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第5話 見学会
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ジゴックさんと別れた私はそのままの足で長老のもとへ向かった。ばさりとテントの入口を開け中へと入ると、そこにいるのはさっき分かれたままの姿勢で身動きひとつしない長老と呼ばれていた男だ。チラリと視線を向けた後、その場に座り込みジゴックさんが作る予定の家のある方向を眺める。
そして呪文を1つ唱える。
するとテントだったものが無くなりその外が透けて見えるようになる。私がジゴックさんに勧めた家を作る場所はこの長老のテントの右斜め上あたり。ここからならテントの部分だけ取り払えばすべて丸見えなのだ。
「うん、ちゃんと葉っぱに祈っているわね」
ホッと胸を撫で下ろす。あれ以上詳しく説明出来ないのだからしかたがないとは言え、やはり結果は気になるもので、ちゃんと葉っぱを使用してくれたので安心した。
「どんな家を作るのかお手並み拝見ってところね」
腕を組みじっと彼を眺める。周辺が光りだしたからそろそろ完成することだろう。その光りがおさまると目の前にあわられたのは1枚の扉だった。
「な…っ え?」
出来上がった扉を彼は開き中へと入っていった。つまりあれが彼の作った家ということ…なんだけど…まさかこう来るとは思わなかったわね。
「壁の中…もしくは、異空間の中とかね」
壁の中であれば壁の目の前に行けば中の様子が見られるだろう…今と同じ方法で。でも異空間だとするとそうはいかない。そもそもそこに無いものなのだから見ることは不可能だ。
「確認するしかないよね~」
軽くため息を吐き立ち上がると私はテントから出て行った。この間も長老と呼ばれた男はまったく身動き1つしなかった…
扉の前に立ち同じ呪文を唱える…が、何も見えない。つまり異空間に作られたというのが正解だ。
「やっかいな…」
こうなってくると直接乗り込むしか中を確認する方法がないわけで、私は早速その扉をノックした。
───────────────
おお…ちゃんと壁に扉が1つ出来た。これが僕が思い描いた家だ。
ざっと見たところ一応ここの場所は空いているのだけど、やっぱりこの集落は狭い。まだ子供達もいるということはそのうち家が増える可能性もあるわけで、こうやって家の外観を作らなければまだまだ家は作れるのだ。もちろん壁の中に室内を作ったわけではない。そうしてしまうと隣の家と薄い壁1枚隔てた家とかが出来てしまうかもしれないからね。
そこで考えたのがこの家というわけで、よく読んでいたラノベを参考にして別の空間に家の中身を作ることにしたんだ。
そっと扉に手を伸ばす。さて…どこまで僕が思い描いた家が出来上がっているのか確認するのが楽しみである。ここから僕は再スタートをするんだっ
ぎゅっと目を瞑り扉を開けて中へ入り後ろ手にすぐに扉を閉めた。そっと目を開けると先ず飛び込んできたのは足元にある玄関だ。見慣れた下駄箱が右側あり、靴を脱いで上がる玄関。下駄箱を開けてみると今履いているのと同じ靴が後5足入っている。
そうこれがこの家のすごいところ。いろんな機能を詰め込めるだけ突っ込んだ結果だ。下駄箱にしまうと自動で靴を綺麗にしてくれる。そして予備の靴も完備だ。一応靴の修復機能も付けてみたのだが、これがすぐに直るものかわからなかったので、靴の量を増やしておいた。これで直している間に別の靴を履けばいいだけ。
僕は玄関の土間で靴を脱ぐと靴の向きを変えそろえて並べた。すっと立ち上がり奥へと伸びている廊下を眺める。つやつやなフローリングの廊下だ。この廊下の右側にある横開きの扉を開けると中は洗濯機、さらに奥に…ん? 気のせいかな…外からノックされたような音がした。一応呼び鈴をつけておいたけどまだ誰にも教えていないから押す人はいない。つまり扉があったから誰かが叩いているということになる…よね。誰だろう…
