2 / 7
第2話 1つの明かり
しおりを挟む
暗い…何も見えない。じめじめとしていて少し寒い。これが死後の世界なのだろうか。ただ頬にゴツゴツとした感触を感じるだけだ。手にも同じものを感じているみたいで、触って確認をする。
ざらざらでごつごつだ…まるででこぼこした地面のよう。
手に力を入れると体を起こすことが出来た。見えなくてよくわからないけど多分僕は座っている。お尻の辺りが先ほどの同じような感触で座っているのが少し痛い。
…痛い?
驚いて僕は立ち上がる。痛いという感覚がある…手を眺めるがもちろん見えない。その両手を頬に当てパンパンと頬を叩く。
やっぱり痛い?
いや…死後の世界だからそんなものはないと思い込んでいただけだろう。どうやら感覚はあるらしい。手の匂いを嗅いでみた…土のにおいがする。
「あーあーあー…」
声も出るみたいだ。それなのに見えないのはなぜだろう…というかこんな暗いところが天国とかなのか?いや違うか…役立たずな僕は地獄にでも落ちたのだろう。
手を伸ばしまわりに何か無いのか探してみる。とりあえず地に足がついているので地面はある。見えないので手探り足探りでゆっくりと前へと進むしかない。
これは中々つらいな…見えないというのはこんなにも不便なものだったのかと初めて知り、5体満足で生まれたことに感謝した。
しばらく進んでいると手に何かが触れた。多分壁だ。手を上に伸ばして触っても足元まで触ってみても同じ感触が続いている。
「おお…」
ただ壁があっただけなんだけどその変化が少しだけ嬉しかった。何もないと思ったのに壁があった。つまりまだ何かあるかもしれないということなのだ。無いかもだけどね。
今度はその壁を触りながら前へと進む。少しすると壁の切れ目を発見した。どうやら右へと壁が折れているようだ。
そしてそこまで来て始めて物音をが聞こえてきた。何の音かわからない。だけどこの右へと曲がった先から聞こえているのはなんとなくわかる。
恐る恐るその先を見ようと覗き込んだ。もちろん真っ暗なので見えることは期待していなかったのだが…
「あっ」
うっすらと明かりが見えるじゃないか。その明かりの中にはなにやら動くものもある。これは大きな変化だ。
足元の安全も確認しながら手探りで壁伝いにその光りを目指す。心臓の音が早くなるのを感じながら前へと進んだ。
その明かりの中にいたのは1人の人間だった。意識を失っているのか地面に転がっている。見たこともない服装で転んだのか砂だらけだ。髪の毛の長さや顔の作りから女の子だとわかる。ただ…髪の毛の色が水色だ。染めているのだろうか?
そして奇妙なものがある。この子の傍に光る球体のようなものが浮かんでいた。これがさっきまで見えていた明かりなのだろうとは思う。恐る恐る手を近づけてみるが、少し温かく感じるだけで触ることも出来ない。不思議な代物だ。
「んぅ…」
女の子が声を出した。この子も僕と同じでこの死後の世界なのか地獄だかに来てしまったんだろうか…だとするとお仲間ってことになるが、どうなんだろう? まあ本人が起きそうなので起きたら聞いてみればいいだろう。
「いたたたた…」
頭を抱えながらゆっくりと女の子が体を起こした。服についた砂などを払い落としながら立ち上がる。そこでやっと僕に気がついたらしく目を見開いて驚いていた。
「え…誰っ」
「あ…」
どうしようとっさに言葉が出てこない。僕が言葉に詰まっていると女の子のほうが喋りだしてくれた。
「おにーさん…もしかしなくても地上の人?」
「え、あ…地上?」
ジロジロと僕を舐めまわすかのように見ている少女の言葉に首を傾げる。まあ…この薄暗いところが地下なのなら僕は地上に住んでいる人なんだろうが…それすらわからないので判断が出来ない。てっきと僕と同じようにここへ来た人だと思ったのだけど予想は外れたみたいだ。
「まいったね…おにーさん自分のことなのにわからないんだ」
とりあえず頷いておく。わからないのは自分の事じゃなくて今の状況なんだけど言う必要はないと思う。それよりもさっき行っていた地上がどうとかって…つまりここは地下で、地獄は地下にあるってことなのだろうか?
「地獄…」
「え、何? ああっ 私の名前はスゥだよ。おにーさんの名前は変わっているね…ジゴックさん?」
いや違う…地獄のことを聞こうとしただけなんだ。僕の名前ではない。
「いや、えっと…」
「ああそうだね。いつまでもここにいても仕方ないね。よかったら集落へ案内するよ」
にこやかに手を差し出してきたので僕は思わずその手を取ってしまった。こんなに好意的に話しかけてくれる人が初めてでかなり戸惑っているが、それ以上に嬉しかったのだ。死んでよかったと思えるくらいに…
それからその女の子、スゥに手を引かれ暗い通路を歩き続ける。と言っても感覚で10分ほど歩くとその進行方向に今目の前にある明かりよりもずっと明るい場所が見えてきた。急激に眩しいと見えなくなってしまうが、ここからだとまだゆっくりとその明かりになれることができそうだ。
明かりへ向かいつつ僕達は進む。でも本当にこのままそこへ行ってしまってよいのだろうか。さっきこのスゥを見つけたときのように心臓がドキドキとしてきた…死んでいるのに心臓とか変だね、今更ならが気がついた。
触れることが出来ているスゥの手もおかしい。というか今僕は女の子と手を繋いで歩いているんだ…恥ずかしさと戸惑いから顔が熱くなるのを感じ、少しだけ顔を伏せて歩く。
「そろそろ入口だよ、ジゴックさん」
ああ、しまった…名前訂正していない。今度こそちゃんと自分の名前を言おうと顔を上げると光の量がいつの間にか多くなっていてその眩しさに目を細めた。
ざらざらでごつごつだ…まるででこぼこした地面のよう。
手に力を入れると体を起こすことが出来た。見えなくてよくわからないけど多分僕は座っている。お尻の辺りが先ほどの同じような感触で座っているのが少し痛い。
…痛い?
