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戦う相手

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無事に船にのり、上級魔物の出る地域へと入る。

「これから2週間、街には戻れないから。
準備は万端だと思うが、もう一度装備を確認しておいてほしい。」

バルトから告げられ、3人は自分の持ち物を確認していく。

これまでより、けがのリスクは格段に高くなること
魔力切れを起こす可能性、最悪転移ができるように魔導具を持つこと。
毒消し、混乱など、状態異常に万全に対処できるような薬を多く持っておくこと。

武器の破損なども考え、最低でも予備は2つ備えておくこと。

(そんなに大変なところに行くのか…)

3人はなぜそこまでしてバルトが冒険をするのか、よくわからなかった。

「出発は明日の早朝5時。 今日は早めに休んでおいてくれ。
途中までは馬で行き、転移魔法が目的地に運んでくれるがそのあとはすべて徒歩で行く。
最終的に狩る獲物は…… ついてから話そう。」

「どういうこと? 今は言えないって感じ?」

「まぁ、話しても差し支えないとは思うが…
知ってから対策を立てようとずっと起きていられると困るからな。」

「それなら今言わないで、もう少し早く行ってくれればいいのに。」

「…… 討伐依頼が出ているかどうかわからなかったからな、
最近目撃情報が出ているのは知ってたが。
今の時期、本当にいるかどうかもわからないものを、先に知らせて余計な心配させるのもどうかと思ってな。」

「時期が関係していて、上級魔物という事は…あれか?」

キールスは心当たりがあるようだ。

「まぁ、それだ。」

明言は避けたが、バルトはキールスがそれを知っているのを理解した様子だった。

「では、寝るか。
出来るだけ体力は温存したい。
そして…討伐に出るのは俺たちだけじゃないってことだろ?」

「まぁ、そうなるな。
斃した後の分配がどうなるかは…
その時の状況次第ということになるから、あまり実入りのいい仕事にはならないかもしれないが。」

「それより、無事帰ってこられることを願うって感じだろうな。
じゃ、おやすみ。」

まだ日も暮れていないうちからキールスは部屋に帰っていった。
それぞれ、起きていてもすることがないので早々に自室にこもる。

そして迎えた翌朝。
移動の間に教えられた、今回の討伐対象は…

土竜と呼ばれるもので、硬いうろこに覆われ
鋭い牙と長い尾で攻撃を仕掛けてくる体の大きな魔物だという。
時々、土の塊を飛ばすそうで…

これを連携をとってひっくり返すのだそうだ。
腹側は常に地面に接触しているため、表面のうろこより柔らかくできているらしい。

ずっと擦って歩いているなら、腹こそ固くなくてはいけないのではないか?
と思ったのだが…

意外と、腹は浮いていて大きな体に似合わず動きは俊敏との事。
その為、ひっくり返すことが非常に難しく、
傷がつきやすい表面のうろこは
返す場所が悪ければ傷だらけになり素材としても売れなくなるのだとか。

固いくせに、傷がつきやすいってどういうことなの?
って思ったら

「傷はつくけど、それ以上体内に侵攻しないんだ。」

と言われた。
傷が衝撃をすべて吸収して、うろこのすぐ下の皮膚?肉の部分を傷つけないようになっているらしい。
明日には、討伐地点につくらしい。

他の冒険者も同様との事。
無事戻ってこれるのか?

べリアはなんとも苦い顔をしていた。
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