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お久しぶりです、さようなら

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私はラールリード公爵家の長女ブランシュと申します。
今日は、婚約者である第3王子ヴァーミリアンに呼び出され王宮に来ています。

私は今年15歳を迎えますが、ヴァーミリアン様は18歳になられます。
私が10歳、ヴァーミリアン様13歳の時に婚約が決まりました。

第3王子ですので、ヴァーミリアン様が国王になることはありません。
臣籍降下されることが決まっていましたので面倒な王妃教育などもなく、定期的に王宮で開かれるお茶会でヴァーミリアン様にお会いする以外はお顔を拝することもありません。

強いていうなれば、第2王子のデュードリヒ様の方がお会いする機会は多かったように思います。

それでも、私の婚約者はヴァーミリアン様。
最低でも1か月に1度は顔を合わせておりましたが、ここ数か月ヴァーミリアン様がお茶会に姿を表すことはありませんでした。

一応、父には報告はしていましたが、特に何も言われませんので私は決められた日には、ドレスを着て王宮に出向いておりました。

そして…

本日も定例のお茶会。
今回もいらっしゃらないのかと思っていましたが、ヴァーミリアン様がいらっしゃいました。

「ブランシュ、大事な話があるのだが…」

「ヴァーミリアン様におかれましては、本日も…」

「堅苦しい挨拶はいらないから、とりあえず座れ。」

私の挨拶も、カーテシーも必要ないとさっさと椅子に座られます。
仕方がないので、私も椅子に座ります。

「ブランシュ、君との婚約はなかったことにしてほしい。婚約は解消だ。」

数か月、お姿をお見掛けしていなかったので予想できたことです。

「かしこまりました。正式な手続きをお願いいたします。短い間でしたが、お世話になりました。」

静かに椅子を立ち、にっこり笑ってその場を後にします。

後ろからヴァーミリアン様の少し焦ったような声が聞こえていましたがそんなことは些末なことです。
婚約解消、私は心から嬉しかったのでございます。
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