魔力なしの嫌われ者の俺が、なぜか冷徹王子に溺愛される

ぶんぐ

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27.舞踏会4

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アーサーに言われ3人が城内に戻ると、会場の照明が暗くなって、中央がロマンチックに照らし出されていた。どこからともなく、ゆったりとしたワルツ調の曲が流れ始める。

──…ついにきてしまった!舞踏会では必須の、ダンスの時間である。

俺は舞踏会に招待されてからずっと、このダンスが不安だった。前世から生粋の平凡人生である俺は、ダンスなんてしたことないぞ…?!しかし、どうやら見た限り『冬の舞踏会』ではダンスは皆それぞれノリで踊ってる感じで、初心者でも簡単そうだ……ま、俺をダンスに誘ってくる人はいないだろうが。

ふと、男性たちが、それぞれダンスのパートナーにしたい人の前に行って、手を差し伸べているのが見えた。

さっきまで一緒にいたアーサーは、もう綺麗なご令嬢の所へ行ってダンスへ誘っている。彼は整った顔をしていて更に王太子ということもあって、誘われた子は頬を染めてうっとりだ。確か、あの子は外務大臣の娘さん。

「まぁ!アーサー殿下は、フラワー公爵令嬢を誘ったわね」と側のご婦人が興奮した声で言っている。
なるほど、王族がダンスに誰を誘うかというのが、注目の的らしい。

…ギルバートは、誰を誘うのかな?

クラウスは、目立たないよう隅の方に少しずつ移動しながら考えた。

目の端に、あの美しく可愛らしい騎士団長の娘さんが写り、ドキッとする。…それは胸の高まりではなく、少し、焦るような気持ちだ。

…きっと、あの子かな…。って、肝心の彼はどこだろう。

クラウスがいつの間にか見失っていたギルバートの姿を探そうと顔を上げると、誰かがクラウスの前に立ちはだかるように立っていた。

「え」

ギルバートだった。
ギルバートは、その氷色の目でじっとクラウスを見つめながら、スッとさながら騎士のように美しい動作で手を差し伸べてきた。そして、衝撃の言葉が降ってくる。

「クラウス、俺と一緒に踊ってくれないか?」

「え?」

ポカンとした俺は、呆けてギルバートの顔を見つめたまま固まってしまう。 

「…心底意外だっていう顔だな。…そんな君だから…好ましいんだが」

ギルバートが僅かに微笑む。…笑顔を見るのは、今日で2度目だ。超レアな笑顔が、2回も見れるとは…。クラウスはその眩しい笑顔に目をパチパチさせた。周りで、ハッと息を呑む音が聞こえ、皆がザワめいたのが分かった。「…え?笑った…?」と誰かの声。

まだ動けない俺の手を、ギルバートが掬い取る。そして、どんどん手を引いて広間の中央に歩き出してしまった。…案外強引である。

「ちょ、ちょっと待った…!俺、実はダンスをしたことがなくって…」
「大丈夫。君も見てただろ?ここ冬の舞踏会ではダンスできなくても良いんだ。全て俺に任せていろ」

っく。また男前発言を…!
で、でも君はてっきりあの可愛い騎士団長のご令嬢を誘うもんだと…。美しい王子のダンスの相手は、美しい女性なのが普通なんじゃないのか?それを、こんな冴えない男の俺が…。
しかし、そこでハッと周りを見ると、どうやら同性同士の組も普通にいる。…そうだった、俺は前世の固定イメージに引きずられているようだ。しかし、それにしても…皆キラキラしてる中、どうも場違いな凡庸さを醸し出す俺がこんなスポットライトを浴びていいのかっ…?

