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41.卒業パーティでの最後のダンス
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クラウスがそんなことを考えながら入り口を見ていた時、突然、肩をぽんぽんと叩かれた。
「クラウス」
「へっ?」
完全に不意をつかれて変な声が出る。すると、クスッと背後で笑う声がした。この、深みのある低音は…
「ギルバート…?ど、どうした?」
間近で見たギルバートは、薄暗い照明の中でもハッと息を呑む格好良さだった。その彼がどこか楽しそうな顔をしてクラウスを見つめているのだ。クラウスは急に心臓がどきどきし始めた。
「クラウスは踊らないのか?」
「い、いや、俺は下手だしなあ」
「そうか?あの時もうまく踊れていたじゃないか」
冬の舞踏会の時のことを言われ、かあっと顔が火照る。今更思うが、あの時は恋心を自覚していなくて良かった…!ただでさえ恥ずかしいのに、自覚した後ギルバートにあんな風にリードされたら惚れているのを隠し通せる自信がない。
「あら。もう二人は踊ったことがあるのね」
リリーがにやっと口角を上げながら面白そうに言った。
「今夜もまた踊ったら?」
ええ!
「ああ。それを誘いにきたんだ」
?!
「クラウス、一緒に踊ってくれないか?一応王子だから、卒業パーティではダンスを披露して欲しいと言われているんだが……ペアを組むなら……君がよかった」
「やるわね(ボソ)」
ギルバートが気恥ずかしそうにチラリとこっちを見ながら言うのを見て、クラウスはくらりとする気がした。
しかし!自惚れるな。自分は、このパーティにいる者で誘ってもいい相手に選ばれただけだろう。なにせ大人気の王子だ…有名な令嬢を選んだら、それもまた噂の火種になっちゃうだろうし。彼には本命がいるんだから…。
「う、うん。それなら喜んで相手になるよ…。でも、」
「──大丈夫だ。君も目立つのは嫌だろう?こうして、顔を隠せばいい。それに、暗いから誰も分からないよ」
食い気味でギルバートは言うと、ふわりと俺のローブのフードを被せてくれた。学生服でもあるローブは大きなフードだから、俺の顔はすっぽり隠れた。そのまま、さりげなく腰に手を回されて引き寄せられる。
「君はまた、俺に身を任せていればいい」
狭くなった視界で間近でそう言われ、息を呑んだ。
「いってらっしゃい」
リリーのにこやかな声が聞こえたが、俺はそのまま流れるようにギルバートにエスコートされてしまって、どんどん大広間の中央へ向かう。
なんだか、手慣れていないか?!
あっという間に、流れている音楽に乗ってギルバートはステップを踏み出す。その流れは洗練されており、ペアとなったクラウスを難なく導いた。ギルバートの手はクラウスの腰に添えられ、もう片方の手はクラウスの片手としっかり繋ぎ合っている。…なんなら、いわゆる恋人繋ぎだ。
…いやいや、周りの皆はかるーく踊ってるだけで、手も繋いでない人も多いぞ?!王子だから皆よりしっかり踊らないといけないのかもしれないけど…。
ぎこちない俺が相手にも関わらず、ギルバートのダンスはそれはもう優雅だった。自然とスポットライトが俺たちに当たる。
周りの者たちが、見惚れたようにギルバートを呆けて見つめているのが踊りながらもわかった。
「…あれ、ギルバート様よね?…綺麗。踊っているの初めて見たわ」
「相手は誰だろう?顔が隠れて見えないけど…男にしては背が低いけど、女にしては肩幅があるな…」
「まさか、さっきからダンスの誘いを断ってたギルバート様が誰かを選んだとは思えないけど…ううん、この際相手はどうだっていいわ!ギルバート様の美しいダンスが見れたんだもの」
ひそひそと交わされる言葉はクラウス達には届いていなかったが、段々注目を集めていることに気づいて、クラウスは内心ヒヤヒヤだった。
「…ギルバート殿下は流石かっこいいけどさ、相手もダンスは下手だけど…なんか絵になるな。なにより、ギルバート殿下の相手を見る目が優しい…」
「ね、ちょっとドキッとするわ」
しかし、一部の観客の中では、こんな会話がなせれていたほど、クラウスにも好感を持たれていたことは彼自身は気づいていなかった。
そんな風に周囲の視線をかっさらったギルバートとクラウスは、音楽が一旦終わるまで踊りつづけた。
それを、遠目から見ていた人物が一人。
「…はあ」
アーサーは、弟とそのペアである男を見ながら、深くため息をついた。
「…花まであげたとはね。その上ダンスにも誘って?…ベタ惚れじゃないか。あの一途さを見ると俺じゃなく父上に似たようだけど…まさか、ぽっと出てきた正体不明のあの男に惚れるとはなぁ」
(…素直に応援してやれたら、どんなに良かったか。この胸騒ぎが思い違いならいいが)
アーサーは、引き続き学園長を見張るために、口に愛想笑いを貼り付けて歩み出した。
(…それにしても、今夜のパーティーも不気味だ。あまりに平和すぎる。警備に囲まれているからどこからも襲えないはずだが…なぜこんなに不安になるんだろう?)
*
音楽が終わり、照明もふっと一時的に暗くなる。
「一緒に踊ってくれてありがとう。さあ、今のうちに戻ろう」
耳元でギルバートの声が低く、どこか嬉しそうに響く。背中に手を当てられて、リリーのいた所まで導いこうとしてくれる。
どこまでも気を遣ってくれるギルバートに俺も礼を言おうとした、その時──
──耳をつんざくような爆発音がした。
「クラウス」
「へっ?」
完全に不意をつかれて変な声が出る。すると、クスッと背後で笑う声がした。この、深みのある低音は…
「ギルバート…?ど、どうした?」
間近で見たギルバートは、薄暗い照明の中でもハッと息を呑む格好良さだった。その彼がどこか楽しそうな顔をしてクラウスを見つめているのだ。クラウスは急に心臓がどきどきし始めた。
「クラウスは踊らないのか?」
「い、いや、俺は下手だしなあ」
「そうか?あの時もうまく踊れていたじゃないか」
冬の舞踏会の時のことを言われ、かあっと顔が火照る。今更思うが、あの時は恋心を自覚していなくて良かった…!ただでさえ恥ずかしいのに、自覚した後ギルバートにあんな風にリードされたら惚れているのを隠し通せる自信がない。
「あら。もう二人は踊ったことがあるのね」
リリーがにやっと口角を上げながら面白そうに言った。
「今夜もまた踊ったら?」
ええ!
「ああ。それを誘いにきたんだ」
?!
「クラウス、一緒に踊ってくれないか?一応王子だから、卒業パーティではダンスを披露して欲しいと言われているんだが……ペアを組むなら……君がよかった」
「やるわね(ボソ)」
ギルバートが気恥ずかしそうにチラリとこっちを見ながら言うのを見て、クラウスはくらりとする気がした。
しかし!自惚れるな。自分は、このパーティにいる者で誘ってもいい相手に選ばれただけだろう。なにせ大人気の王子だ…有名な令嬢を選んだら、それもまた噂の火種になっちゃうだろうし。彼には本命がいるんだから…。
「う、うん。それなら喜んで相手になるよ…。でも、」
「──大丈夫だ。君も目立つのは嫌だろう?こうして、顔を隠せばいい。それに、暗いから誰も分からないよ」
食い気味でギルバートは言うと、ふわりと俺のローブのフードを被せてくれた。学生服でもあるローブは大きなフードだから、俺の顔はすっぽり隠れた。そのまま、さりげなく腰に手を回されて引き寄せられる。
「君はまた、俺に身を任せていればいい」
狭くなった視界で間近でそう言われ、息を呑んだ。
「いってらっしゃい」
リリーのにこやかな声が聞こえたが、俺はそのまま流れるようにギルバートにエスコートされてしまって、どんどん大広間の中央へ向かう。
なんだか、手慣れていないか?!
あっという間に、流れている音楽に乗ってギルバートはステップを踏み出す。その流れは洗練されており、ペアとなったクラウスを難なく導いた。ギルバートの手はクラウスの腰に添えられ、もう片方の手はクラウスの片手としっかり繋ぎ合っている。…なんなら、いわゆる恋人繋ぎだ。
…いやいや、周りの皆はかるーく踊ってるだけで、手も繋いでない人も多いぞ?!王子だから皆よりしっかり踊らないといけないのかもしれないけど…。
ぎこちない俺が相手にも関わらず、ギルバートのダンスはそれはもう優雅だった。自然とスポットライトが俺たちに当たる。
周りの者たちが、見惚れたようにギルバートを呆けて見つめているのが踊りながらもわかった。
「…あれ、ギルバート様よね?…綺麗。踊っているの初めて見たわ」
「相手は誰だろう?顔が隠れて見えないけど…男にしては背が低いけど、女にしては肩幅があるな…」
「まさか、さっきからダンスの誘いを断ってたギルバート様が誰かを選んだとは思えないけど…ううん、この際相手はどうだっていいわ!ギルバート様の美しいダンスが見れたんだもの」
ひそひそと交わされる言葉はクラウス達には届いていなかったが、段々注目を集めていることに気づいて、クラウスは内心ヒヤヒヤだった。
「…ギルバート殿下は流石かっこいいけどさ、相手もダンスは下手だけど…なんか絵になるな。なにより、ギルバート殿下の相手を見る目が優しい…」
「ね、ちょっとドキッとするわ」
しかし、一部の観客の中では、こんな会話がなせれていたほど、クラウスにも好感を持たれていたことは彼自身は気づいていなかった。
そんな風に周囲の視線をかっさらったギルバートとクラウスは、音楽が一旦終わるまで踊りつづけた。
それを、遠目から見ていた人物が一人。
「…はあ」
アーサーは、弟とそのペアである男を見ながら、深くため息をついた。
「…花まであげたとはね。その上ダンスにも誘って?…ベタ惚れじゃないか。あの一途さを見ると俺じゃなく父上に似たようだけど…まさか、ぽっと出てきた正体不明のあの男に惚れるとはなぁ」
(…素直に応援してやれたら、どんなに良かったか。この胸騒ぎが思い違いならいいが)
アーサーは、引き続き学園長を見張るために、口に愛想笑いを貼り付けて歩み出した。
(…それにしても、今夜のパーティーも不気味だ。あまりに平和すぎる。警備に囲まれているからどこからも襲えないはずだが…なぜこんなに不安になるんだろう?)
*
音楽が終わり、照明もふっと一時的に暗くなる。
「一緒に踊ってくれてありがとう。さあ、今のうちに戻ろう」
耳元でギルバートの声が低く、どこか嬉しそうに響く。背中に手を当てられて、リリーのいた所まで導いこうとしてくれる。
どこまでも気を遣ってくれるギルバートに俺も礼を言おうとした、その時──
──耳をつんざくような爆発音がした。
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