驚いて僕は立ち上がる。痛いという感覚がある…手を眺めるがもちろん見えない。その両手を頬に当てパンパンと頬を叩く。
やっぱり痛い?
いや…死後の世界だからそんなものはないと思い込んでいただけだろう。どうやら感覚はあるらしい。手の匂いを嗅いでみた…土のにおいがする。
「あーあーあー…」
声も出るみたいだ。それなのに見えないのはなぜだろう…というかこんな暗いところが天国とかなのか?いや違うか…役立たずな僕は地獄にでも落ちたのだろう。
手を伸ばしまわりに何か無いのか探してみる。とりあえず地に足がついているので地面はある。見えないので手探り足探りでゆっくりと前へと進むしかない。
これは中々つらいな…見えないというのはこんなにも不便なものだったのかと初めて知り、5体満足で生まれたことに感謝した。
しばらく進んでいると手に何かが触れた。多分壁だ。手を上に伸ばして触っても足元まで触ってみても同じ感触が続いている。
「おお…」
ただ壁があっただけなんだけどその変化が少しだけ嬉しかった。何もないと思ったのに壁があった。つまりまだ何かあるかもしれないということなのだ。無いかもだけどね。
今度はその壁を触りながら前へと進む。少しすると壁の切れ目を発見した。どうやら右へと壁が折れているようだ。
そしてそこまで来て始めて物音をが聞こえてきた。何の音かわからない。だけどこの右へと曲がった先から聞こえているのはなんとなくわかる。
恐る恐るその先を見ようと覗き込んだ。もちろん真っ暗なので見えることは期待していなかったのだが…
「あっ」
うっすらと明かりが見えるじゃないか。その明かりの中にはなにやら動くものもある。これは大きな変化だ。
足元の安全も確認しながら手探りで壁伝いにその光りを目指す。心臓の音が早くなるのを感じながら前へと進んだ。
その明かりの中にいたのは1人の人間だった。意識を失っているのか地面に転がっている。見たこともない服装で転んだのか砂だらけだ。髪の毛の長さや顔の作りから女の子だとわかる。ただ…髪の毛の色が水色だ。染めているのだろうか?
そして奇妙なものがある。この子の傍に光る球体のようなものが浮かんでいた。これがさっきまで見えていた明かりなのだろうとは思う。恐る恐る手を近づけてみるが、少し温かく感じるだけで触ることも出来ない。不思議な代物だ。
「んぅ…」
女の子が声を出した。この子も僕と同じでこの死後の世界なのか地獄だかに来てしまったんだろうか…だとするとお仲間ってことになるが、どうなんだろう? まあ本人が起きそうなので起きたら聞いてみればいいだろう。
「いたたたた…」
頭を抱えながらゆっくりと女の子が体を起こした。服についた砂などを払い落としながら立ち上がる。そこでやっと僕に気がついたらしく目を見開いて驚いていた。
「え…誰っ」
「あ…」
どうしようとっさに言葉が出てこない。僕が言葉に詰まっていると女の子のほうが喋りだしてくれた。
「おにーさん…もしかしなくても地上の人?」
「え、あ…地上?」
ジロジロと僕を舐めまわすかのように見ている少女の言葉に首を傾げる。まあ…この薄暗いところが地下なのなら僕は地上に住んでいる人なんだろうが…それすらわからないので判断が出来ない。てっきと僕と同じようにここへ来た人だと思ったのだけど予想は外れたみたいだ。
「まいったね…おにーさん自分のことなのにわからないんだ」
とりあえず頷いておく。わからないのは自分の事じゃなくて今の状況なんだけど言う必要はないと思う。それよりもさっき行っていた地上がどうとかって…つまりここは地下で、地獄は地下にあるってことなのだろうか?
「地獄…」
「え、何? ああっ 私の名前はスゥだよ。おにーさんの名前は変わっているね…ジゴックさん?」
いや違う…地獄のことを聞こうとしただけなんだ。僕の名前ではない。
「いや、えっと…」
「ああそうだね。いつまでもここにいても仕方ないね。よかったら集落へ案内するよ」
にこやかに手を差し出してきたので僕は思わずその手を取ってしまった。こんなに好意的に話しかけてくれる人が初めてでかなり戸惑っているが、それ以上に嬉しかったのだ。死んでよかったと思えるくらいに…
それからその女の子、スゥに手を引かれ暗い通路を歩き続ける。と言っても感覚で10分ほど歩くとその進行方向に今目の前にある明かりよりもずっと明るい場所が見えてきた。急激に眩しいと見えなくなってしまうが、ここからだとまだゆっくりとその明かりになれることができそうだ。
明かりへ向かいつつ僕達は進む。でも本当にこのままそこへ行ってしまってよいのだろうか。さっきこのスゥを見つけたときのように心臓がドキドキとしてきた…死んでいるのに心臓とか変だね、今更ならが気がついた。
触れることが出来ているスゥの手もおかしい。というか今僕は女の子と手を繋いで歩いているんだ…恥ずかしさと戸惑いから顔が熱くなるのを感じ、少しだけ顔を伏せて歩く。
「そろそろ入口だよ、ジゴックさん」
ああ、しまった…名前訂正していない。今度こそちゃんと自分の名前を言おうと顔を上げると光の量がいつの間にか多くなっていてその眩しさに目を細めた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる