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後輩

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ここのところやたらと俺に構ってくるヤツがいる。
目つきが悪いから?背が小さいから?

「先パイ!」

…来た。

「先パイ無視しないでくださいよ~!」

「何だよ」

「今日はいつにも増してくまが凄いですね。。またゲームのやり過ぎですか?寝ないとダメですよ。」

成長しませんよ、とからかってくるコイツには俺の家庭のことは言ってない。

くまに関してはゲームのやり過ぎだと言ってある。
傷跡がバレた時には転んだという古典的な言い訳を使っている。

騙せているとは思ってないが何も言っては来ないので助かっている。
ただこいつの中の俺はとてもではないが褒められた人物ではないだろう。

まぁ褒められた人物ではないことに関しては事実なんだけど…

「そういえば、今回のテスト何位でした?」

この学校は成績を廊下に貼り出すという正直に言って時代にそぐわないタイプの発表の仕方をするので、俺の成績が知りたいなら直接見ればいいだけなのだが…

というか多分コイツは知った上で聞いてきている。

「2位」

「やっぱり凄いですね」

何も凄くはない。
昨日だって点が低い、順位が悪いと怒られた始末だ。

「でも先パイまた俺の勝ちですね!次もまた勝っちゃいますよ?」

そう、コイツは入学してからずっと学年1位を取り続けている。

ただ学年が違うので勝ち負けについてはよく分からないが…

1位を取れれば何か変わるのだろうか…

「先パイ?」

「何?」

「何か疲れてます?」

そりゃあお前と話していると考えたくないものを思い出してしまって疲れてはいるが…

「別にいつも通りだろ」

「熱とかはないですよね?」

頭に触ろうとしてくる。

「やめろ…!」バシッ

その手を勢いよく振り払ってしまった。

「先…パイ…?」

「ごめん…もう行く」

「あっ、先パイ…!」


追いかけてくることはなかった。


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