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第3話 【イズンの林檎】~黄金の果実~
第3章 私が死んだら
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実は、由美子はあの事故で死んでいなかった。
時を同じくして奇跡的に由美子も息を吹き返し、装置に繋がれてようやく生かされている状況ではあったが、それでも生きていることには変わりなかった。しかし、もう感情を伝えることはできない身体になっていた。
しかし、生きているのであれば、何故、佳樹にこの事実を伝えないのか。
これは、由美子の両親からの申し出であった。今の佳樹に真実を伝えれば、今よりももっと自分を責めて生きてくことになるだろう。それならば、いっそのこと由美子は亡くなったことにして佳樹の人生を生きてもらおうという心遣いだった。葬儀は、佳樹が昏睡の間に密葬で済ませたことにした。
「佳樹君に悪いところはない。責めるべきは相手の運転手であり、これ以上佳樹君を由美子に縛り付けるのは酷なので、植物状態であることを黙っていて欲しい。」
無論、佳樹の両親はそれに異を唱えたが、由美子の両親の決意はあまりにも固く、しばらく二人の状況を見てからその後のことは判断しようということに落ち着いた。
―― 由美子もまた、夢を見ていた。
由美子と、佳樹は高台にある公園のベンチに腰を下ろし、眼下に広がる街並みを眺めていた。
二人はずっと無言のままだったが、不意に由美子は佳樹に語り掛けた。
「ねぇ佳樹、もしもの話ね、もしも私に何かがあって、この世界からいなくなるようなことがあったとしても、私に遠慮はしないでね。佳樹は佳樹の新しい人生を歩んで。」
「何だよ、いきなり。そんな寂しいこと言うなよ。」
「ううん、それが私の望むことなの・・でも、ひとつだけ我儘を言わせて。毎年、庭にハミウリの花が咲いたときだけは、ほんの一瞬だけでもいいから、私のことを思い出してね。」
「分かった、約束するよ。それじゃあ、そろそろ家に帰ろう。」
「うん。」
意識のないはずの由美子だったが、その瞼からは涙が流れていた。
時を同じくして奇跡的に由美子も息を吹き返し、装置に繋がれてようやく生かされている状況ではあったが、それでも生きていることには変わりなかった。しかし、もう感情を伝えることはできない身体になっていた。
しかし、生きているのであれば、何故、佳樹にこの事実を伝えないのか。
これは、由美子の両親からの申し出であった。今の佳樹に真実を伝えれば、今よりももっと自分を責めて生きてくことになるだろう。それならば、いっそのこと由美子は亡くなったことにして佳樹の人生を生きてもらおうという心遣いだった。葬儀は、佳樹が昏睡の間に密葬で済ませたことにした。
「佳樹君に悪いところはない。責めるべきは相手の運転手であり、これ以上佳樹君を由美子に縛り付けるのは酷なので、植物状態であることを黙っていて欲しい。」
無論、佳樹の両親はそれに異を唱えたが、由美子の両親の決意はあまりにも固く、しばらく二人の状況を見てからその後のことは判断しようということに落ち着いた。
―― 由美子もまた、夢を見ていた。
由美子と、佳樹は高台にある公園のベンチに腰を下ろし、眼下に広がる街並みを眺めていた。
二人はずっと無言のままだったが、不意に由美子は佳樹に語り掛けた。
「ねぇ佳樹、もしもの話ね、もしも私に何かがあって、この世界からいなくなるようなことがあったとしても、私に遠慮はしないでね。佳樹は佳樹の新しい人生を歩んで。」
「何だよ、いきなり。そんな寂しいこと言うなよ。」
「ううん、それが私の望むことなの・・でも、ひとつだけ我儘を言わせて。毎年、庭にハミウリの花が咲いたときだけは、ほんの一瞬だけでもいいから、私のことを思い出してね。」
「分かった、約束するよ。それじゃあ、そろそろ家に帰ろう。」
「うん。」
意識のないはずの由美子だったが、その瞼からは涙が流れていた。
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