ふと、近くにいたアーサーと目が合った。彼は、僅かに目を見開いてギルバートと俺を見つめている。いや、彼だけじゃなく、周りの皆がすごく俺たちに注目しているのが分かった。そう思った途端、ドッと緊張してしまう。

その時、握られていた手に力がこもり、ギルバートが顔を覗き込んできた。そうして、「大丈夫だ」と言ったギルバートは、キラキラした照明を背景に銀の髪と青い目が輝いていて眩しかった。
この、冷静沈着で堂々としたギルバートにそう言われると、大丈夫のような気がしてくる。クラウスは、腰に手を回されて軽く引き寄せられながら、自然と身を任せて音楽が始まるのを待った。

それからはあっという間だった。
ギルバートはやはり王子としてダンスの勉強もしっかりしてきたのか、流れるような動作でさりげなくクラウスをリードする。
最初はクラウスも必死になっていたが、ふとギルバートの流れに乗ることができると、やっと周りが見えてきた。

…やってみて分かった。

これ、顔は近いし体は密着するし、正直心臓がドキドキしっぱなしだ。ギルバートが真剣な目でじっと見つめてくるのがいけない。クラウスも下ばっか見ててはいけないと思って、チラリとギルバートの顔を見つめると、彼は嬉しそうに目を細めた。
…まるで2人だけ別の世界に行ったみたいに、俺はギルバートの透き通る青い目に吸い寄せられたまま、ただ見つめてしまった。

「──そう、こっち寄って。もっと」

ギルバートがリードするために、その耳に響く低音で囁きかけてくるのもダメだった。声もかっこいいは反則だ。
ダンスでは話すのも普通なのか、周りでも朗らかな笑い声が聞こえる中、ギルバートも口数は少ないがこうして話しかけてくる。
俺も、今日は謎にフワフワした気分のままなため、変なことを口走りそうだ。

…いや、既にそう思った時には俺は口に出していた。

「──そう、良くできてる。次はターンしてみるか?」
「ギ、ギルバート、その耳元でしゃべるのドキドキしてしまうからダメだ」
「え?」

ギルバートが一瞬固まった。 

「っ!いや、ドキドキというか、心臓に悪いというか」
「嫌なのか?」

とびきり良い声が近くで聞こえ、ギルバートが少しニヤニヤしながらこちらを見てくる。
君、そんないじわるな感じの表情もできたのか?!

「い、嫌ではない。…だから、その、君の声がカッコ良すぎて照れるんだよ…!君に見つめられてるだけでも心臓がヤバいのに」
「……それ、無自覚か?」

ギルバートが急に思案顔になって何やら呟く。

クラウスは、また心の中で思ったことを素直に言ってしまったことにようやく気がついて、かあっと顔が熱くなるのを感じた。

…もしかして俺、勘違いされそうな事言ったか…?まるで、俺は彼にベタ惚れのような…いや、
……勘違い、なのか…?

と思いつつ、ダンス中赤くなってるだろう顔を背けるわけにもいかず、ただ目の前のギルバートを見つめる。

ギルバートは、そんなクラウスを一目見て一瞬目を見開くと、…照れたような顔をした。

「…その顔、反則だろ」

ギルバートは、何かに耐えるように言った。少し耳が赤くなっている。

…いや、君の方が反則だろ。
…照れてるの可愛いな。
その本音は何とか心の中に押し留め、俺は最後までギルバートとダンスを踊り切った。

終わって周りを見ると、多くの人と目が合った。険を感じる人もいたが、ほとんどは何だかワクワクした感じだ。全体的に活気が出ていた。

近くのご婦人たちの会話をまた聞いてしまったが、どうやら「ギルバート殿下が個人的にダンスに誰かを誘ったのは、初めて」らしい。なるほど、だからこの騒ぎなのかもしれない。

いよいよ『冬の舞踏会』が終わって皆が帰り始めた時、最後にアーサーがこちらを見ていたのに気がついた。彼は、一瞬険しい顔で俺を見ると、そのままくるりと身を翻して行ってしまった。

…王太子で、ギルバートの兄であるアーサー。彼が何を考えているのか、俺はそれが気になって気持ちがザワつくのを感じた。



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