今いる部屋を出て扉を閉めると僕は玄関のほうへと向かった。ちゃんと外の様子が見えるようにドアスコープもつけておいたので、そこから誰がいるのかを確認する。
「あ…っ」
なんだスゥだ。そうだよね…ここに家を作ればいいって言ったのはスゥだもん。きっと食事を終えて戻ってきたんだ。ほっとした僕はそっと扉を開いた。
「ジゴックさん、これが家なの??」
スゥが扉を眺め、首を傾げている。ああそうか…外から見ると壁に扉があるだけなんだよね。すぐに家だってわからないのか。
「う、うん…どう、かな?」
「ちゃんと住めるならいいんじゃない?」
「あ、まだ…見てない…」
「そうなんだ…ねぇ、じゃあ私も一緒に見せてもらっていいかな」
それはいい考えかも…ここに住んでいる人の意見ももらえると足りないところとか教えてもらえるかも知れない。
「は、はひっ」
緊張して声が裏返ってしまった…少し恥ずかしい。顔が熱くなるのを感じながら僕はスゥを家の中へと招き入れた。
───────────────
ジゴックさんが家の中を見せてくれることになった。断られなくてよかったと気がつかれないように息を吐く。扉をくぐるとやはり中にはまだ空間が続いていた。見たことがない作りの家だ。なんだろう…目の前に真っ直ぐとつやつやとした…多分木? で出来た何かが真っ直ぐと伸びている。それをじっと見ているとジゴックさんが履物を脱いでそのつやつやに乗っかった。
うん…履物履いたままだと傷だらけになるもんね。だから脱ぐんだね。じゃあ私も真似をして脱いでそのつやつやに足を置いた。
「!!」
少しだけひんやりとしていてこれだけつるつるだと気になってついつい足元をじっと眺めてしまった。そんな動きを止めた私をジゴックさんがじっと見ている。
「えと…まずはここからでいいですか?」
「もっもちろんどこからでもおっけーよ!」
もう入口だけでお腹一杯です…どんなすごい想像力を持ったらこんな家が出来るんだって話。それとも…ジゴックさんとしてはこれが普通ってことなのかもしれないから怖い。
ジゴックさんが扉を横に動かして入口を開けた。中に入っていくジゴックさんについて私も一緒に中へと入る。もうなんていうかドキドキが止まらないっ
そして呪文を1つ唱える。
するとテントだったものが無くなりその外が透けて見えるようになる。私がジゴックさんに勧めた家を作る場所はこの長老のテントの右斜め上あたり。ここからならテントの部分だけ取り払えばすべて丸見えなのだ。
「うん、ちゃんと葉っぱに祈っているわね」
ホッと胸を撫で下ろす。あれ以上詳しく説明出来ないのだからしかたがないとは言え、やはり結果は気になるもので、ちゃんと葉っぱを使用してくれたので安心した。
「どんな家を作るのかお手並み拝見ってところね」
腕を組みじっと彼を眺める。周辺が光りだしたからそろそろ完成することだろう。その光りがおさまると目の前にあわられたのは1枚の扉だった。
「な…っ え?」
出来上がった扉を彼は開き中へと入っていった。つまりあれが彼の作った家ということ…なんだけど…まさかこう来るとは思わなかったわね。
「壁の中…もしくは、異空間の中とかね」
壁の中であれば壁の目の前に行けば中の様子が見られるだろう…今と同じ方法で。でも異空間だとするとそうはいかない。そもそもそこに無いものなのだから見ることは不可能だ。
「確認するしかないよね~」
軽くため息を吐き立ち上がると私はテントから出て行った。この間も長老と呼ばれた男はまったく身動き1つしなかった…
扉の前に立ち同じ呪文を唱える…が、何も見えない。つまり異空間に作られたというのが正解だ。
「やっかいな…」
こうなってくると直接乗り込むしか中を確認する方法がないわけで、私は早速その扉をノックした。
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おお…ちゃんと壁に扉が1つ出来た。これが僕が思い描いた家だ。
ざっと見たところ一応ここの場所は空いているのだけど、やっぱりこの集落は狭い。まだ子供達もいるということはそのうち家が増える可能性もあるわけで、こうやって家の外観を作らなければまだまだ家は作れるのだ。もちろん壁の中に室内を作ったわけではない。そうしてしまうと隣の家と薄い壁1枚隔てた家とかが出来てしまうかもしれないからね。
そこで考えたのがこの家というわけで、よく読んでいたラノベを参考にして別の空間に家の中身を作ることにしたんだ。
そっと扉に手を伸ばす。さて…どこまで僕が思い描いた家が出来上がっているのか確認するのが楽しみである。ここから僕は再スタートをするんだっ
ぎゅっと目を瞑り扉を開けて中へ入り後ろ手にすぐに扉を閉めた。そっと目を開けると先ず飛び込んできたのは足元にある玄関だ。見慣れた下駄箱が右側あり、靴を脱いで上がる玄関。下駄箱を開けてみると今履いているのと同じ靴が後5足入っている。
そうこれがこの家のすごいところ。いろんな機能を詰め込めるだけ突っ込んだ結果だ。下駄箱にしまうと自動で靴を綺麗にしてくれる。そして予備の靴も完備だ。一応靴の修復機能も付けてみたのだが、これがすぐに直るものかわからなかったので、靴の量を増やしておいた。これで直している間に別の靴を履けばいいだけ。
僕は玄関の土間で靴を脱ぐと靴の向きを変えそろえて並べた。すっと立ち上がり奥へと伸びている廊下を眺める。つやつやなフローリングの廊下だ。この廊下の右側にある横開きの扉を開けると中は洗濯機、さらに奥に…ん? 気のせいかな…外からノックされたような音がした。一応呼び鈴をつけておいたけどまだ誰にも教えていないから押す人はいない。つまり扉があったから誰かが叩いているということになる…よね。誰だろう…
今いる部屋を出て扉を閉めると僕は玄関のほうへと向かった。ちゃんと外の様子が見えるようにドアスコープもつけておいたので、そこから誰がいるのかを確認する。
「あ…っ」
なんだスゥだ。そうだよね…ここに家を作ればいいって言ったのはスゥだもん。きっと食事を終えて戻ってきたんだ。ほっとした僕はそっと扉を開いた。
「ジゴックさん、これが家なの??」
スゥが扉を眺め、首を傾げている。ああそうか…外から見ると壁に扉があるだけなんだよね。すぐに家だってわからないのか。
「う、うん…どう、かな?」
「ちゃんと住めるならいいんじゃない?」
「あ、まだ…見てない…」
「そうなんだ…ねぇ、じゃあ私も一緒に見せてもらっていいかな」
それはいい考えかも…ここに住んでいる人の意見ももらえると足りないところとか教えてもらえるかも知れない。
「は、はひっ」
緊張して声が裏返ってしまった…少し恥ずかしい。顔が熱くなるのを感じながら僕はスゥを家の中へと招き入れた。
───────────────
ジゴックさんが家の中を見せてくれることになった。断られなくてよかったと気がつかれないように息を吐く。扉をくぐるとやはり中にはまだ空間が続いていた。見たことがない作りの家だ。なんだろう…目の前に真っ直ぐとつやつやとした…多分木? で出来た何かが真っ直ぐと伸びている。それをじっと見ているとジゴックさんが履物を脱いでそのつやつやに乗っかった。
うん…履物履いたままだと傷だらけになるもんね。だから脱ぐんだね。じゃあ私も真似をして脱いでそのつやつやに足を置いた。
「!!」
少しだけひんやりとしていてこれだけつるつるだと気になってついつい足元をじっと眺めてしまった。そんな動きを止めた私をジゴックさんがじっと見ている。
「えと…まずはここからでいいですか?」
「もっもちろんどこからでもおっけーよ!」
もう入口だけでお腹一杯です…どんなすごい想像力を持ったらこんな家が出来るんだって話。それとも…ジゴックさんとしてはこれが普通ってことなのかもしれないから怖い。
ジゴックさんが扉を横に動かして入口を開けた。中に入っていくジゴックさんについて私も一緒に中へと入る。もうなんていうかドキドキが止まらないっ
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