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きっと9話

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宿へ戻ると安宿の女将さんが暇そうにしていたよ。いくら昼間で客がほとんどいないからって机に伏せて寝ているのはどうかと思う。ほら、俺が今戻って来てるくらいだし? 職務怠慢ってやつじゃないかな。

ここに戻ってきたのは服が買える店を安宿の女将さんに聞こうかと思ってたんだよね。情報少年がいなかったし? まったく知らない人には聞きづらいけど一応ここの客なんだからそのくらいのサービスあってもいいと思うんだ。

ガタガタッと音を立ててすぐ傍の椅子に座って安宿の女将さんが起きるの待とうとしたんだけど、その音で起こしてしまったみたいだ。安宿の女将さん…よだれ垂れてるよ…どんだけ熟睡してたの? ちょっと気を抜きすぎじゃない??

「…ん? わっ あれ…もう夕方??」
「まだ外は明るいですよ。それよりも服を売っている店を知りたいんだけど」
「ああ…それで聞きに来たんですか。地図あったら書きますよ~」

どうやらタダで教えてくれそうだ。最初からここで聞けばよかったよ…

安宿の女将さんが地図に場所を書き込んでくれたのでまた外へと出発だよ。服を扱っている店は5軒ほどあるみたいだ。とりあえず一番近い店から行ってみようかな。

店の位置は宿と雑貨屋さんの中間くらいの所だ。『フィメール』と看板には書かれているね。そのすぐ隣には『メール』と書かれていてこっちも服屋らしい。よくわからないからまずは最初に目に入った『フィメール』って店から入ってみようかな。

中に入ってみるとたくさんの布が目に飛び込んできた。といっても店内が狭いので多分そこまでたくさんってわけじゃないだろう。ただ室内の広さに対してあっていないだけってやつ。そしてどうもこの店は女性用の服を扱っている店みたいだ。俺が店内に入ると数人いた女性の目つきが鋭くなったしね。ちょっと居心地が悪い。

「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」
「えーと…服?」
「まあそうでしょうけど…どなたの服をお探しですか」
「俺?」
「…えーと……まあ、好みは人それぞれですものね…」

どうも歯切れの悪い言い方する人だな…それに女性用の店なんだろう? 俺の服がないなら他行くんだけど、もしかしてこの中から俺に何か買わせるつもりなのかな? え、いらないよ?? ちょっと違った感じの服だから少し見てみようかな~とか思っただけだよ? 女装趣味はないんだよ。

「さよーなら~」

もう…さっさと隣の店に行こう。きっとこっちが男性用なんだろう。それっぽい服が並んでいるくらいだし? さて、何着買おうかな。洗濯とかどうすればいいのかわからないんだけど、とりあえず5着も用意しておけばいいかな…これも安宿の女将さんに聞けば教えてくれるよね多分。

…結局3着しか買わなかったよ。どうもこの店は古着屋さんみたいで、少し薄汚れたものや布の劣化が気になった。2イエーイから7イエーイくらいのものが売っていたんだけど、上下各3着とベスト2枚を買ったよ。全部で20イエーイだった。肌着というかパンツとかも欲しいんだけど、どうやら売っていないらしい。ふつうは自分で作ったりするもんなんだとか…裁縫とか道具もなければ腕もないんだけどどうすれば?

はっ まさか…2種類目の召喚をパンツにしなければならないってことなのか!! ……ないな。それに当分上がる気配もないし。ま、まだ店は3軒見てないし、それからでも考えるのは遅くないよね。

残りの3軒も見てきたんだけど、ちょっと高めのお店で新品だった。2軒は。ここで上下各2着とジャケットみたいなの2着、ベストも2着購入。それとここには靴下があったので10組買った。250イエーイかかった。所持金は後金貨4枚と大銀貨9枚と銀貨5枚と銅貨4枚と鉄貨7枚。思ったほど減らなかったね。

で、最後の1軒。どうやらここは仕立て屋さんみたいだ。見本の形の服が並んでいてサイズをはかるみたいだ。なるほど…まあサイズの合う服とか気にいる服がない場合とかに作るのかな? 俺くらいだと結構着れる服が多くて困らない感じだったけど、デザインを変えられるならありかも? …あこれいいなっ マントっていうか上着っていうか…フードのついた袖のないコートみたいなやつ。作っちゃう? 頼んじゃう?? これがあると中に来ている服とかぼろくても気にならないよ! これ重要ね。

「いかがですか? こちら各種魔法付与もお付けできますし、みなさんよく買われますよ。使われる布や魔法付与などを調節していただいて予算に会う範囲で作れますからね」
「へぇ…作るのにどんくらいかかるの? えーと日数??」
「そうですね…付与2つくらいまでで10日ほど。それに複雑なものになるほど代金も増えます」

長いな…すぐ手に入るのなら欲しいんだけどな。

「じゃあ付与しないで作る場合は?」
「そうですね…希望するデザインと材料さえあれば2,3日で仕上がりますよ」

ふむ、付与なければ早いのか。俺の場合最悪布団でも召喚すればいいし、付与なくてもいいかな…っていうか布団に使われてるシーツとか使えたりしないかな?? あれ、その付与っぽいのついてんじゃない??

「ねえねえ例えばさ、これとか使えたりしない??」
「拝見させていただきます」

ちなみにさっきから会話している相手はびしっとスーツを着こなしたおっさんだ。俺が袋から取り出した布団を現在眺めている。眺めるだけで何がわかるのか知らないが、とりあえず眺めている。ちゃんと未使用品を出したから汚れていないし、どうせならと黒い奴を出して見ている。白いので作るととやっぱ目立つだろう?

「素晴らしい生地ですね。付与も1つだけですがすでについているようで、こちらで仕立てれば問題ないと思われます」
「んじゃあこれで作ってほしいんだが」
「わかりました…えーと…」

あ、そうか。布団からはがさないと。ファスナーを開けてじぃ~~~~っと。うん、こうしてみるとシーツってでかいな。

「これでいい?」
「はい、かなり大きいですのでこれですと2着ほど作れそうですがいかがされますか?」
「じゃあそれで…?」

2着か。まあ予備にすればいいか。完成まで3日ほどで後代金は1着大金貨1枚だった。材料費がかかったらもっと高くなるそうだからこれからも作るならシーツとかで作ろうかな~? 所持金は後金貨4枚と大銀貨7枚と銀貨5枚と銅貨4枚と鉄貨7枚。ちょっと減った気がするね。明日からは稼いだほうがいいかもしれないな。
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