適正職業『錬金術師』

れのひと

文字の大きさ
15 / 30

15話 商店登録

しおりを挟む
「昨日は酷い目にあった…」

 久々のお風呂は気持ちよかったが、あれはないわ……

 昨夜のことを思い出すとポチは大きく頭を振った。考えるとその情景を思い出し、他のことが手につかなくなるからだ。

 今はそんなことよりこれからのことを考えねばっ

 店の準備にあたりソーマさんは予定通り相場確認に回ってもらう。エレノアは俺について修繕費の稼ぎに出てもらい、スフィアは宿の維持と回復に、ルーナは店と家の掃除と維持だ。
 ソーマさんとエレノアは宿の修繕が終わるまでポチの店の従業員という扱いで給料をだす。そのお金で宿の修繕にあたってもらう。一応10日に一度給料を出す形にし、少しでも早く宿を直してもらおうと思う。
 悔しいことにそれでも『エルフの微笑亭』のほうが先に営業再開できてしまう。こればかりはどうしようもない。少しでも再開が早くできるようにスフィアにも修繕をがんばってもらうしかない。

「そういえばアルタとエルザはこれからどうするの?」

 食堂で食事をしながら2人に聞いてみる。今はポチの家にいるが、これから先どこか宿を取るのかどうかである。2人は顔を見合わせ頷くと、アルタが口を開いた。

「ねえポチ。従業員雇う気ない?」
「え…それって2人とも俺の所で働きたいってこと?」
「「そう。」」
「アイテム採取メインの従業員なんてどうかしら。」

 願ってもないことだ。しばらくソーマさんは販売担当についてもらうが採取メインはいなかったのでポチが自分で行う予定だったのだ。2人が来てくれるならソーマさんが抜けるまでに販売担当の従業員を増やすだけでよくなる。

「いいの?」
「このまま住み込み希望なんだけどいいかな?」
「もちろん、助かるよ!」

 3人は笑顔を交し合う。エルザの笑顔は少しだけ何かたくらんでそうで怖かったが…

「あの…盛り上がってるところ申し訳ないですが…」
「ソーマさん…?」
「店を始めるのであれば、商人ギルドへの登録が必須ですよ。」
「……そういえば前聞いたかも。登録の他にやらなければいけないことがあれば教えてください。」

 ソーマさんが言うには登録さえしてあれば店を出すことは可能だそうだ。職業に商人を持たない人が店を出す場合はかなり宣伝とかしないと店を認識してもらえず大変なのだそうが、幸い第2の職業でポチは商人である。店の登録と準備さえ出来ればすぐにでも周知されるとのことだった。もちろんスキルを使えば、だが。

「つまりまずは登録ということだね。」

 食事が終わると各自行動へと移ることにする。ポチたち4人はまず商人ギルドへと向かった。
 商人ギルドがある場所は南門のほぼ正面だ。ここからもさほど距離はない。中央の広い通りを南へと向かいギルドの前に着いた。建物は冒険者ギルドとは比べ物にならないくらいの大きさがあり3階建てだった。
 中に入りまっすぐカウンターへと向かう。

「商人ギルドへようこそ。今日のご用件はなんでしょうか?」

 受付にいた女性の頭には獣の耳がついていた。獣人というやつだろうか…尖って大きな耳、たぶん狐だろう。尻尾も大きくてボリュームがあるのが見て取れる。
 あまりじろじろと見てしまったので女性に怪訝な顔をされてしまった。

「えーと、店を出したいのでギルド登録にきました。」

 やはりここも他と同じらしく目の前に水晶玉を差し出された。これでカードは3枚目。流石にありがたみは薄れ手に入れたカードをぼんやりと眺めるだけだ。

「では次に店の場所にカードを登録しますので、一度カードをお願いします。」

 出来上がったばかりのカードを手渡し登録をしてもらう。

「はい、場所の登録完了です。次に名前と開店予定日をお願いします。」
「店の名前…」

 はい、考えていませんでしたーー!

 困ってみんなの顔をチラリと見る。そういえば聞いてないという顔をしていた。それはそうだろう決めていなかったのだから。

「…スライムに倒された男がいい。」
「…はい?」
「なんでもない…」

 エルザはその称号がとてもお気に入りのようだ。微妙に笑いをこらえている。

「わかりやすくポチさんの名前を入れたものでいいんじゃないかな?」
「ポチの薬屋さん、とか?」
「あーなるほど…じゃあそれで。」
「わかりました。『ポチの薬屋さん』で登録します。」
「え、うそ。決定?」

 適当にアルタがつけた名前が店の名前となった。すごく申し訳なさそうな顔をしている。

「店を区別したり何の店かわかれば問題ないよ。」
「そういうもの…?」
「そうですね、最悪『あ』とかでもかまいません。」
「それはさすがに…」

 後は開店予定日か…建物自体はあるのだから相場と内装と商品。あと販売従業員を1人補充出来ればとりあえず始められるか…

「あの、予定日の前後何日の開店なら問題ないですか?」
「そうですね…前後2日です。」
「では3日後でお願いします。」
「わかりました。…登録完了しました、カードをお返しします。開店予定店舗としてギルドに張り紙をしておきます。予定日の前日までのキャンセルでしたら無料で行います。それ以降は迷惑料が発生します、気をつけてください。他にご用件はありますか?」
「あ、そうだ。この店の販売従業員を1名募集したいです。」
「わかりました、依頼という形で募集をだしておきます。募集条件は?」

 募集条件か…これも考えてなかったよ。性別はどっちでも…いや、よくないか。今は女性ばかりだ販売は女性のほうがいいだろう。そのほうが住み込みとかも可能になって募集も早く来てもらえるかもしれない。なしにするのは年齢制限かな。後は…

「えーと、販売従業員1名。年齢制限無し、女性、住み込み可。数字に強いこと。こんなとこかな…」
「はい、ではそのように出しておきます。依頼発注手数料銀貨1枚いただきます。」

 ポチ達は商人ギルドの用事を済ますと、今度は冒険者ギルドへ足を運んだ。採取のついでに依頼があれば一緒に受けるつもりだ。
 4人は依頼ボードを眺めている。アルタとエルザがDランク、ポチとエレノアはFランクだ。この4人で受けられる依頼を探すのは中々厳しいものだ。パーティになるので上がCまで受けられるが、さすがにそれは厳しいということで、DかEの依頼を眺めている。

「あーーっやっと来てくれた…」

 背後から声がした、ギルド職員の女性のようだ。何度かカウンターで顔を合わせたことがある女性だ。名前は知らない。

「えーと…ポチさんとエレノアさんでしたよね。」
「はい、そうですが?」
「?」
「やっと報酬わたせます~…」

 ギルド職員は本当に喜んでいるようだ。安堵のため息をもらしている。

「報酬?」
「フォースドベアです。」
「ああ…そんなのあったね。すっかり忘れてたんだけど。」
「とにかく渡しましたからねーっ」

 お金の入った袋を渡すとギルド職員は仕事へ戻っていった。

「ポチ…フォースドベアってたしかDランクのパーティでなんとか狩れる熊じゃ…」
「そうらしいね。」
「Fランク2人で倒したの?」
「いえ…ほとんどポチさんが1人でですね。」
「スライムに倒された男が…?」
「私とエルザ2人でも無理なのに…」

 そんな話を横で聞きながら袋を開けると金貨20枚と銀貨が6枚入っていた。フォースドベアが金貨20枚で他が銀貨6枚ってことだろう。

「エレノアお金半分貰ってね。」
「え…私ロクに働いてないからそんなもらえない…というかフォースドベア以外の報酬の半分で十分だよ~」
「んーー…わかった。」

 ポチはエレノアに金貨1枚と銀貨3枚渡した。

「ねえこれ絶対多いよね??」
「気のせいだよ。もう返却不可ですー!」

 少し納得していないエレノアは置いておいて、いい加減依頼書を眺めよう。

「ポチがそれだけ強いならダンジョン先に進めそうだけど…だめだよね~」
「地下1階で素材採取が目的だよ。」
「じゃあ素材で使っちゃうから依頼はないわね~」

 アルタは少し残念そうだ。まあ時間があったら先に進めばいいだろう。



 ◇◇◇ レアス地下1階 ◇◇◇

 1階に入るとみんなには普通に狩っていてもらい、ノームにプルポム草の採取に向かって貰う。

「さて…」

 ポチは壁にある魔石に触れると2階へと飛んだ。先にここで集めておきたいものがある。



 ◇◇◇ レアス地下2階 ◇◇◇

地下2階はグールが多い狩場だ。ざっと周りを見ると今のところ狩りをしている人は見当たらない。

「これは好都合。」

 一言もらすとポチは火炎瓶を取り出した。これで攻撃対象をこの階層のモンスターに指定する。こうすることでグールを見分けなくてすむはずだ。火炎瓶をグールだと思わしき集団がいる場所へ投げつける。それがグールでなくても問題はない。もし別パーティだったとしてもただ驚くだけである。
 投げた火炎瓶が足元に火を広げた。そこにいた人っぽいのはグールだったらしい。さらに火は効果がよかったのかそのままグールを燃やし尽くし、すぐ傍にいたスライムやポイズンスライム、キノコノコに順番に燃え広がりしとめた。アイテムが色々落ちている。

「火炎瓶1個でこれだけの範囲燃やせるのか。お得だね。」

 材料が数個分以上確実に落ちるのでこれはかなり効率がいいだろう。ポチは次々と火炎瓶を投げ、アイテムを拾う。一人ついてきてもらえばよかったかなーと思ったがまあ仕方ない。手持ちの火炎瓶を投げ終わり、集めたアイテムで再び火炎瓶を作る。そしたらまた投げ始める。これを繰り返し、火炎瓶を増やしておきたいのだ。

「うおっ…あっつ…くない?」

 何度目か投げたとき声をだす人が混ざっていたようだ。いや、声を出す人じゃなく普通に人だったのか…

「あ、驚かせてすみません。」
「いや、いいけど…なんだこれ、熱くないぞ?」
「対象を指定して使う火炎瓶ですよ。なので人には害ありません。」

 火炎瓶が危なくないことを説明すると改めて目の前の男を眺めた。髪の毛の色は真っ赤で目も同じ色をしている。風貌はどうみても冒険者な装備をしている。ここにいる時点で一般人ということはないだろう。腰には2本剣を帯刀している。

「ふむ…俺の名はチサトだ。お前は?」
「俺はポチ…よろしく。」
「…犬の名前かよっ」
「え?」

 なんかつっこみされたけど…

「いや、そっちもそれ女の名前じゃないのか…?」
「「………」」

 チサトと名乗った男が肩を組んで顔を寄せてきた。

「なあお前って…」

 そんな2人の間にポイズンスライムが体当たりをしてきた。

「…っと。話は後のがよさそうだな。」
「はい、こちらも仕事中なので。」
「はー仕事なのかっじゃあ後で落ち合うか。どこがいい?」

 ポチは自分の家を教えチサトと分かれた。火炎瓶がある程度集まったので1階に戻るのだ。上に戻ると3人が地道に狩りをしていた。

「ポチお帰り!2階に何しにいってたの?」
「これを作りに行ってたのさ。」

 作り終えた火炎瓶を取り出し3人に説明をした。3人はなぜこれを作ったのか納得したようだ。2人づつ別れ狩りを再開する。ポチはエレノアと組み、広場で火炎瓶狩りだ。ポイズンスライムも怖くないので余裕である。エレノアはアイテム拾い要員である。アルタとエルザは通路の往復を繰り返してのアイテム集めだ。ドロップするヌイグルミも巾着に変えエレノアに渡す。持てなくなった分を巾着ごとポチにあずけ空の巾着と交換を繰り返し。4人は日が暮れ始める前までその作業を続けた。



▽▽▽▽▽



「さすがに疲れたわね~」
「こんな時間狩るの初めてかも。」

 アルタとエルザが口々に今日の感想を述べている。最初の準備なので過剰に用意しておく必要があるので仕方がない。店が開店したら時間を決めてやるつもりだ。みんなからアイテムを回収し、1階にある店の裏手の倉庫にひとまず集めておく。後で全部調合するつもりだ。

 全員集合したので食事が始まった、今日もスフィアとルーナが作ってくれた。今日の各自の報告を聞きながら食事をしようとしていると、

「おーーい、ポチやーい。」

と、外から呼ぶ声がした。どうやら今日あったチサトが早速顔を出しに来たようだ。
 チサトを中へ招きいれ、食事中だというと「俺も食いたい…」と言うので急遽一緒に食事をすることになり、みんなに紹介することになった。

「…なんだこれ。ハーレムか?」
「ちがうよっ」

 チサトは食堂に入った瞬間この言葉を放った。まあたしかに7人中男は2人だけでしたけども、そういった関係ではない。
 食事を再開し、仕事の話は後で文章にまとめて各自仕事部屋へ出しておいて貰うことにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>

ラララキヲ
ファンタジー
 フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。  それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。  彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。  そしてフライアルド聖国の歴史は動く。  『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……  神「プンスコ(`3´)」 !!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!! ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇ちょっと【恋愛】もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

処理中です...