転生して勇者を倒すために育てられた俺が、いつの間にか勇者の恋人になっている話

ぶんぐ

文字の大きさ
24 / 27

24

しおりを挟む
 アランとカイが恋人になったと聞いて、ジャックもクララもアンナも、やっとか!と開口一番に叫んだ。

 …なぜだ。

 俺だけがアランの気持ちに気づいていなかったみたいで、なんとも申し訳ない気持ちになる。

 俺とアランは、これから世界を旅しながら、冒険者を続けるつもりだ。冒険者と言っても、誰かを倒すのではなく、人や魔族を助ける旅だ。
 色んな所へ行って、色んな物を食べて…楽しみは尽きない。


 
 ──だが、俺には、最後に一つやらなければならないことがある。



「アラン、ちょっといいか?」

 旅立つ前、カイはアランと共に暮らしている『ミッドシティ』の家でくつろぐ彼に、声をかけた。

「ん?どうしたの?」

 付き合ってからのアランは前にも増してカイに甘々で、今も両手を広げて抱き寄せてくる。

 …火が出るくらい恥ずかしい。

 ってそうじゃない。

「…アランに伝えなくちゃいけないことがある」
「…待って…。別れたいとか言わないよね?」

 俺があまりにただならぬ顔をしていたからだろうか。アランが急に低い声で言うと、手首を掴んでくる。

 いや、目怖いって!違う!違うから!

「いや、違うって!…あのな、その…」

 アランが今度は心配そうに見つめてくる。

「…俺の言うこと信じてくれるか…?」
「信じるよ、もちろん」
「…ありがと。──実は、俺さ、前世の記憶があるんだ」

 アランは思いがけない話に目をぱちくりさせた。

「前世の?」
「ああ。俺は、前世で、サラリーマンって職業に就いてたんだが、亡くなってしまって、この世界に生まれ変わったんだ。──それで、この世界は、俺が前世でやっていたゲームにそっくりな世界なんだ」
「…ゲーム…」
「…ああ、信じられないだろ?でも、俺は、自分が裏切って殺される運命なんだって知ってた。正確に言うと、途中で思い出したんだ。それまでは忘れていた。──剣士学校の試験に合格した時、あの時に、全てを思い出したんだ。──それで、アランを裏切らないって誓ったんだ。最初は自分のためだったけど、段々、君のことが好きになって…君を守りたいから裏切らないって決意したんだ」

 カイは恐る恐るアランを見たが、アランは想像していた表情とは違い、真剣にカイの話を聞いていた。

「信じてもらえなくてもいいんだ…ただ、アランには全て知って欲しくて…」
「信じるよ。驚いたけど、カイが言うことは嘘じゃないから」

 アランはきっぱりと言う。
 今度はカイが驚く番だ。

「でもこんな突拍子もないこと…」
「…実はさ、カイが思い出したらしい、その試験の日、俺、カイがなんか変わったなって思ったんだよ。今、納得した。カイはその時、思い出したんだね。──それに、時々、カイが同い年と思えない時があるんだ。もしかして、カイは前世だと俺より年上なの?」
「…わ、わかる?そう、俺、30歳だったから」
「…30歳…そうなんだ…可愛いね。年上なの萌えるな」
(何に萌えるんだ…?)
「じゃあ俺は、同年代のカイも、年上のカイも同時に堪能できるんだね!」
「…いや、お前のポジティブさはよく分からん…」
「そうか…話してくれてありがとう。…前世でも、俺は君を絶対見つけただろうな」

 …アラン。

「…ありがとうな。でも、この世界でアランと出会えたのが嬉しい」

 アランはそれを聞くと、この上なく綺麗に笑った。
 そのまま抱きしめられ、2人の影が重なる。

 

 俺は、この世界に転生して幸せだ。 




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

呪われた辺境伯は、異世界転生者を手放さない

波崎 亨璃
BL
ーーー呪われた辺境伯に捕まったのは、俺の方だった。 異世界に迷い込んだ駆真は「呪われた辺境伯」と呼ばれるレオニスの領地に落ちてしまう。 強すぎる魔力のせいで、人を近づけることができないレオニス。 彼に触れれば衰弱し、最悪の場合、命を落とす。 しかしカルマだけはなぜかその影響を一切受けなかった。その事実に気づいたレオニスは次第にカルマを手放さなくなっていく。 「俺に触れられるのは、お前だけだ」 呪いよりも重い執着と孤独から始まる、救済BL。 となります。

好きな人がカッコ良すぎて俺はそろそろ天に召されるかもしれない

豆ちよこ
BL
男子校に通う棚橋学斗にはとってもとっても気になる人がいた。同じクラスの葛西宏樹。 とにかく目を惹く葛西は超絶カッコいいんだ! 神様のご褒美か、はたまた気紛れかは知らないけど、隣同士の席になっちゃったからもう大変。ついつい気になってチラチラと見てしまう。 そんな学斗に、葛西もどうやら気付いているようで……。 □チャラ王子攻め □天然おとぼけ受け □ほのぼのスクールBL タイトル前に◆◇のマークが付いてるものは、飛ばし読みしても問題ありません。 ◆…葛西視点 ◇…てっちゃん視点 pixivで連載中の私のお気に入りCPを、アルファさんのフォントで読みたくてお引越しさせました。 所々修正と大幅な加筆を加えながら、少しづつ公開していこうと思います。転載…、というより筋書きが同じの、新しいお話になってしまったかも。支部はプロット、こちらが本編と捉えて頂けたら良いかと思います。

乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について

はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。

【完結】だから俺は主人公じゃない!

美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。 しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!? でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。 そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。 主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱! だから、…俺は主人公じゃないんだってば!

不吉な『影』の力で追放された僕、流れ着いた砂漠の国では『聖なる天蓋』と呼ばれ、若き王に『我が国の至宝だ』と溺愛されています

水凪しおん
BL
不吉な『影』の力を持って生まれたノア。家族に虐げられ、一族から追放された彼が流れ着いたのは、灼熱の太陽に苦しむ砂漠の国だった。 そこで彼の呪われたはずの力は、人々を救う『聖なる天蓋』と呼ばれる奇跡となる。 「君こそ我が国の至宝だ」 ――孤独だった青年の影が、太陽のように眩しい若き王に見初められ、その運命が色鮮やかに輝き出す。 虐げられた日陰者の青年が、唯一無二の愛を見つける、極甘BLファンタジー!

【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。

時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!? ※表紙のイラストはたかだ。様 ※エブリスタ、pixivにも掲載してます ◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。 ◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います

処理中です...