書かれているから。」
渡された本は子供でもわかるように書かれた絵本だった。
「終末の足音…」
タイトルからしてあまりよくない話のようだ。表紙には子供が2人抱き合うようにしており、その背後には大きなスライムがいる。ページをめくり中を読み進めることにした。
この世界にはダンジョンと呼ばれる畑が多数存在していました。
そのダンジョンの底は深く、先が見えません。
ある日そのダンジョンの中から初めてみる種族が現れました。
その男はこういいました。
「おや、畑がこんなところまで出来てしまいましたか。」
どうやらこの男が畑を作ったひとだったようです。
そんなこととは知らず私達は好きに収穫してしまっていました。
ある日村の村長さんがその男に謝りに行こうと畑に入っていきました。
するといつもと畑の様子が違ってたくさんの作物が出来ていました。
その作物はみるみるうちにあふれ出し、村長さんの村まで埋め尽くしました。
畑の男が出てきて逆に謝ってきました。
その日から男のほうがあふれない様に収穫を頼んできました。
ですがやはり人様の畑。村長さんは収穫するのをためらいました。
するとどうでしょう…どんどんと作物があふれてくるではないですか。
こうして村人達は作物に追われ外へと押し出され、どんどんと住む場所がなくなってきたのです。
村人達は住んでいた陸地を捨て、海を渡りました。
そこはまだダンジョンがありません。村人達はほっとしました。
ところがある日、ダンジョンが1つ現れました。
村長さんはあわててダンジョンで収穫をすることを村人に言いました。
この陸地も作物であふれてしまうと人は住む場所がなくなってしまうからです。
村人達は子供達にこのことをしっかり伝えていこうと決めました。
そしていつかはあの作物であふれた陸地を取り戻せることを祈って…
絵本を読み終えた直人は考え出した。この内容はどう見てもスライムの氾濫についてのことだった。今いる陸地には確認しただけでも5つのダンジョンがある。ということは他の陸地に10個はダンジョンが存在しているはずである。
ということはその10個のダンジョンが今すべて放置で、あふれたままということもある…のか?
この絵本の話が本当だとすればだが。
一度地下都市にいて魔王にでも確認してみるか…
0
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
World of Fantasia(ワールド・オブ・ファンタジア)
緋色牡丹
ファンタジー
生きる意味を見出せない三十二歳の男・山田緋色。
夏の夜、光の渦に呑まれ、彼が目を覚ましたのは――幻想の森だった。
壊れた愛車、知らない空、そして湖に浮かぶ青髪の少女。
異世界での出会いが、“止まった人生”を再び動かしていく。
異世界叙情ファンタジー、開幕──
※この小説は、小説家になろう、カクヨムにも同時掲載しています。
挿絵はAIイラストを使ったイメージ画像です。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる