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第7話 見学会3
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廊下に出て風呂場の反対側の壁正面にある扉を今から覗いてみることにする。ここはダイニングキッチンになっているはずなんだ。ここの扉も横開きで左から右へとスライドさせ中へと入る。最初に目に飛び込んできたのはテーブルとイスだ。少し大きめなテーブルとイスが6脚ほど置かれていた。
「さっきも思ったんだけど…広いし、いくつ部屋とかあるの」
「えーと…後3部屋…かな?」
「ふぅん…」
スゥがキョロキョロと室内を嘗め回すように眺めている。その様子を眺めていたら何か失敗しちゃったんじゃないかと不安になってくる。一応ここのつくりは僕が壊したりしないように頑丈に作ったつもりだけど…目の前で何か壊したりしたらきっとまずいだろうな~
「デーブルとイス…もしかしなくても食事をする部屋とか??」
「う、うん…」
「調理はさらに違う部屋があったりするのかしら…」
「あ、それはそっちに…」
テーブルをはさんだ奥を僕は指さした。そこにはシンク一式、食器棚、冷蔵庫、食品棚などが設置されている。
「……うん」
なぜかスゥは困った顔をした。何を困っているのか僕にはわからない。
「えーと…これは何かな」
スゥが手に触れているものは冷蔵庫だ。スゥの倍くらいはあるサイズで大型のものだ。
「冷蔵庫」
「れ…何?」
「見たほうが…いいかな」
僕は冷蔵庫に近寄ると取っ手をつかんで手前に引っ張って冷蔵庫の扉を開けた。一緒にのぞき込んでいたスゥの顔に冷蔵庫の冷気が当たる。
「ふをっ 冷たい?」
驚いたスゥは一歩後ろへ引いた。それでも興味は引かなかったみたいで冷蔵庫の中をキョロキョロと眺め始めた。
それからも大変だった。スゥが手に取るものを順番に名前と説明を繰り返す。今日は今までの人生で一番たくさん言葉を出したんじゃないかってくらいだ。
ダイニングキッチンの説明を終えるとスゥは疲れたのか椅子に座ってテーブルに突っ伏した。
「えーと…」
どうしたらいいのかわからず僕はうろたえてしまう。そっと覗き込もうと思ったんだけどそれはいけない気もするし、必要以上に話しかけるのも気が引ける。そんなことを考えていると僕のお腹が控えめに鳴った。
「あ…」
その音が少しだけ恥ずかしくて僕は軽くうつむいてしまう。でもそのおかげでまだ食事を済ませていなかったことを思い出した。
「え…と、食事しても…いいかな?」
「あ、そうね。まだ食べていなかったのね」
「はい…」
「ふむ…」
顔を上げたスゥが腕を組んで何か考え始めた。もしかして僕一人だけ食事をするとかがまずいんだろうか…でもスゥはご飯食べるといって一度戻ったんだし流石に食べないよね?
「あの…スゥも、食べる?」
「え、いいのっ?」
「う、うん…」
「いやー実はさ、食べようと思って帰ったんだけどね? ちゃんと家作れたが気になっちゃってすぐ戻ってきたからまだ食べてなかったのよ」
なるほど…まだだったんだ。それなら丁度いいよね。じゃあお腹すいているだろからすぐに食べられるもののほうがいい。いろいろイメージはしたから冷蔵庫には僕が知っている食材などがたくさん詰まっている。その中からすぐに食べられるものえば…
───────────────
いやほんとこの家にはまいったわ…多分地上にもない物ばかりなんだもの。ジゴックさんってば何者なのかしら。私は椅子に座ったまま食事を作ってくれるというジゴックさんのほうを眺めた。
私達は基本大したものは食べていない。この地下でまともに食べることがそもそも不可能に近いのだ。集落には誰かが願いを込めて水場を作ってくれたのでそれで水問題は解決されているけれど、他食べ物と言ったらそれぞれの家が定期的に作物が実るように願った畑くらいなのだ。一応魚が泳いでいる池もあるけれど、肉とかは手に入らない。
でもさっき見せてもらった冷たい箱の中は食べ物が詰まっている。見たこともないものが多かったけど、野菜などは知っているものも少しあったからわかったことなのだ。今ジゴックさんはその箱の中を見ながら食事の準備をしようとしていることで確定でしょう。
「あ…これが早くていいかな…」
ジゴックさんがさっき開いたのとは違う扉を開けてそんなことを言った。どうやら作るものが決まったみたいだ。何かを取り出しバリバリという音が響く。聞いたことがない音に私は少しだけ不安になる。さらにジゴックさんは別の四角い箱を開けて閉めた。するとその箱の中からオレンジ色の光が漏れ始めた。
「…ゴクリ」
本当に何を作っているのかわからず緊張で喉が鳴った。そしてジゴックさんはまた冷たい箱から何やら取り出してまたバリバリと音を立てる。さっきとは少し違う響きをしている。さらにザーッとまるで大雨が降ったみたいな音がして私はびくっとなった。この地下では雨の音なんてもう長いこと聞いていないからだ。その後何か切る音が響いた。これは野菜か何かを切っている音だとはっきりわかり逆に安心している自分がいる。私は未知のものにここまで不安になるという初めての体験に、ジゴックさんを思わずにらんでしまった。そしてまるでそれをさらに増長させるかのように『チ~~~~ン』と間延びした音が響く。これでとどめを刺された私は驚いて大きな音を立て椅子から立ち上がってしまった。
「あ、もう出来る…から」
「…うん」
どうにか返事だけして私は座りなおす。心臓がバクバクと音を立てて冷や汗がほほを伝う。気持ちを落ち着けようと気が付かれないように軽く深呼吸をした。これを数回繰り返すと少しだけ楽になってくる。
…とここでいい匂いがし始めた。さっきまでろくに匂いもしないままだったのも不思議なのだけど、そのせいで私のお腹がくぅ~っとなる。聞かれてはいないだろうけれどちょっとだけ恥ずかしくなった。
かたりと音がしたので顔を上げると目の前にさっきの匂いの元が置かれていた。四角い板の上に3つの器、それとフォークが1つのっている。そのうちの2つからは湯気が立ち上り温かいものだと主張していた。湯気の出ていないものは菜っ葉系の野菜と赤い実が乗っている。湯気が出ているもの1つは多分スープだろう。色は見たことがないものだけれどね。そして問題はもう1つ…これは何だろうか。黄色い細いものがたくさん入っていてその上に赤みがかってぷつぷつとしたものがのっているのだ。もちろん食べ方もわからないんだけど、フォークがあるのだからこれを使うことだけは理解出来るけど、後はどうしたらいいのかわからないのだ。
ちらりと視線をさらに上にあげると不思議そうな顔でジゴックさんがこっちを見ていた。とりあえず私はニコリと笑ってごまかした。
「さっきも思ったんだけど…広いし、いくつ部屋とかあるの」
「えーと…後3部屋…かな?」
「ふぅん…」
スゥがキョロキョロと室内を嘗め回すように眺めている。その様子を眺めていたら何か失敗しちゃったんじゃないかと不安になってくる。一応ここのつくりは僕が壊したりしないように頑丈に作ったつもりだけど…目の前で何か壊したりしたらきっとまずいだろうな~
「デーブルとイス…もしかしなくても食事をする部屋とか??」
「う、うん…」
「調理はさらに違う部屋があったりするのかしら…」
「あ、それはそっちに…」
テーブルをはさんだ奥を僕は指さした。そこにはシンク一式、食器棚、冷蔵庫、食品棚などが設置されている。
「……うん」
なぜかスゥは困った顔をした。何を困っているのか僕にはわからない。
「えーと…これは何かな」
スゥが手に触れているものは冷蔵庫だ。スゥの倍くらいはあるサイズで大型のものだ。
「冷蔵庫」
「れ…何?」
「見たほうが…いいかな」
僕は冷蔵庫に近寄ると取っ手をつかんで手前に引っ張って冷蔵庫の扉を開けた。一緒にのぞき込んでいたスゥの顔に冷蔵庫の冷気が当たる。
「ふをっ 冷たい?」
驚いたスゥは一歩後ろへ引いた。それでも興味は引かなかったみたいで冷蔵庫の中をキョロキョロと眺め始めた。
それからも大変だった。スゥが手に取るものを順番に名前と説明を繰り返す。今日は今までの人生で一番たくさん言葉を出したんじゃないかってくらいだ。
ダイニングキッチンの説明を終えるとスゥは疲れたのか椅子に座ってテーブルに突っ伏した。
「えーと…」
どうしたらいいのかわからず僕はうろたえてしまう。そっと覗き込もうと思ったんだけどそれはいけない気もするし、必要以上に話しかけるのも気が引ける。そんなことを考えていると僕のお腹が控えめに鳴った。
「あ…」
その音が少しだけ恥ずかしくて僕は軽くうつむいてしまう。でもそのおかげでまだ食事を済ませていなかったことを思い出した。
「え…と、食事しても…いいかな?」
「あ、そうね。まだ食べていなかったのね」
「はい…」
「ふむ…」
顔を上げたスゥが腕を組んで何か考え始めた。もしかして僕一人だけ食事をするとかがまずいんだろうか…でもスゥはご飯食べるといって一度戻ったんだし流石に食べないよね?
「あの…スゥも、食べる?」
「え、いいのっ?」
「う、うん…」
「いやー実はさ、食べようと思って帰ったんだけどね? ちゃんと家作れたが気になっちゃってすぐ戻ってきたからまだ食べてなかったのよ」
なるほど…まだだったんだ。それなら丁度いいよね。じゃあお腹すいているだろからすぐに食べられるもののほうがいい。いろいろイメージはしたから冷蔵庫には僕が知っている食材などがたくさん詰まっている。その中からすぐに食べられるものえば…
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いやほんとこの家にはまいったわ…多分地上にもない物ばかりなんだもの。ジゴックさんってば何者なのかしら。私は椅子に座ったまま食事を作ってくれるというジゴックさんのほうを眺めた。
私達は基本大したものは食べていない。この地下でまともに食べることがそもそも不可能に近いのだ。集落には誰かが願いを込めて水場を作ってくれたのでそれで水問題は解決されているけれど、他食べ物と言ったらそれぞれの家が定期的に作物が実るように願った畑くらいなのだ。一応魚が泳いでいる池もあるけれど、肉とかは手に入らない。
でもさっき見せてもらった冷たい箱の中は食べ物が詰まっている。見たこともないものが多かったけど、野菜などは知っているものも少しあったからわかったことなのだ。今ジゴックさんはその箱の中を見ながら食事の準備をしようとしていることで確定でしょう。
「あ…これが早くていいかな…」
ジゴックさんがさっき開いたのとは違う扉を開けてそんなことを言った。どうやら作るものが決まったみたいだ。何かを取り出しバリバリという音が響く。聞いたことがない音に私は少しだけ不安になる。さらにジゴックさんは別の四角い箱を開けて閉めた。するとその箱の中からオレンジ色の光が漏れ始めた。
「…ゴクリ」
本当に何を作っているのかわからず緊張で喉が鳴った。そしてジゴックさんはまた冷たい箱から何やら取り出してまたバリバリと音を立てる。さっきとは少し違う響きをしている。さらにザーッとまるで大雨が降ったみたいな音がして私はびくっとなった。この地下では雨の音なんてもう長いこと聞いていないからだ。その後何か切る音が響いた。これは野菜か何かを切っている音だとはっきりわかり逆に安心している自分がいる。私は未知のものにここまで不安になるという初めての体験に、ジゴックさんを思わずにらんでしまった。そしてまるでそれをさらに増長させるかのように『チ~~~~ン』と間延びした音が響く。これでとどめを刺された私は驚いて大きな音を立て椅子から立ち上がってしまった。
「あ、もう出来る…から」
「…うん」
どうにか返事だけして私は座りなおす。心臓がバクバクと音を立てて冷や汗がほほを伝う。気持ちを落ち着けようと気が付かれないように軽く深呼吸をした。これを数回繰り返すと少しだけ楽になってくる。
…とここでいい匂いがし始めた。さっきまでろくに匂いもしないままだったのも不思議なのだけど、そのせいで私のお腹がくぅ~っとなる。聞かれてはいないだろうけれどちょっとだけ恥ずかしくなった。
かたりと音がしたので顔を上げると目の前にさっきの匂いの元が置かれていた。四角い板の上に3つの器、それとフォークが1つのっている。そのうちの2つからは湯気が立ち上り温かいものだと主張していた。湯気の出ていないものは菜っ葉系の野菜と赤い実が乗っている。湯気が出ているもの1つは多分スープだろう。色は見たことがないものだけれどね。そして問題はもう1つ…これは何だろうか。黄色い細いものがたくさん入っていてその上に赤みがかってぷつぷつとしたものがのっているのだ。もちろん食べ方もわからないんだけど、フォークがあるのだからこれを使うことだけは理解出来るけど、後はどうしたらいいのかわからないのだ。
ちらりと視線をさらに上にあげると不思議そうな顔でジゴックさんがこっちを見ていた。とりあえず私はニコリと笑ってごまかした。
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