第八皇子は人質王子を幸福にしたい

アオウミガメ

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第壱部-Ⅲ:ぼくのきれいな人たち

25.日向 一人で過ごす時間

目が覚めたら、ベッドの上だった。隠れ家じゃなくてびっくりした。
いつの間に眠ったんだろう。
窓の外はまだ黒。でもちょっとだけ黒が薄くなって、灰色と青色が出てきた。
ホーホーの声は聞こえないけど、ぴーぴーの声のしない。


昨日がおわって、今日になった。
もうすぐ朝。
昨日はしおうが来た。ご飯を一緒に食べた。

今日はいるかな。
ひなた、おいで、ご飯だって、いうかな。
いるかもしれない。
いないかもしれない。


ベッドを降りて、部屋の中をあるく。
トイレに行って、水を飲んで、ベッドにもどって、また歩いて、水を飲んで、ベッドに戻る。仕方ない。

みんなは寝てる。
まだ朝じゃないから、ぼくも寝る時間。
でも眠れない。

ベッドを降りて、部屋の中を歩いて、窓の外を見て、またベッドに戻って、また降りた。仕方ない。

しおうは、今日はいるかな。
いないかもしれない。

広い部屋。
ここにいていいって、すみれこさまが言った。
きれいでいいにおいがするのは、いつもみずちがぴかぴかにお掃除するから。
昼は、人がいっぱいくる。今はいない。

ベッドの横にベルがある。あれを鳴らしたら、寝る時間でもうつぎかみずちがくるんだって。
まだ一度も使ったことがないけど、くるかな。

外が明るくなってきた。
ぴーぴーの声はまだ聞こえない。

しおうはいるかな。
いないかもしれない

ベッドにいても、水を飲んでも、お風呂やトイレにいっても、部屋の中をぐるぐる歩いても、眠くならない。仕方ない。
でも隠れ家に行って丸くなったら、眠くなった。

しおうはくるかな。
いないかもしれない。

眠って起きたらいるかな。
いないかもしれない。

ああ、ぴーぴーの声がするよ。
おはよう、って言う時間。

「おはようございます、日向様」

うつぎの声がして扉をあけて、おはよう、っていった。
うつぎがぼくを隠れ家の外にだして、顔をふいた。
次は着替え。
うつぎが準備している間に、僕は部屋を歩いて、ベッドに登って、トイレに行って、また歩く。

「日向様、体が震えております。隠れ家に戻りますか?」

うつぎが言う。心配の声。なんで?

「何か怖いことがございましたか?」
わかんない
「朝ご飯まで時間があります。どうぞ無理をなさらず」

隠れ家に行ったらいいかもしれない。
たしかにずっと、へんな感じがする。
胸とお腹のあたりがふわふわして、もやもやして、ぎゅーってなって、くらくらする。
隠れ家の中ではちょっとなくなったけど、全部は消えなくて、ずっと続いている。
こわいに似てる。でもちがう。

「かくれがはいい、」

服を着替えて、また部屋の中を歩いた。ベッドに登って、降りて、くるくる歩く。
もうすぐ朝ごはんの時間。

「日向様、」

うつぎが心配してる。涙が出てるっていうから、顔を触ったら出てた。
ふわふわともやもやが強くなった。隠れ家がいいかもしれない。でも動いていないともっと強くなる気がする。仕方ない。

わからなくて、くるくる歩いた。
くるくるくるくる



「何してんだ、朝から元気だな」



しおうの声がした。


「え、何。どうした?何で泣いてる」
わからない。
「う、宇継」
「…お任せします」
「え、」
「しおう、ごはん、」
「あ、うん、おいで。」

しおうが言った。
胸とおなかのもやもやが止まった気がした。

いた。いる。
今日になっても、しおうはいる。
おいで、っていう。

「え、待って。だから、何で泣くんだ。」
「しおう、いる。」
「いるよ、いるっていったろ、」
うん

すごく困った顔で、しおうが僕の顔をふく。

「しおう、ごはん、」
「いや、震えてる。ムリすんな、って」
「いい、」

しおうが座る。膝に登って、いつもの場所に座った。背中をしおうのお腹にくっつけたら、あったかくなった。

「腹減ってた?」
わかんない
「待って、本当に心配。何でずっと泣いてんだ、」
わかんない
「なあ、隠れ家行こう。な」
「いい、」

うつぎがご飯を持ってきたから、食べた。
ずっと涙が出てて、しおうが拭いて、いっぱい心配した。
背中だけじゃなくて、胸もあったかくなった。全部全部あったかくなった。

いるね、しおう、いるね。


うん、もう大丈夫。
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